Q&A:証券外務員に「ノルマ」はある?営業成績と資格の関係を制度から確かめる

証券外務員や金融機関の営業職を調べていると、「ノルマが厳しい」という評判に行き当たります。ただ、書かれているのがいつの・どの会社の話なのかは分かりません。数字が出ていても、それが自分の入る会社に当てはまるかは別です。「今は緩くなった」という記述もあり、集めるほど判断できなくなります。
ここからはQ&Aの形で、答えの出どころを毎回示しながらお答えします。目標の水準や社内での扱いは所属先が決める領域で、公表された情報がないため扱いません。かわりに、資格の側で答えが出ることを先に確定させます。日本証券業協会が示す外務員資格の失効の要件は2つで、そこに成績や目標に関する定めは含まれていません。
なお、この記事は証券外務員ナビの一部です。仕事の内容やキャリアの全体像から確認したい方は、まずこちらのページをご覧ください。
証券外務員に「ノルマ」はあるのですか?|資格の側に目標の定めはない
答えを持っているのは資格ではなく、所属先
「証券外務員にノルマはあるか」という問いに、資格の側から出せる答えはありません。「証券外務員」は資格の名前で、勤務先が置く職務や目標の名前ではないからです。
日本証券業協会が公表している制度は、試験の出題範囲、資格の種別、外務員登録、更新研修について定めています。目標の設定について定めた記述は、そこにありません。数値目標を置くかどうか、置くならどの単位で置くかは、所属先が自社の営業体制として決めることです。
同じ資格を持つ人が別の会社にいれば、そこは別の答えになります。つまり「証券外務員のノルマ」という共通の答えは、制度の側には存在しません。
ただし、販売・勧誘を行う立場であることは定義に書かれている
一方で、この資格が営業と無関係だということにもなりません。
協会は外務員を「協会員(本協会に加入している証券会社や銀行等)に所属している役職員のうち、顧客に対して金融商品の販売・勧誘等を行う者」と定義しています。顧客に対して販売・勧誘を行うことが、定義そのものに書かれています。出題範囲にも、関連科目として「セールス業務」が入っています。
「営業の仕事なのか」という問いには、定義の側から答えが出ます。「その営業にどんな目標が置かれるのか」は、そこから先の話です。
以下の各回答の末尾に、その答えがどこから出ているのかを添えます。制度(協会や法令の公表情報)か、所属先(社内規程や募集要項)か、どこにも公表されていないのか——の3つです。調べても答えが割れる問いは、出どころの側で分かります。
【この答えの出どころ】制度(日本証券業協会の定義・出題範囲)。目標の設定は所属先です。
どれくらい厳しいのかは、調べれば分かりますか?|答えが割れる理由
同じ「証券外務員」が、同じ仕事をしているわけではない
調べても答えが割れるのは、探し方が悪いからではありません。「証券外務員」という一つの語が、同じ仕事を指していないからです。
協会の定義にあるとおり、外務員が所属するのは協会員で、そこには証券会社だけでなく銀行等も含まれます。そのうえで、どの商品を担当し、どの顧客に向き合うかは所属先の割り当てで決まります。
同じ資格を持っていても、勤務先の業態が違えば、担当する顧客層も、扱う商品も、置かれる目標の単位も別のものになります。「証券外務員の一日」として書かれた記事が自分の想定と噛み合わないのは、自然なことです。一つの語に一つの答えを求めているかぎり、情報を集めても収束しません。
書き込みには「いつ・どこの」が付いていない
もう一つの理由は、体験談に条件が付かないことです。
いつの時点の話か、どの規模のどの業態の話か、どの担当の話か。判断に必要な条件が書かれていない記述は、自分に当てはめる材料になりません。具体的な数字が書かれているものほど、特定の会社の特定の時期の話である可能性が高くなります。それを業界の実態として一般化すると、判断がずれます。
当サイトでは、目標の水準・労働時間・離職率といった数値は、出典を確かめられるものが見つからないため扱いません。「厳しい」「厳しくない」のどちらも書きません。

【この答えの出どころ】水準と労働環境は、どこにも公表されていません。立場の広がりは制度から読み取れます。
達成できないと、資格を失うことはありますか?|失効の要件に成績はない
資格が失われる要件は2つで、成績はそこに入っていない
営業成績や目標の未達を理由に外務員資格が失われる、という仕組みは公表されていません。
協会は「外務員資格は、法令違反等による資格の取消し等がない限り、取り消されることはありません。」としています。資格が失われる場面を、取消しという処分に限定した書き方です。もう一つの経路は更新研修で、「研修を受講・修了しない場合、外務員資格が停止されます。さらに、資格停止期間中に研修を受講・修了しない場合、外務員資格はすべて取り消されます。」とされています。
この2つのどちらにも、成績・目標・達成率に関する定めは含まれていません。ほかの失効事由も、公表されている資料からは確認できません。
「ノルマを達成できないと資格を取り上げられるのか」という心配については、この段階で答えが出ます。資格の側の要件に、成績は置かれていません。
どの行為が法令違反に当たるのかについては、その類型や罰則を一覧として確認できる公表資料がありません。業務上の判断基準は、法令と協会の規則、そして所属先のコンプライアンス規程で示されます。
心配されやすい5つのうち、要件に当たるものはない
資格が消えるのではないかと心配されやすいことを並べると、いずれも要件の側にありません。
目標の未達、営業成績、退職、他の会社への転職、そして資格を使わない期間。このうち退職と転職については、協会が「退職した場合や他の協会員へ転職した場合でも資格は有効です。」と明示しています。期間の経過で失効する仕組みもありません。
更新研修についても、対象は外務員登録を受けている人です。協会は「現在、協会員に所属していない方は、受講対象者ではありません(外務員資格が取り消されることはありません)。」としています。試験に合格しただけの段階では、研修の義務も生じません。
資格そのものは、成績や在籍の状況では動きません。資格の有効期限と、失効する2つのケースの内訳は証券外務員資格に有効期限はある?で詳しく扱っています。

社内の評価・処遇を決めているのは所属先
一方で、社内の評価や処遇がどうなるかは、この記事では扱いません。
評価制度・処遇・配置は、所属先が就業規則と社内規程で定める領域で、業界一般として示せる情報が公表されていないためです。「未達なら減給」「異動になる」といった記述を見かけても、それがどの会社のどの時期の運用かは確かめられません。
確かめる相手は所属先です。制度の側で言えるのは、資格は残るという一点です。
【この答えの出どころ】協会が公表している失効の要件は、答えが出ます。社内の評価・処遇は所属先の規程で、公表されていません。
目標のために、無理な売り方をすることになりませんか?|ルールは試験科目にある
売り方のルールは、試験科目に組み込まれている
勧誘や販売の仕方にルールがあること自体は、試験の出題範囲から確認できます。
二種の出題範囲は3分野14科目です。そのうち【法令・諸規則】は、金融商品取引法及び関係法令/金融商品の勧誘・販売に関係する法律/協会定款・諸規則/取引所定款・諸規則の4科目です。関連科目には「セールス業務」も入っています。
商品の中身より先に、守るべきルールが科目として体系立てて置かれている、という構成です。合格の基準は7割以上の得点で、この分野を避けて通る形にはなっていません。出題形式ごとの配点と分野ごとの学習の当て方は証券外務員一種・二種の試験科目で分解しています。
「目標のために何をしてもよい仕事」という前提には、制度の側が立っていません。
個別のルールの中身は、法令と協会の規則、所属先の規程にある
そのうえで、どの行為がどこまで許されるのかは、出題範囲からは読み取れません。
個別のルールの内容と、違反に当たる行為の類型は、法令と協会の規則、そして所属先のコンプライアンス規程で示されます。公表資料から一覧として確認できるものではないため、業務に入ってからの判断基準は、所属先の規程で確認することになります。
この記事で言えるのは、ルールが枠として置かれていて、それが試験で問われるという構造までです。
【この答えの出どころ】制度(出題範囲・合格基準)で分かるのは、枠が置かれていることまでです。個別の内容は法令・協会の規則・所属先の規程にあります。
ノルマが不安なら、資格を取るのはやめたほうがよいですか?|判断は2つに分かれる
「資格を取るか」と「どこで働くか」は、別の判断
ノルマの評判を、受験するかどうかの判断材料にする必要はありません。判断の対象が違います。
資格を取ることと、外務員として営業の現場に立つことのあいだには、会社の側の手続きが一段挟まっています。金融商品取引法第64条第1項が登録を受けなければならない者と定めているのは金融商品取引業者等で、同条第2項は、登録を受けた者以外の者に外務員の職務を行わせてはならないとしています。協会も「外務員資格を持っているだけでは、外務員として活動することはできません。」としています。
試験のほうは、受験資格に年齢や学歴の制限がなく、金融業界に所属していない人も受験できます。協会員に所属している役員・従業員の方は、一般の申込みではなく所属先を通じての申込みになります。CBT方式で、土日・祝日・年末年始を除き通年で実施されています。
資格を取った時点で営業の目標が付いてくる、という順序にはなっていません。
評判が効いてくるのは、働く場所を選ぶとき
では、ノルマの心配はいつ使うのか。働く場所を選ぶときです。
目標を置くのは所属先で、その内容は所属先ごとに違います。答えを持っている相手に当たれる段階まで、この心配は保留にできます。
受験を決める段階で見積もれるのは、学習にかかる時間と費用です。フォーサイトが示す目安では、二種が1〜2ヵ月・50〜80時間、一種が1〜3ヵ月・80〜100時間。一般の方が申し込む場合の受験手数料は13,860円(税込)です。
「資格を取るか」は学習の負担で決められます。「どこで働くか」は募集要項と選考の場で決めます。混ぜると、どちらも決まらなくなります。

【この答えの出どころ】制度(金融商品取引法・協会・試験の実施要領)です。目標は所属先が決めます。
働く場所を選ぶ段階では、何を確かめればよいですか?
確かめる相手は所属先。読み方は別の記事にまとめてある
目標の置き方について答えを持っているのは所属先だけなので、確かめる先はそこになります。
募集要項と選考の場では、担当する業務、扱う商品、対象になる顧客層といった条件を確かめられます。目標の単位はこれらに紐づいて決まるため、条件のほうから見当がつきます。
求人票の読み方は証券外務員資格を活かせる仕事と転職先、金融業界が初めての方向けの確認手順は未経験から証券外務員へ転職は可能?、仕事の中身とやりがいの構造は証券外務員の仕事は「きつい」は本当?にまとめてあります。
一般論を集める時間を、応募先一社の条件を読む時間に置き換えるほうが、判断は早く進みます。
【この答えの出どころ】所属先(募集要項・選考の場)です。
この記事のまとめ
よくある質問
資格の側に、目標の設定について定めた記述はありません。日本証券業協会が公表しているのは、試験の出題範囲、資格の種別、外務員登録、更新研修についてで、数値目標を置くかどうかは所属先が決めることです。ただし協会は外務員を「顧客に対して金融商品の販売・勧誘等を行う者」と定義しており、販売・勧誘を行う立場であること自体は定義に書かれています。
協会が示している外務員資格の失効の要件は2つで、そこに成績・目標に関する定めは含まれていません。1つは「外務員資格は、法令違反等による資格の取消し等がない限り、取り消されることはありません。」という記述のとおり法令違反等による取消し、もう1つは更新研修を受講・修了しない場合の停止と取消しです。社内の評価や処遇がどうなるかは、所属先が就業規則と社内規程で定める領域です。
資格を取ることと、外務員として活動することは別の手続きで区切られています。金融商品取引法第64条第1項で登録を受けなければならないのは金融商品取引業者等の側で、協会も「外務員資格を持っているだけでは、外務員として活動することはできません。」としています。試験の受験資格には年齢や学歴の制限がなく、金融業界に所属していない人も受験できます(協会員に所属している役員・従業員の方は所属先を通じての申込みです)。ノルマの評判は「どこで働くか」を選ぶ段階の材料として使うことになります。
協会は「退職した場合や他の協会員へ転職した場合でも資格は有効です。」としています。資格そのものは在籍の状況では動きません。ただし外務員登録は所属先を通じて行われるため、所属先が変われば登録は掛け直しになります。登録と更新研修の関係は外務員資格更新研修の記事で扱っています。

法令・諸規則は暗記量が多く、後回しにされやすい分野です。ただ、二種の14科目のうち4科目がこの分野で、範囲の中で占める割合は小さくありません。ここは条文を覚える作業に見えて、業務で守る枠を先に知る作業でもあります。テキストを読み込む前に問題を一周して、どんな聞き方をされるのかを掴んでから戻ると、記憶の負担がだいぶ軽くなります。