券外務員の仕事は本当に「きつい」のか|働き方の実態とやりがい

証券外務員の仕事を調べると「きつい」という評判に行き当たります。ただ、その一語は労働時間・成果を求められる度合い・覚えることの多さ・対人業務の負荷という別々の側面を指しています。この記事では「きつい」を側面ごとに分け、試験の出題範囲から見える仕事の輪郭と、この仕事で積み上がるものを、出典の確認できる範囲で整理します。

なお、本記事は「証券外務員ナビ」の一部です。試験や資格の基本情報から確認したい方は、まずこちらのページをご覧ください。

もくじ

「きつい」が指しているものを分ける

証券外務員の仕事を調べていくと、どこかで必ず「きつい」という言葉に行き当たります。ただ、その一語が何を指しているのかまで書かれていることは、あまり多くありません。

一語に4つの側面が混ざっている

「きつい」という評判には、少なくとも4つの別々の話が含まれています。働く時間の長さ、成果を求められる度合い、覚えることの多さ、そして人と向き合う仕事であることの負荷です。

この4つは性質がまったく違いますし、どれを重く感じるかも人によって変わります。覚えることが増えるのは苦にならないけれど数字で成果を問われるのは苦手だ、という人もいれば、その逆の人もいます。つまり「きつい」を一つの答えとして受け取ってしまうと、自分に当てはまるかどうかが判断できません。

まずは、自分が気にしているのはどの側面なのかを決めてください。この記事では、この4つを順番に見ていきます。

「きつい」という評判が指しうる4つの側面(労働時間・成果への期待・覚えることの多さ・対人業務の負荷)を並べた図

評判には「いつ・どこの話か」が書かれていない

もう一つの問題は、評判の多くに前提が示されていないことです。ひとくちに証券外務員といっても、所属する会社の規模や担当する業務によって働き方は変わります。いつの時点の話なのかによっても状況は変わります。前提が分からないまま読んだ感想は、判断材料になりません。

そこで本記事では、労働時間や離職率といった数値は扱いません。業界全体の実態として示せる出典が確認できていないからです。裏の取れない数字を並べるよりも、「何が求められる仕事なのか」という中身から見ていくほうが、自分に当てはまるかどうかを考えやすくなります。

何を扱う仕事なのか|3分野14科目が示す輪郭

試験範囲が業務知識の輪郭を示す

証券外務員がどういう知識を使う仕事なのかは、試験の出題範囲からある程度まで見当がつきます。出題範囲は、外務員として必要とされる知識を範囲として定めたものだからです。

二種の出題範囲は、3分野14科目で構成されています。

【法令・諸規則】金融商品取引法及び関係法令/金融商品の勧誘・販売に関係する法律/協会定款・諸規則/取引所定款・諸規則の4科目。
【商品業務】株式業務/債券業務/投資信託及び投資法人に関する業務/付随業務の4科目。
【関連科目】証券市場の基礎知識/株式会社法概論/経済・金融・財政の常識/財務諸表と企業分析/証券税制/セールス業務の6科目です。

ルール、商品、その土台になる知識、そして「セールス業務」。この並びは、仕事の性質をかなり正確に表しています。

証券外務員二種の3分野14科目が仕事のどの側面に対応するかを示した図

ルールの比重が大きい

科目の並びで目を引くのは、法令・諸規則が独立した1分野を占めていることです。金融商品取引法及び関係法令、金融商品の勧誘・販売に関係する法律、協会定款・諸規則、取引所定款・諸規則。扱う商品そのものより先に、守るべきルールが体系立てて置かれています。

これは、この仕事が「自由に売る」仕事ではなく、「決められた枠の中で扱う」仕事だということを示しています。ルールを覚え、守り続けることが業務の一部である。この点は、向き不向きを考えるうえで見落とせません。

資格そのものの位置づけは証券外務員とはで、科目ごとの中身と重点は証券外務員試験の出題科目と配点で解説しています。

覚えることの多さ|知識は更新され続ける

入口で覚える量は、範囲として決まっている

「覚えることが多い」という評判については、入口の量が範囲として公表されている点が手がかりになります。

二種で3分野14科目、一種ではそこに商品業務の「デリバティブ取引」が1科目加わります。学習時間の目安も示されていて、二種が1〜2ヵ月・50〜80時間、一種が1〜3ヵ月・80〜100時間です。前提となる知識や使える時間は人によって違うため、単一の値ではなく幅で捉えてください。

つまり、入口の学習量は「見えない量」ではありません。範囲と目安が公表されている分、見通しは立てやすい部類です。覚えることの多さは事実として存在しますが、それは測れる多さだということです。

学習時間の組み立て方は証券外務員の勉強時間とスケジュールで扱っています。

証券外務員の入口の学習量と、登録後に続く更新研修を左右に並べた図

入ったあとも、知識は更新される

一方で、覚えて終わりではない点は押さえておく必要があります。制度として、外務員登録を受けている人には外務員資格更新研修があるからです。

日本証券業協会は「外務員登録を受けている方は、原則として、外務員の登録を受けた日から5年毎に受講しなければなりません。また、新たに外務員の登録を受けた方及び再び外務員の登録を受けた方は、原則として、180日以内に受講しなければなりません。」としています。

注意

更新研修の対象は、外務員登録を受けている人です。同協会は「現在、協会員に所属していない方は、受講対象者ではありません(外務員資格が取り消されることはありません)。」としています。試験に合格しただけの段階では、対象になりません。

法令や諸規則を扱う仕事である以上、知識が更新されることは制度の側にも織り込まれています。一度覚えれば終わりではなく、更新し続ける仕事です。これを負担と見るか、専門性が積み上がると見るかは人によって分かれるところでしょう。

更新研修の対象者や手続きは外務員資格更新研修とはで詳しく解説しています。

成果を求められる度合いをどう捉えるか

数値目標の水準は、本記事では扱いません

「ノルマがきつい」という評判については、その水準を本記事では扱いません。目標の設定は所属先ごとに決められるもので、業界共通の基準として公開されているものが確認できないためです。

ネット上で見かける具体的な数字は、特定の会社の特定の時期の話である可能性が高く、それを業界の実態として一般化すると判断を誤ります。水準そのものより、「成果が問われる仕事かどうか」で考えるほうが確実です。

仕組みとしては、成果が見えやすい仕事

仕組みの面から見ると、成果が数字で表れやすい仕事です。出題範囲に「セールス業務」が科目として含まれていることからも、顧客に対して金融商品を扱う業務が想定されていることが読み取れます。顧客対応の結果は、数量として表れやすい性質があります。

成果が見えることを、励みと感じる人もいれば、圧力と感じる人もいます。ここは適性の問題であって、良し悪しではありません。「数字で見える仕事が自分に合うか」。この問いに置き換えて考えてみてください。

ノルマの実態については証券外務員の「ノルマ」はどれくらい厳しい?で扱います。

対人業務としての負荷

説明する責任が伴う

4つ目の側面が、人と向き合う仕事であることの負荷です。

出題範囲に「金融商品の勧誘・販売に関係する法律」が科目として含まれていることからも、勧誘・販売の場面がルールで規律されていることが分かります。つまり、扱う商品について適切に説明することが、業務の一部として想定されているということです。

商品の性質や値動きの要因を、相手に応じて説明できる必要があります。株式業務、債券業務、投資信託及び投資法人に関する業務。扱う商品はそれぞれ性質が違います。「売る力」だけでなく「正確に伝える力」が求められる。そう捉えるほうが実態に近いでしょう。

相手の資産に関わるという重さ

もう一つ、この仕事に固有の負荷があります。扱うのが顧客の資産だということです。値動きのある商品を扱う以上、結果は常に良い方向とは限りません。

だからこそ、法令・諸規則が独立した1分野として置かれ、勧誘・販売のルールが定められています。ルールを守ることは、顧客を守ることであり、同時に自分を守ることでもあります。

この重さを引き受けられるかどうかは、労働時間や目標の水準よりも本質的な適性の問題です。「きつい」の中身を分解していくと、最後にはここが残ります。

やりがいはどこにあるのか|何が積み上がる仕事か

知識が資産になる仕事

やりがいを抽象的な言葉で語る前に、「何が積み上がるのか」で考えてみます。

この仕事で積み上がるものは、まず知識です。証券市場の基礎知識、株式会社法概論、経済・金融・財政の常識、財務諸表と企業分析、証券税制。これらは金融商品を扱う場面に限らず、経済の動きを読むときに使える知識です。

しかも、その知識は制度上、更新され続けます。登録を受けている人には5年毎の更新研修があるからです。放置されて古びる知識ではない、というのはこの仕事の性質として大きいところです。学んだことが陳腐化しにくく、積み上がる——これはこの仕事ならではの報いです。

証券外務員の仕事で積み上がるもの(知識と資格)を左右に並べた図

資格は個人に残る

もう一つ積み上がるのが、資格そのものです。

日本証券業協会は「外務員資格は、法令違反等による資格の取消し等がない限り、取り消されることはありません。」「退職した場合や他の協会員へ転職した場合でも資格は有効です。」としています。会社に紐づくのは登録であって、資格は個人に残るということです。

働く場所を変えても、積み上げた資格は持ち越せます。見えやすい報酬とは別に、知識と資格という持ち出せる資産が積み上がる。これがこの仕事のやりがいの中身です。

資格と登録の関係は証券外務員資格に有効期限はある?、その先の広がり方は証券外務員からのキャリアパスで扱っています。

証券外務員講座 伊藤亮太 講師
講師コメント

証券外務員の学習を始めた方から、「範囲が広くて仕事にしていく自信がない」というご相談をいただくことがあります。ただ、テキストで扱う内容は、そのまま現場で使う言葉です。法令のパートを覚えることは、お客様に説明できる根拠を持つことでもあります。試験勉強と仕事の準備が別物ではない、という点はぜひ知っておいてください。合格したあとも知識を更新していける仕組みが制度として用意されていますから、いま全部を完璧にする必要はありません。

証券外務員講座 伊藤亮太 講師

所属先によって働き方は変わる

「証券外務員」は一つの働き方ではない

最後に、評判を読むときの一番の注意点です。

「証券外務員」は資格の名称であって、職種名として一つの働き方を指すものではありません。所属する会社(協会員)の規模、扱う商品、担当する顧客層によって、日々の業務は変わります。同じ資格を持っていても、担当業務が違えば求められることも変わります。ある人の「きつい」が別の人には当てはまらないのは、そのためです。

評判を読むときは、「誰が、どういう立場で言っているのか」を確認してください。

確認すべきなのは、求人ごとの条件

判断の単位は「業界」ではなく「その求人」です。業務内容、働き方、資格の扱い(必須なのか、歓迎なのか、入社後の取得でよいのか)は、募集要項に書かれています。

業界全体の評判で判断するより、具体的な求人の条件を読むほうが、自分に当てはまるかどうかが分かります。一般論はここまでにして、最後は個別の条件で判断してください。

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この記事のまとめ

ここまで見てきたことを、判断に使える形で並べ直します。自分にとって重いのはどの側面だったか、確かめながら読み返してみてください。

「きつい」という評判は、労働時間・成果を求められる度合い・覚えることの多さ・対人業務の負荷という4つの別々の話を含んでいる
評判の多くは「いつ・どこの話か」という前提が示されておらず、そのままでは判断材料にならない
二種の出題範囲は3分野14科目で、法令・諸規則が独立した1分野を占める。ルールを守ることが業務の一部である仕事
入口の学習量は範囲として公表されており、目安は二種が1〜2ヵ月・50〜80時間、一種が1〜3ヵ月・80〜100時間
外務員登録を受けている人には5年毎(新規・再登録は原則180日以内)の外務員資格更新研修がある。試験に合格しただけの人は対象外
成果が数字で表れやすい仕事。水準ではなく「数字で見える仕事が自分に合うか」で考える
積み上がるのは金融・会計・税制の知識と、退職・転職しても有効な資格。どちらも持ち出せる資産になる
働き方は所属先や担当業務で変わるため、最後は業界全体の評判ではなく求人ごとの条件で判断する

この記事のまとめ

この記事のまとめ

よくある質問

証券外務員の仕事は本当に「きつい」のですか?

「きつい」が指しているものは一つではありません。労働時間、成果を求められる度合い、覚えることの多さ、対人業務の負荷という4つの側面が混ざっています。また所属先や担当業務によって働き方は変わります。本記事では労働時間や離職率の数値は扱っていません。自分にとって重い側面がどれかで判断してください。

覚えることはどれくらい多いですか?

入口の範囲は公表されています。二種の出題範囲は3分野14科目(法令・諸規則4科目、商品業務4科目、関連科目6科目)で、学習時間の目安は1〜2ヵ月・50〜80時間です。一種ではここに商品業務の「デリバティブ取引」が1科目加わります(二種の側にも、職務の範囲外である信用取引およびデリバティブ取引の基礎的知識を関連する科目に含めて出題する注記が付いています)。

資格を取ったあとも勉強は続きますか?

制度としては、外務員登録を受けている人に外務員資格更新研修があります。日本証券業協会は「外務員登録を受けている方は、原則として、外務員の登録を受けた日から5年毎に受講しなければなりません。」としています(新たに登録を受けた方・再び登録を受けた方は原則180日以内)。なお、協会員に所属していない方は受講対象者ではありません。

ノルマはどれくらい厳しいですか?

目標の設定は所属先ごとに決められるもので、業界共通の水準として示せる数値を本記事では扱いません。成果が数字で表れやすい仕事なので、「数字で見える仕事が自分に合うか」という問いに置き換えて考えることをおすすめします。

やりがいはどこにありますか?

積み上がるもので考えると分かりやすくなります。一つは知識で、証券市場の基礎知識、株式会社法概論、経済・金融・財政の常識、財務諸表と企業分析、証券税制などが該当します。もう一つは資格そのもので、日本証券業協会は「退職した場合や他の協会員へ転職した場合でも資格は有効です。」としています。

未経験でも務まりますか?

「務まるかどうか」は、労働時間・成果を求められる度合い・覚えることの多さ・対人業務の負荷という4つの側面のうち、自分にとって重いのはどれかで考えると判断しやすくなります。入口の学習量は3分野14科目という範囲として公表されているので、見通しは立てやすい部類です。採用でどう評価されるかは企業ごとの判断であり、公開された共通の基準はありません。詳しくは未経験からの転職を扱うページをご覧ください。

この記事の監修は伊藤 亮太 講師(いとう りょうた)
伊藤亮太講師
仕事に活かすためには丸暗記ではダメ
出身
岐阜県大垣市
趣味
旅行、御朱印巡り
尊敬する人
福沢諭吉
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