証券外務員からのキャリアパス|制度で決まる3つの分かれ道と、所属先ごとに決まること

証券外務員の進路を調べると、職名を並べた一覧に行き当たります。ただ、職名を覚えても、そこへ行くのに何が要るのかは決まりません。進路の変化を、制度に名前が付いているものと、所属先ごとに決まるものに分けると、前者は3つに絞れます。所属先を変える、資格の種類を変える、所属の形を変える。この記事では3つを根拠つきで整理し、残りの変化はどこを見れば確かめられるのかを示します。
なお、本記事は「証券外務員ナビ」の一部です。試験や資格の基本情報から確認したい方は、まずこちらのページをご覧ください。
「キャリアパス5選」の一覧を見ても、自分の進路が決まらないのはなぜか
並んでいるのは職名であって、制度の区分ではない
証券外務員の進路を調べると、職名を並べた一覧に行き当たります。ただ、それを何度読んでも、自分がどこへ進めるのかは決まりません。並んでいるのが職名だからです。
職名は、会社が業務の呼び方として付けているものです。法令や協会の規則に対応する呼び名もあれば、その会社の中でしか通じない呼び名もあります。両方が同じ一覧に並んでいると、制度として決まっていることと、その会社での呼び方の区別が付きません。
たとえばIFAという呼び名の背後には、金融商品取引法が定める金融商品仲介業者という登録の区分があります。一方、社内の担当や役職として使われている呼び名には、法令上の定義が対応していないこともあります。同じ一覧に並んでいても、確かめに行く先はまるで違います。
最初にやることは、職名を覚えることではありません。その変化に制度上の名前が付いているかどうかを見分けることから始まります。
この記事が引き受ける範囲
この記事が引き受けるのは、進路の分け方です。個々の進路の中身は、それぞれの記事で扱っています。
分け方が決まっていないと、どの記事を読めばよいのかも決まりません。逆に言えば、分け方さえ手元にあれば、あとは必要なところだけを読めば足ります。
仕事の中身や何が積み上がるのかは証券外務員の働き方の実態、一種と二種のどちらを取るかは一種と二種の選び方、独立という形についてはIFAという働き方に書いています。ここでは、それらが進路の地図のどこに位置するのかを先に決めておきます。
進路の変化は2種類に分かれる|制度に名前が付いているものと、所属先ごとに決まるもの
制度に名前が付いている変化は3つ
進路の変化のうち、法令や協会の規則に名前が付いているものは3つです。所属先を変えること、資格の種類を変えること、そして所属の形そのものを変えることです。
ここに収まるのは、外務員という立場が資格・登録・所属という要素で成り立っていて、動かせるのがその要素だけだからです。
日本証券業協会は外務員を「協会員(本協会に加入している証券会社や銀行等)に所属している役職員のうち、顧客に対して金融商品の販売・勧誘等を行う者」と説明しています。所属している役職員であること、販売・勧誘を行う者であることが、この立場の条件として書かれています。つまり要素は、資格を持っていること、登録を受けていること、協会員に所属していること。その一つひとつの変化が、そのまま分かれ道になります。

残りは所属先ごとに決まる
それ以外の変化には、制度上の名前がありません。担当する顧客、扱う商品の中での担当、役職、報酬。このあたりがそうです。
これらを決めているのは会社ごとの組織のつくり方と規程で、法令にも協会の規則にも該当する定めが置かれていません。同じ資格を持っていても、会社の規模や扱う商品、担当する顧客層が違えば日々の業務は変わります。資格の名称は、働き方を一つに特定しないということです。
この側の変化は、一般論をいくら調べても答えが出ません。確かめる場所が違うからです。進路を考えるうえで押さえておきたいのは、この一点です。
分かれ道① 所属先を変える|資格は残るが、登録は残らない
登録を受けるのは会社であって、あなたではない
外務員の登録は、あなたが自分で受けるものではありません。所属する会社が受けます。
金融商品取引法第64条第1項が、登録を受けなければならない者を金融商品取引業者等と定めているからです。
同項は「金融商品取引業者等は、勧誘員、販売員、外交員その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、その役員又は使用人のうち、その金融商品取引業者等のために次に掲げる行為を行う者(以下「外務員」という。)の氏名、生年月日その他内閣府令で定める事項につき、内閣府令で定める場所に備える外務員登録原簿(以下「登録原簿」という。)に登録を受けなければならない。」としています。登録原簿に載るのは個人の氏名や生年月日ですが、登録を受けなければならないのは会社の側です。申請先も、同条第3項で内閣総理大臣と定められています。
ですから外務員としての立場は、あなたが持っているものというより、いまの会社があなたについて受けている登録だと考えたほうが実態に合います。
移った先では、登録は掛け直しになる
会社を移ると、移った先の会社があらためて登録を受けることになります。前の会社の登録が付いてくるわけではありません。
同条第2項が「金融商品取引業者等は、前項の規定により当該金融商品取引業者等が登録を受けた者以外の者に外務員の職務…を行わせてはならない。」と定めているからです。当該金融商品取引業者等が登録を受けた者、という限定が置かれています。
一方で、資格そのものは動きません。日本証券業協会は「外務員資格は、法令違反等による資格の取消し等がない限り、取り消されることはありません。」「退職した場合や他の協会員へ転職した場合でも資格は有効です。」としています。ただし同協会は続けて「特別会員一種、特別会員二種及び特別会員四種の資格は、証券会社の外務員資格としては有効ではありません。」とも述べています。銀行等で取得した特別会員の資格は、証券会社の外務員資格としてはそのまま使えないということです。

資格は個人に残り、登録は所属先に紐づいて動く。進路を数える単位が所属先になるのは、この仕組みがあるためです。
この分かれ道で確かめられること・確かめられないこと
ここで確かめられるのは、資格が有効かどうかまでです。採用されるかどうかは、制度の側では決まりません。
登録は所属先が受けるものなので、その前段の採用が済んでいなければ、そもそも登録の話になりません。
資格を持っているだけでは外務員として活動できないことは、協会も「外務員資格を持っているだけでは、外務員として活動することはできません。」と明記しています。
この先は求人ごとの条件の話になります。資格がどう扱われるかの読み方は証券外務員資格を活かせる仕事と求人の読み方、業界の外から入る場合の順序は未経験から証券外務員を目指すにまとめています。
分かれ道② 資格の種類を変える|二種から一種、その先の内部管理責任者
一種は二種の上級資格として位置づけられている
資格の種類を変えるというのは、実際には二種から一種へ上げることを指します。
日本証券業協会が「一種外務員資格は、二種外務員資格の上級資格に位置付けられます」と明示しているためです。
職務の範囲も協会が示しています。二種については「現物株式などの外務員の職務を行うことができますが、信用取引、デリバティブ取引などリスクの高い商品についての外務員の職務を行うことができません」と説明し、一種については「二種外務員資格で行うことのできる外務員の職務に加え、信用取引、デリバティブ取引を含めたすべての有価証券に係る外務員の職務を行うことができます」としています。境目にあるのは信用取引とデリバティブ取引です。
この分かれ道は、扱える商品の範囲を広げるという変化にあたります。どちらを受けるかの決め方と学習量の見当は一種と二種の選び方に載せています。
順序の決まりはない
二種を取ってから一種、という順序は制度上の要件ではありません。
協会の「外務員等資格試験に関する規則」第4条第1号は、一種と二種を同じ号にまとめて要件を定めています。そこに挙げられているのは、不都合行為者として取り扱われていないこと、不正受験等により試験を受けられないこととされていないこと、といった事項で、種別の取得順序は挙げられていません。
受験そのものにも制限はありません。協会は「この試験は、証券業務に従事する方に限らず、金融に関心のある全ての方に受験いただけます。」としています。一般受験の申込窓口であるプロメトリック株式会社の案内でも、年齢等の受験資格の制限は設けられていません。
つまりこの分かれ道だけは、所属先の判断を待たずに自分で動かせます。
同じ「資格を増やす」でも、所属してからでないと動かせないものがある
ただし、資格の分かれ道のすべてを自分の申込みだけで進められるわけではありません。
会員内部管理責任者資格試験は、同じ規則の第4条第2号が、受験できる者を「協会員の役員…、又は協会員が試験を受けさせる必要があると認める者(協会員の役員を除く。)のうち「協会員の外務員の資格、登録等に関する規則」…第4条第1号に規定する一種外務員の資格を有する者」としているためです。
同規則第4条の2は「協会員は、前条の要件を満たしていない者に試験を受けさせてはならない。」とも定めています。銀行等の特別会員には、特別会員内部管理責任者資格試験が別に置かれています。
資格の分かれ道は、一種までが自分の側、その先は所属先を通る側に分かれているわけです。どの資格をどう比べるかは証券外務員の次に狙う資格に整理しています。
分かれ道③ 所属の形を変える|協会員に所属するか、金融商品仲介業者になるか
制度上の名前が付いている独立は金融商品仲介業
3つ目は、所属の形そのものを変えるものです。ここで制度上の名前が付いているのは、金融商品仲介業です。
金融商品取引法第66条が、これを内閣総理大臣の登録を受けて行う業として定めています。
同条は「銀行、協同組織金融機関その他政令で定める金融機関以外の者(第一種金融商品取引業を行う者及び登録金融機関の役員及び使用人を除く。)は、第二十九条の規定にかかわらず、内閣総理大臣の登録を受けて、金融商品仲介業を行うことができる。」としています。括弧の中で除かれているとおり、証券会社や登録金融機関の役員・使用人のままでは行えません。
いわゆるIFAという呼び名は、この登録の区分に対応しています。独立を考えるときに最初に確かめるのは、この登録の話になります。
ここから先は別の記事で
登録の手続き、所属先との契約の形、報酬の考え方は、この記事では扱いません。
確かめる相手が変わるうえ、量も多いためです。
法令上の位置づけ、登録の構造、検討するときに確認する点まではIFAという働き方にまとめてあります。
この記事の側では、それが3つの分かれ道のうちの1つだということをはっきりさせておきます。
富裕層向けの業務、M&Aアドバイザリー、銀行員としての活かし方、不動産投資への応用。こうした呼び方で語られるテーマも、実際に動くのは上の3つの分かれ道のどれかです。所属先が変わるのか、資格の種類が変わるのか、所属の形が変わるのか。この見方で読むと、その職名に近づくために何が要るのかを自分で見当づけられます。
それぞれのテーマは富裕層向けの業務、M&Aアドバイザリー、銀行員としての活かし方、不動産投資への応用で個別に扱っています。
制度に名前が付いていない変化は、所属先の規程と募集要項で決まる
調べても一般的な答えが出ない項目
担当する顧客層、扱う商品の中での担当、役職、報酬。この4つは、調べても一般的な答えが出ません。
法令にも協会の規則にも定めが置かれておらず、会社ごとの規程に委ねられているからです。
検索して出てくる具体的な数字には、どの会社の、いつの、誰についての話なのかが書かれていないことがあります。出どころの分からない数字を業界の姿として受け取ると、判断を誤ります。
この側の項目に時間を使うより、確かめられる側から先に固めたほうが早く進みます。
当て先は2つだけ
確かめる先は2つです。いま所属しているなら所属先の規程、これから移るなら募集要項。
この側の項目を決めているのは会社の規程であって、業界全体で共通して適用される決まりではないからです。
業務内容、働き方、資格の扱いは、募集要項に書かれています。求人票の読み方は証券外務員資格を活かせる仕事と求人の読み方、所属先によって働き方がどう変わるのかは証券外務員の働き方の実態に書いています。
制度の側で確かめられることを先に固め、残りはこの2つの当て先に持っていく。進路の検討は、この順番で進みます。
3つのうち、いま自分の意思だけで動かせるのはどれか
主導権の所在で並べ替える
3つの分かれ道は、誰が決めるのかが違います。この違いで並べ替えると、いま動かせるものが1つに絞れます。
所属先を変えるには採用の側の判断が要ります。所属の形を変えるには、事業者としての登録と契約が要ります。資格の種類を変えることだけが、自分の申込みで完結します。
試験の受験に制限は設けられておらず、取得の順序に関する要件もありません。協会も、証券業務に従事する方に限らず受験できるとしています。いま業界の外にいる段階でも、資格の側は進められるということです。

進路のどれを選ぶにしても、いま動かせるのは資格の側だけだということになります。
資格を動かしても、それだけでは進路は決まらない
とはいえ、資格を上げれば進路が決まるわけではありません。
協会が「外務員資格を持っているだけでは、外務員として活動することはできません。」と明記しているとおり、資格と登録は別のものだからです。
登録を受けている人には、登録を受けた日から5年毎の外務員資格更新研修があります。一方、協会に所属していない人については、協会は「現在、協会員に所属していない方は、受講対象者ではありません(外務員資格が取り消されることはありません)。」としています。制度は、所属している人と資格だけを持っている人を分けて扱っているわけです。
順番としては、動かせる資格を先に動かし、所属の話はそのあとになります。資格と登録の関係は資格の登録と有効期限で詳しく書いています。
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この記事のまとめ
証券外務員からの進路は、職名の一覧ではなく、変化の種類で分けると見通しが立ちます。制度に名前が付いている変化は3つだけで、それぞれ根拠を確かめられます。
よくある質問
制度に名前が付いている変化は3つです。所属先を変えること、資格の種類を変えること、所属の形そのものを変えること。それ以外の変化、たとえば担当する顧客層や役職は、会社ごとの規程で決まるもので、業界共通の答えはありません。職名の一覧ではなく、この分け方で考えると、確かめに行く先が決まります。
資格は有効なままです。日本証券業協会は「退職した場合や他の協会員へ転職した場合でも資格は有効です。」としています。ただし外務員登録のほうは、移った先の会社があらためて受けることになります。また同協会は「特別会員一種、特別会員二種及び特別会員四種の資格は、証券会社の外務員資格としては有効ではありません。」とも述べていますので、銀行等で取得した資格を証券会社で使う場合は注意が必要です。
そうした決まりはありません。協会の「外務員等資格試験に関する規則」第4条第1号は一種と二種を同じ号にまとめて要件を定めており、そこに種別の取得順序は挙げられていません。どちらを受けるかの決め方は一種と二種の選び方で扱っています。
一種までは自分の申込みで進められます。会員内部管理責任者資格試験については、同じ規則の第4条第2号が受験できる者を定めており、所属先を通る形になります。資格の選び方そのものは証券外務員の次に狙う資格に整理しています。
金融商品取引法第66条は、金融商品仲介業を行える者から、第一種金融商品取引業を行う者と登録金融機関の役員及び使用人を除いています。したがって在籍したままでは行えません。検討の手順はIFAという働き方にまとめてあります。
必要ありません。日本証券業協会は「現在、協会員に所属していない方は、受講対象者ではありません(外務員資格が取り消されることはありません)。」としています。外務員資格更新研修の対象は、外務員登録を受けている人です。資格と登録の違いは資格の登録と有効期限で扱っています。

資格は個人に残る、という制度の設計は、学習を始めるかどうかを考えている方に知っておいていただきたい点です。働く場所が変わっても、覚えた内容と取った資格はそのまま持ち越せます。テキストで扱う法令や商品の知識は、勤務先が変わっても言葉としては共通ですから、学習に使った時間が特定の会社の中だけで完結してしまう、ということにはなりません。進路をまだ決めきれていない段階でも、資格の側を先に進めておく意味はここにあります。