銀行員に証券外務員は必要?要否を決めているものと、決まるまでに進められること

「銀行員なら証券外務員は必須」と書かれた記事を読んでも、自分の担当業務で本当に要るのか、いま勉強を始めていいのか、会社の指示を待つべきなのかは決まりません。問いが1つにまとまっているからです。
ここでは、決定権の所在で問いを分けます。要否の判断・受ける試験の種別・申込みの経路・外務員登録は勤務先の側で決まり、種別の検討と学習は自分の側で進められます。根拠は金融商品取引法の条文と日本証券業協会が公表している制度に限りました。勤務先に確認しておくと早い3点と、内示から逆算するときに効いてくる2つの期限まで整理します。
なお、本記事は証券外務員ナビの一部です。仕事の内容やキャリアの全体像から確認したい方は、まずこちらのページをご覧ください。
「銀行員なら必須」と書けない理由|要否を決めているのは勤務先
登録を受けるのは、本人ではなく会社の側
「銀行員なら証券外務員は必須」という言い方は採りません。先に制度の側を確かめると、この資格が誰の判断で必要になるのかが見えてきます。
金融商品取引法第64条第1項が登録を受けなければならない者と定めているのは、金融商品取引業者等です。会社が、自社の役員または使用人のうち条文が列挙する行為を行う者について、氏名や生年月日などの事項を外務員登録原簿に登録してもらう、という手続きになっています。同条第2項は、登録を受けた者以外の者に外務員の職務を行わせてはならないとしています。
つまり登録が必要になるかどうかは、あなたが何を担当するかに対して勤務先が判断します。本人が「必要だと思ったので登録する」という手続きは、制度の側に置かれていません。
「銀行員だから必要」ではなく、「その担当業務に対して勤務先が必要と判断すれば必要になる」。これが制度の順序です。
この記事で断定しないこと
業界の慣行についても断定しません。「銀行では全員が取得している」「入社後に必ず取得させられる」「昇進の要件になっている」。こうした記述を裏付けられる一次情報が見当たらないためです。取得率や社内評価への影響についても同じです。
出どころの分からない一般論を自分の会社の話として受け取ると、判断がずれます。実際にそうしているところもあれば、そうでないところもある、という以上のことは言えません。「必須ではない」という逆向きの断定も同じです。
判断の単位は「銀行員」ではなく「自分の勤務先と担当業務」です。すでに勤務先から取得を求められていて、考えるべきことが種別と期限に移っている方は、証券外務員資格の価値をどこで見るかが近い内容を扱っています。
金融商品取引法の登録に関する条文、日本証券業協会が公表している資格試験の制度、そして外務員試験の出題科目。本文の断定はこの範囲に収めています。

銀行で働く人の場合、受ける試験も申込みの経路も所属先で決まる
受ける試験は、所属先の区分で決まる
「証券外務員の試験」と呼ばれているものは、1つではありません。日本証券業協会の規則が定める外務員等資格試験は6種類あり、そのうち外務員資格の試験は4つです。
4つの分かれ方は、一種・二種という種別と、会員・特別会員という所属先の区分の組み合わせです。このうち特別会員向けの試験は、規則上、特別会員が試験を受けさせる必要があると認めた人が対象とされています。
勤務先が協会のどの区分に当たるかは会社ごとに異なるので、そこは確認事項として後半に置きます。会員と特別会員という区分そのものの中身は正会員と特別会員の違いで、外務員資格そのものの成り立ちは証券外務員という資格の全体像で扱っています。
申込みの経路も、所属で分かれる
種別とは別に、もう1つ所属で決まるものがあります。申込みの経路です。
協会は、外務員資格試験の申込方法を2つに分けて案内しています。協会員の役職員等が受験する場合は所属する会社の人事部等を通じて申し込み、一般の方が受験する場合は委託先であるプロメトリック株式会社へ申し込む、という分け方です。プロメトリックの案内でも、協会員の役員・従業員および金融商品仲介業者の役員・従業員は、所属する協会員を通じて申し込むこととされています。
つまり勤務先が協会員であれば、一種・二種を受ける場合でも、所属先を通じて申し込むよう案内されている側に当たります。「会社に言う前に、自分で申し込んで取っておく」と考えている場合は、先に勤務先に確認しておく必要があります。
受験資格の側に所属の条件が無いことと、自分で申し込めることは別の話です。受験資格に制限が無くても、協会員に所属していれば、申込みは所属先を通じてと案内されています。
費用と結果の受け取り方も、経路によって変わる
経路が違うと、費用の持ち方と結果の届き方も変わります。
一般の方が申し込む場合の窓口はプロメトリック株式会社で、受験手数料は13,860円(税込)です。協会員が申し込む場合は、協会員が所定の方法で協会へ直接申し込み、受験料も協会に直接支払うと規則が定めています。
結果の受け取り方も同じです。一般の方として申し込んだ場合は、試験終了後に、予約時に登録したEメールアドレスへ受験結果通知が送付されます。勤務先を通して受験する場合について、協会は、受験に際しての注意事項や合否結果を所属する会社の人事部等に確認するよう案内しています。

自分で取得した一種・二種の資格が、勤務先での外務員登録でどのように扱われるかは確認できていません。勤務先に申込みや時期を相談するときに、あわせて確認しておく事項になります。
決まるまでの間に、自分で進められること
受験資格の側には、所属や年齢・学歴の条件がない
申込みの経路が所属で決まる一方で、受験資格そのものには条件がほとんどありません。
協会は外務員資格試験について「この試験は、証券業務に従事する方に限らず、金融に関心のある全ての方に受験いただけます。」としています。規則が一種・二種の受験資格として定めているのも、協会が不都合行為者として取り扱っている者に当たらないことと、規則により試験を受けることができないこととされている者でないことの2点だけで、年齢や学歴を条件にする規定はありません。
試験はCBT方式で、土日・祝日・年末年始を除き通年で実施されています。年度別の日程表もないので、「今年の試験に間に合わない」という締切が制度の側にありません。制度が「勤務先の指示を待ちなさい」と言っているわけではない、ということです。
種別の検討と学習は、申込みを待たずに進められる
申込みが所属先を通す形になっても、どちらの種別を目指すかを考えることと、学習を始めることは自分の側に残ります。
二種の出題範囲は3分野14科目で、一種はそこに商品業務のデリバティブ取引が1科目加わった15科目です。同じ科目でも、一種では踏み込んだ内容まで問われます。フォーサイトが示す標準学習期間の目安も、二種が1〜2ヵ月、一種が1〜3ヵ月と差があります(時間数では二種50〜80時間、一種80〜100時間)。
勤務先から種別の指定が出ている場合は、それに従うのが確実です。指定がまだ無い段階でも、学習量の少ない側から積むか、最初から一種を見据えるかの見当はつけておけます。判断の材料は一種と二種の選び方にまとめています。
銀行で扱う商品と、外務員試験の科目はどこで重なるか
商品業務と法令・諸規則は、窓口で名前を見る商品と地続き
学習の中身が日々の業務とどれくらい重なるのかは、科目名を並べると見当がつきます。二種の出題範囲は3分野14科目です。
【法令・諸規則】(4科目):金融商品取引法及び関係法令/金融商品の勧誘・販売に関係する法律/協会定款・諸規則/取引所定款・諸規則
【商品業務】(4科目):株式業務/債券業務/投資信託及び投資法人に関する業務/付随業務
【関連科目】(6科目):証券市場の基礎知識/株式会社法概論/経済・金融・財政の常識/財務諸表と企業分析/証券税制/セールス業務
商品業務に並ぶ株式・債券・投資信託は、金融機関の窓口で名前を目にする商品と同じ語です。法令・諸規則の分野も、勧誘や販売の場面のルールを扱う点で、店頭での説明と語彙が重なります。すでに業務で触れている語がある人ほど、一周目で「知らない言葉」を拾う作業は軽くなります。
出題形式ごとの配点と、分野ごとの学習の当て方は証券外務員の試験科目と出題形式で分解しています。
ただし出題範囲は、業務でできることの範囲ではない
ここで、混ぜてはいけない線があります。試験の出題範囲と、外務員として行える職務の範囲は別のものです。
出題範囲は「何が問われるか」の一覧で、職務の範囲は「登録を受けたあとに何を行えるか」の話です。後者は種別によって異なり、そのうえで実際にどの業務を担当するかは勤務先の割り当てで決まります。科目名にあるから自分がその業務を担当できるようになる、というものではありません。
「勉強して身につく範囲」と「登録して行える範囲」は、分けて考えておきます。
内示や異動から逆算する|効いてくる2つの期限
予約できるのは60日前から5営業日前まで
内示や異動で「この時期までに」と決まったときは、受験日そのものより先に、予約の締切が効いてきます。
日本証券業協会によれば、予約できるのは受験日から起算して60日前から受験日の5営業日前までです。
「その日に受ける」と決めても、5営業日前を過ぎていれば予約できません。カレンダーには受験日と、その5営業日前を並べて置いておきます。CBTで通年受験できることは、直前でも受けられるという意味ではありません。なお、この受付期間は一般の方が申し込む場合のものです。勤務先を通して申し込む場合は社内の手続きが先に入るので、締切は所属先に確認してください。申込みから当日までの流れは証券外務員試験の日程と申込方法で扱っています。
不合格だった場合は、30日の待機期間が入る
逆算に入れておく期間が、これとは別にあります。
受験回数そのものに制限はありませんが、不合格だった場合(欠席の場合は含みません)、当該受験日の翌日から起算して30日を経過する日までは、日本証券業協会主催のすべての試験を受けられません。
期限が決まっている状況では、1回で決める前提の計画は危険です。最初の受験日を期限の1ヵ月以上手前に置いておくと、待機期間を挟んでも2回目が間に合います。
残った週数から、種別と学習量を見直す
逆算の順序は、期限、30日の待機期間、1回目の受験日、予約の締切、そして学習に使える週数です。最後に残った週数が、種別の判断材料になります。
フォーサイトが示す標準学習期間の目安は、二種が1〜2ヵ月、一種が1〜3ヵ月です(時間数では二種50〜80時間、一種80〜100時間)。残った週数がこの目安に届かない場合、勤務先の指定が無ければ二種から積む順序も選べます。指定がある場合は、期間を確保する側で調整します。
週あたりに割り戻す手順は証券外務員の勉強時間と学習スケジュールが詳しく、仕事と並行して進める場合の組み立て方は働きながら学習を回す方法にまとめています。

勤務先に確認しておくと早い3点
確認する順番も、そのまま3つに分かれる
ここまでで、勤務先の側にある事項がはっきりしました。まとめて確認すると早いのは次の3点です。
まず、自分の担当業務、またはこれから担当する業務に外務員登録が要るのか。要るとして、どちらの試験を受けることになるのか。そして、申込みは所属先を通すことになるのか、なるなら費用と時期はどう扱われるのか。
いずれも一般論では答えが出ない代わりに、社内には答えを持っている人がいる種類の質問です。登録が要るかどうかが決まらないと、あとの2つは動きません。だからこの順に聞きます。
順番に確認していけば、前半で「勤務先の側にある」とした事項が、そのまま埋まります。
答えが返ってくるまでの間にできること
確認の答えがすぐに返ってこない場合もあります。そのときも、種別の検討と学習は自分の側に残っています。制度の側に年度の締切が無いので、待っている間に学習を進めても、期限に追われる形にはなりません。
先に触れたとおり、自分で取得した資格が勤務先での登録でどう扱われるかは確認できていません。ここも、費用の扱いとあわせて聞いておく項目に入れておきます。
合格したあとに何が起きるのかを先に知っておきたい方は証券外務員に合格したあとの手続きをご覧ください。
①いまの担当業務、またはこれから担当する業務に外務員登録が要るか
②要るとして、どちらの試験を受けることになるか
③申込みは所属先を通すことになるか。なるなら費用と時期はどう扱われるか
この記事のまとめ
よくある質問
一律に決まっているわけではありません。外務員登録を受けるのは金融商品取引業者等、つまり会社の側で、自社の役員・使用人のうち法が列挙する行為を行う者について登録します(金融商品取引法第64条)。したがって必要になるかどうかは、担当する業務に対して勤務先が判断します。業界全体としてどうなっているかは、一般化できません。
受験資格の側には所属や年齢・学歴の条件がありません。ただし、勤務先が協会員であれば、申込みは所属する会社の人事部等を通じて行う案内になっています。自分だけで先に申し込む前に、勤務先に確認してください。学習を始めることと、どちらの種別を目指すかを考えることは、申込みを待たずに進められます。
窓口・費用の持ち方・結果の受け取り方が変わります。一般の方の窓口はプロメトリック株式会社で、受験手数料は13,860円(税込)、結果は登録したEメールアドレスへ受験結果通知が届きます。協会員が申し込む場合は協会員が協会へ直接申し込み、受験料も協会に直接支払い、合否結果は所属する会社の人事部等に確認する形になります。なお、受ける試験の種別(会員側の一種・二種か、特別会員向けか)は、これとは別に所属先の区分で決まります。区分の詳細は正会員と特別会員の違いをご覧ください。
日本証券業協会は、特別会員一種・特別会員二種・特別会員四種の資格について、証券会社の外務員資格としては有効ではないとしています。業態をまたぐ転職では資格の種別が問題になるため、証券外務員資格を活かせる仕事と転職先で、求人票の読み方とあわせて整理しています。
費用の扱いは勤務先によって異なります。制度の側で分かっているのは、協会員が申し込む場合は協会員が協会へ直接申し込み、受験料も協会に直接支払うこと、一般の方が申し込む場合の受験手数料は13,860円(税込)であることです。勤務先を通して申し込むことになるかどうかは、社内で確認してください。

窓口や渉外で毎日その商品を扱っていると、科目名を見ただけで「ここは大丈夫」と思いがちです。ただ、試験は同じ商品を制度やルールの側から問い直してきます。見慣れた語が並ぶ科目ほど、先にひと通り問題を解いて、答えられる形になっているかを確かめてから読み込みに入ると、学習の時間配分を間違えずに済みます。