実務家密着取材

直撃インタビュー
行政書士 堀越総明さん

行政書士   堀越総明 さん

1968年東京都生まれ。1992年に大学卒業後、多くのグループ会社を率いる大手企業に入社。商品開発、営業企画等に携わった後、退職。2006年にアート・マネジメント・カンパニーの「株式会社ボングゥー」を設立。若手アーティストとのネットワークを構築し、地方公共団体や大手企業のキャラクター・アニメーションを制作。その一方、大手百貨店主催による現代アートの展覧会のプロデュース等も行う。「株式会社ボングゥー」において、多くの著作物取り扱いの経験から、2011年「ボングゥー著作権法務行政書士事務所」を設立。現在、著作物を利用する業界において、企業やアーティスト・クリエイターを対象に、法務コンサルタントを行う。

堀越総明さんが所長を務める「ボングゥー著作権法務行政書士事務所」のホームページは下記のとおりです。
URL : https://www.bon-gout-pat.jp/


クリエイティブな企画提案からリーガルサービスまで
アートを軸に“著作権”を極める行政書士

試験に合格して資格を取得した後、実際にどのような仕事を行うのか。フォーサイトでは活躍中の実務家を直撃し、その実像に迫ります。今回は、行政書士の堀越総明さんからお話を伺いました。

どのようなお仕事をされているのでしょうか


「ボングゥー著作権法務行政書士事務所」では、美術、文芸、音楽、映画、芸能、漫画やアニメ、ゲーム、WEB、広告などの分野において、著作物を利用する企業やアーティスト・クリエイターを対象にした法務コンサルティングサービスを行っています。例えば、契約書など各種書類の作成、文化庁への著作権登録申請、アーティストやクリエイターによる会社設立サポートや、商取引上の一般的な法務相談などですね。
 私は、「ボングゥー著作権法務行政書士事務所」の所長である一方、アート・マネジメント・カンパニー「株式会社ボングゥー」の代表取締役でもあります。「株式会社ボングゥー」では、若手アーティストとのネットワークを活かし、アートイベントの企画・運営、オリジナルアニメーション・キャラクター制作、アート作品の販売等を行っています。
 2011年に立ち上げた「ボングゥー著作権法務行政事務所」では、株式会社ボングゥーでのこれまでの経験、ノウハウを有効に活用したリーガルサービスをご提供しています。


東京芸術センター10階にある「ボングゥー」のオフィス

東京芸術センター10階にある「ボングゥー」のオフィス


行政書士になった理由は何ですか?これまでの歩みを教えてください


実は、父も母も法律家という法曹一家で生まれ育ったのですが、大学生の頃は、法律に対する興味はあまりなく、起業にもさほど関心がありませんでしたね。卒業後は一般企業に入社し、数年後にはやりがいのある仕事を任されて、周囲から高く評価されるようにもなりました。
 しかし、30代半ばを迎えて、「このまま定年まで、この会社に居続けていいのだろうか?」という疑問が湧いてきました。そんな折に、学生時代の友人から「現代アートの新しいマーケットを作るべく、一緒に会社を興そう」と誘われました。会社にいながら、大企業で働いていても決して安定は得られなくなってきているという時代の激変を肌で感じていたので、辞めることに躊躇いや迷いはありませんでした。
 2006年に私が代表取締役となり、「若手アーティストの育成」を目的とするアート・マネジメントカンパニー「株式会社ボングゥー」を設立しました。商品が著作物ですので、当然、契約書などの書類が必要になります。独学で、試行錯誤しながら進めていたところ、“著作物”に特化した専門家が少ないことに気付きました。そこで、「“著作物”に特化したリーガルビジネスを展開してみよう!」と思い立ちました。
 アートイベントの企画・運営、オリジナルアニメーション・キャラクター制作の他にも、事業の柱が欲しかったというのも理由のひとつです。「ボングゥー」の仕事とも連動するので、「資格を取ったらすぐに仕事にしよう」と決意し、行政書士の資格を取りました。


2度目のチャレンジで合格

2度目のチャレンジで合格


お仕事の魅力、やりがい、嬉しかったことは何でしょうか?


目の前にいるお客様から直接、感謝やお褒めの言葉をいただくと、本当に嬉しくなりますね。行政書士の仕事では、お客様に対し、的確な契約書を作成し、適切な回答をすると、すぐに感謝していただけるところも魅力のひとつです。ところが、「ボングゥー」のアート関連の仕事では、評価されるまでに時間がかかることが多いです。
 実際のケースですが、足立区の文化芸術振興公式 キャラクター<アダチン>は、2007年12月に公開し、その翌年にテーマ音楽を発表し、YouTubeにアニメーション付きでアップしました。その後、2009年1月に新聞やテレビ等のメディアで多数取り上げられ、現在YouTubeでシリーズ累計再生回数60万回の大ヒットとなりました。想定外の反響を受け、それまでの努力が一気に報われた感じがしましたが、評価されるまでの日々は結構つらい思いをしましたね。
 どちらの仕事も私にとって魅力的ですが、使っている脳の場所が違いますし、やりがいを感じるポイントも異なりますね。


足立区の文化芸術振興公式 キャラクター<アダチン>

足立区の文化芸術振興公式 キャラクター<アダチン>


お仕事の際に気をつけていることとは何でしょうか?


行政書士の仕事とアート主体の「ボングゥー」、それぞれに共通して心がけているのは、ひとつひとつの仕事を丁寧にきっちりとこなすことです。どんなことでも手を抜かず、お客様にご満足いただけるよう最高レベルのサービスを提供したいと思っています。
 行政書士としては、更なるレベルの向上を図りつつ、“著作権の専門家”としてのブランディングを考えています。これまでにクリエイティブ業界で得たノウハウを活かしながら、より高品質のサービスをご提供するよう心掛けています。


<アダチン>のアニメーションは、YouTubeでシリーズ累計再生回数60万回の大ヒットに

<アダチン>のアニメーションは、YouTubeでシリーズ累計再生回数60万回の大ヒットに


今後の予定、夢を教えてください


一般にはあまりよく知られていないことですが、文化庁への著作権登録申請業務は、行政書士の専管業務です。私は今年(2012年)5月より、ニュースサイトで“著作権”に関するコラムをスタートし、今後はセミナーを計画中ですが、より多くの方に“著作権”について、正しく理解していただけるよう、啓蒙活動していきます。そして、ゆくゆくは著作権に関するご相談は、弁護士・弁理士ではなく、行政書士に、というのを浸透させたいと考えています。
 今後も、多くの方に、心の豊かさを感じていただけるような「アートのある暮らし」を提唱・演出することで、若手アーティストの活躍の場を創出し、彼らが将来に向けて羽ばたく為の支援をしたい。そして、より多くの方に“著作権”という大事な権利に対する理解を深めていただける活動を続けていきたいと思います。



自分にとって、必要のない資格を取ることはありません。「資格を取得してから何をしようか考える」のではなく、大事なことは「受かった後に何をしたいのか」。数多い行政書士の中で、自分の専門分野を持って差別化できなければ、“その他大勢”になってしまいます。自身の専門分野の検討を、受験勉強中から「もう1科目の試験科目」という気持ちで取り組めば、合格後、スムーズに仕事へ結びつきやすいと思います。


行政書士   堀越総明 さんの、ある1日


ある日のスケジュール
7:00 起床 朝食
9:00 出勤 メールチェック
10:00 社内 企画書の作成等、事務作業
12:00 昼食  
13:00 外出 取引先との打ち合わせ
15:00 外出 アーティストとの打ち合わせ
17:00 帰社 メールチェック、契約書の作成等
19:00 社内 電話ミーティング
21:00 退社 帰宅後、夕食
24:00 就寝