勉強はまず全体像を掴んでから細部へ進む

闇雲な勉強は時間の無駄

まったく新しい分野を勉強するときには、効率のよいやり方があります。
それは、最初に簡単な全体像をつかんでから、徐々に細部を理解していくものです。
全体像をつかまないまま、闇雲に難解なテキストや問題集に取り組んだところで、勉強の効果は薄く、時間の無駄になります。

全体像をつかむために、効果的なのはティーンエイジャー向けの薄い本です。
情報が過多になっている現代、普段、自分が従事している分野以外には、どうしてもうとくなります。法学や経済学の博士号を持つ大学教授だって、医学や音楽の分野では小学生並みの理解しか持っていないことがあります。

新聞やテレビで報道される程度の情報であれば一般教養として誰でも持っているでしょうが、資格試験で問われるのは、より専門的な知識です。知らないことは、謙虚に一から学ぶのがいちばんです。

たとえば、憲法と法律の違いについて、あなたはどの程度の知識を持っているでしょうか?
漠然と、憲法は法律の上位概念であると考えている人が多いのではないでしょうか。
そして、「違法(法律違反)」であると言うよりも、「憲法違反」であると言ったほうが、より強い言い方になると感じる人もいることでしょう。

実は、憲法と法律とはまったく違うものです。
憲法とは、国家権力が個人を抑圧しないようにするための取り決めです。ですから、憲法を遵守する義務があるのは国家権力だけですし、違反できるのも国家権力だけです。

法律違反で罰せられる

あなたが、所属する会社の悪口をブログに書いて、就業規則違反で罰を受けることになったとしても「言論の自由の侵害で、憲法違反だ」と会社を訴えることはできません。会社は国家権力ではないし、法律にのっとっている限り、就業規則も有効だからです。

しかし、政権に対する批判であれば、違法行為をしていない限り、どんなことを書いても罰されることはないと考えられます。国家権力は憲法によって縛られていて、個人の言論の自由を守らねばならないからです。

民間企業や個人が罰されるのは、法律に違反したときだけです。
法律は憲法の趣旨にのっとって作られているので、法律も憲法も方向性は同じなのですが、適用の手続きはまったく異なります。

このことは、あまりにも基本的な知識であるため、あらためて説明されることは多くありません。しかし、この基本前提を知っているかいないかで、憲法や法律の細かい勉強をしたときに、理解の進み度合いが大きく違ってきます。

もう一つ例をあげましょう。
裁判には民事と刑事の二種類があることは常識ですが、一般の人はその区別もあやふやです。裁判で訴えられたなどと聞くと、すぐに警察などの国家権力が動いているかのように勘違いします。
まず、裁判には民事と刑事の二種類があって、それがどのように違うかを分かっていなければ、どんなに事例や判決を見ても、理解がちっとも進みません。

ですから、資格試験の勉強を独学で始めようという方は、試験の参考書や問題集を開く前に、まず中学生や高校生向けの一般書を手に取って、全体像をつかむところから始めてみるのも一つの手です。
たいていの資格試験の参考書は、読者に一定の知識があることを前提にしているので、始めて勉強する人には難しすぎるのです。

効率の良い勉強方法を探る

通学講座や通信講座を受講する場合、良質な講座であれば、生徒のレベルを考慮して、最初のテキストはごく薄く、簡単に概略をつかめるようなものを用意するはずです。
もしくは、最初の授業や、DVDなどの映像教材で、試験範囲の全体像を簡単に説明してくれるかもしれません。

資格試験の勉強に限った話ではありませんが、勉強とは、わからなくなったら前に戻っておさらいすることが基本です。
言い古された言葉ですが「わからないことは恥ではなく、わかろうとしないことが恥」なのです。わからなければ、一つ前に戻って、俯瞰的な視点で全体を眺めてみましょう。