就職や転職を考え調べたことがある方はご存じかもしれませんが、不動産業界は求人が多い業界になります。これは不動産業界といっても業種が多岐にわたるためであり、業種ごとに求められるスキルや資格も違うことが理由でしょう。この記事では不動産業界への転職に関して解説していきましょう。
目次
業種ごとに主な業務を確認
不動産業界には様々な業種があります。単純に考えても、土地を用意し、そこに建物を建てる計画を立て、建設をし、完成した物件を売買・賃貸し、その物件を管理していく必要があり、それぞれの段階でそれぞれの業種が活動しています。
業種によって求められる人材や、行う業務も変わってきますので、まずはそんな不動産業界内の様々な業種について簡単に説明していきましょう。
不動産開発業
不動産開発業の主な仕事は、どのような建物を建てるかの企画開発をすることです。仮に空き地が一つあったとしましょう。この土地にどのような建物を建てるべきかを考えるのが仕事です。
周辺に住宅が多く、商業施設が少ないのであれば商業施設の建設がベストですし、反対であればマンションなどの住宅を建てるのがベストでしょう。同じマンションを建てるにも、ファミリー向けの販売用の物件を建てるのか、単身者向けの賃貸用の物件を建てるのかで、マンションの建設計画は変わってきます。
その土地の立地や周辺環境、交通面の利便性や土地の持ち主の希望も加味して、もっとも資産価値が高くなるであろう建物を建てる計画を立てるのが不動産開発業の仕事です。
さらに発展すれば、自分たちで土地を取得し、その場所に大きな街を作るような都市開発や、周辺の観光資源を生かしたリゾート開発、商業施設開発など、大掛かりな仕事を手掛けることが多いのも特徴のひとつです。
不動産流通業
不動産流通業の仕事は、土地や完成した物件を売買する、賃貸する、もしくは売買・賃貸の仲介をすることで、不動産を流通させることになります。
不動産流通業の仕事は、大きく2つに分類できます。自社で土地や建物を所有し、販売・賃貸を行う業種と、自社では不動産は持たずに、不動産を持つ人同士を結び付けて、その仲介を行う業種です。後者をわかりやすくいってしまえば街の不動産屋さんということになります。
どちらの業種も同じように不動産を流通させて収益を上げる仕事ですが、自社で不動産を所有する業種は一度の契約で大きな金額が動くことが特徴です。自社で不動産を持たない仲介業は、収益が仲介手数料となりますので、一度の契約での収益は大きくなく、その代わり数多く契約を成立させなければいけないのが特徴といえるでしょう。
不動産管理業
不動産物件は建てて販売したらそれで終わりではありません。その建物のオーナーにとって建物は大事な資産であり、この資産の価値を落とすことなく維持管理していくのが不動産管理業の主な仕事となります。
不動産管理業の仕事は大きく分けて2つ。1つは任された不動産物件にテナントや借主である住居人を集め、家賃徴収や入居・退去の処理を行うこと。もう1つは建物のメンテナンスなど、維持管理の計画を立て実行する業務です。
多くの場合、物件のオーナーと管理業務の委託契約を結び、入居者の募集から建物の維持管理までを一貫で行います。
不動産投資業
不動産業界の業種の中でもやや特殊な部類に入るのが不動産投資業です。土地や建物などの不動産を、働く場所や暮らす場所ではなく、投資商品としてとらえ、不動産を運用することで収益を上げる、もしくは不動産オーナーが収益を上げるための適切なアドバイスを送るのが主な業務内容になります。
投資商品としての不動産は、一般的に投資の対象となるFXや株、為替などと比較すると、ローリスク・ミドルリターンの商品と言われ、一発大儲けできるケースは稀なものの、安定した収益を上げる商品として注目されています。
今後値上がりが予想される土地を購入したり、購入した土地に建物を建ててたりと、不動産の資産価値を高めて売却することで売却益を収益とすることが中心になります。
不動産業界で求められる能力
不動産業界にあるいろいろな業種を確認してきましたが、どの業種でも共通して求められるのが営業力です。そして転職サイトなどで、不動産業界の求人でもっとも多いのも営業職の募集です。
不動産業界の営業といっていろいろなケースがあり、業種によって営業相手が変わることもありますので、各業種の営業職で、どのような能力が求められるのかを確認しておきましょう。
不動産業界の営業は取り扱い単価が大きい
まず大前提として意識しておきたいのは、取扱商品の単価の高さです。ほかの業界と比較しても、ひとつひとつの契約単価が大きいため、それなりの営業スキルや不動産に関する知識(商品知識)が求められます。
また、単価が高い商品を取り扱いますので、ひとつの契約を成約させるのに時間がかかることが多く、それだけ根気の必要な仕事と考えていいでしょう。
企業相手の営業は継続性が大事
不動産営業で特徴的なのが、営業相手によって営業の方向性が変わるということです。特に法人を相手にするような営業の場合、大事にしたいのが継続性です。
企業相手の営業は、一度成功すると次の機会にもまた業務依頼が来ることが多く、それだけ継続性が大事になります。ひとつひとつの仕事は単価も高く、多くの条件が課せられるケースもあり、成約させるだけでも難しい案件が多いものの、それだけやりがいがある仕事といえるかもしれません。
個人相手の営業は数が大事
個人が不動産業界と関係する機会はそう多くはありません。一人暮らしのために家を借りる、マイホームを購入するなど、人生においても数回という方がほとんどでしょう。
不動産業界の営業サイドから見ると、対個人の営業は継続性はあまりないということになり、その分数をこなすことが求められます。マイホームの購入などは個人にとってはもっとも高価な買い物です。それだけにひとつひとつの案件には時間がかかりますので、複数の案件を同時にこなすような器用さが求められます。
不動産業界への転職で有利になる資格
不動産業界には、仕事をするうえで有利になる資格が多く存在します。不動産の取引には、不動産に関する専門知識はもちろん、金融関係の知識や税金に関する知識、法律に関する知識など、多くの知識が求められます。
転職をすることを想定すると、仕事内容に有利な資格を持つことで、よりよい条件での転職が叶うことがあります。どの仕事にどのような資格が適しているか、国家資格を中心に解説していきましょう。
不動産取引の現場で活躍する資格
不動産業界において、もっとも多い業務といってもいいのが不動産取引でしょう。開発業は開発のための土地を購入することがありますし、不動産流通業はほとんどの業務に売買契約・賃貸契約といった不動産取引がかかわります。
こうした不動産取引において活躍する資格の代表が宅地建物取引士、いわゆる宅建士です。不動産取引の現場において必須となるのが重要事項説明です。一人暮らしなど、賃貸契約を結んだことがある方であればご存じかと思いますが、契約の際書面ではなく口頭で説明し、それを相手に理解してもら和なければいけないのが重要事項説明です。
不動産取引において、この重要事項説明を行えるのは宅建士の有資格者のみです。特に業務のほとんどが不動産取引となる流通業では求められることが多い資格となります。
もうひとつ不動産取引の現場で有用とされる資格が司法書士です。不動産取引、特に売買契約の際は、不動産の登記情報を変更する必要があります。不動産の登記は基本的に当事者が行う必要があり、売買契約の場合、売主、買主がそろって申請する必要があります。
しかし、双方がそろって申請できるケースは稀なうえに、用意すべき書類も多く、個人で行うにはかなり難しいのが不動産登記です。そして数ある資格の中で、この不動産登記の代行ができるのは司法書士のみとなっています。
司法書士の資格を持つと独立開業というイメージがあるかもしれませんが、何の経験も人脈もなく開業しても、その後の営業が難しくなります。司法書士の資格を取得して、経験や人脈作りのために企業内資格者として働く人も多く、このような方の転職先として不動産業界はおすすめの業界のひとつといえるでしょう。
不動産の取得・売却で活躍する資格
不動産の取得や売却が多いのは、不動産開発業、不動産売買業、そして不動産投資業です。土地や建物を購入する際、当然ながら不動産取引ということになりますので、宅建士や司法書士も活躍する資格になりますが、同様に重要な資格があります。
それが不動産の価値を正確に鑑定できる不動産鑑定士です。不動産鑑定士とは国家資格であり、その土地の価値について正確に鑑定することが認められています。不動産売買において重要なのが、正当な価格で取引ができるかどうかです。特に不動産を投資商品として考える投資業においては重要な資格といえるでしょう。
不動産の管理で活躍する資格
不動産管理には専門の資格が存在します。建物の管理業務委託の契約を結ぶ際、重要事項説明を行えるのが管理業務主任者です。管理業務主任者は、不動産管理業を営む企業では、一定数確保する必要がありますので、資格があるだけで転職には大きく有利になります。
建物の所有者が積み立てる修繕金を利用し、建物を維持管理する計画を作成し、実行するのが管理業務主任者の仕事です。この管理業務主任者と対をなすように、マンションの管理組合に対し適切なアドバイスを行うのがマンション管理士という資格です。
マンション管理士の資格も、所有しているだけで転職の際非常に有利になる資格といえるでしょう。
不動産投資で活躍する資格
不動産投資に関しては、不動産を投資商品と見做します。そのため重宝されるのがファイナンシャルプランナーなど、資産運用全般に知識を持つ資格です。また資産運用という点では、税制のスペシャリストである税理士なども活躍の場があるでしょう。
また、上でも紹介した通り不動産鑑定士も求められることが多い資格の一つとなります。
不動産業界への転職はおすすめ?
不動産業界全体で見ると、転職の求人は多いので転職にはおすすめの業界と考えていいでしょう。中でも営業職は多くの求人があり、しかも高収入が目指せる業種です。不動産業界の営業職では、基本給+歩合給となっていることが多く、成績が良ければそれだけ収入も増えることが多い業界です。
ただし、不動産業界の営業は、ほかの業界以上に専門知識や根気が必要な仕事になります。その中で結果を残すには、かなり頑張る必要もありますので覚えておきましょう。
根気ややる気以外で収入を上げる方法としては、やはり資格の取得が近道です。宅建士や管理業務主任者、ファイナンシャルプランナーに不動産鑑定士と、各業種で活躍できる資格がありますので、ご自身が目指す業界で必要な資格を探し、身に着けるのも転職ではおすすめということになります。