不動産業界で重宝される!独立ができる資格の開業手順と初期資金

不動産取引や登記においては、多くの有資格者が活躍するケースがあります。不動産仲介業には必須の宅建士はもちろんですが、不動産登記を代行できる唯一の資格司法書士、不動産取引における契約書の作成が可能な行政書士など、一見不動産取引とはあまり縁がないようなイメージの資格でも、不動産取引の現場に不可欠な資格もあります。今回はこうした資格を持つ方が、個人開業をする際の手順と初期投資金についてまとめていきます。

宅地建物取引業(宅建士)

宅地建物取引業とは、土地や建物などの不動産物件の売買や賃貸を仲介する業種となり、簡単に言ってしまえば街の不動産屋ということになります。この宅地建物取引業を開業する際は、従業員の中に一定割合で宅地建物取引士の資格を持っている従業員が必要となります。

開業までの流れ

宅地建物取引業を開業するには、まず事務所を開設する必要があります。会社の登記においても、宅地建物取引業免許の申請においても、事務所の所在地が必要となるため、なにより最初に行うのが事務所の開設となります。

事務所の開設ができたら、先に法人として会社登記を行います。会社登記が完了したら、宅地建物取引業免許の申請です。この免許がないと業務を開始できませんので、ここまでは速やかに進めることができるように準備しておきましょう。

免許の申請先は、新規開業で事務所が1か所の場合は都道府県知事に申請します。業務が順調に成長し、複数の都道府県にまたがって複数の事務所を開設する場合は、国土交通大臣に申請を行います。いずれにせよ申請する窓口は都道府県庁の担当窓口となります。

免許申請の審査通過後、営業保証金として法務局に1,000万円を供託すると免許が発行され、営業が行えるという手順になります。

宅手建物取引業を開業する際、営業保証金1,000万円を用意するのが大きな壁となりますが、この保証金の供託を免除される方法があります。その方法が各都道府県にある宅建協会に加盟することです。では続いてこの宅建協会に関して解説していきましょう。

宅建協会とは?

宅建協会は核都道府県に存在し、その都道府県内にある宅地建物取引業者が集まる協会となります。この協会に加盟するメリットは大きく、まずは営業保証金の免除が挙げられます。

ほかにも業務を行うのに非常に心強いのが、日本国内最大の不動産情報を取り扱うレインズを利用できるのが特徴です。さらに最新の法改正情報を知れたり、地域の同業他社と情報交換を行えたりと、宅地建物取引業の業務を行う上で欠かせない協会といえるでしょう。

ちなみに宅建協会に加入すると、全国宅地建物取引業保証協会にも同時に加入することになり、ここで保証金の免除という特例を受けることになります。とはいえ保証金はまったくゼロになるわけではなく、保証金分担金として60万円を納付する必要があります。

初期投資金は?

宅建協会への加入で、営業保証金の1,000万円を免除されたとしてもある程度の初期費用は必要になります。その初期費用において重要になるのが、どこに事務所を構えるかということです。事務所の賃料や電気代などは固定費であり、収入があってもなくても必要となる経費です。

事務所に関しては、やはり人が集まるところに構えるのがベストです。複数の路線が通る駅の近く、しかもビルの上層階ではなく1階の路面店であるほうが、多くのお客さんに来てもらえる可能性は高まります。

しかし、こういった立地の物件は当然ながら賃料が高くなります。どの地域のどのような立地で出店するかは、開業において非常に大きなポイントといえるでしょう。

話が少し逸れましたが、初期投資金としても事務所の賃料は大きなウエイトを占めます。その理由は、事務所を借りてから免許を申請して営業許可が下りるまで1.5~2ヶ月ほどかかるからです。

つまり事務所を借りて最初の2か月間は、無収入ながら事務所の賃料が必要になるということになります。ほかにも事務所内で使用するオフィス機器のリース代も必要となります。

はっきりしている投資金としては、免許の申請に約3.5万円、保証金分担金60万円ですが、ほかに最低でも3ヶ月分の固定費が必要であり、従業員を雇う場合はその給料も用意する必要があります。

事務所の賃料や従業員数次第ではありますが、仮に事務所の賃料が30万円、従業員が1人30万円で5名雇うとしても1,000万円は用意しておきたいところです。

司法書士事務所

不動産売買取引において、不動産登記の代行ができるのは司法書士の資格を持つ人だけとなります。そう考えると不動産売買の現場には、必ず必要といってもいい司法書士の開業についてまとめていきましょう。

開業までの流れ

司法書士の開業には、まず事務所の設置が最優先となります。事務所を用意したら、続いて各都道府県の司法書士会に加盟登録をし、事務所所在地の税務署に開業届を出せば開業可能です。

宅地建物取引業と比較すると、その手順は比較的簡略化されており、また1人でも開業することができるので、開業の準備自体はさほど手間はかからないといえるでしょう。

司法書士会とは?

司法書士として独立開業するには、司法書士会への加入が必須条件となっています。司法書士会は各都道府県にあり、事務所の所在地息の司法書士会に加入することになります。

ちなみに司法書士の資格を持ちながら、企業に勤めている企業内司法書士は司法書士会に加入する必要はありません。あくまでも独立開業をする司法書士のための集まりということになります。

司法書士会に加入すると、その司法書士会のHPに名前が登録されます。司法書士会は無料相談なども請け負っており、司法書士会に登録することで顧客を紹介してもらえることもあります。また、司法書士会で行う研修会や勉強会もあり、ほかの司法書士と交流したり、スキルを向上したりを大きなメリットがあります。

初期投資金は?

司法書士として開業する初期費用はさほど多くは必要ありません。司法書士会への加入に必要な初期費用が5~10万円(都道府県によって異なる)、毎月の会費が2~3万円(都道府県によって異なる)必要になります。

ほかには事務所の賃料やオフィス機器の費用となりますが、司法書士事務所の場合、さほど立地にこだわらなくてもいいというのがポイントです。宅地建物取引業のように、飛び込みで来るお客さんが多い業種は、立地条件にこだわる必要がありますが、どちらsかといえば先にアポを取ったお客さんが中心の司法書士事務所は、路面店にこだわる必要もありませんし、極端に駅に近い必要はありません。

司法書士事務所の場合、事務所の賃料以上にこだわりたいのがHPの作成です。多くの顧客はインターネットで司法書士を調べ、その事務所に連絡することが多いため、HPにはこだわりましょう。

司法書士は個人で開業するケースが多く、事務所の立地にもさほどこだわる必要がないため、初期投資金もある程度抑えることができます。事務所の賃料を10万円として考えると、200万円ほど用意すれば当面は営業できるでしょう。

行政書士事務所

不動産取引をはじめ、さまざまな契約において、その書類作成を行うことができるのが行政書士です。個人として開業すれば、不動産取引以外にも業務は多数ありますので、営業さえうまくできれば、業務自体は多いのが魅力の資格です。

開業までの流れ

行政書士事務所の開業も、基本的には司法書士と同様の流れになります。まずは事務所を開設し、行政書士会に登録を行います。登録が完了したら所轄の税務署に開業届を提出して開業します。

行政書士会への登録

行政書士会は各都道府県にあり、司法書士会のように、開業においては登録が必須となっています。行政書士会への登録は、基本的に郵送などではなく、直接窓口に行く必要があります。

さらに場合によっては事務所内部への調査が行われることもあり、申請の前にきっちりと事務所を営業できる形にしておく必要があります。行政書士会への登録が完了したら、行政書士会の名簿に登録される形になります。

初期投資金は?

行政書士としての開業は、司法書士事務所と同じようなイメージをもつといいでしょう。事務所の立地には強くこだわる必要はありません。ただし、来客の多い業種になりますので、それなりの応接室のような部屋があるといいでしょう。

事務所以上にHPにこだわりたいのも司法書士と同様です。行政書士もネットで検索する顧客が多い業種ですので、HPはきっちり作りこみましょう。

初期投資金は、事務所の家賃次第ですが、やはり200万円程度を想定しておくと、ある程度業務を続けられるかと思います。

開業はどのタイミングが最適?

宅建士、司法書士、行政書士の資格を取得したら、どのタイミングで開業するのがいいでしょう?資格取得直後がいいのか、ある程度の下積み機関が必要なのかについてまとめていきます。

資格取得後即開業は危険

資格を取ったからといって、すぐに開業するのは基本的には危険といっていいでしょう。どの業種で開業しても、まずは顧客を確保するのが重要になります。しかし資格を取得した直後では、顧客を確保するのは難しく、業務を軌道に乗せるにはかなり苦労するでしょう。

例外的に資格の取得直後の開業が成功するケースとしては、資格取得前から不動産業界などで働き、しっかりと経験を積み、人脈を作っていた場合でしょう。

企業内資格者として働くメリット

資格を取得し、企業内資格者として働くメリットはいくつか考えられます。まずはシンプルに資格を持つことで収入が高くなる可能性があるということです。宅建士、司法書士、行政書士ともに、資格を持っていることで給料査定が上がるケースがあります。

続いては不動産取引などの現場をより多く経験できることです。不動産取引は大きな金額が動く取引が多く、想像をしていないような部分でトラブルが発生することがあります。こうしたケースを多く経験することで、独立したときに役立つことは多いかと思います。

そして何より重要なのが人脈づくりです。個人開業最大の問題点は顧客を集める営業力です。そのためにもまずは企業内資格者として多くの仕事に携わり、多くの人脈を築きましょう。独立開業した時に、顧客としてあなたを支えてくれる存在になるかもしれません。

開業は経営に自信がついてからがおすすめ

不動産業界では、持っていると重宝される資格が多くあり、中にはその資格を持って独立開業ができる資格もあります。

とはいえ、資格を取得したからといって、すぐに独立開業をするのは危険です。どの業種でも独立開業をする前に、しっかりとした事業計画を立て、先の経営を見据えておきましょう。

そんな独立開業には、下積み期間が必要となります。下積み期間は企業内資格者として働き、多くの経験を積み、広い人脈を築くようにしましょう。