実務家密着取材

直撃インタビュー
社会保険労務士 藤沼香さん

社会保険労務士   藤沼香 さん

1979年東京都生まれ。
早稲田大学政治経済学部経済学科入学。
2001年卒業後、新卒で銀行へ入行。
2005年退社後、人事・総務のアウトソーシング事業を行う会社に社会保険労務士として就職。
現在は、社労士の受験指導にも携わる。


「向き、不向き」より「前向き」に。
社労士を選択したことで掴んだ「ワーク・ライフ・バランス」 。

試験に合格して資格を取得した後、実際にどのような仕事を行うのか。フォーサイトでは活躍中の実務家を直撃し、その実像に迫ります。今回は勤務社会保険労務士である藤沼香さんからお話を伺いました。

どのようなお仕事をされているのでしょうか


社会保険労務士の働き方としては、主に開業社労士と勤務社労士の二通りがあります。私の場合は、人事・総務のアウトソーシング業を営む会社に勤務社労士として入社しました。

現在は、経営企画部で全社的な経営戦略・立案、中でも人事関係の分野について担当しており、人事部と共同して制度の見直し、課題解決などに携わっています。また、社外での活動として、社会保険労務士を目指す人たちの受験指導も行っています。


藤沼さんの傍らには常に法律書

藤沼さんの傍らには常に法律書


社会保険労務士の資格を取ろうと思ったきっかけは何ですか


ライフプラン、キャリアプランについて真剣に考えていましたが、当時勤務していた銀行で年金関係の業務を行うことになったのが直接のきっかけです。

私は大学で経済を学んだ後に銀行へ就職し、各店舗で販売する個人のお客様向けの年金関係の商品企画に携わることになりました。そこで年金に関しての勉強をすることになったので、「それならば資格として身につけよう」と考えました。社労士という資格があれば、将来的に独立・開業という選択肢も出てくるので、「自分のライフプラン、キャリアプランの形成に役立つのではないか」という気持ちの方が強くありました。「結婚、出産などのステージを迎えても、そのときどきの自分に応じた働き方が出来るのではないか」と思い、社労士の勉強をスタートしました。


パソコンとメモ帳はバッグに欠かせない

パソコンとメモ帳はバッグに欠かせない


資格を取られてから、どのように仕事にいかされたのでしょうか


社労士の資格を取得したときに、それを社内でオープンにする人としない人がいます。独立のための武器(資格)を持ったことを上司や周囲に悟られたくないという人もいますが、私はオープンにしました。けれど、資格を得た時には異動により、社労士の業務とは縁遠い部署で勤務していたため、周囲には理解されませんでした。

そこで、せっかく興味を持った社労士に実務で取り組みたいと思い、転職を決意しました。そして、社会保険労務士の勉強会などのつながりから人事・総務のアウトソーシングを行っている会社へ就職することにしました。当時、次世代法と言われる「次世代育成支援対策推進法」が出たタイミングで、そこにからめたサービスをクライアントに対して企画・提案したり、コンサルティングからWebのシステム制作まで幅広く携わりました。

その後、社労士のネットワークから声がかかり、受験指導も行うようになりました。



仕事をスムーズに進める上で心がけていることは何でしょう


どんな仕事でも大事なのは、コミュニケーションだと思います。特に社労士の場合、ヒトに関する分野を取り扱う以上、相手の心を読むとか、話していることを正しく理解するのはもちろん、その先を考えて行動することが必要なのではないか、と考えています。

また、私個人のことですが、2つの仕事のバランスを取ることが難しいときもあります。どちらの同僚にも、その事実を理解してもらっているとはいえ、ともすると、「兼業だから、どちらも中途半端なのでは?」と思われてしまう可能性もあります。『二兎追うものは一兎も得ず』で、両方真剣に取り組まないと、両方ともダメになってしまう恐れがあります。そうならないように、今は100%ずつ200%の力で全力投球している状態です。別々の仕事とはいえ相互に活かせることも多いですし、限られた時間の中で「より集中しなくては」という意識が生まれるので、効率的に作業を進めることが出来ます。また、頭が切り替わり、煮詰まらずに新しい視点で仕事に取り組める、という利点もありますし、割と今の状況に満足していますね。


どの仕事に対しても100%全力投球するという藤沼さん

どの仕事に対しても100%全力投球するという藤沼さん


今後の目標について教えてください


勤務社労士のメリットとして、職業として安定しているところが挙げられます。また、独立している開業社労士は、多くのクライアントと仕事をすると思いますが、勤務社労士は1つの会社のことに力を注ぐため、会社内外における状況を総合的に勘案して対応できます。経営側が考えていること、従業員が思っていることが近いところで分かるので、さまざまな視点から対応できます。実務や営業の経験がなかった私は勤務社労士の道を選択しましたが、資格を取ったことで自分自身かなり変わったと思います。

今後については、その時々の自分が興味を持ったことがらに全力投球しつつ、仕事と生活と、うまくバランスをとってやっていきたいと思っています。


社会保険労務士を目指す皆さんへ、私からは2つのことをお伝えしたいと思います。

「入ってくる情報を、シンプルに捉えること。何かにつけて、初心を思い出すこと。」

本試験日までの時間は、長いようで、あっという間です。まずは、「合格」へ向けて、限られた時間の一刻一刻を、後悔のないよう、大切に過ごしてください。そして、晴れて社会保険労務士として、多様な道でご活躍されることお祈りしております。