実務家密着取材


社会保険労務士 桐生英美 さん
1962年生まれ。東京都出身。1984年に中央大学経済学部を卒業後、富士通グループ関連会社(富士通ディジタル・テクノロジ)に入社。社員教育、新卒及び経験者採用、さらには関連会社4社の設立と人事担当者の育成を行う。1995年に、社会保険労務士の資格を取得。勤務社労士となり、総務人事全般の業務のリーダーとして従事。その後、外資系商社の教育担当マネージャー、大手外資系EDAツールベンダーでの人事マネージャー、外資系損害保険会社の人事総務本部長代理を経て、IT系ベンチャー企業の人事・総務・経理の管理部門サポートメンバーとして活躍。
2009年に創業コンサルタントとして独立し、「OFFICE KIRIU」(桐生社会保険労務士事務所)として活動開始。2011年2月に日本経営サポート株式会社を創業し、現在に至る。
桐生英美さんが代表を務める「桐生社会保険労務士事務所」及び「日本経営サポート株式会社」のホームページは以下のとおりです。
「桐生社会保険労務士事務所」 URL : http://www.office-kiriu.com
「日本経営サポート株式会社」 URL : http://www.kiriu.com
「経営の安定した走りをご提案」
“社外人事総務部長”として活躍するハーレー社労士
試験に合格して資格を取得した後、実際にどのような仕事を行うのか。フォーサイトでは活躍中の実務家を直撃し、その実像に迫ります。今回は、社会保険労務士の桐生英美さんからお話を伺いました。
どのようなお仕事をされているのでしょうか
社労士業を軸にしながら、日本経営サポート株式会社の代表として、中小・ベンチャー企業を対象に、主に4つの事業を展開しています。まず1つ目は、企業の創業支援。創業準備や創業後の経営などについて、コンサルティングを行います。2つ目が、各種書類の申請サポートや社会・労務保険手続き等の代行業。助成金申請サポートが割と多いですね。3つ目は、人事規則の提案。働きやすい環境を創出するため、就業規則の作成等についてサポートします。クライアントごとに詳細なヒアリングを行い、各企業の状況に応じた就業規則などをオーダーメイドで作成します。そして4つ目、人事・総務・法務部門のアウトソーシング。クライアントにとっての「社外人事総務部長」という役割を担います。税理士をはじめ、弁護士や弁理士などの専門家と提携し、企業ごとに見合った業務プランを提案。その他に、勉強会やセミナーを開催し、知識を学び異業種交流出来る“場”をつくることも行っています。

都心をはじめ全国を駆け抜ける桐生さん
資格を取ろうと思ったきっかけは何ですか
人事のスペシャリストになろうと思ったからです。私は新卒で富士通グループの関連企業に入社し、1年目から社員教育と人材採用を担当しました。2年目以降は、関連会社4社の設立と人事担当者の育成を担当。人に関する仕事は面白いと感じ、人事の仕事に縁があったため、「この道を極めてみよう」と決意しました。
人事系の国家資格である社労士にチャレンジするため、勤務の傍ら、資格スクールに通って勉強しました。その甲斐あって、1995年に社会保険労務士の資格を取得。勤務社労士のまま、得た知識を実践で活かし、人事・総務全般のリーダーとして、さらなる実務経験を積みました。

2度目のチャレンジで合格
資格取得後、独立まで、どのようにキャリアを積まれたのでしょうか?
私の場合、資格取得から実際に独立するまで、相当の期間が経っています。というのも、当時私は独立志向の人間ではなかったからです。
社労士の資格取得後、人事・労務業務において、より一層のスキルアップを目指し、外資系商社に転職しました。教育担当マネージャーとなり、新入社員向け、管理職向け、専門教育など、20種類以上もの教育コースを運営し、その一方では人事制度や評価制度の再構築を手がけました。
その後、ヘッドハンティングを受けて、外資系メーカーの人事マネージャーに就任し、人事制度や給与制度の再構築、人材採用などを担当。しかし、本国の親会社が買収され、私が在籍した日本法人でも大規模なリストラが行われました。社内の人員整理を行った私自身も退職を余儀なくされました。
そして、外資系損害保険会社に転職。人事総務本部長代理に就任し、人事制度の改訂に携わる傍ら、社内コンプライアンスメンバーとして、監督官庁の窓口担当となりました。やりがいのある仕事に安堵したのも束の間、親会社が日系ファイナンス企業に買収されることが決定。一度ならず二度までも、M&A→人員整理→リストラという事態に陥り、どん底まで落ち込みましたね。
「もう企業の歯車にはなりたくない。社労士として独立しよう」と思った矢先、人生を変える出会いがありました。富士通グループ関連企業に勤めていた頃の上司から、あるベンチャー企業の社長を紹介されたのです。彼は、「人を大事にしてこそ、会社は発展する。人を大事にする会社は伸びる」と考えていました。それまで、私が働いてきた企業にはない考えを目の当たりにし、強烈なカルチャーショックを受けましたね。
そして、「私が培った人事・総務業務の経験を彼の会社で活かしたい」と、IT系企業のディー・クルー・テクノロジーズ株式会社に再就職。人事・総務・経理業務を中心に、会社の基盤づくりを担当しました。しかし、それまでの無理がたたったのか、身体を壊し、緊急入院する羽目に…。それが、自分の人生をリセットするきっかけになりました。
実際に、私が独立開業したのは資格取得から14年後の2009年。「OFFICE KIRIU」(桐生社会保険労務士事務所)を立ち上げ、「人を活かし、育てる会社を応援する」創業コンサルタントとして活動を開始しました。
お仕事の際に気をつけていることとは何でしょうか?
社労士は、企業の『社外人事総務部長』であり、『サービス業』。社労士にとって、一番大事なのはコミュニケーション力だと思いますね。ですから、クライアントと程良い距離を保ちつつ、同じ目線に立ち、相手をよく理解するよう心がけています。
ヒトはモノではなく、感情を持った生き物です。私は25年間、人事畑ひと筋でしたが、「ヒト・モノ・カネ」の「ヒト」の重要性について、会社のトップには意外と認識されていない気がします。社員が働きやすい“場”、環境を整えるだけでなく、組織のトップ、社長自ら積極的に考えを発信し、社員の共感を得られるよう促していきたいと考えています。

「人を大事にする企業を増やしたい」という桐生さん
今後の予定、夢を教えてください
社労士の仕事だけでも充実していますが、将来的に『社労士プラスα』の仕事も増やしていきたいと思い、昨年(2011年)「日本経営サポート株式会社」を立ち上げました。会社設立・起業支援はもちろん、私が培ってきたこれまでのキャリア、25年間の実務経験を活かし、企業の「社外人事総務部長」という立場から、人事・総務・法務面の業務ノウハウを中心に提供しています。お客様も私も会社も、大きな実をつけるよう、育てていきたいと思いますね。

桐生さんの趣味は、ハーレーダビッドソンでのツーリング
「此の道を行けば どうなるのかと 危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし
ふみ出せば その一足が道となる その一足が道である
わからなくても歩いて行け 行けばわかるよ」
私が好きな『道』という詩です。皆さんも是非、己の道を踏み出して下さい!
社会保険労務士 桐生英美 さんの、ある1日


6:00 | 起床 | 朝食 |
7:00 | 出社 | メールチェック |
10:00 | 外出 | クライアント訪問へ |
10:30 | 個別相談 | 人事労務に関する相談 |
12:00 | 休憩 | |
13:00 | 外出 | ハローワークで助成金の手続き |
15:00 | 個別相談 | リストラについての相談 |
17:00 | 帰社 | 電話ミーティング |
19:00 | 社内 | 事務作業 |
20:00 | 退社 | 士業仲間が行う交流会へ |
23:00 | 帰宅 | |
24:00 | 就寝 |