手に職をつけるという点では、非常に人気の高い資格が医療事務の資格です。しかしこの医療事務の資格には数多くの種類があり、どの資格を取得すればいいのか悩まれている方も多いかと思います。実は医療事務に関する国家資格は存在しません。すべて民間資格のため、数多くの団体が資格試験を行っているのが現状です。その中でも比較的有用性の高い資格をいくつかご紹介しましょう。
目次
医療事務の資格で重要なポイントは?
医療事務の資格には多種多様なものがあります。中には残念ながらあまり就職や転職に効果が低い資格も存在します。医療事務の資格取得を目指す場合には、まず取得してどの程度の効果があるのか?どの程度信頼度が高いかを確認する必要があります。
医療事務の資格がどの程度有用かを確認するには、その資格を取得するのにどのような試験を受けるのかを確認する方法があります。医療事務が一般的な事務職と大きく違うのは、医療報酬についての計算がする必要があることでしょう。
医療報酬の計算に関しては、単なる数字の計算ではなく、医療保険制度などを正しく理解している必要があります。つまり有用性の高い医療事務の資格は、この医療報酬について詳しく勉強しないと取得できない資格ということになります。
もうひとつの注目ポイントは「レセプトの作成」です、レセプトとは、患者のカルテから医療報酬を算出して作成する医療報酬の計算書。このレセプトの作成能力を問う試験がある資格を選ぶといいでしょう。
また、医療事務の資格の多くは、医科と歯科に分かれています。当たり前のことですが、ここを間違えないようにしましょう。
では、実際に有用性が高いといわれている医療事務の資格をいくつかご紹介しましょう。
診療報酬請求事務能力認定試験
正式名称 | 診療報酬請求事務能力認定試験 |
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資格種類 | 民間資格 |
分野 | 医療事務 |
認定団体 | 公益財団法人,日本医療保険事務協会 |
試験形式 | マークシート,実技 |
受験資格 | 特になし |
試験日 | 7月と12月の日曜日・祝日 |
受験料 | 9,000円 |
受験者数(2023年7月度) | 2,446人 |
合格者数(2023年7月度) | 905人 |
合格率(2023年7月度) | 37.0% |
偏差値 | 46 |
唯一厚生労働省が認可する資格
数多い医療事務の資格の中で、唯一厚生労働省に認可されているのが、診療報酬請求事務能力認定試験です。医科と歯科に分かれており、どちらも学科試験と実技試験が行われます。学科試験では医療保険制度や医療報酬に関する問題が出題され、実技試験では実際のカルテからレセプトを作成する試験になります。
出題内容が非常に実用的であり、また唯一厚生労働省が認可している資格なだけに、実際に医療事務に携わる方が受験することもありますが、それでも合格率は高くなく、しっかりと勉強しないと取得できない資格といわれています。
資格手当の対象となることも多い
実用性の高い資格で明けに、医療事務の職員で、この資格を持たない方に、資格取得を推奨している医療機関も少なくありません。この資格の平均的な合格率は30%程度ですが、実際に実務経験のある方も含めてこの合格率ですから、かなり難易度の高い試験であることがわかるかと思います。
もちろん就職や転職といったシーンでも、この資格を持っていることは有利な材料となります。たとえ実務経験がなくても、この資格を取得していることで、採用に近づくのは間違いないでしょう。
一度取得すれば喪失することのない資格ですので、特に出産休暇や育児休暇などを取り、その後社会復帰を目指す女性などにはおすすめの資格といえるでしょう。
医療事務技能審査試験
民間資格の中では歴史のある資格
医療事務系の民間資格としては、歴史も古く知名度の高い資格になります。知名度が高いということは、就職や転職の際も利用できる資格と考えて間違いないでしょう。試験では診療報酬の計算はもちろん、患者に対する接遇の試験もあり、医療事務に就くことを考えると、より実践的な資格になります。
未経験者であればぜひ取得しておきたい
資格の取得難易度という点では診療報酬請求事務能力認定試験よりもやや低く、より取得しやすい資格となります。取得しやすいということは、評価としては診療報酬請求事務能力認定試験よりも下ということになります。
ただし、診療報酬請求事務能力認定試験は医療従事者すら取得が難しいレベルの資格ですので、未経験者の方はまずこちらの資格を目指すのも一つの方法です。この資格を取得し、医療事務の実務を経験しながら、最終的に診療報酬請求事務能力認定試験を取得するようなイメージでもいいかもしれません。
医療事務の求人に関しては、資格の有無以上に実務経験が重視される傾向にあります。しかし、同じ未経験者同士であれば、当然ながら資格のある方のほうが優先されますので、特に医療事務未経験の方は持っておくといい資格といえるでしょう。
医療事務管理士技能試験
自宅でも受験可能なインターネット試験対応
医療事務の民間資格の中では、最も歴史のあるのがこの医療事務管理し技能試験です。歴史のある資格ではありますが、受験に関しては最新の方式を採用しており、自宅からインターネットでの受験が可能になっています。
インターネットでの受験が可能ということは、24時間365日いつでも受験が可能ということ。多くの場合資格試験は日程が決まっていますが、この資格は自由に受験ができるので、自身の都合に合わせて取得が可能になっています。
試験内容も医療報酬計算やレセプト作成など、基本的な問題は網羅されていますので、この資格を取得しておけば、仕事現場でも困ることはないでしょう。
受験機会が多く取りやすい資格
インターネット試験や在宅受験に加え、年間6度の会場試験もあり、取得チャンスが多いのが特徴の資格となります。いつでも受験できる特徴を生かし、学生の間に取得をしたり、子育て中に再就職に向けて取得をしたり、ほかの仕事をしながら勉強をして、空いた時間に受験をするなど、いろいろな方がチャレンジできる資格です。
歴史ある資格であり、試験内容も医療事務として必要な部分は網羅していますので、この資格も持っていないよりは持っていたほうが就職などで有利になることは間違いありません。
医療事務に興味がある、医療事務への転職を考えている方など、実際に医療事務の仕事を目指す未経験者の方におすすめの資格となります。
医療事務認定実務者
初心者におすすめの資格
医療事務の資格の中でも、有用性の高いポイントを備えつつ取得難易度が低めの資格がこの医療事務認定実務者の資格です。資格取得試験では、医療保険制度や患者の接遇マナーなど基本的な項目が含まれており、レセプト作成の実技試験も行われます。
取得難易度が比較的低いといわれる理由のひとつとして、このレセプト作成の実技試験が、外来患者の一例であることが挙げられます。一般的に診療報酬の計算に関しては、入院患者よりも外来患者のほうが分かりやすく、計算しやすいといわれており、この試験内容からもやや取得難易度が低いということはわかるかと思います。
特に医療事務の仕事は未経験の方、初心者の方にとってはおすすめの資格。この資格を取得するための勉強をすることで、医療事務の仕事がどのような仕事なのかを知ることもできるでしょう。
医療事務に必要な知識を網羅
医療事務には多くの専門知識が必要になります。また、同時に重要なのが患者に対する接遇についてです。医療機関に来る患者は、当然ですが体調が悪く、すがるような思いで来院されている方も少なくありません。こういった方に対する接遇マナーは、患者に対する気遣いも必要となるため、単純ではありません。こうした接遇マナーが身に着くのも初心者の方におすすめの理由になります。
もちろん医療保険制度や医療報酬計算、レセプト作成に関しても、最低限必要な知識が身についていないと取得できませんので、医療事務への就職や転職を考えている方は、その仕事内容を把握するためにもこの資格取得を目指すといいでしょう。
まとめ
一般的に医療事務の求人に関しては、有資格者よりも実務経験者が優遇される傾向にあります。その大きな理由が、おそらく患者に対する接遇マナーといった点でしょう。ここで紹介した資格の中にも、接遇マナーを課題にしている試験はありますが、患者に関しては十人十色です。ひとつの接遇マナーを身に着ければすべての患者に対応できるというわけではありません。
その点では有資格者よりも、実際に医療事務の現場を経験し、より多くの患者と相対してきた方が優遇されるのも致し方ないところでしょう。
では、医療事務の仕事をするにおいて、資格の取得は意味がないのでしょうか?もちろん無意味ではありません。医療事務には患者への接遇だけではなく、医療報酬の計算やレセプト作成などの業務もあります。むしろこういった業務のほうが重要になります。医療事務の資格を取得しているということは、医療報酬の計算やレセプト作成において、一定程度の知識があることの証拠です。この点においても資格が無意味ということはありません。
実際に厚生労働省が認可している診療報酬請求事務能力認定試験の有資格者に、資格手当を支給する医療機関も少なくありません。医療事務の仕事を目指すのであれば、何かしらの資格取得はしておくべきでしょう。
医療事務の資格は数多いものの、多くの医療機関で認められている資格は一部です。資格取得の際は、その資格がどの程度有用か、どの程度認知されているかに注目して資格を選ぶようにしましょう。
特に医療事務に興味はあるものの、就業経験がない方などは、まずは資格取得のための勉強をし、その中で医療事務の仕事内容を把握できるようにするのがおすすめ。自身にあった、有用性の高い資格を狙うようにしましょう。