実務家密着取材

直撃インタビュー
社会保険労務士 永井優美子さん

社会保険労務士   永井優美子 さん

東京都出身。2001年に日本大学商学部卒業後、専門商社に入社。給与計算、採用業務などを担当し、2年後に大手メーカーの子会社に転職。総務人事として、労働、社会保険手続きなど、人事業務全般を担当し、2004年に社会保険労務士試験に合格。翌年、社労士事務所に転職し、実務経験を積み重ね、2007年1月に独立開業。新設立法人の労働保険、社会保険の新規加入手続き、給与計算から年金、失業者、子育て支援の相談など幅広く手がける。また、人事案件での相談が多いメンタルヘルスの問題にも積極的に取り組み、大学院にて臨床心理学を学ぶ。2009年3月に大学院を卒業し、知識をいかしたカウンセリング、コンサルティング業務も行っている。


社労士は、俯瞰の視点を持ったカウンセラー。
会社と社員をつなぐパイプ役。

試験に合格して資格を取得した後、実際にどのような仕事を行うのか。フォーサイトでは、活躍中の実務家を直撃し、その実像に迫ります。今回は社会保険労務士である永井優美子さんからお話を伺いました。

どのようなお仕事をされているのでしょうか


「新設法人サポート・助成金のご相談」、「賃金制度に関する業務全般(賃金制度改定、構築、給与計算、退職金制度構築)」、「メンタルヘルスサポート」の三本柱をメインに行っております。「助成金・新設法人のサポート」とは、労働保険や社会保険の加入手続き、就業規則、契約書作成などの労働環境の整備などです。助成金に関するご相談につきましては、要件の確認から、実際に助成金が得られる社内態勢の整備作り、役所の窓口への申請まで、サポートさせていただいています。きちんと申請すれば正当に得られるはずの助成金を貰わずに起業、雇用している法人も少なくありません。起業したばかり、設立間もない法人のご相談を受け、支援することが私たちの仕事だと考えています。また最近増えてきている案件が、「賃金制度に関する業務全般(賃金制度改定、構築、給与計算、退職金制度構築)」、「メンタルヘルスサポート」です。賃金に関する業務は、私が開業前から経験を重ねてきた分野ですが、アウトソーシングで扱うことが増えてきています。「メンタルヘルスサポート」はオプションですが、ここ数年ご依頼されることが多いですね。


「新設法人サポート・助成金のご相談」、「賃金制度に関する業務全般」、「メンタルヘ

「新設法人サポート・助成金のご相談」、「賃金制度に関する業務全般」、「メンタルヘ


資格を取るまで、そして取った後の歩みを教えてください


大学卒業後、商社に入社して総務人事に配属されました。人と話すことが好きだったので、営業系の仕事を希望していたのですが、総務人事で給与計算、採用業務の担当として仕事をしているうちに、社会保険労務士という国家資格があることを知りました。そして、社労士の資格を取るために動き始め、入社2年後に転職しました。2004年に合格後に、資格をいかしたキャリアアップを図り、また転職活動をしました。人事アウトソーシングの会社で20社ほどの顧客の労働保険、社会保険の手続き、給与計算など人事業務全般を担当しながら、新設法人の社会保険、労働保険の新規加入手続き、そして相談業務を行いました。立ち上げたばかりの会社に関するノウハウは、ここで培った経験が今も役に立っています。その後に開業を決意し、社労士事務所に転職しました。


開業のきっかけは何でしょうか?


「結婚しても、仕事を続けたい」と思ったのがきっかけです。私は「仕事子育て両立支援女性の会」を立ち上げ、育児と仕事の両立のためのセミナーなども行っていますが、社会において女性の果たす力は大きいと確信しています。また、同時期に社労士の資格を取得した仲間の男性の大半が開業しているのを見たことも、きっかけのひとつです。社労士も男性が多い世界ですが、女性でも開業できるし、やっていけるということを伝えたいと思った部分もあります。自分なりに時間を活用することで家庭・育児と仕事の両立を目指していきたいと思います。


「仕事子育て両立支援女性の会」を立ち上げ、女性たちをバックアップ

「仕事子育て両立支援女性の会」を立ち上げ、女性たちをバックアップ


仕事の魅力、やりがいは何でしょうか?


社労士の仕事は本当に幅広いと思います。他の士業に比べると、業務内容が狭く思われるかもしれませんが、人事の中でも多様な案件をカバーできます。社労士独自のカラーも出しやすいと思います。特に最近はメンタルヘルスについての問題で困っていらっしゃる会社が増えています。人事担当者から相談を受けるパターンも多いのですが、私は大学院で臨床心理について学んで知識を得ていますし、事務所の中に臨床心理士が在籍しています。メンタルヘルスは過労からくるパターンが多いので、残業を減らすなどの対策面、復職の相談なども受け付けています。仕事と自分の興味のある分野の知識が結びつき、お客様から評価を得られていることは、やりがいにつながっていますね。


臨床心理士、税理士、行政書士等との業務上のネットワークも

臨床心理士、税理士、行政書士等との業務上のネットワークも


仕事をスムーズに行うため、気をつけている点は何でしょうか?


2法律業であるのですが、お客様がやりたいと思うことを出来る限り実現させたいと思っています。法律の範囲内でお客様の主張を尊重するというのは、簡単なことではないのですが、それも仕事のひとつだと考えています。そのために、お客様のお話をよく聞いて、交流を深めることを大事にしていますね。「仕事はしっかり、スピーディーに」、「ご相談は堅くならずフランクなかたち」をモットーにしていますが、こちら側の意見を押し付けるのではなく、お客様優先のスタンスをとっています。また、実務的なことで言いますと、細かい作業が多いので、何回も念入りにチェックして、出来るだけ完璧なものを納品するようにしています。


「お客様第一主義」という永井さん

「お客様第一主義」という永井さん


人事に絡む社会保険労務士は奥が深く、広がりを持った面白い職業だと思います。くじけずに社労士の資格を取って、是非開業して欲しいと思います。私自身は人事に長く携わっていますが、実務経験の有無はそれほど重要ではないと考えています。その人個人のやり方によって、幅を広げていける資格だと思います。特に女性は層が少なく、若手は少ないのが現状です。女性の社労士を求めるお客様もいらっしゃいますので、もっと女性に活躍していただきたいと思います。