保税地域とは?5つの保税地域の種類や期間を通関士目線で解説!

保税地域の種類や期間を通関士目線で解説!
目次

保税地域とは?

保税地域とは、関税を支払うことなく外国貨物のさまざまな取扱いができる場所のことです。具体的には以下の5つの取扱いが可能となります。

取扱項目 具体例
外国貨物の積卸し 外国船や飛行機への貨物の積卸し
外国貨物の運搬 外国貨物のまま、別の保税地域に移動させること
外国貨物の蔵置 一時的に保税地域に置くこと
外国貨物の加工や製造 定められた軽微な加工や材料から製造を行うこと
外国貨物の展示 博覧会などで展示すること

保税地域の定義とは?

保税地域の保税とは、税(関税)を留保するという意味です。つまり、保税地域とは、外国から到着した貨物を関税の支払いを留保したまま、上記の5つの取扱いができる場所といえるでしょう。

基本的に外国貨物から到着した貨物は、通関手続きを経て、必要な関税などを支払わないと日本国内に流通させることができません。外国から到着した人は、入国審査を受けてはじめて国内に入ることが許されます。それと同じ手続きが必要なのです。

これらは、以下のように置き換えることができます。

  • 入国審査=通関手続き
  • 関税の支払い=外国から一定量以上持ち込む外国品(お酒など)に対する税金の支払い

しかし保税地域の場合、一定の期間内、通関手続きもせず関税なども支払わずに蔵置や加工、展示などを行うことができます。つまり、日本にありながら日本ではない地域ともいえるでしょう。

税関からみた保税地域制度の目的は「確実に関税を徴収すること」です。財務大臣の指定や税関長の許可によって定められた保税地域内に置くことで、貨物を関税の担保としているのです。

保税地域に置かれる貨物とは?

保税地域に置くことができる貨物は、基本的に外国貨物です。関税法上、外国貨物(通称:外貨:がいか)とは主に以下の2つです。

  • 輸出の許可を受けた貨物
    →外国に向けた輸出予定の貨物で、税関長の輸出許可を受けたもの
  • 外国から日本に到着した貨物
    →外国から航空便や船便などで日本に到着し、通関手続きが完了していないもの

輸入貨物については関税の支払いが完了していない、いわゆる保税(税を留保)された状態の外国貨物といえます。

保税地域には内国貨物(通称:内貨:ないか)を置くことも可能です。実際に、輸出入ともに通関手続きは保税地域で行われ、輸入貨物においては輸入許可がおりた後、引き取られるまで内国貨物として蔵置されます。

ただし、外国貨物と内国貨物が混じりあうことがないように、エリアを区分けすることが必要です。

保税地域を利用する輸入者のメリット

保税地域の利用は、輸入者に以下の6つのメリットをもたらします。

  1. 関税や消費税を留保したまま、加工や簡単な仕分け、値札付けなどの作業が可能
  2. 外国貨物のまま転売する(保税転売)を利用することができる
  3. 必要な量や商機に応じて、引き取りが可能
  4. 貨物に荷傷みなどがあった際、税関長の承認を受け、関税などを支払わず処分できる
  5. 法規制の改正で、貨物が輸入できなくなった際に、積戻しができる
  6. 外国貨物のまま展示会や博覧会などで展示、使用が可能

1および6は保税地域によって制限があります。それぞれの保税地域の種類と要件が決まっていますので次章でご紹介します。

➡通関士についてはこちら

5つの保税地域の種類と要件、保管期間は?

関税法で定められた保税地域は以下の5つあります。それぞれの要件や保管期間などについて確認していきましょう。

種類と法令根拠 主な機能と例 蔵置期間 設置の手続
指定保税地域(関税法第37条) 外国貨物の積卸し、運搬、一時蔵置 例)コンテナヤード 等 搬入から1ヵ月 財務大臣の指定
保税蔵置場(関税法第42条) 外国貨物の積卸し、運搬、蔵置例)倉庫、上屋 等 搬入から3ヵ月/最初の蔵入承認から2年(延長可) 税関長の許可
保税工場(関税法第56条) 外国貨物の加工、製造 例)造船所、製鉄所、製油所 等 搬入から3ヵ月/移入承認から2年(延長可) 税関長の許可
保税展示場(関税法第62条の2) 外国貨物の展示・使用 例)博覧会、博物館 等 税関長が必要と認める期間 税関長の許可
総合保税地域(関税法62条の8) 保税蔵置場、保税工場、保税展示場の総合的機能  例)中部国際空港 等 搬入から3ヵ月/総保入承認から2年(延長可) 税関長の許可

指定保税地域

指定保税地域は財務大臣が指定します。ただし指定可能な施設は国や都道府県、市などの地方公共団体が所有もしくは管理していることが条件です。通関手続きを簡易かつ迅速に行う目的があるため、蔵置できる期間は原則として搬入後1ヵ月と短い点に注意しましょう。

指定保税地域では以下の行為が可能です。

  • 外国貨物の積卸し
  • 外国貨物の運搬
  • 外国貨物を通関手続きのために一時蔵置する

貿易港などに設置されるコンテナヤードなどが指定保税地域にあたります。

保税蔵置場

保税蔵置場(保税上屋)は税関長が許可することで設置されます。指定保税地域と違って必ずしも公共施設である必要はありません。保税蔵置場の目的は、取引の円滑化と輸入貨物をそのままあるいは加工して輸出する中継貿易の発展です。そのため、搬入後3ヶ月は承認なく蔵置することができます。

しかし3ヶ月を超える場合は、税関長から蔵入承認をもらった後、原則2年蔵置が可能です。蔵置期間の起算日は、最初の保税蔵置場への蔵入承認を受けた日である点に注意しましょう。以下に例を挙げて時系列でご紹介します。

(例)

  • 3月1日 保税蔵置場Aに蔵入承認
  • 5月30日 保税運送承認を受ける
  • 5月30日 保税蔵置場Bに蔵入承認

上記の場合、起算日は最初の保税蔵置場Aへの蔵入承認を受けた3月1日となります。

なお蔵置期間は、一定の条件を満たせば延長も認められます。保税蔵置場で可能な行為は以下の通りです。

  • 外国貨物の積卸し
  • 外国貨物の運搬
  • 外国貨物を蔵置する

倉庫、上屋などが保税蔵置場に該当し、貿易港周辺に多くみられます。

保税工場

保税工場も公共施設である必要はなく、税関長の許可によって設置されます。保税工場の目的は加工貿易(材料などを輸入し、それを加工した後、輸出する貿易形態)を盛んにすることです。

保税工場の蔵置可能期間は移入承認から原則2年間ですが、基準を満たせば延長も可能です。また保税工場に複数回にわたり、移入承認を受けた原材料を同時に使用して保税作業を行った場合は、最後に移入承認を受けた原材料の移入承認日が起算日となる点に注意しましょう。

以下に具体例をご紹介します。

(例)

  • 3月1日 原材料Aの移入承認
  • 12月1日 原材料Bの移入承認

上記の場合、起算日は最後に移入承認を受けた原材料Bの移入承認日12月1日となります。

また保税工場の一部に保税蔵置場の許可を合わせて受けている場合は、保税蔵置場と同様に搬入から3ヵ月は移入承認を受けることなく蔵置できます。これを関税法上「みなし保税蔵置場」といいます。

保税工場で可能な作業は以下の通りです。

  • 外国貨物の加工
  • 外国貨物の製造(混合)
  • 外国貨物の改装、仕分け、その他の手入れ

保税工場では魚介類の缶詰やお菓子、電線、船舶、自動車、精密機械石油製品、農薬、化学製品などさまざまな製品が作られています。

保税展示場

保税展示場は税関長の許可によって設置され、公共施設だけに限定されません。保税展示場の目的は国際的規模の博覧会や公的機関主催の外国製品の展示会をスムーズに運営することです。保税展示場を使用した催しの例には東京モーターショーなどがあります。

税関長が必要と認めた期間内に限って蔵置が認められます。この期間には博覧会などの開催期間前後の準備期間も含みます。

保税展示場で可能な作業は以下の通りです。

  • 外国貨物の展示
  • 外国貨物の使用
  • 外国貨物の一時蔵置(通関手続きを目的とする)

総合保税地域

総合保税地域は税関長の許可によって設置され、以下の3つの保税地域の機能を総合的に持ち合わせています。

  • 保税蔵置場
  • 保税工場
  • 保税展示場

総合保税地域の目的は、輸入の促進および輸入に利用される施設を集約することで、手続きをスムーズかつ簡略化にしようとするものです。

蔵置期間は保税蔵置場や保税工場と同様です。以下で再度、確認しましょう。

  • 承認を得ずに蔵置できる期間→搬入から3ヶ月
  • 搬入から3ヶ月を超過する場合→総保入承認から原則2年
    ※延長可能

総合保税地域で可能な作業は以下の通りです。

  • 外国貨物の積卸し
  • 外国貨物の運搬
  • 外国貨物の一時蔵置および蔵置
  • 外国貨物の加工
  • 外国貨物の製造(混合)
  • 外国貨物の改装、仕分け、その他の手入れ

通関士が審査する輸出入申告と保税運送

ここからは通関士が審査する輸出入申告と保税運送について説明します。

輸出入申告と保税地域からの搬出のタイミング

関税法30条第1項の規定により、大原則として外国貨物は保税地域以外の場所におくことはできません。そのため、輸出入申告は原則として保税地域で行います。ただし、AEO制度における特例輸入者制度を利用した場合は、貨物到着前に輸入申告をすることができます。

以下で、輸出入申告と保税地域からの搬出のタイミングを確認しましょう。

  • 輸出申告
    →(申告のタイミング)保税地域に搬入後
    →(搬出のタイミング)輸出許可後、船積み時
  • 輸入申告
    →(申告のタイミング)日本の港及び空港に到着し、保税地域に搬入後
    →(搬出のタイミング)輸入許可後

なお、特例輸入申告制度を利用しない場合でも、輸出入ともに保税地域に搬入する前に、申告をすることが可能です。輸入申告では予備審査制を、輸出申告の場合は搬入前申告(コンテナ詰め貨物に限る)を利用する方法です。

通関士の審査業務である保税運送と期間

外国貨物を保税地域間で輸送する際に行う業務として「保税運送申告・関税法第63条(外国貨物運送申告書)」があります。これは通関士が審査する業務の一つであり、通関業法上は通関業務に先行する関連業務として規定されています。

たとえば、以下のケースで利用されます。

  • コンテナヤード(指定保税地域)から別のコンテナヤード(指定保税地域)に輸送する
  • コンテナヤード(指定保税地域)から保税蔵置場へ輸送する
    ※コンテナ1本に複数の輸入者の貨物が積載されており、保税蔵置場で仕分けをする場合など

保税運送にも期間が定められており、指定された運送期間内に発送地から目的地まで到着する必要があります。ただし、保税運送の一括承認を税関より受けた場合やAEO制度における特定保税運送を利用する場合は、手続きが簡略化されます。

通関士の仕事と保税非違

通関士の仕事は、輸出入申告の審査だけではありません。前述の保税運送申告の審査のように通関に前後に行われる業務にも携わります。そこで保税に関するペナルティを受ける事例(保税非違)を知っておくことが大切です。具体例を確認していきましょう。

1.輸出入貨物が保税地域内にない!

一つ目は、税関検査立ち合い時に「輸出入貨物が保税地域内にない」ケースです。税関検査をする場所は、税関が発行する検査指定票に記載されており、その場所に貨物がないと大問題となります。関税を留保されており、関税法など規制を受けている貨物であることが理由です。

以下の人為的ミスによることがほとんどです。

  • オペレーターへの連絡漏れ
    →コンテナヤードには多くのコンテナが積まれているため、オペレーターに連絡し、検査場所に該当のコンテナを移動させる必要あり
  • 作業漏れ
    →オペレーターに連絡したにも関わらず、多忙で作業を漏らすこともあり
  • 誤搬出
    →他のコンテナと間違い、コンテナヤード外に搬出してしまった

誤搬出以外は、税関職員に待ってもらえばそこまで大きな問題になりません。しかし、誤搬出は別です。外国貨物が保税地域外にあるという時点で、事業所長などが呼び出しを受け、顛末書を提出するレベルです。無許可輸入(関税法第111条違反)に問われる可能性もあります。

2.見本の一時持出、内容点検の申請漏れ

二つ目は「見本の一時持出・関税法第32条(見本持出許可申請)」、「内容点検・関税法第40条(貨物取扱登録)」の申請漏れです。

食品衛生法に基づく検査などが必要な輸入貨物の場合、見本の一時持出の申請を行う必要があります。また輸入申告書に、食品等輸入届出書の受理番号と見本持出許可申請番号を記載する必要があります。そこで、片方しか記載がないと、通関士から指摘が入るでしょう。

また通関士も見逃し、税関職員に指摘されると、無許可搬出に問われることがあります。

内容点検は、インボイスや仕様書などでは貨物の詳細が分からない場合などに行われます。内容点検も事前に税関への届出が必要であり、内容点検の結果を記載する欄が輸入申告書にあります。記載がないと、通関士や税関職員から指摘が入ることとなります。

まとめ

保税地域は、一覧表などを利用して理解することで混乱をさけることができます。実際の輸出入申告の流れをイメージしながら覚えると、より理解しやすくなるのではないでしょうか。

保税地域の定義や種類、期間などは通関士試験はもちろん、実際の通関士の業務にも深くかかわるため、しっかりと理解しましょう。

無料体験学習