通関士の年収

通関士有資格者が就職するだろう業界別の年収についてご紹介します。
通関士の平均年収
通関士の平均年収について、ひとつ大きなポイントがあります。
それは通関士が他の法律系士業、たとえば弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士などとは異なり、「独立・開業できない」国家資格である点です。
2019年4月1日現在8216人もの通関士が全国で活躍しており、そのほとんどが通関業務を行う会社に勤める会社員です。ですので、通関士の収入は一般の会社員と大差はありません。勤務先によっては月1~2万円程度の資格手当が出る場合があり、給料に上乗せされます。
国税庁 平成30年分 民間給与実態統計調査より、2018年給与所得者の平均年収は441万円でした。ここには手当やボーナスを含みます。一般的なサラリーマンといえる通関士も同等の水準、もしくは通関士資格手当が上乗せされるイメージです。
勿論、勤務する会社の事業規模や年齢、雇用形態によって給与額に幅があるでしょう。事業規模つまり資本金が多い会社の平均給与が高くなります。また、出産や育児により時短勤務する者、派遣社員など非正規雇用が多い女性のほうが、男性に比べ給与水準が低くなる傾向があります。統計上男女の給与にはおよそ2倍の開きがあります。
業界別ではどうでしょう。通関士が勤務する会社が含まれるだろう運輸業・郵便業における平均給与は445万円です。電気・ガス・水道などのインフラ関連の業種、金融業・保険業、情報通信業などに比べると低くなっていますが、ごく平均的な水準です。
ただし、海外勤務などより特別な仕事をする通関士は年収1200万円ほど稼ぐ方もいるそうです。
年収の推移
通関士の年収の推移についても、通常の会社員同様です。収入は年齢に応じて、勤続年数を重ねるほどに上昇していき、50代でピークを迎えます。最も給与が高くなる55~59歳、2018年の給与所得者の平均給与は男性686万円です。プラス通関士の経験や実績を考慮して手当が上乗せされます。なお女性は統計上、年齢による差があまりなく300万円前後を推移しています。
これまで日本に根付く年功序列によって、年齢を重ねるごとに年収も上昇していきました。ただ近年、新卒一括採用・終身雇用・年功序列賃金といった日本型の雇用システムが転換点を迎えつつあります。通関士の世界でも年齢ではなく仕事内容に応じた賃金体制になっていくかもしれません。会社では通関士の有資格者であることに甘んじず、スキルアップを図っていく必要があるでしょう。
年収の上げ方
通関士は弁護士や行政書士などとは異なり、独立開業ができません。就職した企業の給与に準じます。では、どのように年収を上げていけばよいのでしょうか。2パターンが考えられます。
まずは、「給料のよい会社に転職する」です。事業規模の大きい会社や、通関士の資格保有を生かした稼げる別の職種に転職するのがひとつです。
なお通関士の専門的知識を生かせるフィールドとして、以下が挙げられます。
- 海運
- 倉庫業
- 商社
- メーカー
検索をしてみると倉庫・運輸業界の平均年収は600万円台前半です。有名企業ですと700万円台半ばのところもあります。国際貨物をワンストップで運送するためのアレンジを行うフォワーダーも多いところで700万円ほどです。 同じ物流の世界でいえば海運業界の給与のほうが高い傾向にあり、平均年収が1000万近くあるところもあります。 世界をまたにかける商社も高収入で、平均年収は1000万を超えます。
事業内容によって会社の給与が異なってきますので、幅広い選択肢から検討するといいでしょう。
もうひとつは「管理職に就く」です。通関士の専門的知識を生かし、社内外の信頼を築きながら、昇進を重ねていくのも手です。
さいごに
通関士の事務的な作業について今後AIが導入されていく可能性があります。 営業的なセンスを含めた総合的な力を有する人材が求められると思われます。通関士の専門的な知識を生かすことができ、なおかつ稼げる場所をみつけていきましょう。