通関審査に必須のフレート・チャージの基礎知識を徹底解説!

更新日:2020年10月23日

貨物船と貨物トラック

フレートやチャージとしてアライバルノーティスに記載されている費用は、いったいどういった費用?輸入通関時に加算すべき費用とそうでない費用の区別はどうつけるの?

通関審査をする際はもちろん、輸出入の見積もり作成や輸出入者からの問い合わせが多いフレートとチャージを基礎から実務に至るまで確認していきましょう。

目次

通関でよく耳にするフレート、チャージとは?

フレートとは、オーシャンフレート(Ocean Freight)の略で、海上運賃を指します。船での海上輸送の対価として、船会社などに支払う輸送費のことです。

チャージとは、サーチャージ(Surcharge)の略で、割増料金のことです。船を運行する上で必要となる燃料などの高騰などを補填する意味合いとして徴収されます。

通関上は、海上運賃と割増料金といった区分さえ知っておけば十分です。海上運賃の構成要素という観点から考えると、海上運賃はタリフ(Tariff)と呼ばれ、「基本運賃(Base Rate)」と表現されます。そして、海上運賃は以下の通り「割増料金」と区別されます。

<海上運賃の構成要素>

海上運賃の構成要素

この海上運賃の額は、船会社もしくはフォワーダーから輸入者に送付される「アライバルノーティス(Arrival Notice : 貨物到着案内)」に記載されています。アライバルノーティスに記載されている請求金額という意味合いで考えると、以下の通り分類できます。

<アライバルノーティスに記載されている請求金額>

アライバルノーティスに記載されている請求金額

輸入通関をする上で、必要に応じて課税価格に加算するのは基本的に以下の2つです。

  • 基本運賃(Base Rate)
  • 割増運賃(Surcharge)

その他のチャージは、船の運航にともない発生する港湾作業に対する費用です。たとえば、コンテナヤードの利用費用(THC)などがこれにあたります。

海上貨物のフレートの基本は主に2つ

コンテナ船で輸送される海上運賃のフレート体系は、以下の2つに分かれます。

  1. コンテナ貨物のボックスレート
  2. 混載貨物の重量・容積建て運賃

1.コンテナ貨物のボックスレート

コンテナ貨物のボックスレートとは、コンテナを1つの箱(Box)と見立てた考え方です。コンテナ1本あたり〇円という基本タリフ(運賃表)が定められています。

運賃は、基本的に輸送先とコンテナのサイズによって変わります。これは、宅配便の輸送の際、60サイズ、80サイズなど箱のサイズと送り先で金額が変わるのと同様です。

ちなみに、コンテナサイズは以下の3つが一般的です。

  • 20F(20フィートコンテナ)
  • 40F(40フィートコンテナ)
  • 40HC(40フィートコンテナの背高タイプ)

輸送船によっては、JR輸送と同じサイズの10F、12Fが輸送できるものもあります。

また、コンテナは一般貨物を積み込めるドライコンテナが基本です。それ以外に以下のようなコンテナもあります。

  • リーファーコンテナ(冷凍貨物を輸送する用の電源を有するコンテナ)
  • オープントップコンテナ(天井が開いたコンテナ。高さや長さが規格外の荷物用)
  • フラットラックコンテナ(屋根部分、両側面、扉面がないコンテナ。大型貨物用)
  • タンクコンテナ(液体や気体を運ぶコンテナ)

2.混載貨物の重量・容積建て運賃

ボックスレートがコンテナ1本を貸し切った料金であるのに対し、混載貨物はコンテナ1本に満たない量の貨物を対象とした運賃体系です。

貨物は、同じ船に乗せる複数の荷主の貨物と合わせて積込まれ、運賃は重量もしくは容積に応じて支払います。そこで重量・容積建て運賃と呼ばれます。

基本的には容積で求められ、1容積トン(1MT or 1M3)あたりで計算されます。たとえば、1容積トンあたりUSD50.00が基本タリフで、輸送貨物が3M3であった場合、以下の金額となります。

USD50.00×3M3=USD150.00

ただし、容積重量と実重量を比較し、実重量の方が重い重量勝ち貨物の場合は、重量建て運賃が採用されます。

輸入時に海上貨物に発生するチャージ一覧と加算要否

輸入時に海上貨物に付随して発生するチャージは以下の4つです。

  1. 船舶燃料価格と連動するチャージ
  2. 通貨変動に連動するチャージ
  3. 貨物取扱に準ずるチャージ
  4. その他のチャージ

それぞれの見出しでチャージの概要と課税価格への加算要否を解説します。

1.船舶燃料価格と連動するチャージ

船舶を輸送する燃料の高騰と連動して発生するチャージのうち主なものは、以下の通りです。

  • BAF (Bunker Adjustment Factor)燃料費調整係数
  • FAF(Fuel Adjustment Factor)燃料割増料率
  • EBS(Emergency Bunker Surcharge)緊急Bunker Additional

これらのサーチャージは課税価格に加算が必要です。輸入取引を成立させるのに必要な費用であることが理由です。

2.通貨変動に連動するチャージ

通貨変動に連動するチャージには、以下のようなものがあります。

  • CAF(Currency Adjustment Factor)通貨変動調整係数
  • YAS(Yen Appreciation Surcharge)円高損失補填料金

これらのサーチャージも同様に、課税価格に加算すべきものです。

これ以外に、PSS(Peak Season Surcharge)季節的な貨物量が激増する時に請求されるチャージもあります。基本的にサーチャージとされるものは加算対象となる可能性が高いです。

新しく導入されたチャージの場合は、アライバルノーティス発行元にどういったチャージであるかをまず確認した上で、税関に加算要否を確認しておくといいでしょう。

3.貨物取扱に準ずるチャージ

貨物取扱に準ずるチャージは、純粋な海上運賃ではなく、コンテナの積卸しや、混載貨物の仕分けなどに要するチャージです。

  • THC(Terminal Handling Charge) コンテナヤードの利用料金
  • CHC(Container Handling Charge) コンテナヤードの利用料金
  • CFS Charge 混載貨物の仕分け料金

THCとCHCは同じ意味合いのチャージです。アライバルノーティスを発行する業者によって、どちらかが適用されます。

これは日本に到着後の作業に対する費用であるため、課税価格に加算されません。

4.その他のチャージ

その他のチャージの代表としては、以下の2つがあります。

  • D/O FEE(Delivery Order Fee) 貨物の引渡の指示を行う料金
  • DOC Fee(Documentation Fee)書類作成料

DOC Feeは輸入の場合、アライバルノーティス作成費用、輸出の場合はB/L(船荷証券)の発行手数料となります。

いずれも、通関とは関係ない費用であるため、課税価格に加算は不要です。

海上貨物のチャージについて、詳しくはこちらの記事もご確認ください。
https://www.foresight.jp/tsukanshi/column/ocean-freight/

コンテナ貨物と混載貨物のチャージの比較と疑問点

コンテナ貨物と混載貨物では、アライバルノーティスに記載されるチャージが異なります。それぞれを比較し、知っておきたい疑問点についても確認しましょう。

両方にあるチャージ

コンテナ貨物と混載貨物の両方で発生するチャージ例は、以下の通りです。

  • Ocean Freight(海上運賃)
  • THC(Terminal Handling Charge)
  • D/O FEE(Delivery Order Fee) 
  • BAFなど、サーチャージ

THCチャージはコンテナ貨物の場合、コンテナ1本あたり〇円と決まっていますが、混載貨物の場合は、海上運賃と同様に重量・容積建てに按分されて請求されます。

混載貨物にしかないチャージ

混載貨物にしかないチャージは、CFS Chargeのみです。

コンテナ貨物はコンテナのまま貨物を引き渡すのに対し、混載貨物はコンテナ内に積載されている貨物を荷主ごとに仕分けする作業が発生するためです。

同じチャージが2つあるのは何故?

アライバルノーティスを見ると、D/O FEEが2つあることがあります。これは、フォワーダーから発行されたアライバルノーティスによくみられます。

海上輸送は、船を運行している船会社(キャリア)と直接運送契約をするケースと、フォワーダーと呼ばれる業者と運送契約をするケースがあります。

フォワーダーは、自らは船の輸送を行わず、輸送を希望する荷主の貨物をまとめて船会社に輸送を依頼しています。いわゆる中継ぎの役割をしているため、運賃などにマージンをのせるだけでなく、D/O FEEを手間賃として請求することがよくあります。

輸出地独自のチャージに注意!

海上輸送に必要となるチャージはご紹介してきた通りですが、輸出地や航路によって特別に必要となるものがあります。

アジア独自のチャージ

アジア独自で発生するチャージのうち、中国航路独自のチャージをご紹介します。

  • SPS(上海港の使用料金)
  • CRC(香港から積載し、アジア域内に輸送する運賃にかかる割増金)
  • DCF(書類作成費用)
  • System Charge(中国からの輸入貨物に加算)

システムチャージは中国発のフォワーダー扱いの輸送でよく発生する費用です。輸出者から払ってもらえなかった費用を、着地側で徴収することを目的としています。そのため、輸出者側に支払いを依頼することで、不要となることもあります。

台湾および韓国独自のチャージも確認しましょう。

  • KAC(台湾の基隆港から輸出する貨物に課される割増金)
  • CNTR TAX(韓国から輸出する貨物に課せられるコンテナへの税金)
  • Wharfage(韓国から輸出する貨物に課せられる埠頭使用料金)

北米など独自のチャージ

以下は、北米などから輸送する場合の貨物にみられるチャージです。

  • SPSC(北米向けに輸送する海上運賃に適用される夏季限定の割り増し運賃)
  • AMS(北米、EU向けの船積みにおいて、24時間ルール対応のための手続き費用)

また、航路が運河を通る際に発生するチャージもあります。

  • STF(スエズ運河を通過する際の費用)
  • PCS(パナマ運河の通行料)

大阪港のみで発生するチャージ

大阪港を揚げ地とする貨物限定で発生するチャージとして「搬出料」があります。これは、コンテナ貨物および混載貨物双方に発生する費用で、荷物を搬出する手間賃のようなものです。

蔵置されている倉庫によって、B/Ⅼ1件あたり1,300円もしくは1,200円が徴収されます。

フレート、チャージにおける疑問点

フレートやチャージに関して知っておきたい3つの疑問点について解説します。

1.フレートやチャージの課金単位は?

フレートやチャージの課金単位はチャージによって異なります。基本的に以下の2つに分かれます。

  • コンテナあたり(混載貨物はM3あたりなど、運賃計算の基礎となる単位毎)
  • B/L 1件あたり

海上運賃やサーチャージ、THCなど、輸送に関する費用および貨物取り扱いに関する費用はコンテナもしくはM3あたりとなります。

書類発行などに関するD/O FEEなどは、B/L1件あたりで請求されます。

2.フレートやチャージに消費税はかからないの?

フレートやチャージには消費税はかかりません。外国貨物の状態である、輸入通関前に発生する費用であるためです。

ただし、貨物を引取のオーダー手数料として発生するD/O FEEのみ課税扱いとなります。

3.フレートなどを支払わないと貨物は引き取れない?

基本的にフレートなどを支払わないと、CYやCFS上屋などから貨物を引き取ることはできません。船会社はフレートなどが未払いの貨物には、D/Oリリースをしません。貨物を引き渡してしまい、最終的にフレートなどが支払われないと取りっぱぐれになるためです。

ただし、いつも同じ船会社を使用しており契約上月払いなどになっている場合は、フレートを都度支払わなくても、引き取ることができます。

まとめ

フレートとチャージに対して理解することは、通関をする上で課税価格に加算するかどうかを判断する上でも重要です。

また、通関業者がアライバルノーティスの費用を立て替えることも多いため、後日細かく何の費用かを確認されることもあります。

通関士という仕事をしていく上で、フレート・チャージの基礎知識もしっかり持っておきましょう。

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この記事の監修者は
奈良優芽花(なら ゆめか)

合格を勝ち取るイメージを持ち、思い描く未来へ進みましょう
【出身】埼玉県
【経歴】2019年通関士資格取得 運送会社の通関部門に航空貨物の通関担当を経験した後、通関士としての勤務経験を経て通関士資格講師へ
【趣味】カフェ巡り
【座右の銘】暗闇を呪うより一本の蝋燭に火を点せ
フォーサイト公式YouTubeチャンネル「通関士への道」

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