委託加工貿易とは?対象貨物や通関士の審査のポイントを解説!

委託加工貿易とは?

委託加工貿易の通関は難しいのでは…このように思われる方も多いかもしれません。一般的な貿易の通関に比べて、少し手間がかかりますが、ポイントさえおさえれば敬遠することはありません。

顧客から相談を受けることも多い委託加工貿易の基本と対象貨物、実務について詳しく解説します。

目次

通関士が審査時に注意したい!委託加工貿易とは?

委託加工貿易とは、委託者が国外の受託者に材料を提供し、その材料を使用した加工を依頼する貿易形態を指します。簡単に流れを確認しておきましょう。

  • 委託者は、受託者に向けて材料を無償で輸出する
  • 受託者は、材料を輸入通関後、材料を使用して加工および組み立てを行う
  • 受託者は、完成した商品を委託者に向けて輸出する
  • 委託者は、商品を輸入通関後、受託者に加工賃を支払う

上記に太字で示した通り、輸出通関と輸入通関が輸出地および輸入地でそれぞれ2回発生するのが特徴です。依頼する通関業者を変える場合もありますが、通関をスムーズに進めるために一般的には同じ通関業者に依頼するのが一般的です。つまり、通関士は1つの委託加工貿易で2回審査を扱うこととなります。

また、委託加工貿易では貿易形態によって輸出入者との関係が変わります。以下で確認しましょう。

  1. 直接貿易
    • 委託加工貿易の委託者と輸入者が同じ
      例)委託者=輸入者A社
    • 委託加工貿易の受託者と輸出者が同じ
      (例)受託者=輸出者B社直接貿易
  2. 間接貿易
    • 委託者と輸入者が異なる
      (例)委託者:C商社
      輸入者:A社
    • 受託者と輸出者が同じ
      (例)受託者:輸出者B社間接貿易
➡通関士の難易度についてはこちら

委託加工貿易の種類は2種類!図解で解説

委託加工貿易には、「順委託加工貿易」と「逆委託加工貿易」の2種類があります。それぞれの違いを解説します。また一般的な貿易形態との違いについても知っておきましょう。

1.順委託加工貿易

順委託加工貿易とは、国外から材料を輸入し、その材料を使用して加工・組み立てした商品を輸出する方法です。日本には資源が少なかったため、委託加工貿易初期の頃はこの形態が主流でした。

以下の図でイメージしてください。

順委託加工貿易

2.逆委託加工貿易

逆委託加工貿易は、順委託加工貿易の逆です。材料を国外に輸出し、加工・組み立て後完成した商品を、再度輸入する流れとなります。

労働賃金が安価な後進国で加工・組み立てをすることで、国内生産よりも安く商品を作ることができるのがメリットです。現在では委託加工貿易といえば、この逆委託加工貿易が主流となっています。

図で確認しましょう。

逆委託加工貿易

初期は、中国を相手国として逆委託加工貿易を行う日本企業がほとんどでした。しかし、中国経済の成長による加工賃の高騰とリスク分散のため、相手国はタイやベトナムといった東南アジアへ移行しました。

現在では後発開発途上国とされる、カンボジアやバングラデシュなどを相手国とする企業が増えています。

加工貿易と一般的な貿易の違いは?

委託加工貿易における「加工貿易」と一般的な貿易の違いは、大きく分けて2つあります。

  1. 何の対価を支払うか
    • 委託加工貿易
      →加工及び組み立てに要する対価
    • 一般的な貿易
      →取引する商品に対する対価
  2. 1つの契約に対する通関の回数
    • 委託加工貿易→2回(材料の輸出、商品の輸入)
    • 一般的な貿易→1回(商品の輸入)

皮の委託加工貿易は承認が必要?

皮など一定の材料を使用する委託加工貿易を行うためには、事前に経済産業大臣の承認が必要です。材料の輸出通関を行う前までに「委託加工貿易契約による輸出承認申請書」を提出し承認を受けなくてはいけません。

基本的に委託加工貿易では材料を無償提供し、受託者には加工賃のみを支払います。しかし、材料を有償提供する場合(材料費を受託者に請求する)も同様に経済産業大臣の承認が必要です。そのため、通関士は輸出通関時にインボイスが有償、無償に関わらず、承認を要する貨物に該当するかどうか、また正しく承認を取得しているかを審査します。

もし承認が必要な貨物であるにもかかわらず、承認を取っていない場合は、輸出者に承認を取ってから通関を依頼するように伝えます。

これを見逃して輸出申告をしてしまうと、輸出貿易管理令第7条等にもとづき、法令の規定に従っているかどうかの判断が下され、輸出者は行政制裁の対象となることがあります。審査した通関士も同様に、非違事例としてペナルティを受ける可能性があります。

1.経済産業大臣の承認が必要な品目

経済産業大臣の承認が必要な品目どうかの判断基準は、以下の2点です。

  • 委託する加工の内容
    →革、毛皮、皮革製品(毛皮製品を含む)およびこれらの半製品の製造
  • 輸出する材料
    →皮革(原毛皮および毛皮を含む)および皮革製品の半製品

2.承認が不要となる2つのケース

経済産業大臣の承認が必要な品目に該当する場合でも、以下の2つのケースでは承認が不要です。

  1. 関税暫定措置法第8条第1項にもとづく関税暫定措置法施行令第22条に定める税関長の確認を受ける貨物(いわゆる暫8対象貨物)
  2. 委託加工貿易の契約価格が100万円以下の貨物

    100万円以内という価格は「輸出申告価格」でなく、「委託加工貿易の契約価格」です。「委託加工貿易の契約価格」とは、承認が必要な品目のみの価格ではありません。承認が必要な皮以外に使用する材料などもすべて含んだ価格となります。

    1契約にかかる材料を複数回に分けて輸出する委託者もいます。ただし、1契約が100万円以上であれば、1回の輸出申告価格が100万円以内におさまっていても、不要とはなりません。通関士は委託加工貿易にかかる輸出申告を審査する場合は、経済産業大臣の承認書だけでなく、委託加工貿易の契約書もあわせて確認することが大切です。

    (例1)
    • 委託加工貿易の契約価格  90万円
    • 輸出申告価格       90万円
      →承認は不要
    (例2)
    • 委託加工貿易の契約価格  150万円
    • 輸出申告価格1回目    80万円
    • 輸出申告価格2回目    70万円
      →承認が必要

3.申請窓口は?

経済産業大臣の承認を受けるための申請窓口は、最寄りの経済産業局です。

ただし、ワシントン条約対象貨物の革、毛皮、皮革製品の委託加工を行う場合は、東京にある「経済産業省 貿易経済協力局 貿易管理部貿易審査課 野生動植物貿易審査室」が窓口となります。

申請から承認までは、書類なども問題がなければ通常3日程度で完了します。ただし、ワシントン条約対象貨物の場合は、窓口が1か所であり、申請が込み合うと時間を要する可能性があります。

4.経済産業大臣の承認は2タイプ

経済産業大臣の承認は、包括承認と個別承認の2タイプあります。詳しくは以下でご説明します。

包括承認

包括承認では、一度の申請で原則として3年間有効な承認が得られます。包括承認は以下の2つを満たすことが条件です。

  • 該当する材料の輸出が、一括承認を行っても国内産業に影響を与えないこと
  • 代表者を輸出業務の統括管理責任者として、経済産業大臣の登録を受けていること

包括承認は一度行った後は、新規ではなく更新することができます。ちなみに以下の貨物は包括承認が受けられないため、注意しましょう。

  • 北朝鮮を仕向地として輸出する貨物
  • ワシントン条約対象貨物(輸出令別表第二の36)
  • 希少野生動植物の個体・卵・器官(輸出令別表第二の37)
  • 国宝、重要文化財等(輸出令別表第二の43)

個別承認

個別承認とは、委託加工貿易の契約の都度、経済産業大臣の申請を受ける方法です。包括承認のように条件がないため、頻度が少ない場合などは個別承認を利用することが多いようです。

委託加工貿易の通関時のポイントと疑問点

委託加工貿易が関係する通関時のポイントと疑問点を分かりやすく解説しましょう。

1.委託加工貿易のインボイス価格は加工賃

委託加工貿易における輸入時のインボイス価格は、一般的な貿易の場合と異なりますので注意しましょう。

  • 輸出時のインボイス価格
    →委託者が提供する材料の価格
  • 輸入時のインボイス価格
    →受託者が加工および組み立てをするのに要した加工賃

2.委託加工貿易の関税はインボイス価格のみ?

委託加工貿易にかかる貨物を輸入する際も、一般的な貿易取引と同様に関税が課せられます。ただし、委託加工貿易の場合、関税はインボイス価格だけに課せられるわけではありません。なぜなら、前述した通り輸入時のインボイス価格は加工賃だけであり、それに要した材料費などが含まれていないからです。

そのため、輸出時に無償提供した材料の金額を加算して、関税が課せられる課税標準を算出する必要があります。以下の計算式を用いて行います。

課税標準=インボイス価格+運賃、保険など加算費用+委託者が無償提供した輸出材料費

通関士は輸入申告の審査時には、該当する輸出許可書やインボイスなどと照らし合わせて審査を行います。

3.他社からの無償提供材料にも関税がかかる

委託加工貿易にかかる輸入商品に、委託者から提供した以外の他社の無償提供材料が使用されていることがあります。この場合も、委託者が無償提供した材料と同様に関税がかかります。

通関士は、委託者から他社からの無償提供材料がないかを確認するとともに、ある場合は請求書などの金額が分かる資料を取り寄せる必要があります。

4.委託加工貿易の有償支給材料の扱いは?

委託加工貿易において、委託者が有償支給した材料には関税はかかりません。なぜなら受託者は材料を委託者から購入しているため、必然的に加工賃に材料費も加算していると考えられるからです。

通関士は、材料を他社で輸出通関をしている場合などは、特に注意して確認する必要があります。無償提供材料だと思い課税対象に加えたものの、後から有償提供だったことが分かり、委託者から更正の請求を依頼されることもあります。

基本的に、税関は修正申告には比較的応じてくれますが、税金を返す更正の請求には応じづらい性質があり、トラブルになりかねません。

5.経済産業大臣の承認が必要な貨物の通関のポイント

経済産業大臣の承認が必要な貨物の通関は、一般的な通関にない以下の2点を行います。

  1. 委託加工貿易契約による輸出承認書への裏落とし
    輸出時には承認書の裏面の以下の欄に記載が必要です。
    • 関税申告番号(輸出申告番号)
    • 商品名(輸出する商品の名前)
    • 船積み数量(輸出する数量)
    • 送り状金額(インボイス価格)
    「通関年月日および税関記名押印」の欄には上記の記載事項と輸出申告書の内容を確認の上、税関が確認印を押します。通関士および通関従事者は輸出申告時もしくは輸出許可後に、忘れずに税関に押印をもらう必要があります。

    また、輸入時には承認書の裏面の以下の欄に記載が必要です。
    • 関税申告番号(輸入申告番号)
    • 商品名(輸入する商品の名前)
    • 送り状数量(インボイスの数量)
    • 送り状金額(インボイス価格)
    • 通関数量(通関数量)
    • 通関金額(課税価格)
    「通関年月日および税関記名押印」の欄は、輸出時と同様に輸入申告書の内容とを確認の上、税関が確認印を押す箇所です。通関士および通関従事者は忘れずに税関に押印をもらう必要があります。
  2. 輸出入申告への、委託加工貿易契約による輸出承認書番号の記載

    輸出申告時は、「輸出承認証等識別」の欄にEL NO.1234567のように承認番号を記載します。また輸入申告時には、「輸入承認証等識別」の欄にILNO.1234567のように記載が必要です。

まとめ

委託加工貿易は、材料を提供し加工や組み立てをしたものを再度輸入する貿易形態です。経済産業省の承認が必要な貨物には、承認申請などが必要ですが、基本的に顧客が行う手続きです。

ただし相談などを受けることもありますので、概要を知っておくことが大切です。通関時には、裏落としと輸出入申告書への記載を忘れないように気をつけましょう。