通関士と密接に関係する「税関職員」の権限を理解しよう

「税関職員」の権限

関税法などの法律の実施に支障を及ぼさないことを目的にして、税関職員には、輸出または輸入された貨物について、その関係者に質問をし、それらの帳簿書類を検査する権利が与えられています。そしてこれら税関職員の質問に対して虚偽の答弁等を行った場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されることもあります。

日本の輸出入を円滑に進めるために必要不可欠な、この税関職員の権限を詳しくお伝えします。

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目次

税関職員の権限とは

税関職員は、職務の遂行の上で必要とされる時には、その範囲内において輸出入者や通関業務を取り扱った通関業者、輸出入の委託者、不当廉売された貨物の国内における販売を行ったものに対し、質問し、貨物もしくは帳簿書類その他の物件を監査し、またはその物件の提示もしくは提出を求めることが出来ると規定されています(関税法第105条)。

調査の目的や対象者、調査の方法

これら税関職員の権限をまとめると、以下のような形となります。調査の「目的」と「対象者」、そして「方法」をしっかりと理解しておくことが大切です。

調査の目的 ①輸出入された貨物の通関手続きに疑義が生じて再調査する必要がある場合
②その他輸出入された貨物の通関手続きの正否等を事後に確認する必要がある場合
調査対象者 ①輸出入者
②輸出入に係る通関業務を行った通関業者
③輸出入の委託者
④その他関係者
調査の方法 ①調査対象者に対する質問
②調査対象者が保存している帳簿や書類の検査

この中で重要なのは、調査対象者が保存している帳簿や書類の検査に関してです。

これは税関職員に限らず税関長の権限としても付与されていますが、税関長がこれらの行為を行おうとする場合には、予め、輸出入者等にその旨を通知した上で、調査を開始する日時等を記した書面を調査開始日の前に交付することが規定されています。

この制度は平成25年から実施されているためまだ歴史は深くありませんが、日々多種多様な貿易形態が顕在化する中で、納税者の便宜の向上を図ることはもちろん、各種調査の実効性や効率性の向上を図りたいという目的が容易に想像できます。

尚、税関長が違法または不当な行為を容易にし、正確な課税標準の把握に困難をきたすと認められる場合には、これらの通知は要しないこととされています。

帳簿の備え付け等に関して

もう少し、今度は輸入者の立場からこの税関職員の権限に関して見ていきましょう。

税関職員に帳簿や書類の検査の権利が付与されているということはすなわち、輸入者にとっては帳簿の備え付け義務があるということと同義になります。

これまでは帳簿書類の具体的な種類等の規定はありませんでしたが、輸入許可後の検査の円滑化や社会悪物品の水際取り締まりの強化と言う観点から、最近になって、この帳簿書類に関して具体的な内容が明記されることとなりました。関税法第94条第1項を下記の通りご紹介しましょう。

申告納税方式が適用される貨物の輸入者は、輸入許可貨物の品目、数量及び価格、仕出人の氏名又は名称並びに許可の年月日及びその許可書の番号を記した帳簿を備え付け、かつ帳簿及び輸入許可を受けた貨物の契約書、仕入書、運賃明細書、保険料明細書、包装明細書、価格表その他…(中略)…原産地証明書等の書類を保存しなければならない

国家試験では上記の条文をそのまま空欄の選択式で出てくる可能性も少なくありませんので、特に太字の個所に関しては一字一句正しいワードで理解しておきたいところです。

また、帳簿については7年間、その他の書類については5年間の保存期間が規定されているというのも併せて覚えておくようにしましょう。

輸入事後調査制度とは

税関職員の権限のもう一つに、輸入事後調査制度も挙げることが出来ます。

輸入事後調査とは、税関職員が輸入者の事務所等を訪問の上で、輸入業務や経理事務の担当者に輸入取引の形態や代金の決済方法等について質問をし、かつ必要があればその他の関係者に対しての調査を行い、決済価格を確認や送金事実の確認をすることを言います。

貿易量の増大に伴い、関税については基本、納税者の行う納税申告を信頼して納付すべき税額が決定する申告納税方式が導入されています。一方で輸入者がこの正しい納税申告をするためには、関税評価や品目分類などに関する専門的知識が求められることから、必ずしも法令に則った正しい申告が行われているとも限りません(故意か過失かは別として)。

これらのことから、適正かつ公平な課税を実現するために、輸入貨物の通関後に納税申告が正しく行われているかを確認し、その上で不適切な申告が発見された場合には事後でも良いので正しく適切な申告を行うように指導する仕組みとして、税関職員による輸入事後調査の権利が付与されているのです。

具体的な罰則の例

輸出入者が各種違反を犯した際に、具体的にどのような量刑に処されるのかを、関連条文とともに理解することが大切になります。一部ですが重要な個所をピックアップしましたので、試験対策として役立てて頂ければ幸いです。

関税法第108条の4第1項・2項 輸出してはいけない貨物を輸出した上で積戻し規定に違反した者 10年以下の懲役または3千万円以下の罰金
関税法第110条の第1項~3項 偽りその他不正行為により関税を免れ、又は関税の払戻を受けた者 10年以下の懲役または1千万円以下の罰金
関税法第109条第1項・2項 輸入してはならない貨物を輸入した者 10年以下の懲役または3千万円以下の罰金
関税法第109条の2第1項・2項 輸入してはならない貨物に関して保税地域に置き、又は外国貨物のまま運送した者 10年以下の懲役または1千万円以下の罰金
関税法第111条 無許可で輸出入する罪及び偽りの申告をする者 5年以下の懲役または5百万円以下の罰金
関税法第112条の2 用途外使用等をした罪 1年以下の懲役または2百万円以下の罰金
関税法第113条の2 特例申告書を提出しない罪 1年以下の懲役または2百万円以下の罰金
関税法第114条の2 虚偽の書類を提出した罪 1年以下の懲役または50万円以下の罰金
関税法第115条の3 専門委員が秘密を漏洩する罪 6月以下の懲役または50万円以下の罰金

まとめ

これまで述べてきた税関職員による権利の中で、関税法又は他の関税に関する法律の規定による税関職員の処分に関しては、再調査の請求及び審査請求の規定の適用範囲に関しては、その税関職員の属する税関の税関長がした処分とみなされます。

つまり対象となる輸出入者や関連者は、それらの処分または不作為により権利や利権を侵害されたという形で税関長に対して「不服申し立て」を行うことが出来るのです。

不服申し立ての制度の詳細は別の記事で触れていますので、併せて参考にしてみてください。
https://www.foresight.jp/tsukanshi/column/complaint/

今回ご紹介した税関職員の権限と、この不服申し立ての制度は非常に関連深い内容となっておりますので、繋がりを持って学習していくことでより理解を深めるようにしましょう。

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