通関士をも救う!?事前教示制度の概要と利用方法を徹底解説!

事前教示制度の概要と利用方法

事前教示制度とはどんな制度?メリットとデメリットが知りたい!このような方のために、具体的な利用方法などを詳しく解説します。事前教示制度は通関に携わっていると、日常的に利用する手続きでもあります。注意点とあわせてご確認ください。

目次

新規の通関には必須!事前教示制度とは?

事前教示制度とは、事前に税関に輸入手続きについて照会を行い、税関より回答を受けることができる制度です。

はじめて日本へ輸入する商品など新規の輸入通関の前や、減免税の適用を受けたいなど特殊な輸入形態を利用する場合などに便利です。また、新規ビジネスにあたり関税率が事前に分かると、今後の輸入計画や販売計画を立てるのにも役立ちます。

事前教示制度は全部で4種類

事前教示制度で照会ができる分野は大きく分けて4種類あります。具体的にどのようなことに対して照会できるのか知っておきましょう。

1.品目分類関係

1つ目は品目分類関係です。

輸入しようとする貨物の統計品目番号と課される税率を照会することができます。

たとえば「ヒーター付ネックウォーマー」という商品を輸入しようとした際に、2つの特性を持っていると品目分類に悩んでしまいます。ヒーターとして分類すべきかネックウォーマーとして分類すべきか判断しかねることでしょう。

実際の事例をみると、ヒーターではなくネックネックウォーマーの特性が強いと判断され、以下のような判断が下されています。

統計品目番号 6117.10-200
税率  基本8.4%

一方、ヒーターとして分類した場合、84類もしくは85類となり、関税0%となる可能性大です。

事前教示を利用せず、勝手な判断でヒーターとして分類するだろうと思い込み、関税0%でエンドユーザーに見積もりを出してしまうとどうでしょうか?実際課される関税8.4%分の利益が減少するもしくは、赤字となる可能性があります。

2.関税評価関係

2つ目は関税評価関係です。

インボイスや運賃明細書だけでは課税価格の計算ができないような輸入申告について事前に税関に照会ができます。

実際に事前教示された事例をみてみると、「買手が第三者に支払う業務手数料の取扱いについて」の照会があります。「業務委託契約」に基づき支払われる手数料が輸入貨物の課税価格に算入されるかどうかが争点となり、結論として、課税価格には参入する必要がないという判断が下されています。

これも事前に照会をせずに、もし課税価格に評価として加算していると、税関の書類審査時に不要な評価申告をしていると、指摘を受けることとなります。

また評価しなくてはいけないものを、不要だと判断し評価しなかったばかりに、税額が過少となり、過少申告加算税が課されることも考えられます。

評価関係は、輸入申告時の書類審査や事後調査でも指摘がよく入る部分です。貿易取引を誰でもが手軽に行うようになったがために、間に仲介人が複数入るなど貿易形態が複雑となってきています。そこで、正しい評価申告を行うためには、事前教示が重要となります。

3.原産地関係

3つ目は原産地関係です。

これは輸入しようとしている貨物の原産地の判断と、特別特恵制度などを利用できるかどうかを判断するものです。

実際の照会事例を見ると、女子用スカートをタイで縫製させた後、日本に輸入する際の原産地をどこと判断するかといったものがあります。主原料となる表地に使用する綿製織物は日本で織られた生地ではあるが、輸入されるのは生地の状態ではなくスカートという製品になっており、タイを原産地とするという判断が下されています。

タイが原産地と判断されたことから、EPAの日タイ協定が適用され、特恵税率が適用されます。ただし、もし品目別規則を満たしていないにも関わらず、特恵税率を利用してしまった場合、非違となります。

4.減免税関係

4つ目は減免税関係です。

輸入にあたって、利用できるのであれば減免税制度を利用したいといった場合に、減免税制度を利用できるかどうかを照会するものです。

たとえば、「注文の取集めのための見本の無条件免税(関税定率法第14条 第6号)」が適用できるかどうかの判断などで利用できます。

実際の照会事例をみると、カーテンやクッションなどの生地見本としてブック型となっている見本帳に対する問い合わせがあります。小さくカットし台紙に貼り付けている生地は、見本以外には使用できないと判断され、注文の取集めのための見本の無条件免税が適用されるとの回答がなされています。

一方で、家電用品など実際の販売商品と全く同じであるものを、注文の取集めのための見本だと主張し、無条件免税を適用したいと考える輸入者がいます。しかし、実際その見本は販売に転用することも可能であり、実際に家電製品としての機能があるものであれば、見本と判断することはできません。

これらを誤って注文の取集めのための見本の無条件免税を適用して輸入申告すると、免税にならないばかりか、非違として注意を受ける羽目となります。

事前教示制度を利用するメリットとデメリット

事前教示制度を利用するメリットと考えうるデメリットをご紹介します。

事前教示制度を利用するメリットとは?

事前教示制度を利用するメリットは主に2つあります。

1つ目は輸入計画、販売計画を事前に建てられることです。関税がどのぐらいかかるのか?加算すべき評価はあるのか?特恵税率を使用できるのか?また減免税が利用できるのか?が分かれば、関税の経費化を明確にすることができます。

2つ目は、輸入通関をスムーズにでき、貨物の早期引取が可能となる点でしょう。品目分類や評価の有無、特恵税率適用の可否、減免税適用の可否の判断には時間を要することもあります。場合によっては、輸入申告を請け負った税関官署では判断できず、本関に問い合わせ、協議が必要となることもあります。

しかし、事前にクリアになっていればそれを元に税関も審査を行うため、審査待ちが無くなるでしょう。

事前教示制度にはデメリットはある?

事前教示制度を利用することに表向きのデメリットはほぼありません。

しかし実務的に事前に照会をかけたがために、税関がよりしっかりと審査が必要だと判断し、税関検査にかかる率が高くなることがあります。

事前教示では輸入者符号や輸入予定官署を記載する欄があります。そのため、税関があえて税関検査を指定することが可能となります。

事前教示制度の3つの利用方法と窓口

では、事前教示制度を利用する3つの方法と窓口についてみていきましょう。

1.文書による事前教示

1つ目は文書による事前教示です。

文書による事前教示を行う際には、既定の税関様式の使用が必要です。税関様式は、税関窓口に直接持参する場合と、インターネットを利用して行う場合で異なります。インターネットを利用して文書による事前教示が行えるのは、見本などを提出する必要がない場合に限ります。

  • 税関窓口に直接持参する場合
    →税関様式C第1000号
  • インターネットを利用して行う場合
    →税関様式C第1000号-13

これらの様式は税関のホームページからダウンロードすることができます。

文書を利用した事前教示では、輸入しようとする貨物の詳細が分かるものを一緒に提出する必要があります。具体的には以下のようなものです。サンプルを提示できるのがベストですが、ない場合は以下で代用します。

  • 写真
  • 図面
  • 仕様書

照会に要する原則的な回答日数を以下にご紹介します。

  • 品目分類関係、原産地関係、減免税関係
    →30日以内
  • 関税評価関係
    →90日以内

回答は「事前教示回答書」という文書で示され、回答から原則として3年間尊重されます。そのため、輸入申告時に提出書類として添付することをおすすめします。

2.インターネット(電子メール)による事前教示

2つ目は電子メールによる事前教示です。

電子メールを使用し、必要事項を電子メール本文に記載の上、税関の事前教示用メールアドレスに送付する方法です。これは文書による事前教示をインターネット経由で行う方法とは別の手続きなので、混同しないようにしましょう。

必要事項は以下の内容です。

(1)照会日
(2)照会者の氏名、住所、連絡先電話番号及び連絡先メールアドレス
(3)輸出入者符号(ある場合)
(4)貨物の名称、単価及び製造地
(5)輸入予定官署
(6)照会貨物に係る事前教示実績の有無及び類似貨物に係わる輸入実績の有無
(7)照会貨物の説明(製法、性状、成分割合、構造、機能、用途、包装等)
(8)照会者の関税率表適用上の所属区分等に関する意見の項目

この際も、インターネットによる文書の事前教示と同様に、写真や仕様書などを添付することをおすすめします。

回答までに要する日数は、1~2日程度です。早ければ即日回答されます。ただし、文書による事前教示と違って、回答内容は輸入申告の審査時は尊重されません。つまり、あくまでも参考であり、回答内容と判断が異なるリスクがあります。

3.口頭の事前教示もあり?

3つ目は口頭による事前教示です。

最寄りの税関官署にサンプルやインボイスなどを持ち込み、口頭で行う事前教示です。電子メールを使った事前教示と同様に、1~2日程度で回答をもらうことができます。簡単なものであれば、その場で回答をくれることもあります。

ただし、文書による事前教示と違って回答内容は絶対ではありません。輸入申告時に回答とは違った結果となることもあります。

4.事前教示窓口はどこ?

文書による事前教示の窓口は、原則として本関に行うのが基本です。ただし、ここでいう本関は必ずしも東京税関ではありません。輸入地を管轄する税関の本関という意味合いです。

たとえば、以下の県および市町にあたる場合が東京税関管轄となります。

山形県、群馬県、埼玉県、千葉県のうち市川市(財務大臣が定める地域に限る)、成田市、香取郡多古町および山武郡芝山町、東京都、新潟県、山梨県

本関が遠方で出向くことができない場合は、最寄りの税関官署でも受け付けてくれます。

電子メールを利用した事前教示も、税関管轄ごと決められたメールアドレスがありますので、確認して送付するようにしましょう。

事前教示制度を利用する際の注意点とは?

輸入申告時の審査をスムーズにするために、また申告の誤りによって非違となってしまわないため、事前教示制度は非常に有効です。実際に利用する際の注意点を知っておきましょう。

1.事前教示制度の効力と期限

事前教示制度の効力は、文書による「事前教示回答書」のみ3年間有効です。それ以外の電子メールや口頭での事前教示の回答は絶対ではありません。つまり有効性はありません。

しかし事前教示をすることで、税関の審査の考え方も理解でき、通関士の審査がしやすくなります。また、回答した税関審査官の名前を聞いておけば多少なりとも回答が有効となるでしょう。

「事前教示回答書」は3年間有効ですが、3年を過ぎると輸入審査時に尊重されなくなるので更新することをおすすめします。また3年以内であっても、法改正などで考え方が変わった場合は、法改正が優先されるので注意しましょう。

2.事前教示制度の結果が早く欲しい時

文書による事前教示の回答は30日~90日と時間を要します。長期的な輸入計画を立てている段階であればいいのですが、既に貨物が日本に到着していたり、2~3日以内には日本に到着したりする段階で、判断に困っているということも少なくありません。

その場合は、まず申告予定地の税関官署を管轄する税関の本関に電子メールによる事前教示を行います。そして、その後電話で確認しましょう。基本的に税関官署は上となる本関の判断に従う傾向にありますので、最寄りの税関官署に尋ねるより、有効かつ迅速な対応が期待できます。

3.事前教示は通関士がすべき?

事前教示は必ず通関士がしなくてはいけないとは限りません。以下の人であれば事前教示を利用できます。

  • 輸入者
  • 輸出者
  • 貨物の製法、性状等を把握している利害関係者
  • 代理人(通関士)

ただし、輸入者で関税法など法律に長けている人は少ないものです。また手続きに不慣れなことが多いため、通関士もしくは通関従事者が代行するのがいいでしょう。税関の審査の意図も理解でき、後の審査もスムーズとなります。

まとめ

事前教示制度は、通関をスムーズにし、かつ非違を避けるために有効な手段です。利用時のタイミングや内容によって、文書もしくはインターネット、電子メールなどを使い分けることをおすすめします。

面倒くさいと思いがちな事前教示制度ですが、上手に利用すれば大きなメリットがあります。

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