原産地規則にまつわるキーワードまとめ

原産地規則にまつわるキーワードまとめ

原産地規則にまつわるキーワード
目次

原産地規則とは?

原産地規則とは、貨物の原産国を決定するためのルールのことです。
EPA税率や一般特恵関税(GSP)を適用するための「特恵原産地規則」と、
WTO協定税率の適用や貿易統計などのための「非特恵原産地規則
の2種類に大別されます。

原産地規則は、
生産される産品が原産品であると認められる「原産地基準」 と、
税関に対して原産性を証明する「原産地手続き
の主に2つの要素で構成されます。

経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)
自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)のような関税撤廃や関税の引き下げなど通商上の障壁を取り除くだけに留まらず、人の移動や知的財産権の保護、投資など、幅広い分野での連携を掲げた協定のこと。

一般特恵関税(GSP:Generalized System of Preferences)
開発途上国・地域を原産地とするものの輸入については、一般よりも低い関税率を適用することにより、途上国の経済発展に寄与する制度のこと。

WTO協定税率
世界貿易機関(WTO:World Trade Organization)に加盟する国と地域に対して、WTO協定に基づき一定以上の関税を課さないことを約束(譲許:じょうきょ)している税率のこと。

ちなみにWTOには2018年1月末時点で164の国と地域が加盟しています(外務省)。

原産地基準

特恵税率を適用するためには、輸入貨物が本当にその特恵税率を適用できる国・地域の原産であるか?証明する必要があります。

原材料の調達や生産がすべてひとつの国のなかで完結するようなものであれば、○○産と簡単に判断することができますが、複数の国が生産に関わっている場合、原産地が一体どこになるのか?ルールを決めておく必要があります。そのため、協定や物品(統計品目番号)ごとに原産性が認められるか否かの線引き、基準が細かく決められています。

また、運送の途中で原産品としての資格を失っていないか?積送(せきそう)基準も重要なファクターです。原産国から輸入国へと直接運送されるもの であれば、原産性が失われることはありませんが、第三国を経由する場合、第三国において原産性を維持できる取扱いと、原産性が失われてしまう取扱いについて基準を設ける必要があります。

特恵税率
特定の国や地域の産品に対して与えられるほかの国よりも低い税率のこと。具体的には、EPA相手国を対象とした「経済連携協定税率(EPA)」や、開発途上国などを対象とした「一般特恵税率(GSP)」が挙げられます。

原産地手続き

原産地規則では、原産品の認定基準に加え、特恵税率を適用するための手続きについて規定しています。

◇原産地の証明方法

  • 輸出地の権限を有する機関が発給する締約国原産地証明書の提出による
    「第三者証明制度」…特恵関税
  • 輸出国で権限ある機関から認定を受けた輸出者が作成したインボイスによる
    「認定輸出者制度」…スイス協定、ペルー協定、メキシコ協定
  • 輸入者などが作成した原産品申告書などによる
    「自己申告制度」…オーストラリア協定、TPP11,日EU EPA、日米貿易協定

TPP11,日EU EPA、日米貿易協定”以外”のEPA協定では原産地証明書による証明制度が利用されています。スイス・ペルー・メキシコ・オーストラリア協定は第三者証明制度でも可です。

◇事後的な原産性の確認と特恵否認手続き

税関が輸入通関後にその貨物の原産性を確認する「事後確認」についても規定されています。輸入者に情報提供要請をしたり、事業所に個別訪問して事後調査を行ったりします。不足があれば輸出者や生産者に対して情報提供要請や現地訪問による検証を行う場合もあります。

これらの事後確認を経てもなお貨物の原産性が確認できなければ、特恵税率の適用が否認されることとなり、内容によっては過少申告加算税などの対象にもなります。

◇運送の要件(積送基準)を満たすことの証明手続き

非原産国である第三国を経由した場合、原産国→日本の通しB/L(船荷証券)の写しなど運送要件証明書によって、積送基準を満たすことを税関に証明します。

ちなみに、WTO協定税率適用など非特恵原産地規則においては、通常、原産地証明書の提出など特別な手続きは不要です。

通関士試験の輸入申告書問題において、特恵関税やEPA税率を適用する場合は、問題文のなかで要件を満たすなどと記されますが、WTO協定税率の適用に関しては何も触れられていません。WTO税率適用に際して特別な手続きが要らないことが背景にあるのかもしれません。

話が戻りますが…

2018年以降に発効されたTPPと日EU・EPAでは、原産地を証明する方法として、輸入者などが自ら原産品申告書を作成して原産地を証明する「自己申告制度」が導入されています。

輸出地の権限を有する機関が発給する締約国原産地証明書の提出による「第三者証明制度」ではないので、原産地規則のルールに従うと輸入貨物の原産国が一体どこになるのか?輸入者などの当事者が基準と照らし合わせて、原産品申告書を作成する必要があります。

そのため、原産地規則の資料から品物の原産性を問うスキルが重視され、近年の通関士試験において、原産地規則の資料を読み解く問題が増えているのかもしれません。

コラム後半では、原産地基準・積送基準・原産地手続きのうち、原産地基準にまつわる用語にフォーカスして話を展開していきます。

原産地の認定基準に関連する用語まとめ

2018年度の通関士試験では通関実務科目の最終問題に突如、VA, PSR,CTC,DMI,WO、これら原産性の基準に係る記号と意義の正しい組み合わせを選択させる問題が出されました。その他の関連する用語と併せてご紹介します。

  • WO
    Wholly Obtained …完全生産品
    締約国で生まれ育った家畜、締約国で得られた原油など、生産が一つの国のみで行われるものです。間違いやすいものとして、締約国における製造において生じたくずも完全生産品です。
  • PE
    Produced Entirely …原産材料のみから生産される産品
    1次材料は原産材料でも2次3次材料を遡ると非原産材料が使用されているもの。
  • PS
    Product Specific …実質的変更基準を満たす産品
    1次材料に他の国の材料(非原産材料) を直接使用し、生産されるもの。大きな変化を伴う加工が行われ製造された、つまり、大きな変化=実質的変更 が起こった国を原産地とする考え方に沿って、品目別規則などの要件を満たすもの。
  • PSR
    Product Specific Rule …品目別規則
    原産地をどのような基準で判断するか?EPA協定ごとに、品目(HS番号)ごとに決まっており、附属書リストにまとめられています。
  • CTC
    Change in Tariff Classification …関税分類変更基準
    非原産品材料の関税分類番号 と その材料から生産された産品の関税分類番号 が、一定以上異なる(たとえば、分類番号4桁の項レベルでの変更)場合、実質的変更が行われたとされ、生産地の原産性が認められます。

    つまり、製造・加工のビフォーアフターで関税分類番号(HSコード)がどれほど変貌と遂げたのか?に着目します。

    HSコードが一定以上異なるパターンには以下の3つが挙げられます。

    • CC:Change in Chapter …類(品目番号の上2桁)レベルの変更
    • CC:Change in Chapter …類(品目番号の上2桁)レベルの変更
    • CTSH:Change in Tariff SubHeading …号(品目番号の上6桁)レベルの変更
    HS code(Harmonized Commodity Description and Coding System)…統計品目番号
    エイチエスコードと呼ばれます。日本国内は用いられている品目番号は10桁ですが、世界共通なのは上6桁までです。

    HS codeの構造について簡単に。たとえば、8703.22 中古乗用車について、

    上2桁 は類(Chapter)と呼びます。つまり、87類(乗用車など)です。

    上4桁 は項(Tariff Heading)と呼びます。8703項です。

    上6桁 は号(Tariff SubHeading)と呼びます。8703.22号です。

    つまり、分類のレベルは、類>項>号 となっています。

  • VA
    Value Added …付加価値基準
    締約国での生産により付加された価値が、基準値以上の場合、実質的変更が行われたとされ、生産地の原産性が認められます。
  • RVC
    Regional Value Content …域内原産割合
    いわゆる付加価値のこと。
  • SP
    Specific Process Rule …加工工程基準
    締約国で特定の加工工程(たとえば、化学反応、蒸留など)がとられた場合、実質的変更が行われたとされ、生産地の原産性が認められます。
  • DMI
    De minimis …僅少の非原産材料
    デ・ミニミスはラテン語で「些細なことについて」という意味の語句です。原産性を問う上でほんのわずかな非原産材料であれば無視できる ルールのことです。適用できる品目、閾値(いきち)はEPA協定ごとに異なります。
    GSPにおいては、繊維製品(第50類~63類 織物や衣類)の非原産材料の総重量が産品の総重量の10%以下である場合、非原産材料の存在をスルーできます。これにより、優遇関税率を適用できる対象が広がります。
  • ACU
    Accumulation …累積 ※EPAのみ
    VAルールとCTCルールにおける救済規定として利用できます。非原産材料であっても、協定相手国の原産品を材料として使用した場合、その原産品を自国の原産材料として計算することができます。これにより、優遇関税率を適用できる対象が広がります。
  • 自国関与基準 ※GSPのみ
    特恵受益国などにて日本から輸出された原材料を使用して生産された物品で、要件を満たしたものは特恵受益国などの原産品として扱われます。

EPA・GSPにおける原産地基準の構成要素と相違点

前述した用語を用いて、原産地規則における位置づけをまとめますので、ぜひバラバラのワードのパズルを組み立てるがごとく、チェックしてみてください。

◇EPAにおける原産地基準

-完全生産品(WO)

-原産材料のみからなる産品(PE)

-原産材料のみからなる産品(PE)

--品目別規則(PSR)

①関税分類変更基準(CTC)

・類 変更(CC)

・項 変更(CTH)

・号 変更(CTSH)

②付加価値基準(VA)

③加工工程基準(SP)

--実質的変更基準の例外

・累積(ACU)

・僅少の非原産材料(DMI)

・原産資格を与えることとならない作業

◇GSPにおける原産地基準

-完全生産品(WO)
-「実質的変更基準」を満たす産品(PS)
--項 変更(CTH)
--関税暫定措置法施行規則別表の中欄(第9条関連)に挙げられた物品 は、「項の変更」の有無にかかわらず、物品ごとに「原産品としての資格を与えるための条件」が定められていますので、別表に記された規定に従います。

--実質的変更基準の例外

・自国関与基準

・僅少の非原産材料(DMI)

・原産資格を与えることとならない作業

仮に「項の変更」があったとしても、以下のケースでは「実質的な変更」とは認められません=原産性が成立しません。

輸送や保存のための乾燥、冷凍、塩水付け

単なる切断、選別

瓶、箱などの包装容器に詰めること

改装、仕分け、製品や包装へのマーク付け / ラベルの貼り替え

非原産品の単なる混合、単なる部部品の組立てセットすること

◇EPAとGSPの相違点

  • 2次3次材料を遡ると非原産材料が使用されている「原産材料のみから生産される産品(PE)」はEPAのみ。GSPでは「実質的変更基準を満たす産品(PS)」に含まれます。
  • 累積(ACU)はEPAのみ。自国関与基準はGSPのみ。

さいごに

いかがでしたか?原産地規則の概要について、掴めてきましたでしょうか。単なる記号が意味ある単語にみえてきたでしょうか。

協定などにより細かい規定は変わってきますが、原産地規則の内容と原産地基準の基本的な考え方を理解する一助になれば幸いです。

近年通関士試験の実務科目でホットな原産地規則について、もっと詳しく知りたい!という方は、税関のホームページより原産地規則ポータルをチェックしてみてください。