「簡易税率」ってなに? 2種類の簡易税率を簡単に!

taxのサイコロ

貨物を輸入するときには関税がかかりますよね。輸入者が支払う関税額を左右する関税率には、通常の貿易取引で適用される一般税率のほかに、「簡易税率」というものがあります。簡易税率がどのようなケースで適用されるのか?ポイントをまとめます。

目次

簡易税率とは?

品目ごとに数千にも及ぶ税率が定められている「一般税率」に対し、「簡易税率」は税率の区分が限られているため、税額確定が簡易になり、迅速な手続きを行うことができます。

この簡易税率には2種類あります。
ひとつは、輸入貨物の課税標準となる価格の合計額が 20万円以下の場合に適用される「少額輸入貨物に対する簡易税率」です。

もうひとつは、免税の範囲を超える携帯品・別送品に適用される「入国者の輸入貨物に対する簡易税率」です。携帯品とは、その名の通り日本に入国する人が携帯して持ち込む商品のことです。

また、別送品とは、日本に入国する人が、外国から日本の本人に向けて発送した外国貨物(商品)を指します。帰りの機内で「携帯品・別送品申告書」を記入したことがあるという方もいるのではないでしょうか。携帯品、別送品には免税枠が設けられていますので、免税枠を超えた部分に対して簡易税率が適用されます。

①総額20万円以下の少額輸入貨物の簡易税率

課税価格の合計額が20万円以下の場合には、数千もの品目分類を大別したわずか7区分において税率を確定します。

そもそも課税価格の総額が 20万円以下の輸入貨物とは?
原則として、ひとつの輸入申告に係る課税価格の合計額が20万円以下のケースを指します。ひとつの仕入書(Invoice)に係る輸入貨物を分割して輸入申告を行う場合は、その仕入書に係るすべての貨物の課税価格を合計した額が対象となります。

郵便物については、ひとつの包装に係る輸入貨物の課税価格の合計額が20 万円以下のものに適用されます。ただし、郵送の際の重量制限等により、同一差出人から同一名宛人に対し、分割のうえ同一時期に郵送された郵便物については、その分割されたすべての郵便物の課税価格を合計した額となります。

少額輸入貨物の簡易税率表

大別された税率の7区分は以下の通りです。

◇少額輸入貨物に対する簡易税率表 (関税定率法第3条の3関係)

品目〔具体的な品目例〕 関税率
1 酒類
(1) ワイン 70円/リットル
(2) 焼酎等の蒸留酒 20円/リットル
(3) 清酒、りんご酒 等 30円/リットル
2 トマトソース、氷菓、なめした毛皮(ドロップスキン)、毛皮製品等 20%
3 コーヒー、茶(紅茶を除く)、なめした毛皮(ドロップスキンを除く)等 15%
4 衣類及び衣類附属品(メリヤス編み又はクロセ編みのものを除く)等 10%
5 プラスチック製品、ガラス製品、卑金属(銅、アルミニウム等)製品、家具 等 3%
6 ゴム、紙、陶磁製品、鉄鋼製品、すず製品 無税
7 その他のもの 5%

輸入時に課されるのは、なにも関税だけではありません。輸入貨物は日本国内で消費するものなので、消費税もセットでかかります。少額貨物の簡易税率により計算される関税額のなかに消費税などは含まれていないので、別途、内国消費税(消費税、酒税など)が課されることになります。

ちなみに、簡易税率を適用して少額輸入貨物の申告を行う場合は、関税率表上の品目コードに対応した99類の品目コードを使用します。現実に99類という品目番号があるわけではありません。税番は1類~97類までです。少額輸入貨物の簡易税率を適用させるときに、便宜上99から始まる未知のNACCS品目コードを用いるのです。

少額貨物の簡易税率を適用できないケース

総額20万円以下であれば、何でも簡易税率が適用できるわけではありません。簡易税率を適用できないケース・物品があります。

  • 携帯品および別送品
    →携帯品・別送品専用の簡易税率が別に設けられています。
  • 関税が無税または免税になるもの
    →そもそも関税がかかりません。
  • 日本の産業への影響を考慮し簡易税率を適用することが適当でないとされている物品

ハムの食肉調製品、たばこ、ハンドバッグなどの革製品、ニット製衣類、履物は、一般税率が適用される、すなわち簡易税率が適用されない例として挙げられます。

また、輸入者が、輸入貨物の全部について一般の関税率の適用を希望した場合には、輸入実行関税率表を参照した一般の関税率が適用されます。なので、簡易税率vs一般税率の税率を比較して有利な方を適用させるのがよいでしょう。

簡易税率の計算するにあたってのポイント

価格に応じて関税額が決まる従価税の関税額は「課税価格×簡易税率=関税額」と計算します。

そもそも課税価格とは?
輸入貨物の課税価格は輸入港到着時の価格です。貿易用語ではCIF価格といい、商品価格(Cost)+輸入港までの運賃(Freight)および保険料(Insurance)を意味します。

Point 個人使用目的ならば、特例対象かも…
個人が個人的使用の目的で輸入する貨物の課税価格は、「海外小売価格×0.6」の金額が課税価格になる特例があります。課税価格が安い金額になれば、それだけ支払う関税額も抑えられる個人に優しい制度です。

Point 課税価格が1万円以下ならば、そもそも免税対象かも…
課税価格が1万円以下の貨物の場合、関税定率法第14条第18号の規定により、原則として、関税、消費税および地方消費税は免除されます。しかし、例外として、革製のバッグ、履物、ニット製衣類などの品目は、課税価格が1万円以下であっても、関税等は免除されません。

②携帯品、別送品の簡易税率

免税の範囲を超える有税品の携帯品・別送品に対しては、簡易迅速な課税処理をするために、簡易税率が適用されます。

そもそも携帯品・別送品の免税範囲とは?
海外旅行者の携帯品・別送品のうち、個人的に使用すると認められるものに限り、入国者一人当たりの免税の範囲が決められています。

酒類、たばこ、香水は容量・本数が定められており、その他の品目については、海外市価の合計額が20万円までの物品が免税で輸入できます。

海外市価とは、外国における通常の小売購入価格に、「入国の日の属する週の前々週の平均レート」として税関長が公示したレートを掛け算して、円貨換算した金額です。入国者が損をしないように、関税額の高いものから免税となるよう税関が課税品目を決定してくれます。

この免税範囲を超えた分については、簡易税率によって、課税されることとなります。

携帯品、別送品の簡易税率表

大きく分けて、「酒類」「たばこ」「その他の物品」の区分からなります。少額貨物の簡易税率とは異なり、関税と消費税など内国消費税を合わせた税率となっており、より簡単でわかりやすいです。ちなみに、関税などのかからない無税品について、関税は課税されませんが、消費税・地方消費税は課税されます。

◇携帯品、別送品の簡易税率表

品名 税率
1.酒 類
(1)ウィスキー、ブランデー 800円/ℓ
(2)ラム、ジン、ウォッカ 500円/ℓ
(3)リキュール 400円/ℓ
(4)焼酎 300円/ℓ
(5)その他のもの(ワイン、ビールなど) 200円/ℓ
2.その他の物品(関税が無税のものを除く) 15%
(たばこ税及びたばこ特別税)
紙巻たばこ 1本につき14円

Point 海外旅行のおみやげなど個人が個人的使用の目的で輸入する場合は、「海外小売価格×0.6」の金額が課税価格になります。

なお、入国者の携帯品、別送品に係る関税は、輸入者の申告により税額が確定する申告納税方式ではなく、「賦課課税方式」がとられていますので、納付すべき税額は税関長の処分によって確定します。

携帯品、別送品の簡易税率が適用されないケース

携帯品・別送品であっても簡易税率が適用されないものがあります。1 個又は 1 組の課税価格が10万円を超えるもの、米、食用ののり、パイナップル製品、こんにゃく芋、紙巻たばこ以外のたばこ、猟銃は、一般税率が適用された関税額と消費税がかかります。

また、品物の全部につき簡易税率の適用を希望しないときは、一般の関税と消費税が課されることになります。具体的には、旅具検査の際に、自発的に、かつ、携帯しまたは別送して輸入する貨物のそれぞれの全部について一般税率によることを希望した場合に限り、一般税率が適用されます。

まとめ

簡易税率には2種類あり、それぞれ限られた区分から税率を確定することになります。品目ごとに数千にも及ぶ税率が定められている一般税率と比べて、より迅速な課税手続きをとることができます。

  • 「少額輸入貨物に対する簡易税率」は7区分
  • 「携帯品・別送品に対する簡易税率」は酒類・たばこ・その他の物品の区分から成ります
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