関税割当制度の概要と品目を徹底解説!輸入割当やEPAとの違いも確認

関税割当制度の概要と品目

通関士試験はもちろん、通関実務をしているといつかは出会う「関税割当制度」に苦手意識を持っている人は少なくないのではないでしょうか。

実は、基本事項を理解さえすれば、思ったよりも難しいものではありません。

関税割当制度の概要と、管理方法、実際に通関士が行っている実務での裏落としについて分かりやすく解説します。

目次

関税割当制度の概要

まずは関税割当制度の基本として、関税割当制度の概要と目的、さらに管理方法についてご紹介します。

関税割当制度とは?

関税割当制度とは、あらかじめ設定された一定の輸入数量の枠内に限って、無税もしくは低い税率で輸入できる制度です。決められた輸入数量の枠を超えて輸入する場合は、比較的高い税率が適用されるのが特徴です。

同じ商品を輸入するにも、以下の2つの税率が適用されるとイメージしてください。

一次税率
(無税もしくは低税率)
あらかじめ設定された一定の輸入数量の枠内の輸入
二次税率
(高税率)
あらかじめ設定された輸入数量の枠を超えて輸入する場合

関税割当制度の2つの目的とは?

同じ商品を輸入するにも2つの税率が存在するのには、「需要者保護」と「国内生産者保護」の2つの目的があります。

  1. 需要者保護
    需要者、つまりその商品が欲しい人のために、低価格な輸入品を供給すること
  2. 国内生産者保護
    日本国内で輸入される商品と同じものを作っている生産者を守ること

消費者から見ると、同じ商品であれば安く手に入ることを良しとするでしょう。しかし同じ商品を作る生産者から見ると、価格競争で輸入商品に負けることも少なくありません。結果、国内生産者が事業を続けられなくなり、国内の製造業が打撃を受けるリスクが生じます。

そこで、国内産業を守る必要がある商品においては「関税割当制度」を適用し、2段階で関税を課すこととなったのです。

以下に、目的を含めた関税割当制度の仕組みを図解でご紹介しますので、参考してください。

関税割当制度の仕組み

関税割当制度の管理方法

関税割当制度の管理方法には、以下の2つがあります。

  1. 事前割当方式
  2. 輸出国管理方式

事前割当方式は、該当の品目の輸入を管轄する省庁が事前に「関税割当数量」を決定する方法です。その後、関税割当を利用したい輸入者の申請に対して、審査を行います。

一方、輸出国管理方式はEPA(経済連携協定)を締結している国に限定した管理方式です。事前割当方式と同様に、輸入者は割当申請を行う必要がありますが、事前審査が厳しくないのが特徴でしょう。申請を受けた省庁は、輸出国が発給する証明書に基づいて先着で割当を行います。

また、対象となる商品の輸入額などを集計し、EPA(経済連携協定)で決められた額を超過した場合に、輸入を停止する「シーリング方式」が取られることもあります。

通関における関税割当制度の対象品目と要件

通関士における関税割当制度の対象となっている品目と要件をそれぞれみていきましょう。

関税割当制度の対象品目とは?

関税割当制度の対象となっている品目は限定されています。最新の2017HSコードでは品目は約5,000種類ほどありますが、対象となるのは数種類です。現在では経済産業省が管轄する品目と農林水産省が管轄する品目に分かれます。

関税割当制度の対象品目かどうかは、輸入統計品目表(実行関税率表)を見るとわかります。日本関税協会が発刊している分厚い冊子でも確認できますが、インターネット上でも以下のどちらのページでも確認することができます。

以下のように記載がある品目が関税割当制度の対象品目です。

関税割当制度の対象品目

出典:「輸入統計品目表(実行関税率表)実行関税率表(2020年4月1日版)」(税関ホームページ)(https://www.customs.go.jp/tariff/2020_4/data/j_20.htm)(2020年6月22日利用)
上記URL先のページ画面キャプチャを加工して作成

経済産業省管轄の対象品目

経済産業省管轄の対象品目をご紹介します。

  • 牛馬革(染着色等したもの)
  • 牛馬革(その他のもの)
  • 羊革・やぎ革(染着色等したもの)
  • 革靴(革製及び革を用いた履物(スポーツ用のもの及びスリッパを除く。))

「染着色等」や、「革を用いた履物」の革を使用している割合を正しく判断をすることも大切です。染着色一つをとっても、一般的な定義と税関が定義するが異なることは往々にしてあります。

そこで通関士は、輸入(納税)申告の審査時には「関税率表解説・分類例規」や税関が提示する過去の輸入貨物の品目分類事例を元に判断しています。輸入される商品自体が、関税割当品目に含まれるかどうかの判断は、適用税率が変わってくる部分なので細心の注意が必要です。

農林水産省管轄の対象品目

農林水産省管轄の対象品目は以下の通りです。

<ウルグアイ・ラウンド(UR)農業交渉以前からの対象品目>

  • とうもろこし
  • ナチュラルチーズ
  • 麦芽
  • 糖みつ
  • 無糖ココア調製品
  • トマトピューレー及びトマトペースト
  • パイナップル缶詰

<ウルグアイ・ラウンド(UR)農業交渉合意後に追加された対象品目>

  • その他の乳製品
  • 脱脂粉乳
  • 無糖れん乳
  • ホエイ等
  • バター及びバターオイル
  • 雑豆
  • でん粉
  • イヌリン及びでん粉調製品
  • 落花生
  • こんにゃく芋
  • 調製食用脂
  • 繭及び生糸

農業水産省管轄の品目においても、通関士は審査時に該当品目に含まれるかどうかの判断が必要です。

たとえば「脱脂粉乳」は該当品目ですが、税関のタリフ上での脱脂粉乳では以下の記述があります。

  • 脂肪分が全重量の1%以下のもの
  • 滅菌し、冷凍し又は保存に適する処理をしたもの

これらを判断するために、輸入者に製造工程表や成分分析表の提示を求めるのも通関士や通関従事者の仕事です。

関税割当制度利用には4つの条件あり

関税割当制度は誰でも利用できるわけではありません。以下に定められた4つの条件を満たしてはじめて、割当申請ができます。

  1. 過去一年以内に輸入申告を行った実績があること
  2. 過去一年間に輸入した回数が少なくとも2回以上あること
  3. 輸入者として自ら輸入を行った実績があること
  4. 過去一年間に輸入した輸入申告価格の合計額が50万円以上の通関が2回以上ある、
    もしくは
    過去一年間に輸入した輸入申告価格の合計額が100万円以上の通関が1回以上ある

これらを証明するためには、輸入許可通知書などの提出が必要です。

関税割当制度利用は申請時期に注意!

関税割当制度を利用する際は、輸入品目を管轄する経済産業省もしくは農林水産省に申請を行います。ただしいつでも申請できるわけではありません。以下の3つの枠に応じて、規定の期間内に申請が必要です。

  • 年度枠
    →例年4月頃
  • 保留枠
    →例6月と10月頃
  • 再割当枠
    →枠に余りがあった場合に随時

通関士が知っておきたい関税割当制度の実務と疑問点

通関をしている方でも、関税割当制度自体は知っていても実務上の手続き方法や注意点を知らないという方も少なくありません。そこで、関税割当制度実務と疑問点を解説します。

関税割当証明書の裏落とし

関税割当制度を利用して輸入申告する際は、通関種類とともに管轄省庁から交付された「関税割当証明書」を税関に提出します。

「関税割当証明書」は表裏があります。表面は「関税割当申請書」の表題があり、割当が認められた証拠として証明印が押印されています。裏面は「通関状況」の表題があり、実際に輸入した実績が記載できるようになっています。

輸入申告時には裏面に以下を記載の上、税関に提出し、確認印を受ける必要があります。

  • 税関申告番号(=輸入申告番号)と申告年月日
  • 通関数量(=輸入数量)
  • 関税割当数量の残存数量(現在の関税割当数量の残)

裏面には輸入者自身が記入することもありますが、多くの場合通関を行う通関従事者や通関士が記入しています。

裏落とし処理は関税割当証明書原本でも行えますが、平成29年10月8日(日)より輸出入申告などを行うNACCSというシステム上でも行えるようになりました。ただし、事前にNACCSに登録し、関税割当証明書原本などを税関に提出の上、確認を受ける必要があります。

関税割当証明書の有効期限が切れていたら?

関税割当証明書には使用できる有効期限があります。気づいたときに有効期限が切れている場合は、残念ながら関税割当制度の利用はできません。

しかし有効期限満了日までに延長申請を行えば、延長申請をすることが可能です。ただし、年度内に関税割当証明書を使用して1回以上通関していることが条件です。また、有効期限内に輸入できない理由が以下のいずれかに該当する場合に限定されるので、注意しましょう。

  • 製造遅延など輸出者に責任がある場合
  • 天災、戦争、ストライキなど、輸出入者どちらにも責任がなく、回避できない理由によるもの

関税割当証明書の分割とは?

関税割当証明書を使用した通関を、同時期に別の港で行うことがあります。その際に行うのが関税割当証明書の分割申請です。

分割申請は、関税割当証明書を発行した省庁の窓口で対応してくれます。手続きには時間がかかりますので、同時通関が必要と分かった際は、できるだけ早く関税割当証明書の分割を申請することが大切です。

船便の遅延などがあった場合、当初予定していた通関順序(例:東京港で関税割当証明書を使った輸入申告をした後、大阪港で同じ関税割当証明書を使って輸入申告を使用)が変わってしまうこともあります。また通関を依頼する通関業者が港によって異なると、連携が取れず関税割当証明書の持ち回りに手間取ることもあるでしょう。そこで、事前の根回しなど注意が必要です。

関税割当証明書の裏落としをNACCS利用で処理している場合は、全体の輸入通関数量さえ把握しておけば、問題なく同時通関が可能です。

関税割当証明書を紛失した!再発行は可能?

あやまって関税割当証明書を紛失してしまう…というケースもあります。

その際は、関税割当証明書を発行した窓口で再発給の手続きを行いましょう。ただし、既に関税割当証明書を使用して通関している場合、輸入許可書などの提出書類から確認できる未使用分の割当数量範囲内での発行となります。

紛失や汚れなどが理由で関税割当証明書を再発行すると、その手続きに要する時間が必要なため、2~3日程度通関が遅延します。それを避けるためには事前にNACCSで裏落としをするようにしておくと便利でしょう。ただし、NACCSでの裏落としと関税割当証明書原本を使った裏落としの併用はできないので注意が必要です。

関税割当制度と各種割当との違い

最後に関税割当制度と混同しやすい各種割当の違いを解説します。

輸入割当制度との違いは?

輸入割当制度と関税割当制度の共通点は「一定の数量の枠を設ける」ことです。相違点は「一定の数量の枠を超えたときの輸入の扱い」です。

  • 輸入割当制度
    →輸入できない
  • 関税割当制度
    →高税率の関税が課されるが、輸入は可能

そもそも、輸入割当制度は輸入が禁止されている品目に対して、一定の数量のみ輸入を限定的に解除するものです。一方の関税割当制度は輸入する自体ことは禁止されていません。そのため、一定の数量の枠を超えた場合も、高い関税を支払うというデメリットはありますが、輸入は可能です。

EPAの関税割当制度とはどう違う?

関税割当制度はどこの国から輸入する品目にも適応されます。

一方のEPA (経済連携協定)における関税割当制度は、「経済連携協定を結んでいる国から輸入する特定品目」に対する関税割当制度です。

通常、EPAは協定を結んでいる国同士で双方の製品が輸出入しやすくすることを目的としています。そのため、国内産業の保護を目的とする関税を取っ払って無税にするのが一般的です。ただし、すべての品目を無税で輸入できるようにしてしまうと、打撃を受ける国内産業もあることから、関税撤廃の除外品としてEPAの関税割当制度が存在するのです。

この場合、輸入時に税関に提出する書類は、一般的な関税割当制度で必要となる関税割当証明書に加えて「特定原産地証明書」も求められる点に注意しましょう。これは輸入される商品がEPAの協定を結んでいる国を原産地とすることを証明するのに必要です。

まとめ

関税割当制度は適用品目も少なく、関税が二段階になることを整理して理解すれば分かりやすい制度です。輸入割当制度やEPAの関税割当制度と混同しやすい点はありますが、違いをおさえればさほど難しくはないでしょう。通関士試験や通関実務においても、制度の背景にある目的を意識して取り組むことをおすすめします。

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