民法等・管理組合の運営とは

マンション管理士試験分野-その2「民法等・管理組合の運営」のポイント

一口に「民法」といっても、あまりにも範囲が広過ぎるため、法律の初学者にとっては非常に厄介な分野です。経験者でも民法を苦手とする人は少なくないようです。しかしマンション管理士試験で出題されるテーマは、ある程度過去問から推測できるため勉強が必要な部分を絞ることはできます。また「管理組合の運営」に関しては少なめのようです。勉強のポイントをしっかりおさえておきましょう。

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目次

「民法等・管理組合の運営」はどんな問題なのか?

「民法等・管理組合の運営」分野は、どのようなものなのでしょうか。まずは基礎知識を覚えておきましょう。

「民法」の問題とは?

同じ法令関係の問題である「区分所有法」と比べると、民法の条文は膨大な数があり、すべて学習することは不可能です。しかし例年出題されるテーマはほぼ決まっているので、それらに的を絞って勉強するほうがいいでしょう。後の項で、重要テーマをご説明します。

また、民法だけではなく区分所有法と絡んだ問題も出題されます。複合問題もしっかりと学んでおいてください。民法は「区分所有法等」と同様、ほとんどの合格者が「暗記」をするよりは「理解を深める」勉強を重視した分野です。

「管理組合の運営」の問題とは?

「管理組合の運営(管理組合の運営の円滑化に関すること)」の分野で主に出題されるのは、管理実務と会計に関する知識です。比較的難しい問題が出題される傾向にあるようです。

簿記3級レベルの知識を持っている人は解きやすいので、確実に得点源にできるといわれています。会計など数字の問題が苦手な人は、何度も演習を繰り返し行い「苦手意識」を克服しましょう。

「民法等・管理組合の運営」を攻略するための勉強法!

「民法等・管理組合の運営」分野の問題は、全部で9問あります。しっかり理解を深め得点を稼ぎましょう。

「民法」の出題頻度の高いテーマ

民法の分野で毎年のように問われるテーマとしては、以下のようなものがあります。

【契約不履行に対する救済等】
債務不履行が生じたときの、契約解除や損害賠償請求の方法など

【各種契約】
不動産の売買契約・賃貸借契約・請負契約などを中心に、それぞれの成立要件・効力・当事者の責任範囲など

【不法行為】
不法行為の成立要件・工作物責任・使用者責任・共同不法行為など

【時効】
滞納された管理費の督促・債権回収の実務に関係する消滅時効、時効の期間や要件など

【相続】
マンションの区分所有者が死亡した際「滞納管理費」があった場合などの事例をもとに、相続放棄や代襲相続があった場合の対応や計算など

「民法」の出題頻度の高いテーマ

「管理組合の運営」

「管理実務」と「会計」の勉強ポイントは以下のようなものです。

【会計】

  • マンション会計の基礎知識:マンション管理の財源である管理費がどのように徴収・運用されているかを知ることが大切。管理組合と管理会社が作成する収支予算案・収支決算案を理解する
  • 保険、税:共有部分の保険や管理組合の事業に関する税、区分所有者にかかる税を理解する

会計は、簿記3級の知識があれば難しくないといわれています。基本的な仕訳処理や財務諸表の見方についての知識がない人は、時間をとってきちんと対策してください。

【管理実務】
管理組合の、組織と運営・業務と役割・苦情対応と対策などを中心に学習。理事会の運営方法や役員の権限と義務などを理解する

管理組合の運営分野は、区分所有法や標準管理規約ともつながりが深いので、関連させて勉強しましょう。

「管理組合の運営」

民法で重要なテーマを掘り下げる

民法の頻出テーマの中でも「不法行為」と「相続」は、重要なポイントです。不法行為は、管理会社社員による不法行為が発生した際に、使用者責任を管理会社に問うことができるので重要なポイントです。また、「相続」についてもしっかり受験対策を行ってください。

「不法行為」に関する重要な論点を身に付ける

民法の「不法行為」は例年出題されています。以下の論点はしっかりと身に付けるようにしましょう。概要をご紹介します。

【「不法行為」が成立する要件】

  • 責任能力:加害者に12歳程度の知能があること(加害者に責任能力がない場合、親権者などの責任になる)
  • 故意・過失:故意または過失によること
  • 損害の発生:不法行為によって損害が発生していること
  • 違法性:他人の権利や利益を違法に侵害したこと

【「不法行為」の効果】
不法行為の効果は、「加害者による損害賠償義務」です。民法では、不法行為者に対する懲罰ではなく、あくまでも「紛争解決」のための損害の填補(てんぽ)や損害の公平な分担として考えられます。ただし、被害者の過失が認められる場合は「過失相殺」として損害賠償金が減額されることもあります。

【「不法行為」の消滅時効】
被害者が加害者・損害を知った時点から、3年以内に損害賠償権を行使しない場合は時効により消滅してしまいます。

【「失火責任法」による損害】
失火で他人に損害を与えた場合、加害者に重過失がなければ不法行為責任を負う必要はありませんが、賃借人(家賃を払って借りる人)が賃貸人(賃貸物件を貸す側)に負う債務不履行責任は免除されません。

【特殊な不法行為責任】
民法で規定のある「特殊な不法行為」には、監督者責任・使用者責任・工作物責任・動物責任者の責任・共同不法行為があります。

【使用者責任】
管理会社の従業員が業務中に管理組合や住人に関して不法行為を行った場合、管理会社も使用者として責任を問われます。管理会社が社員に代わって損害賠償した場合、会社は従業員に対して相当する範囲で求償することはできます。

【土地の工作物等の占有者および所有者の責任】
土地の工作物(※)を設置・保存することで瑕疵(かし)があることがわかり、他人に損害を与えた場合は、占有者および所有者が責任を負います。不完全な工事などが原因の場合は、工事人に賠償責任負担分を求償できます。

※土地の工作物:「土地に接している『土地に接している工作物』」と「土地に接していない『土地の工作物』」がある。土地に接している工作物:建物・道路・石垣・プール・電柱ほか土地に接していない工作物:建物の屋根・窓・エレベーター・エスカレーター・高層マンションの共用廊下に設置された消化器など

【共同不法行為責任】
複数の人が共同の不法行為で他人に損害を与えた場合、加害者が連帯して賠償しなければならず、各加害者は故意・過失に関わらず損害金額のすべてに対して責任を負わなければなりません。

「相続」に関する重要な論点を身に付ける

民法分野の「相続」も頻出テーマなのでしっかりと受験対策をする必要があります。前述したように「管理費を滞納したまま区分所有者が亡くなり相続が発生したケース」が問題のベースになります。押さえておきたいのは以下のポイントです。概要をご紹介します。

【法定相続人と相続の順位】
相続人には、配偶者(相続人)と、子・親・兄弟姉妹(血族相続人)があります。

【代襲相続】
被相続人の子が、相続の発生以前に亡くなった場合はその子どもが代襲相続できますが、被相続人の子が相続放棄した場合は認められません。

【相続分】
相続人によって相続分は変わります。配偶者と子どもは各1/2、配偶者と直系尊属の場合は配偶者が全体の2/3、配偶者と兄弟姉妹の場合は、配偶者が全体の3/4など、いろいろなケースがあるので注意しましょう。【共同相続の効力】金銭の債権のような可分債権は、各相続人の相続分に応じ分割承継されます。そのため、管理費を滞納している場合、それもそれぞれの相続分に応じ分割して受け継がれます。【相続の承認および放棄】被相続人が借金を抱えている場合、相続人は相続を承認するか放棄するか選択できます。ただし、3か月に手続きをしないと「単純承認」(借金も含めてすべて相続すること)したものとみなされます。

過去問を中心に頻出テーマの理解を深めよう!

「民法等・管理組合の運営」分野は、過去本試験で頻出される重要なテーマを正確に覚えて理解を深めることが大切です。その上で、事例問題に対応できるように、過去問を繰り返し練習してください。民法は、ほかの分野の問題とも関連しているので、区分所有法と同様にしっかりと攻略して勉強の土台を作りましょう。管理組合の運営に関しては、管理業務主任者試験と比較すると出題数は少なめです。

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この記事の監修者は
北川えり子(きたがわ えりこ)

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【出身】東京都
【経歴】拓殖大学外国語学部卒。マンション管理士・管理業務主任者、行政書士、海事代理士、宅建等の資格を保有。
【趣味】旅行、ドライブ
【座右の銘】未来とは、今である。

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