AWB(Air Way Bill:航空貨物運送状)とは?

飛行機の絵が描いてある紙

航空貨物の輸出入には欠かせないAWBの基礎知識を特徴とともに解説します。

目次

AWBとは?

AWBは、Air Way Billの頭文字を略した言葉で、日本語では「航空貨物運送状」と訳されます。宅配便などでいう送り状と似たイメージの貿易書類です。

オリジナル原本が3通、副本6通の複写になっています。それぞれが以下のような役割を持っています。

  • オリジナル原本1通目 契約書的役割を持つ航空運送人用(荷送人の署名有り)
  • オリジナル原本2通目 送り状の役割を持つ荷受人用(航空運送人と荷送人の署名有り)
  • オリジナル原本3通目 契約書兼受領書の役割を持つ荷送人用(航空運送人の署名有り)
  • 副本1通目 荷受人に着地で荷物を渡す際に使用する航空会社用
  • 副本2通目 着地の空港用
  • 副本3~5通目 運送に関与したそれぞれの航空会社用
  • 副本6通目 AWB発行した代理店用

AWBの5つの特徴

AWBには、以下の5つの特徴があります。

  1. 運送契約締結の証拠書類

    仕出地から目的地までの輸送契約が結ばれたことを証明する書類です。

  2. 運送契約締結の受領書類

    確かに運送契約が締結したことを、航空会社または混載業者が依頼者に契約書として渡す受領書類でもあります。

    宅配便などで考えると、送り状の控えが発送依頼を請け負った証拠書類となるのと同様です。

  3. 運送料金の請求書

    運送料金の請求書の役割も持っています。これも、宅配便でいう送り状に60サイズ〇円と記載されるのと同じイメージです。

  4. 税関への輸入申告の種類

    AWBを使用して輸入(納税)申告を行う際に税関に提出する書類としても利用されます。

  5. 航空会社への運送に関する指示書

    実際に貨物を輸送する航空会社に対する指示書のはたらきもあります。たとえば、運送状の取扱注意事項や引っ越し貨物であることの明記などが記載されます。宅配便でいうところの、割れ物とか要冷蔵などの記載をするのと同様です。

AWBには2種類あり

AWBには以下の2種類があります。これは、実際に貨物を輸送する航空会社が発行するAWBと混載業者が発行するAWBを区別するためです。

混載業者は、海上貨物を輸送する際のフォワーダーと同じはたらきをします。荷主から貨物を集め、混載業者の名前で航空会社に輸送依頼を行います。そのため、以下の2種類のAWBが存在するのです。

HAWB
(House Air Waybill)
混載業者が個々の荷主と運送契約を締結した際に、個々の荷主に対して発行するAWBです。
MAWB
(Master Air Waybill)
混載業者が集めた荷物を航空会社に持ち込み、運送契約を締結した際に、発行されるAWBです。

以下の図でイメージをつかんでください。

混載業者は、荷主A、B、Cからそれぞれ荷物を預かります。そして、3つの荷物を混載業者名義で1つの荷物に仕立て、航空会社に持ち込みます。

航空会社からは、混載業者あてに3つの荷物をまとめた1枚のMAWBが発行されます。そして、混載業者は荷主ごとに個数や重量、金額などを記載したHAWBを発行して渡します。

HAWBとMAWBのメリット、デメリット

航空貨物の輸送には以下の2つの方法があります。

  1. 航空会社と直接運送契約を締結する(運送もAWBの発行も航空会社)
    →MAWBが発行される

  2. 混載業者と運送契約を締結する(運送は航空会社、AWBの発行と契約のみ混載業者)
    →HAWBが発行される

両者のメリットとデメリットをご紹介します。

HAWBのメリットとデメリット

HAWBを利用するメリットは以下の2点です。

  1. 料金が安いことが多い

    混載業者は、荷主から集めた大量の貨物の輸送契約を行うため、通常より安い価格で航空会社と契約していることがほとんどです。そのため、少量貨物の輸送であっても、割安になることが多いのがメリットでしょう。

  2. 養生などがしっかりしていることが多い

    混載業者は航空会社に持ち込むにあたり、荷主から集めた貨物をまとめて梱包します。荷主から集めた貨物もすでに梱包されている上に、さらに梱包することで、養生がしっかりし、破損などのリスクが軽減できます。

デメリットは、「着地での貨物引き取りのタイミングが遅れること」でしょう。

混載業者は貨物が目的地に到着した後、以下の作業を行う分、引取が遅れてしまうのです。

  • 航空会社から貨物を引き取る
  • 貨物の梱包をほどき、荷主ごとに分ける
  • 個数、ダメージチェックなどを確認する

MAWBのメリットとデメリット

MAWBを利用するメリットは以下の2点です。

  1. 貨物の引き取りが早い

    荷送人や荷受人が1対1でAWBが作成され、貨物が仕立てられているため、貨物を仕分けすることなく、引き渡しが可能です。HAWBで混載業者が行う、航空会社からの引き取りや仕分け作業などがない分、早く引き取れるのがメリットでしょう。

  2. 運送スケジュールの調整がしやすい

    貨物を積載するスペースがあれば、希望のフライトをおさえることができるので、運送スケジュールが立てやすくなります。

    HAWBの場合、ある程度貨物が集まらないと発送しないことも多いため、スケジュール調整がしづらくなりがちです。

MAWBを利用するデメリットは、「航空運賃がHAWBに比べて割高なことがある点」でしょう。例外もありますが、大量貨物を輸送するHAWBと比較すると、基本的に割高となりがちです。

AWBとB/L、SEAWAYBILLの違いは?

航空貨物で使用されるAWB、海上貨物で使用されるB/L(Bill of Lading:船荷証券)やSEAWAYBILLの違いを知っておきましょう。

AWB B/L SEAWAYBILL
輸送形態 航空機 船舶 船舶
受取人の記載 受取式、記名式 指図式 受取式、記名式
貨物の受領証の役割 有り 有り 有り
運送契約書の役割 有り 有り 有り
有価証券の役割 無し 有り 無し
付保機能 金額を申請すれば有 無し 無し
発行のタイミング 貨物受領時 船積み完了時 貨物受領時
貨物引取時の提示 不要 原本が必要 不要

貨物を輸送業者に引き渡した証明書であり、運送契約を締結した証拠書類であるといった点は共通点です。

しかし、AWBは有価証券でなく受取式、記名式のスタイルのため、流通性がないことです。これはSEAWAYBILLも同様です。

そのため、L/C(信用状決済)において荷為替手形が組めないことから、荷受人を実際の受取人ではなく「信用状発行銀行」にすべき点に注意が必要です。

AWBで輸出入申告できるケース

航空貨物の輸入申告時には、税関にAWBを提出します。それとは別に、簡易にAWBやインボイスなどに、一定の事項を記入することで輸出入申告できるケースもあります。

AWBで輸出できる3つのケース

  1. 無償で輸出する救じゅつ品
  2. 無償で輸出する商品見本(総額200万円以下に限る)
  3. 1品目の価格が20万円以下の貨物

AWBで輸入できる2つのケース

  1. 課税価格が20万円以下の貨物
  2. 再輸出免税の適用を受ける輸出入貨物の容器を輸入する場合

まとめ

AWB は航空貨物の輸出入につきものの貿易書類です。

以前は、海上貨物はSea-NACCSで、航空貨物はAir-NACCSで行うなどシステムが分かれていました。しかし、最近では海上・航空共用化が導入され、両方の貨物の申告が一つの端末で可能となっています。そのため、海上貨物を申告する課でも航空貨物の申告を取り扱うことが増加し、AWBの知識を持っておくことが求められています。

顧客サービスとしても、窓口一本化を含めワンストップサービスが求められることから、AWBの基礎知識も頭にいれておいてください。

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