納期限延長制度とは?メリットやデメリット、実務上の注意を解説!

納期限延長制度とは?

納期限延長制度にはどんな種類があるのだろう?メリットやデメリットが知りたい!このような質問を輸入者から投げかけられることもよくあります。また実務上、納期限延長制度の申請代行や納期限延長制度を利用した輸入申告を取り扱うことも増えています。

この記事では納期限延長制度の基本から、申請実務、輸入時の注意点まで詳しく解説します。

目次

関税等の納税を遅らせる納期限延長制度とは?

納期限延長制度とは、担保などを提供することで関税などの納税を遅らせることができる制度です。

基本的に、外国から到着した貨物を国内に引き取れるのは、以下の二つの手続きが完了した後です。

  • 輸入申告
  • 関税などの支払い

一方、納期限延長制度を利用すれば「輸入申告」を行い、税関長からの輸入許可がおりれば、国内流通させることができます。実務上、輸入申告後、関税などの納税が完了してはじめて、輸入許可書が発行されます。

つまり厳密にいうと、輸入申告を行った後、税関による必要な審査や検査が完了すれば、関税を支払わなくても輸入許可書が発行されることとなるのです。

ただし、納期限延長制度を利用するためには、輸入する貨物に対してかかる関税などに相当する担保を提供し、承認を得る必要があります。

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納期限延長制度は全部で3種類!

納期限延長制度は全部で3種類あります。通常の輸入申告の場合は、個別延長方式もしくは包括延長方式が選択できます。特例延長方式は、あらかじめ税関長から承認を受け、特例輸入申告を利用する場合に利用できる方法です。

まずは、以下の一覧表で確認の上、それぞれの方式について、もう少し詳しくみていきましょう。

一般的な納付 個別延長方式 包括延長方式 特例延長方式
申請できる人 - 輸入者および通関業者 輸入者および通関業者 輸入者および通関業者
納期限 輸入許可の日 輸入許可日の翌日から3ヶ月以内 特定の月の前月末日から3ヶ月以内 特例申告書の提出期限から2ヶ月以内
延納できる対象税 - 関税・消費税 関税・消費税 関税・消費税
その他 関税の納付後輸入許可 輸入申告毎に申請 ・1ヶ月分をまとめて申請可
・特定月分をまとめることも可能(12ヶ月を限度)
・1ヶ月分をまとめて申請可

個別延長方式

個別延長方式は個々の輸入申告ごとに、納期限の延長を申請する方法です。申請するタイミング、納期限の延長期間は以下の通りです。

  • 申請するタイミング
    →輸入申告と同時もしくは輸入申告後
  • 納期限の延長期間
    →輸入許可日の翌日から3ヶ月以内

どのように延長されるのかを、具体的な例をあげてご紹介します。

(例)4月15日輸入許可分に対して、個別延長方式を申請した場合

個別延長方式
  • 4月15日輸入許可分に関して、輸入申告と同時に個別延長方式を申請
  • 最長7月16日まで納期限が延長される
    ※起算日は輸入許可日である4月15日の翌日、4月16日

この手続きを輸入申告毎に行います。つまり、輸入申告が4回あれば4回それぞれに個別延長方式の申請が必要です。

包括延長方式

包括延長方式は、特定の月に行う輸入申告にかかる関税などを一月分一括して、納期限の延長を申請する方法です。申請のタイミング、また納期限の延長期間は以下をご確認ください。

  • 申請するタイミング
    →特定の月の前月末日まで
    (例)4月分の関税などに対して包括延長方式を利用する場合は、3月31日までに行う
  • 納期限の延長期間
    →特定の月の末日の翌日から3ヶ月以内
    (例)4月分の関税などに対して包括延長方式を利用する場合は、5月1日~3ヶ月以内

具体的にどのように延長されるのかを確認しましょう。

(例)4月輸入分について包括延長方式を申請した場合(輸入回数4回)

包括延長方式
  • 4月輸入予定分に関して、3月31までに個別延長方式を申請
  • 最長8月31日まで納期限が延長される
    ※起算日は輸入許可日である4月末日の翌日、5月1日

個別延長方式とは異なり、あらかじめ包括延長方式の申請を行うことで、4月に輸入したすべての許可分の関税が一度の申請で延長できます。

ただし、税関長に提供する担保は特定の月に輸入する予定の貨物にかかる関税などの総額です。個別延長方式よりも提供する担保額は多くなるでしょう。

特例延長方式

特例延長方式は、特例申告を利用した引取申告に対してかかる関税などの納期限延長を申請する方法です。申請のタイミングおよび納期限の延長期間は以下の通りです。

  • 申請するタイミング
    →特例申告書(納税のための申告書)の提出期限内
  • 納期限の延長期間
    →特例申告書の提出期限から2ヶ月以内

納期限延長制度を利用するメリットとデメリット

では、納期限延長制度を利用するメリットとデメリットを解説します。

納期限延長制度を利用するメリット

まず、納期限延長制度を利用するメリットは大きく分けて以下の2点です。

  1. 資金繰りがしやすくなる
    関税の納付期限が最長3ヶ月延長されるため、輸入貨物を国内流通にまわし、仕入れ費用などの資金を回収した上で、関税の支払いをすることができます。つまり資金繰りがしやすくなります。

  2. 貨物の早期引取が可能となる
    通常であれば、関税が納付された後に輸入許可が与えられ、貨物の引き取りが可能となります。しかし納期限延長制度を利用すれば、関税を納付するために輸入申告の都度、銀行に出向く手間が省けます。税関の書類審査や検査などが完了すれば、すぐに輸入許可となるため、タイムラグがなくなり、貨物の早期引取が可能になります。

    関税の支払いを口座引き落としにしていたとしても、土日に輸入申告を行った場合、当日輸入許可とならないケースがあります。それは、土日は銀行から関税を引き落とすことができる時間帯が限られているためです。わざわざ日曜日に臨時開庁をして税関に審査をしてもらっても、関税が納付されないために許可が翌日に遅延するリスクがあります。

    納期限延長制度を利用した場合、銀行の引き落とし可能時間などを気にする必要がないので、早期引取が可能です。

納期限延長制度にデメリットはある?

納期限延長制度を利用することに、基本的に大きなデメリットはありません。ただし納期限延長制度を利用するにあたって、税関に関税額に相当する額の担保を提供しなくてはいけないということは一定のデメリットとも捉えられるでしょう。

個別延長方式に比べ、包括延長方式の場合、1ヶ月分に相当する額の担保が必要であるため、一時的に大きなお金が必要となります。

納期限延長制度を利用する方法や必要書類は?

納期限延長制度を利用するのに必要な書類や申請先についてご紹介します。また担保として利用可能な金銭の種類も確認しましょう。

1.申請に必要な書類

納期限延長制度の申請に必要な書類を、それぞれの延長方式ごとにご紹介します。

申請は輸入者が行うこともありますが、よく税関官署に出入りする通関業者に依頼する場合もあります。またどの様式を使えばいいのか質問されることもあるため、把握しておくことをおすすめします。

  • 個別延長方式
    →関税(消費税及び地方消費税兼用)納期限延長(個別)申請書
  • 包括延長方式
    →関税(消費税及び地方消費税兼用)納期限延長(包括)申請書
  • 特例延長方式
    →関税(内国消費税及び地方消費税兼用)納期限延長(特例申告)申請書

税関様式が異なりますが、それぞれ申請書を2部提出します。その後、承認印が押され1通は納期限延長通知書として公布されます。

2.申請先はどこ?

納期限延長制度の申請はどの税関官署でも問題ありません。ただし、申請用紙を提出するなどのやり取りがあるため、よく利用する税関官署に申請する会社が多いようです。会社によっては、本社が一括して全国エリアの納期限延長申請をするところもあります。

3.担保はどのようなものならok?

納期限延長制度の申請時には前述の申請書と「担保」を税関に提出します。担保として認められるものは主に7つあります。以下の一覧をご確認ください。

担保の種類 具体例
(1)国債及び地方債* 供託書の正本
※登録された国債の場合には登録済通知書
(2)社債その他の有価証券* 供託所の正本
※振替株式等の場合には振替株式等担保(提供・解除)申出書2通
(3)土地 登記事項証明書または登記簿の謄本
(4)建物等 登記事項証明書、登記簿もしくは登録原簿の謄本または登録事項証明書
(5)財団等 登記事項証明書又は登記簿の謄本
(6)保証人の保証 保証書(据置担保用)又は法令保証証券(輸入貨物に係る納税保証)
(7)金銭* 供託書の正本

なお、(2)社債その他の有価証券は、税関長が担保に相応すると認めたものに限ります。また、(6)保証人の保証とは原則として以下に該当するもののみ有効です。

  • 銀行
  • 長期信用銀行
  • 農林中央金庫
  • 商工組合中央金庫
  • 信用金庫
  • 生命保険会社
  • 損害保険会社
  • 外国生命保険会社等または外国損害保険会社等

一覧のなかで、*印がついているものに関しては、税関への提出ではなく地方法務局へ供託を行います。

担保を提供すると、税関からは「担保預かり証」が発行されます。これは担保を解除する際に必要な書類であるため、紛失に注意しましょう。

納期限延長制度の疑問点を確認

納期限延長制度を利用する上で知っておきたい疑問点をご紹介します。

1.関税額が一定額を超えた場合はどうなる?

納期限を延長してもらう金額が、担保提供している金額を超過してしまうと、輸入許可がおりないことがあります。

基本的に、担保額は輸入予定量よりも多めの額の提出を求められますが、それでも大幅な輸入急増などの際は超過する可能性があります。通関業者は納期限延長承認通知書を輸入者から取り寄せ、関税を計算する際に超過する可能性がないかを確認しておくことが大切です。万が一超過する場合は、担保額の増額の手続きが必要となります。

なお、個別延長方式の場合は、一つの輸入申告に対して同時に申請を行うため、このようなトラブルが生じることはありません。

2.期限までに支払いそびれたら?

納期限延長が延長された場合は、翌月10日頃に前月の一括納付書が、輸入を担当した通関業者にNACCSセンターより配信されます。通関業者はその納付書を輸入者に送付しますが、輸入者が何らかの理由で支払いそびれることがあります。

税関に提供している担保は、輸入許可を受けるとその額分、減少していきます。つまり、延長されている一括納付書の額の支払いが遅れると、担保額が回復せず、輸入許可がおりなくなってしまうのです。

万が一、担保不足になった場合はひとまず通関業者の口座から関税額を引き落とし、輸入者から立替分を回収するという方法が取られます。

3.納期限延長制度の支払いをマルチペイメントでできる?

納期限延長制度の支払いは、マルチペイメントにも対応しています。通常は、納期限延長制度を利用した輸入申告に関しては、紙ベースで一括納付書が発行されます。

しかしマルチペイメント方式を利用することで、一括納付書の代わりに納付情報(収納機関番号、納付番号、確認番号、納税額など)が発行されます。

輸入者は自社のインターネットバンキングなどを利用して、納付情報を元に振り込みをすることで、銀行に行かずとも関税の納付ができます。

4.海上貨物と航空貨物のどちらでも使えるの?

納期限延長申請をした承認通知書は、海上貨物と航空貨物で共用することができます。また提供する担保も両方に使用することが可能です。

海上貨物と航空貨物それぞれでどのぐらいの関税などがかかったかを把握するために、あせて別々に申請する会社もあります。

通関士が知っておきたい!納期限延長制度の実務

納期限延長制度を利用した輸入申告の実務について説明します。比較的ミスをしがちな部分なのでしっかりと確認しておきましょう。

1.納期限延長コードの選択間違いに注意

輸入申告時に、納期限延長コードの選択間違いに注意しましょう。選択を間違うと輸入許可がおりない、また輸入許可の遅延にもつながります。

輸入申告書には関税などの納付方法を入力する欄があります。ただし納付方法にも、直納(納付書が発行され、銀行で支払った後、支払い済み証を税関に提示し、輸入許可となる方法)、口座振替、納期限延長と3つのタイプに分かれます。

納期限延長の場合は、選択した納期限延長方式ごとに以下の2つの欄に入力を行います。

  • 納期限延長
  • 担保番号

また、マルチペイメント方式の場合は、以下の通り入力欄が1つ増えます。

  • 納期限延長
  • 担保番号
  • 納付方法

輸入申告前に担保残を確認することが大事

輸入者が税関に提供している担保額が不足すると、担保不足で輸入許可がおりません。その分、輸入許可が遅れるため、輸入申告前に担保額の残を確認するようにしましょう。

輸入者に確認する方法もありますが、日本全国で輸入をしている会社の場合、輸入者が輸入通関のタイミングまで把握していないことも多いものです。NACCSの照会業務「IAS 担保照会」業務を利用すれば、リアルタイムに担保残高を確認することができます。

まとめ

納期限延長制度に手続きは、輸入者だけでなく通関業者が代行することもよくあります。また、メリットやデメリット、必要種類などを確認されることも多いため、概要を理解しておくようにしましょう。

そして、実務時には便利な制度がケアレスミスにより、輸入許可遅延といった事態にならないように工夫することが大切です。