外国から貨物を輸入する際の手続き「輸入通関」を正しく理解しよう

コンテナと船

関税法第2条では、輸入とは、外国貨物を保税地域を経由して本邦に引き取ることとされています。その中で貨物を輸入しようとするものは、その貨物の情報(品名や数量、価格等)を税関長に申告し、必要な検査を受けて関税を納付し、その輸入の許可を受けなければなりません。

この一連の流れを輸入通関手続と言います。

今回はこの輸入通関手続の流れや、流れごとの重要ポイントと例外、そして輸出通関手続との違いを中心にお話をしていきたいと思います。

目次

輸入通関の流れとは

貨物を輸入しようとするものは、関税法第7条に示された輸入通関の流れを順守し、原則として保税地域等に搬入した後に「輸入申告書」に所定の事項を記載し、必要な検査や許可を経る必要があります。その上で、関税を納付し輸入の許可となります。

具体的な流れを表にまとめると、以下の通りになります。

輸入したい貨物
手順① 輸入申告 保税地域で行われます
手順② 輸入申告の審査 同上
手順③ 関税の納付 同上
手順④ 輸入の許可 同上
国内市場へ

手順①~④の一連の手続きの流れを「輸入通関手続」と言いますが、輸出通関手続と比較し、大きな違いが2つあります。

第一に、輸出通関では申告の前に保税地域に搬入する必要はありませんでしたが、輸入通関の場合では、原則として保税地域に搬入する必要があるという点です。

そしてもう一つの違いが、納税申告が必要な点です。輸出通関では輸出申告を行うだけでしたが、輸入通関では納税申告、輸入申告の両方を行う必要があります。

我が国の場合では輸出の際は納税という概念は必要ありませんが、輸入にはしっかり関税が課されます。別名「輸入税」とも表現されますが、一方で「輸出税」という概念はないという違いに注意が必要です。

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輸入通関の具体的な方法と例外

それでは実際に、輸入通関手続の具体的な方法を見ていきましょう。先述の通り、原則は、保税地域または他所蔵置許可場所に搬入された後に輸入の申告を行う形となります。ですが以下の場合には、予め税関長から承認を受けた上で、保税地域等に入れないままで輸入の申告をすることが出来ます。

保税地域等に入れなくても良い場合の例外4つ

①本船扱いの場合

輸入申告に係る貨物を他の貨物と混載することなく、外国船に積み込んだ状態で検査及び許可を受けようとする場合が当てはまります。

尚、この場合、貨物の性質や形状等が「保税地域等に搬入することが不適当」(例えば、あまりに容量等が大きすぎて保税地域等に搬入できないなど)と認められる場合に限って承認される点は重要です。

②ふ中扱いの場合

輸入申告に係る貨物を他の貨物と混載することなく、はしけ(河川・港湾などで大型船と陸との間を往復して貨物や乗客を運ぶ小舟)等に積み込んだ状態で検査及び許可を受ける場合が当てはまります。

この場合も①と同様、貨物の性質や形状等が「保税地域等に搬入することが不適当」と認められる場合に限って承認されるという点は覚えておきましょう。

③搬入前申告扱いの場合

輸入する貨物に関して、「関税額(率)の増加や減免税の改定等で、納付すべき関税額が増加するとき」かつ「法令改正前に当該貨物を積載する船舶の入港が確実であり、その結果税負担が大きくなる場合」も要注意です。

つまり、保税地域等に搬入後に輸入申告をしたとなると、法令等で納付する税額が増加するなど、輸入者にとって不利益は生じる場合が当てはまります。

④到着即時輸入申告扱いの場合

貨物の輸入申告を、電子情報処理組織を利用して行う場合が当てはまります。なおこの場合は、当該貨物が日本に迅速に引き取られる、かつ、性質等を勘案して取り締まり上問題がないという場合に限られます。

これら4つの例外のうち、①と②、④は保税地域等に搬入することなく、輸入の申告から許可まで一切の手続きを進めることが出来ます。一方で③に関しては、検査と許可に関しては保税地域等に搬入した後に行われるという点が異なります。

さらに税関の検査に関して、①~③は「承認を受けても税関の検査を免除されることはない」ですが、④に関しては、税関の審査自体が不要もしくは省略扱いとなるので、「税関の検査が行われない」という点を明確に区別して理解しておく必要があります。

その他輸入申告の例外は、輸出申告の場合と同様

口頭または通関手帳により輸入申告が出来る場合、air waybillで申告できる場合、輸入申告があったと「みなされる」場合、輸入申告書の提出があったと「みなされる」場合の4つは、既に別項で述べました「輸出申告の例外」の記事内容と同様の内容のため、詳細は割愛させて頂きます。ぜひご覧ください。

輸入申告書の記載内容

さて、それでは実際に輸入申告をする上での申告書に関して、具体的にはどのような内容を記載しなければならないのでしょうか。大きく以下の4つに大別されます。

  1. 貨物番号・品名・数量及び価格
  2. 貨物の原産地、積出地、仕出人の住所及び氏名
  3. 貨物を積んでいた船舶(航空機)の名称または登録番号
  4. 貨物を入れる保税地域の名称、所在地

この中で説明が必要なのが①の「数量・価格」です。輸出申告書には、特に以下の点に注意し記載することが求められます。

数量 財務大臣が貨物の種類ごとに定める単位により、正味の数量を記載
価格 日本の輸入港におけるCIF価格として、常に日本円で申告する

数量や換算に関する規定自体は輸出申告の際と同様ですが、輸出と大きく違うのが申告価格に関してです。輸出はFOB価格でしたが、輸入では「CIF価格」で申告をしなければなりません。

FOB価格とは、単に輸出貨物だけの価格ではなく、例えば輸出するために外国船に積み込むための輸送費や通信費などの費用が含まれた価格を意味します。一方でCIF価格とは、このFOB価格に海上保険料や海上運賃の金額を加えた概念と理解しておきましょう。

輸入申告の際の「証明」・「確認」とは

輸入通関手続きを行う場合の貨物の証明・確認を受ける義務の規定は、輸出と場合と同様です。

ですが輸入の場合は既に述べてきたように様々な理由で、保税地域等に一時的に蔵置することがあります。このような場合はすぐに輸入申告を行わないため、予め蔵置の際に「許可や承認を受けている」旨を税関に証明しなければならないという点に相違があります。

尚、その上で輸入申告は終了した後に関しても、輸出と同様に、税関による申告内容の審査等が行われます。原則税関の検査は免除されません。

輸入してはならない貨物

「輸入してはならない貨物」に関する規定は、それらに関する処分の流れと同様、輸出の場合と酷似しています。一方で輸入に際しては一部追加の品目がありますので、特に通関士の試験対策としては、その違いをしっかりと理解しておきましょう。

輸入してはならない貨物の具体例

次にあげる貨物は、輸入してはならない貨物として関税法第69条で規定されています。

麻薬および向精神薬、大麻、あへん及びけしがら、並びに覚せい剤
児童ポルノ
特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、または育成者権を侵害する物品
不正競争防止法第2条第1項第1号から第3号までに掲げる行為を組成する物品
医薬品等に規定された指定薬物
拳銃、小銃、機関銃、爆発物、火薬類など
貨幣、紙幣、印紙、郵便切手、およびそれらの模造品
公安または風俗を害する書籍、図面、彫刻その他物品

この中で①から④は輸出の場合と同様ですが、⑤から⑧は輸入特有の項目です。輸出の際より輸入の場合に規制が大きくなる理由としては、輸入とは、日本国内に流通が発生するという性質上の理由が挙げられます。

輸入してはならない貨物を扱う際の流れ

上記のような貨物が輸入されるような場合は、税関長はそれらを没収して、破棄、さらには積戻しをすることが出来ます。

ただし上記の「②児童ポルノ」、そして「⑧公安または風俗を害する書籍、図面、彫刻その他物品」に関しては、輸入不可と認めるのに相当の理由があると判断した際は「輸入者への通知」という処理となります。

輸出の時との違いは、②は輸出・輸入の両方で規制されていましたが、⑧はこの輸入でのみ規制されているという点です。そして、その理由として基本的人権の尊重が背景にあるという点、あるいは税関長の処分に不服がある場合は輸入者は申し立てができるという点は、輸出の場合と同様です。

輸入許可前取引とは

通常の輸入の流れは、輸入申告の後に税関長の審査、許可、そして納税の上で貨物の引き取りという原則ですが、この輸入許可前取引とは、輸入申告後、税関長の許可を受ける前に貨物を引き取ることができる制度です。

輸入許可前取引の意義と原則

例えば夏服などの季節ものの商品を輸入しようとした場合、税関の審査に思った以上に時間を要してしまい許可がなかなか下りないとなったら、国内の流通・販売に支障をきたしてしまいますよね。賞味期限が短い食料品なども最たる例です。そのようなデメリットを解消するために設けられた制度が、輸入許可前取引です。

輸入許可前取引の原則は、納税申告を行った後でなければ、この輸入許可前取引の申請・承認がなされないという点です。併せて、「関税額に相当する担保」(絶対的担保と言います)を提供することが求められます。

輸入許可前取引の手続きの流れ

上記の大原則を踏まえた上で、輸入許可前取引の流れを見ていきましょう。

輸入申告
輸入許可前取引の承認申請 申請書への記入と併せて、絶対的担保の提供
引き取り承認 この時点で貨物は「みなし内国貨物」となり、国内で自由に流通・処分できます
納税通知書等の交付 納税申告に誤りがある際は「更正通知書」が交付
関税の納付
税関長による輸入許可
担保の返却

輸入許可前取引の承認を受けた貨物は通常の輸入貨物に関する輸入許可と同様の効果が発生します。つまり、納税前にも関らず国内に引き取られ、流通、処分が可能になるのです。ただしあくまで輸入の正式な許可という観点では、「納税納付後」になります。

また、輸入許可前取引が行われる貨物は、原則として内国貨物扱いになるという点は覚えておきたいポイントです。

予備審査制とは

スピーディーさ、迅速さが求められる輸入手続きにおいては、上記の輸入許可前取引の制度と同様、「予備審査制度」も重要な役割を担っています。

この予備審査制度とは、輸入される予定の貨物が保税地域等に搬入される前に、各書類の審査を前もって行ってしまおうという制度です。

たびたび述べてきましたように、輸入手続きの大原則の一つとして、「輸入申告は貨物を保税地域等に搬入した後に行う」ことが挙げられます。一方で実際の現場では、既に輸入に必要な書類は準備できているのに、貨物だけ到着していないという事例が珍しくありません。

「書類等の準備は万全なのに、貨物が到着しないから手続きが進められない」のでは、貿易ビジネスの足かせになってしまいますよね。

そのような状況を解決するために、書類が揃っているならば先に税関の審査だけでも終了させてしまおうというのが、この予備審査制度が設立された背景です。

この制度のポイントとしては、書類の提出時期に他なりません。「輸入申告予定日における外国為替相場が公示された日」または「輸入する貨物の船荷証券が発行された日」いずれか遅い日以降の日から提出できるという点は、試験対策の上で理解しておきたい重要項目です。

特例輸入申告制度とは

もう少し、輸入の簡素化・迅速化の例を見ていきましょう。

以前までは輸入貨物の引き取りは、関税の納税を前提としてのみしか扱われておりませんでしたが、この「特例輸入申告制度」とは、予め税関長の承認を受けた輸入者(特例輸入者と言います)が、申告納税方式を利用する貨物に限定した上で、貨物の引き取りと納税申告を分離して手続きを進めることが出来る制度です。

特例輸入者に承認された場合は、この特例輸入申告制度を利用するか、通常の輸入制度を利用するかは輸入者が選択できます。

特例輸入申告制度を利用するメリットの最たる例としては、やはり「貨物の引き取り後に納税を行っても良い」という点でしょう。併せて、輸入申告時の審査等が省略されますので、手続きの迅速化、ペーパーレス化に期待が持てます。

一方でこのようなメリットを享受できるわけですから、当然、輸入者の信頼や実績が必要になるため、どの輸入者も特例輸入申告制度を利用することが出来るという訳ではありません。

特例輸入者の承認

特例輸入者の承認の要件も、既に別項で述べてきました「特定輸出者の承認の要件」と同様、大きく分けて3つあります。具体的には「欠格事由に該当しないこと」、「電子情報処理組織を利用する能力を有していること」、「法令順守規則を定めていること」の3つとなります。

詳細は別項で述べているため割愛しますが、この3点の内容はしっかり理解しておく必要があります。

郵便物などに関する特則

さて、輸入の簡素化という点で具体的な例として多く挙げられるのが、郵便物に関してです。ただし全ての郵便物が対象となるわけではなく、条件を満たしたものについては、輸出や輸入の際に必要な「申告→許可」という一連の手続きが不要になるのです。

以下より、この「条件を満たした郵便物」の例を見てみましょう。

価格が20万円以下の輸出される郵便物、または課税価格が20万円以下の輸入される郵便物
寄贈品である郵便物(輸入の場合のみ)
無料の貸与などの理由により、名宛人がその価格を把握していると認められる郵便物
アメリカ合衆国の郡司郵便局を通じて郵送される郵便物

特に①の「価格が20万円以下の輸出される郵便物」に関しては、通関士の試験では頻出です。この場合、通常の貨物に必要な輸出入通関の手続きが不要になります。

また③に関しても少し説明が必要でしょう。
郵便で外国から送られてくる寄贈品などは、その名宛人(輸入者)が課税されるべき価格を知ることが出来ない状態であることは明白です。そのため、このような郵便物に関しては輸入申告を必要とせず、税関長がその課税価格と関税額を決定することになるのです。

この出題範囲で誤って理解しやすい点としては、上記4つの条件を満たしたものでなければ、逆に、税関職員は必要に応じて検査等をすることが出来るという点です。それはつまり、他法令の許可や承認の証明、検査の完了等の確認がなされない郵便物は、発送や交付がなされない場合もあるということにつながります。

まとめ

輸入通関手続の大前提は、「保税地域に搬入」と、「納税申告」の2つです。一方でこの大前提は様々な状況により、例外が発生するという点をしっかり覚えておく必要があります。

加えて、項目によっては酷似しがちな輸出通関手続との違いも明確にしておきましょう。輸出は本邦内の貨物等を海外へ持ち出すことですが、対して輸入とは、外国の貨物を本邦に持ち込むことです。それはつまり、輸入という手続きには国内の流通、消費、処分という要素が発生するため、より輸入通関手続の方が厳しく規制される傾向にあるのです。

この両者の分野は通関士試験では毎年出題されますので、時間をかけてじっくり学ぶことで確実な理解に努めて頂ければ幸いです。

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