パッキングリスト(Packing List)とは?記載内容や疑問点を解説!

目次

通関士が扱うパッキングリスト(Packing List)とは?

「パッキングリスト(Packing List)」とは、輸出入取引に必要となる梱包明細書で、次の内容が分かる書類です。

  • 包装形態(段ボールケース、木枠など)
  • 1つの包装に何が、どのぐらい梱包されているのか

通関士が扱う通関書類でもあり、商取引上の納品書の役割を果たす書類でもあります。

実際のパッキングリストは次のようなものになっています。

パッキングリスト

パッキングリストは通関書類

パッキングリストは輸出入通関に必要な書類です。そのため、通関業者に輸出通関および輸入通関を依頼する際には、インボイスとあわせて提出を求められます。

商品を輸出する際に行う輸出申告書には以下の項目が必要であり、パッキングリストがないと作成ができません。輸出申告書の記載内容の証明書類としても必要となり、輸入側でも同様の項目が求められます。

  • 輸出貨物のトータル貨物個数
  • 輸出貨物のトータル貨物重量
  • 輸出貨物の統計品目番号ごとの個数
  • 輸出貨物の統計品目番号ごとの貨物重量

通関士は輸出申告や輸入申告の審査を行う際、通関従事者が作成した輸出入申告書とインボイス、パッキングリストなどとの相違がないかを確認しています。

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パッキングリストとインボイスの違い

パッキングリストとインボイスの違いを簡単にご紹介しましょう。

インボイス 輸出入する貨物の請求書
パッキングリスト 輸出入する貨物の梱包明細書

インボイスは金額や支払い方法など決済に必要な書類、パッキングリストは梱包形態や重さなど梱包状態が分かる書類です。

記載内容は重複する項目が多いため、エクセルなどで作成し、重複する項目は関数で情報を引いてくる方法が一般的です。書類作成にかかる時間の短縮と二度同じことを打ち込むことでミスが起こるのを防ぐ意味合いがあります。

パッキングリストの役割

パッキングリストの役割は以下の2つです。

  • 輸出入申告書の審査に用いる証明書類
  • 商取引上の納品書の役割

輸出入申告書の証明書類としての役割は前述した通りです。具体的には、以下の3つの場面で使用されます。

  • 通関従事者が輸出入申告書を作成する
  • 通関士が輸出入申告書の内容を審査する
  • 税関職員が輸出入申告書の内容を審査する

また、商取引上の納品書の役割としては、商品違いや数に漏れがないかなどの確認に必要です。輸入者は、輸入した荷物と輸出者より送付されたパッキングリストを照らし合わせながらチェックします。

パッキングリストは、遅くとも輸出後には輸入者にメールなどで送付されます。そのため、商品が到着する前に何がどれだけ、どういった梱包で送られるのかを知ることができます。

パッキングリストの作成者

パッキングリストを作成するのは輸出者です。輸出者は輸出する商品を梱包した後、計量などを行い、パッキングリストを作成しています。

梱包形態は、輸入後の輸送手段やエンドユーザーの意向を踏まえて輸入者がPO(purchase order)と呼ばれる発注書内で指示するのが一般的です。

通関に欠かせないパッキングリストの記載内容

通関に欠かせないパッキングリストの記載内容と記載例を詳しくご紹介します。パッキングリストに記載される内容は、以下の3つの情報です。

  • 輸出入者情報(法人名、住所、連絡先など)
  • 商品の輸送に関する情報(船積み港、仕向け地、輸送便、船積日など)
  • 商品に関する情報(商品名および品番、シッピングマーク、重量、梱包形態、容積など)
項目(英語) 意味
INVOICE NO & DATE インボイス番号と作成日*1
SHIPPER 荷送り人(輸出者)
CONSIGNEE 荷受人(輸入者)
COUNTRY OF ORIGIN 原産地
REMARKS 備考(支払い方法など特記事項)
NAME OF VESSEL 船名(輸送便の名称および航海番号)
DATE OF SHIPMENT 船積日
PORT OF SHIPMENT 船積み港(輸出港)
PORT OF DESTINATION 仕向け地(輸入港)
SHIPPING MARK 荷印(シッピングマーク)
NO.OF CT カートン(段ボール箱)の番号※通し番号
DESCRIPION 荷物の詳細情報
QTY OF CT カートン(段ボール箱)内の個数
QUANTITY 商品などの数量
NET WEIGHT 正味重量(ネットウエイト)
GROSS WEIGHT 梱包後の重量(グロスウエイト)

*1 インボイスとパッキングリストはセットで作成されるため、インボイス番号=パッキングリストとなる

三つ目の「商品に関する情報」のうち、パッキングリストのみに記載される項目は次の通りです。

  • マーク
  • 重量
  • 梱包形態(荷姿)
  • 容積

では、上記の4項目について確認していきましょう。

シッピングマーク

シッピングマークは「紛失防止」を目的として記載されます。ケースマーク(Case Mark)と表現されることもあります。

国をまたぐ輸送は移動距離も長く、多くの業者が荷物の輸送に携わります。そのため、荷物の紛失や他の荷主の荷物とテレコにならないよう注意が必要です。

特に、LCL貨物*2の場合はコンテナ1本の中に複数の荷主の荷物が混在するため、輸出時・輸入時ともに記載が必須です。また輸出入申告書の「記号番号」欄に記載する情報です。

一方FCL貨物*3の場合は、LCL貨物のような紛失リスクこそありませんが、自社内の他のお客様向けの貨物との混在を避けるために必要でしょう。輸出入申告書の「記号番号」欄は、シッピングマークをそのまま記載するか、もしくはコンテナー(CONTAINER)の頭文字「C」という記載でも代用可能です。

シッピングマークに規則はなく、一般的には以下の内容が記載されています。

  • 荷受人(輸入者)名
    (例)ABC Company
  • 仕向け地(輸入港)
    (例)N.Y.,U.S.A
  • 輸送貨物のカートン(段ボール箱)などの番号
    (例)CT/NO.1-400
  • 原産地
    (例)MADE IN JAPAN

上記のシッピングマークから、ABC Company宛の貨物がアメリカのニューヨーク港向けに段ボールケースNO.1~400までの400箱あり、貨物の原産国は日本だということが分かります。

輸出入申告で税関の現物対査検査が行われる際は、パッキングリストに記載されたシッピングマークと貨物のケースに記載されたシッピングマークで同一の貨物だと確認します。

*2  LCL貨物(Less than Container Load)はコンテナ1本に満たない少量の貨物、他の荷主の貨物と合わせてコンテナ1本を仕立てる

*3  FCL貨物(Full Container Load)はコンテナ1本単位で貸切る輸送形態の貨物

ネットとグロス2つの重量

パッキングリストには、NET WEIGHT(ネットウエイト)とGROSS WEIGHT(グロスウエイト)の2つの重量が記載されます。ネットウエイトはネット、グロスウエイトはグロスと略して呼ばれるのが一般的です。

一覧表でも記載した通り、ネットウエイトは貨物の正味重量です。一方のグロスウエイトは梱包後の重量を指します。

通関士が審査する輸出入申告書には、ネットウエイトとグロスウエイトの両方が必要です。ネットウエイトは、統計品目番号ごとに申告する「数量単位」欄に必要となることが多く、グロスウエイトは「貨物重量」欄に必ず記載する事項です。

パッキングリストには、以下のように記載され、最後にTOTALとして総合計が分かるようになっています。

NET WEIGHT(ネットウエイト)とGROSS WEIGHT(グロスウエイト)の表記例

梱包形態(荷姿)

梱包形態は荷姿とも呼ばれ、輸送される状態の外観を表しています。よって梱包前の「QUANTITY」に使用される単位と混同しないよう注意が必要です。

荷姿は「QTY OF CT」に記載の200CTの部分で分かります。CTはCARTON(段ボール)の略であり、段ボールケース200箱を表します。上記の重量で紹介したのと同様に最後にTOTALが記載され、総個数が分かるようになっています。

輸出入される商品の総個数は、通関士が審査する輸出入申告書の「貨物個数」の欄に記載されます。なお、パッキングリストで使用されている荷姿と税関が輸出申告書に記載するように指定している荷姿には若干差があります。

たとえば、段ボールケースをCT(CARTON)ではなく、CS(CASE)と記載する輸出者もいます。税関申告上使用される「積込個数単位コード」ではCSは木箱の総称となっており、これを通関士が聞かされていないと誤った申告となります。

(パッキングリストの記載)400CS

(実際の荷姿)400CT

(輸出入申告書への記載)400CTが正解、400CSとすると誤り

容積重量

パッキングリストには容積重量が記載されます。この容積重量はLCL貨物の輸送運賃の計算にも使われる大切な数値です。ただし重量貨物の場合は、実重量が輸送運賃の基礎となります。

容積重量は輸出入申告書自体には記載されませんが、通関士が「輸入(納税)申告書」の審査の際に確認する事項の一つです。課税価格には輸送運賃も含まれるため、船会社が発行する貨物到着案内(Arrival Notice)に記載された容積重量とパッキングリスト上の容積重量が相違していないかをチェックしています。

容積重量の計算式は以下の通りです。

(縦×横×高さ)㎝ × 個数 ÷ 1,000,000

縦30㎝、横30㎝、高さ50㎝の箱が100個の場合を例にあげ計算してみましょう。

(例)(30×30×50)× 100 ÷ 1,000,000 = 4.5㎥

通関士に聞きたい!パッキングリストの疑問

通関をよりスムーズにするために、パッキングリストに関する疑問について解説します。

パッキングリストとインボイスは兼用できる?

パッキングリストとインボイスの兼用は可能です。ただし上記でご紹介した記載内容を網羅しておくことが条件です。万が一、記載漏れがある場合は通関審査が遅延し、パッキングリストなどの修正が発生するため、ご注意ください。

貿易取引される商品アイテム数が多くなる場合は、実務的上兼用はおすすめできません。書類が煩雑になり見づらく、商取引の事務作業に支障をきたすこともあります。また、輸出入申告書を審査する税関職員も好みません。

複数アイテムを貿易取引する場合、また同一アイテムでもFCL貨物の場合は、パッキングリストとインボイスをそれぞれ作成しましょう。

パッキングリストの番号は何を表すの?

パッキングリストの番号とは「通関に欠かせないパッキングリストの記載内容」の章でご紹介した「INVOICE NO & DATE」を指します。パッキングリストに記載される番号ですが、インボイスあってのパッキングリストなので、「PACKING NO & DATE」とはなりません。

パッキングリストの番号のつけ方に決まりはなく、管理しやすい番号が使われます。次のような表記が一般的です。

輸出会社名の略語+輸入会社名の略語+通し番号

(例)JTABC-221

インボイス、S/Iとの整合性って?

商品の輸出時には、通関業者に提出する以下の書類の整合性が取れていることが必須です。

  • インボイス
  • パッキングリスト
  • 船積指示書(Shipping Instruction)

通関士は輸出入申告書の審査をする際に、この3つの書類と相違がないかを確認します。そのため、個数、荷姿、重量などが大きく異なり、正しい書類を提出できない場合は、通関自体を断られることさえあります。

これは輸出者が書類作成を誤ったとしても、通関業者の「誤謬」としてマイナス点が加算されてしまうためです。このマイナス点は累積され、一定の点数になると業務停止という厳しい処置がくだります。

パッキングリストが間違っていたら?

パッキングリストが間違っていることが分かった場合は、通関士もしくは営業担当者から作り直しの依頼があります。

輸出申告前であればまだ問題ありませんが、以下の場合は輸出者にもお咎めがあります。

  • 輸出申告後に税関職員から指摘された
  • 税関検査で書類と現物の不一致があった

特に、パッキングリストに記載がないものが輸出予定貨物からでてきた場合は、密輸出を疑われ、関税法上の罪に問われるので注意が必要です。

まとめ

パッキングリストは、インボイスと同様に通関手続き上で非常に大切な書類です。人間が作成するため、ケアレスミスはつきものです。しかし経験を踏むうちに、確認すべきポイントが分かり、的確に審査を行うことができます。

回の内容をパッキングリストの基礎的マニュアルとして覚えておきましょう。また通関業者には審査マニュアルも完備されているので初心者でも安心です。

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