簿記2・3級の受験者を悩ませる「損益勘定」とは?
更新日:2019年3月12日
簿記を勉強中に、度々出てくる「損益勘定」と「振替」という言葉。
「そもそも損益勘定というのがいまいちわからない」「振替って簡単にいえばどういう意味?」と悩んだ方も多いのではないでしょうか。
そこでこのページでは、簿記初心者を悩ませる「損益勘定」と「振替」について、日商簿記2級の学習範囲に当たる「総勘定元帳(帳簿)の締め切り手順」、3級の「資本振替手続」についてまとめました。
簿記初心者を悩ませる「損益勘定」とは?
まず「損益勘定」とは、決算の際に純損益を確定するための勘定科目です。
例えば、会社では「給料の支払い」「経費の支払い」「備品の購入」など、さまざまな取引が行われています。
これらを「補助簿」、次に「総勘定元帳」に記入し、1年間のお金の動きを集計したものが「貸借対照表」と「損益計算書」です。
この「総勘定元帳」を締め切る場合、「備品」や「給料」などは次期に繰り越すことができません。
そのため、収益や費用は「損益勘定」に集め、そこで出た利益を「資本金にプラスする」ことが損益勘定の役目です。
簿記2級、総勘定元帳(帳簿)の締め切り手順をわかりやすく解説
決算後、次期のために「総勘定元帳(帳簿)」の各勘定科目を整理することを「帳簿の締め切り」といいます。
流れとしては次のようになります。
例
- 1.収益・費用の各勘定残高を「損益勘定」に振り替える
↓ - 2.当期純利益(または当期純損失)を「繰越利益剰余金勘定」に振替える
↓ - 3.各勘定を締め切る
↓ - 4.繰越試算表を作成する。
1.収益・費用の各勘定残高を「損益勘定」に振り替える
まず、収益、費用は次期に繰り越すことができないので、「損益勘定」に振替えます。
このとき、各勘定の残高がゼロになるように、「収益の勘定残高」を損益勘定の貸方へ、「費用の勘定残高」を損益勘定の借方へ振替えます。
例
売上 | |
---|---|
5,000 |
仕入 | |
---|---|
3,000 |
収益の損益勘定への振替えは次のようになります。
一見すると「売上」は収益なので貸方にきてもよさそうですが、この仕訳は「収益の金額を損益勘定の貸方へ振替えた」ことを表しています。
借方 | 貸方 |
---|---|
売上 5,000 | 損益 5,000 |
費用の損益勘定への振替えは以下のようになります。
借方 | 貸方 |
---|---|
損益 3,000 | 仕入 3,000 |
これらの結果にもとづき、損益勘定は以下のようになります。
損益 | |
---|---|
3/31(仕入勘定より) 3,000 | 3/31(売上勘定より)売上 5,000 |
2.当期純利益(または当期純損失)を「繰越利益剰余金勘定」に振替える
例
損益 | |
---|---|
3/31 仕入 3,000 | 3/31 売上 5,000 |
繰越利益剰余金 | |
---|---|
利益準備金 100 未払配当金 800 |
4/1 前期繰越 1,100 |
当期純利益(または当期純損失)は、収益と費用の差額から求めることができます。
具体的には、差額が右の方が多い「貸方残高」であれば利益が出たことになり、左の方が多い「借方残高」であれば損失が出たことになります。
今回のケースでは、2,000円の「貸方残」なので、当期純利益2,000円となります。
当期純利益は「会社の元手(純資産)の増加」になるので、「繰越利益剰余金勘定」の貸方に振替えます。
借方 | 貸方 |
---|---|
損益 2,000 | 繰越利益剰余金 2,000 |
勘定記入は……
損益 | |
---|---|
3/31 仕入 3,000 〃 繰越利益剰余金 2,000 |
3/31 売上 5,000 |
繰越利益剰余金 | |
---|---|
利益準備金 100 未払配当金 800 |
4/1 前期繰越 1,100 3/31 損益 2,000 |
注意:なお、当期純損失の場合は「繰越利益剰余金勘定」の貸方に振替えます。
例えば、損益勘定の仕入れが6,000円(当期純損失が1,000円)の場合は……
損益 | |
---|---|
3/31 仕入 6,000 | 3/31 売上 5,000 〃 繰越利益剰余金 1,000 |
繰越利益剰余金 | |
---|---|
利益準備金 100 未払配当金 800 損益 1,000 |
4/1 前期繰越 1,100 |
となります。
3.各勘定を締め切る
例
仕入 | |
---|---|
3,000 | 3/31 損益 3,000 |
売上 | |
---|---|
3/31 損益 5,000 | 5,000 |
損益 | |
---|---|
3/31 仕入 3,000 〃 繰越利益剰余金 2,000 |
3/31 売上 5,000 |
現金 | |
---|---|
100 |
買掛金 | |
---|---|
150 |
繰越利益剰余金 | |
---|---|
利益準備金 100 | 4/1 前期繰越 1,100 |
未払配当金 800 | 3/31 損益 2,000 |
・収益・費用の各勘定科目の締め切り
収益・費用・資産・負債・純資産の各勘定を締め切ります。
損益振替後の各勘定の「借方合計」と「貸方合計」が一致していることを確認したうえで、二重線を引いて締め切ります。
売上 | |
---|---|
3/31 損益 5,000 5,000 |
5,000 5,000 |
仕入 | |
---|---|
3,000 3,000 |
3/31 損益 3,000 3,000 |
損益 | |
---|---|
3/31 仕入 3,000 〃 繰越利益余剰金 2,000 5,000 |
3/31 売上 5,000 5,000 |
・資産・負債・純資産の各勘定科目の締め切り
資産、負債、純資産のなかで、期末時点で残っているものは次期に繰り越します。
借方または貸方に「次期繰越」と記入して締めましょう。
そして締め切ったあと、「次期繰越」と記入した逆側に「前期繰越」と金額を記入します。
現金 | |
---|---|
100 100 4/1 前期繰越 100 |
3/31 次期繰越 100 100 |
買掛金 | |
---|---|
3/31 次期繰越 150 150 |
150 150 4/1 前期繰越 150 |
繰越利益剰余金 | |
---|---|
利益準備金 100 未払配当金 800 3/31 次期繰越 2,200 3,100 |
4/1 前期繰越 1,100 3/31 損益 2,000 3,100 4/1 前期繰越 2,200 |
4.繰越試算表を作成する。
例
現金 | |
---|---|
100 100 4/1 前期繰越 100 |
3/31 次期繰越 100 100 |
買掛金 | |
---|---|
3/31 次期繰越 150 150 |
150 150 4/1 前期繰越 150 |
繰越利益剰余金 | |
---|---|
利益準備金 100 未払配当金 800 3/31 次期繰越 2,200 3,100 |
4/1 前期繰越 1,100 3/31 損益 2,000 3,100 4/1 前期繰越 2,200 |
資産・負債・純資産は、次期に繰り越します。そこで、次期に繰り越した金額が正しいかどうかを「繰越試算表」を作成し確認します。
繰越試算表
借方 | 勘定科目 | 貸方 |
---|---|---|
100 | 現金 | |
・・・・ | 売掛金 | |
・・・・ | 繰越商品 | |
買掛金 | 150 | |
借入金 | ・・・・ | |
資本金 | ・・・・ | |
繰越利益剰余金 | 2,200 | |
・・・・ | ・・・・ |
決算整理仕訳と決算振替仕訳の違いを教えて!?
「決算整理仕訳」と「決算振替仕訳」は似ているようで異なります。
「決算整理仕訳」は、決算整理のために行う仕訳のことを指し、当期の「収益」「費用」を確定するとともに、次期へ繰り越す「資産」と「負債」を確定します。
一方、「決算振替仕訳」は、確定した費用と収益を損益勘定に振替えるための仕訳です。
簿記3級、損益勘定で計算した当期純利益を、資本金勘定へ振替える(資本振替手続)
日商簿記3級では、損益勘定で計算された「当期純利益(当期純損益)」を資本金勘定に振替える方法を学習します。
例
損益 | |
---|---|
12/31 費用 600 | 12/31 売上 1,000 |
「損益」の残高を「資本金」に振替えて、「損益」を締め切る手続きです。
- 1. 「損益」の残高を「資本金」に振替えます。このとき、利益が生じている場合は「損益」の借方に記入し一旦取消。そして、「資本金」の貸方に記入し復活させます。
- 2.「損益」を締め切ります。複数記入されている場合は、合計額を記入したうえで、二重線を引いて締め切ります。
損益 | |
---|---|
12/31 費用 600 12/31 資本金 400 1,000 |
12/31売上 1,000 1,000 |
資本金 | |
---|---|
1/1 前期繰越 5,000 12/31 損益 400 |
借方 | 貸方 |
---|---|
損益 400 | 資本金 400 |
まとめ
今回は、簿記初心者を悩ませる事項について紹介しましたが、損益勘定のポイントは、他の科目と違って「集計して残高をゼロにする」という性質です。
最初は、残高・損益のどちらに振り替えるのか判断ができず、戸惑う方も多いですが、これは練習あるのみです。
過去問を1問でも多く解き、パターンを覚えていきましょう。