MRP(資材所要量計画)とは?

MRP(資材所要量計画)とは?

MRP(Material Requirements Planning)は1970年代にアメリカで開発された需要をもとにたてる資材計画のことです。コンピュータシステムの利用を前提としており、このシステムをMRPシステムといいます。

広義では、計画だけでなく管理・統制なども含まれます。その場合、基準生産計画をもとに各工程に生産指示を行う形式となり、生産方式はプッシュ・システムをとります(⇔対義語はプル・システム=ジャスト・イン・タイム)。

目次

MRPのフロー

MRPでは基準となる生産計画をもとに、必要な資材を、いつ、どれだけ発注するかを計算しますが、この計算を行うためには、部品(構成)表や在庫情報、さらに部品の調達にかかる時間(リードタイム)を参照する必要があります。MRPの手順は次のようになります。

(1)基準生産計画(MPS)

基準生産計画(MPS:Master Production Schedule)は、最終製品の生産計画をことです。資材所要量の計算を行うための基本情報になりますが、これをMRPシステムにインプットします。

なお、「MRP」では時間軸をタイムバケットとよばれる、1週間や1日などの短い期間に区切って、その時間内で生産や統制を行います。こうした方式をタイムフェイズといいます。

(2)総所要量計算

基準生産量をみたすための必要部品の数量(総所要量)を、部品表を参考にして計算します。

(3)正味所要量計算

部品の在庫情報や発注残情報をもとに、実際に必要な部品量(正味所要量)を計算します。総所要量から発注残と在庫分を差し引いたものです。

(4)ロット編成計画

部品の発注スケジュールに基づき、適切な発注量(ロットサイズ)を計算します。

(5)先行計算

リードタイムを考慮して、部品の各ロットの発注時期・納期を確定させます。

(6)計画オーダー(着手ベース)へと進みます。

部品(構成)表

部品表(BOM:Bill of Material)は、製品や親部品を生産するために必要な子部品の種類・数量を表したリストのことです。最終製品のように需要予測や基準生産計画を立案する対象の品目を独立需要品目といい、独立需要品目(または親部品)の需要から計算できる品目を従属需要品目といいます。この従属需要品目をリスト化したものが部品(構成)表で、MRPで所要量を求める対象となります。

なお、中小企業診断士の1次試験において、部品の所要量を求める問題がよく出題されますので、計算などに慣れておきましょう。

サマリー型部品表

サマリー型部品表は、製品または親部品に必要な種類と量を表形式にまとめたものです。必要となる部品の所要量は容易に算出できますが、最終製品の組立段階や構成部品との構造が示されていないため、中間部品の構成を把握することができません。

MRP(資材所要量計画)とは?

※( )内は必要数量

ストラクチャ型部品表

ストラクチャ型部品表は、親部品と子部品の構成(従属関係)をツリー状に表したものをいいます。ツリー状に親部品と子部品との関係を示すことにより、中間部品などがある複雑な関係においても部品構成が明確に把握できます。しかし、その複雑さから、管理と所要量計算には時間がかかるため、コンピュータを活用するのが一般的です。

MRP(資材所要量計画)とは?

※( )内は必要数量

MRPⅡ

MRPから発展し、資材所要量計画だけでなく、要員、設備といった内部経営資源も管理対象として製造・購買などの製造企業の活動を計画し管理する総合生産管理の概念と技法です。

MRPは、Material Requirements Planningの略ですが、MRPⅡは、Manufacturing Resource Planningの略で日本語では生産資源計画といいます。

ERP

現在、MRPやMRP2から発展した、ERPが主流となっています。ERPは、Enterprise Resource Planningの略で、「企業資源計画」呼ばれています。

ERPやMRP2は、生産部門内を効率化するシステムですが、ERPは、企業全体の基幹業務の最適化をめざすシステムです。財務・会計、物流、在庫、人事、生産、販売など、企業全体における「ヒト、モノ、カネ」に関する経営情報を一元的、かつリアルタイムに把握・管理することで、より最適な生産計画が可能にします。

過去問題

MRPについては、過去このような形で出題されています。

平成23年 第1次試験 運営管理 第4問
生産システムへのITの利用に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 資材の計画、要員や設備などの資源の管理のために、MRPⅡを導入する。
イ 生産情報をリアルタイムに処理し、現場管理者に提供するために、MRPを導入する。
ウ 製品のモデルを用いて製品設計を仮想的に評価するために、ERPを導入する。
エ 物、人、金を対象に、生産を総合的に管理するために、CAEを導入する。

正解:ア

まとめ

MRPについて見てきました。MRPのメリットは、

  • 製品間で共通の部品をまとめて発注ができ一括購入によるコストダウンが期待できる。
  • 生産指示を受けた後、部品発注までの速度が早くなる。
  • 原材料や部品の品切れによる納期遅れが減少する。

原材料や部品の品切れによる納期遅れが減少する。

プッシュ・システムのMRPは、プル・システムのJIT(ジャスト・イン・タイム)と対比されることが多いです。JITは「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」という考えの下、在庫を最小にするシステムです。しかし必ずしも相反するものではなく、JIT実現のためにも、適切な在庫管理や調達のリードタイムの把握は必要です。試験対策だけでなく併せて理解をしていきましょう。

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