コトラーの「競争地位別戦略」とは?中小企業診断士解説。

階段のような絵と4つの英語

競争地位別戦略は、1980年にアメリカの経営学者、フィリップ・コトラー(1931年 -  )が提案した競争戦略の理論です。コトラーは企業が保持している経営資源の質と量*により、業界内の各企業を、リーダー、チャレンジャー、ニッチャー、フォロワーの4つに分類し、それぞれの地位に基づいた戦略があると提唱しました。

一つずつ見ていきましょう。

*質的経営資源・・・技術力、マーケティング力、ブランド力、トップのリーダーシップ等
量的経営資源・・・社員数、資金、生産規模等

リーダー、ニッチャー、チャレンジャー、フォロワー
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目次

リーダー

リーダーとは、市場シェアがトップの企業です。価格変更、新製品の導入、販売促進などで市場をリードする立場にあり、マーケティング関連資源や生産資源などを、他の企業より多く保有しているなど、質・量ともに最大の経営資源を持つ企業のことです。

リーダー企業は、規模の経済が最も効率的に働く立場にあり、市場規模が拡大する時に最もその利益を享受することができます。そのため、リーダー企業は、市場規模の拡大、最大市場シェアの維持・拡大・最大利潤や名声、No.1の地位の維持を目標として行動し、ターゲットとしては、「全方位・フルカバー」となります。

また、戦略として以下の4つが挙げられます。

①周辺需要拡大

市場そのものを大きくすることで、最大の市場シェアを有するリーダーは最も恩恵を受けることになります。

②同質化政策

対チャレンジャー戦略です。下位の競合企業の差別化戦略に対し、相対的に優位な経営資源で模倣・追随して、その差別化戦略を無効にします。

③非価格政策

価格競争に陥ると最も損失が大きくなるのはリーダーです。そのため、競合他社の低価格戦略には簡単に乗らないようにします。

④最適シェアの維持

一定以上のシェアを獲得しても独占禁止法に抵触する恐れや、多大なコストがかかるなど、必ずしも利益が向上しない場合もあります。そのためリーダーは最も利益率が良いシェアを維持しようとします。

チャレンジャー

チャレンジャーは、経営資源の量は相対的に大きいが、質的にリーダーには及ばない企業のことです。市場シェアは一般的にリーダーに次ぐ規模を占めており、リーダーに挑戦し、市場シェアの拡大を狙う立場にいる企業です。

チャレンジャーは、「リーダーへの挑戦」が基本的戦略の一つであり、リーダーができないことをやる「差別化戦略」を取ることによって、長期的成長を図ろうとします。

ニッチャー

ニッチャーは、質的な経営資源には優れているが、量的には劣る企業のことです。リーダーが狙わない隙間市場(ニッチ・マーケット)など特定市場においてミニ・リーダーとなり得る企業です。戦略としては特定市場での「集中化戦略」です。

フォロワー

フォロワーは、経営資源の質・量ともに相対的に劣る企業のことです。現段階では市場シェアを狙えるような際立った独自性を持っておらず、リーダーやチャレンジャーの模倣をすることで、市場に食い込んでいきます。

リーダーに挑戦せず、チャレンジャーの取り残しを狙いながら、市場での地位を確立していきます。戦略としては、上位企業に対しての「模倣戦略」や「低価格化戦略」となります。

過去問題

コトラーの地位別競争戦略は、過去このような形で出題されています。

平成28年 第1次試験 企業経営理論 第7問

業界での競争地位によって、企業はリーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーに分類できる。そのなかで、チャレンジャーとニッチャーに関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア チャレンジャーは、業界で生き残ることを目標に、購買の動機として価格を重視するセグメントをターゲットにし、徹底的なコストダウンを行い、代替品を低価格で提供していく戦略を採る。
イ チャレンジャーは、市場全体をターゲットとするフル・カバレッジにより、リーダーの製品を模倣していく戦略を採る。
ウ チャレンジャーは、リーダーに対する価格・製品・プレイス・プロモーションという4P の差別化よりも、ドメインの差別化を行う。
エ ニッチャーは、狭いターゲットに対して、業界の価格競争には巻き込まれないように閉鎖型の販売チャネルを採用して、媒体を絞り込んだプロモーションを展開する。
オ ニッチャーは、自社が属する業界のライフサイクルの導入期に活動が活発になり、他社の行動を追随する同質化を推進し、市場全体の規模を広げる役割を担っている。

正解 エ

まとめ

いかがでしたでしょうか。自社がリーダー、チャレンジャー、ニッチャー、フォロワーのどの地位に位置しているかをしっかり把握し、地位にあった戦略を採用することが重要です。コトラーの競争地位別戦略は、企業の事業戦略だけではなく商品戦略やマーケティングなどでも応用が可能なフレームワークです。また、企業経営理論では頻出の論点です。ぜひしっかり押さえておきましょう。

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