中小企業診断士とは?仕事の内容や試験制度の情報について紹介

更新日:2024年3月15日

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日本の経済は中小企業で支えられているといっても過言ではありません。独立行政法人の中小企業基盤整備機構によると、中小企業は日本の企業の99.7%を占めているといいます。また日本で従事している人のうち、約70%が中小企業で勤務しているそうです。

この中小企業と密接にかかわっているのが、今回紹介する中小企業診断士です。ここでは中小企業診断士とはどのような仕事なのか、どんな人に向いているのかについてまとめました。

目次

中小企業診断士とは?

まずは中小企業診断士とはどのような職種なのかについてみていきます。中小企業診断士という名前は聞いたことがあるけれども、具体的なことはよくわからないという人はこちらを参考にしてください。

コンサルタント業務の一種

中小企業診断士は中小企業の経営者を相手にした仕事になります。クライアントの経営面の悩みの相談に乗る、各企業が抱えている問題点をあぶり出し、それを解決するためにはどうしたらいいか、その助言を行います。

簡単に言えば、経営コンサルタントの一種です。コンサルティング業務をするためには、関連する資格を持っているのが好ましいでしょう。コンサルタント関係の資格として、ファイナンシャルプランナーやキャリアコンサルタント、社会保険労務士などが挙げられます。

中小企業診断士もこの中の一つですが、先に紹介した資格と大きく異なる点があります。それは中小企業診断士が唯一の経営関係の国家資格である点です。国が認めている資格なので、コンサルタント業務でキャリアを積みたいと思っているのであれば、中小企業診断士を取得するといいでしょう。

中小企業診断士の職場

中小企業診断士の職場ですが、大きく分けて2通り考えられます。会社に勤務するか、もしくは独立するかの2タイプです。会社に勤務する場合、いわゆる普通のサラリーマンと一緒です。そして自社の経営診断を行って、必要に応じて経営戦略に関する助言を行います。一般企業のほかにもコンサルティング会社や士業系の事務所に就職する方法もあります。

後者の場合、会計事務所や税理士事務所に就職するケースが多くなっています。会計事務所や税理士事務所は財務会計や税務に関係があります。経営と深い関連性があるので、税務相談から経営に関するアドバイスを行います。

独立開業する方法もあります。中小企業をクライアントとして、コンサルタント契約を交わします。そして経営診断を行い、必要に応じて経営面のアドバイスを行います。コンサルタント料や顧問料として、クライアントから報酬をもらう形です。会社勤務と独立開業を比較すると、過半数が会社に所属して勤務しています。

中小企業診断士の将来性について

中小企業診断士の将来性ですが、有望と見られています。それは中小企業の現状が関係しています。コロナ禍をはじめとして景気が停滞している日本経済の現状から、経営に苦しんでいる中小企業は少なくありません。

さらに少子高齢化の問題も、中小企業の経営者に重くのしかかっています。労働力の確保に苦しんでいる、さらに経営者の高齢化で事業承継すべきか、もしくは畳むべきかで悩んでいる事業者も少なくありません。中小企業の抱える問題は今後も多いでしょうから、中小企業診断士への需要が高止まりすることが予測されています。知名度はまだ高くないかもしれませんが、注目度が高まりつつあるのもまた事実です。

中小企業診断士になるには?

中小企業診断士になるにはどうすればいいのか、ここで見ていきます。中小企業診断士になる道は複数用意されているので、自分はどれが合っているのか考えて試験対策などを進めましょう。

中小企業診断士第1次試験を受ける

まずは中小企業診断士第1次試験を受けます。これは全員一緒です。中小企業診断士第1次試験は年齢や学歴などの受験資格はありません。誰でも受験できます。例年5月から6月上旬にかけて中小企業診断協会に願書を郵送します。そして8月下旬の土日2日間にわたって、試験が実施されます。

試験会場は札幌と仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、那覇で実施されます。合否判定は9月上旬に判明するのが一般的です。ちなみに試験後数日で解答は発表されます。ですから自己採点を前もって行うことも可能です。

第1次試験は7科目で考査されます。マーケティングと財務会計、法律、情報システム、企業経営理論、運営管理、中小企業経営・政策の7科目によって構成されます。各100点・700点満点で、420点以上獲得する必要があります。

ただし420点以上獲得しても、1科目でも40%未満の点数であれば不合格です。また試験委員会が相当と認めら得点比率でなければなりません。試験はマークシート方式で、いくつか選択肢が提示されるので一つ解答を選んでください。

合格率ですが、年度によって若干の違いがあります。しかしだいたい20~25%あたりで推移しています。決して難易度の低い試験ではありません。

中小企業診断士第2次試験を受ける

1次試験を突破すると、2つのルートが考えられます。まずは中小企業診断士第2次試験を受験するルートです。2次試験は2段階に分けて実施されます。例年10月中旬の日曜日に実施される筆記試験と12月中旬の日曜日に実施される口述式です。筆記試験に合格したものが、口述式試験に臨める形態をとっています。

例年8月下旬から9月中旬にかけて出願手続きを済ませます。筆記試験の合否判定は例年12月上旬に発表されます。口述試験は12月下旬には合否判定が出されます。試験会場は札幌と仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の7地区で実施されます。

筆記試験は中小企業の診断および助言に関する実務の事例4部門から出題されます。筆記試験は記述式で、1問当たり15~200文字程度で回答します。各100点満点・合計400点満点で、240点以上獲得することが条件です。ただし240点以上獲得しても、1科目でも40点未満のものがあれば不合格になります。

口述試験は面接形式で進められます。質疑応答形式で進められ、2次試験の筆記試験の出題範囲の中からランダムに質問されるので、的確に回答します。口述試験の評定が60%以上に達していれば、合格です。2次試験の気になる合格率ですが、だいたい毎年20%前後で推移しています。1次試験の合格率も20~25%ですから、いかに狭き門であるかがお分かりでしょう。

実務補習を受ける

2次試験を突破したら、今度は実務補習を受講します。補習は15日間のカリキュラムで構成されています。補習はグループで学習します。1グループあたり6名以内で構成され、指導員が付きます。そして実際の企業3つに対して現場診断と調査を実施します。その上で資料を分析し、診断報告書を作成し、報告会で発表します。

診断実務従事に参加することで中小企業診断士になる方法も用意されています。キャリア豊富な診断士が指導員になって、企業経営者のヒアリングや現場診断、診断報告会をクライアントに対して実施します。

診断実務従事も15日間で実施されます。土日を使って実施することが多くなっています。試験合格者以外にも、独立して間もない診断士がスキル向上を目的に参加する場合も見られます。診断士同士のネットワークを構築したければ、診断実務従事に参加するのも一考です。

養成課程を修了する

2次試験を受験しなくても中小企業診断士になる方法があって、それは養成課程を修了することです。中小企業基盤整備機構もしくは登録養成機関が実施しています。こちらのカリキュラムを受講すれば、2次試験なしで中小企業診断士になれます。

養成課程はだれもが受講できるものではありません。審査によって選考されます。審査は書面審査と面接の2段階で考査されます。書面審査は受講申込書のほかに履歴書などの審査用資料を準備、提出します。支援機関や金融機関から派遣される場合には、派遣元の推薦書が必要になります。

面接は質疑応答方式で行われます。主に受講動機やコミュニケーションスキル、積極性、資金面の問題、健康状態などをチェックされます。これらの審査をクリアできれば、晴れてカリキュラムに参加できます。

養成課程は一定期間通学しなければなりません。スケジュール的に問題ないのか、十分検討する必要があります。フルタイムのコースもあれば、夜間や週末のみなどのコースも用意されています。受講スケジュールやカリキュラムの期間も異なりますので、通いたい教育機関の内容を確認しておきましょう。

養成課程は知識を学習するためというよりも、実務スキルを獲得するためのカリキュラムと考えてください。生徒同士グループになって、一緒になって課題に取り組む形です。

ちなみに中小企業大学校東京校の養成課程の概要を紹介すると、受講期間は6ヶ月です。平日授業があり、演習は9時40分から16時40分まで、実習は9時40分から17時40分までとなっています。半年間きちんと授業に出られるかどうか、慎重に検討しましょう。

中小企業診断士登録手続きを行う

2次試験に合格し実務補習もしくは診断実務従事を完了した、もしくは養成課程を修了すると、最後の段階に進めます。中小企業診断士としての登録手続きです。新規登録の申請では申請書のほかにもいくつか必要書類を準備して提出します。必要書類は、2次試験合格と養成課程修了者とでは異なります。

2次試験に合格したルートをたどるのであれば、中小企業診断士登録申請書のほかに2次試験の合格証書、実務補習修了証書もしくは実務従事の実績証明書が必要です。いずれも原本でなければなりません。申請書には押印が必要ですが、印鑑がなければ署名でもかまいません。また申請書の中には記載事項欄という項目があります。

こちらはパソコンで作成すること、しかも楷書体にすることと指定がありますので注意してください。その他には住民票の写しも必要です。住民票抄本で構いません。

養成課程修了から登録申請をするのであれば、先ほど紹介した申請書のほかに養成課程修了証明書もしくは登録養成課程修了証明書が必要です。いずれも原本を提出します。それに住民票の写しを加えて申請手続きを進めます。ちなみに申請書は郵送するのですが、送付先は中小企業庁になります。

申請に不備がなければ、登録手続きが開始されます。この中でまず官報にて公示されます。官報での公示は申請受理された付きの翌月末から翌々月です。「中小企業支援法第11条第1項の規定に基づき中小企業診断士を登録した件」という題目のところに掲載されます。官報販売所で紙媒体を購入する方法のほかにも、ネットで閲覧できます。直近30日分であれば、無料で閲覧できるのでこちらに公示されているかどうか確認しましょう。

これと時を同じくして、皆さんの自宅に中小企業診断士登録証が届けられます。簡易書留郵便にて送付されるので、当人が受け取ってください。中小企業診断士の登録は5年間有効です。登録を更新することは可能ですが、一定の条件をクリアしている必要があります。理論政策更新研修といって4時間の研修を受講する必要があります。また論文審査が実施されるので、こちらも合格しなければなりません。

中小企業診断士試験の基本情報

中小企業診断士になるために、まず目指すべきは「第1次試験合格」です。年に一度の試験日に向けて、計画的に準備を進める必要があります。

中小企業診断士試験の実施概要や難易度を正しく把握し、中小企業診断士試験への挑戦を具体的に検討してまいりましょう。

中小企業診断士試験の概要

中小企業診断士試験は、第1次試験と第2次試験が別日程で実施され、それぞれ以下の通りとなっています。

第1次試験:8月上旬の土・日の2日間
第2次試験(筆記):10月中旬の日曜日
第2次試験(口述):12月中旬の日曜日

第1次試験は年齢・性別・学歴に関係なく誰でも受験できますが、第2次試験は原則として「第1次試験合格者」であることが受験資格となります。

試験科目は「経済学・経済政策」「財務・会計」「企業経営理論」「運営管理(オペレーション・マネジメント)」「経営法務」「経営情報システム」「中小企業経営・中小企業政策」の7科目で、第1次試験は多肢選択式による筆記、第2次試験は実務事例に関わる短答式又は論文式による筆記、及び口述試験によって審査されます。

中小企業診断士試験の難易度

令和元年から4年度までに実施された中小企業診断士試験の合格率の平均は、第1次試験で34.5%、第2次試験でおよそ18.4%です。第1次試験と第2次試験の合格率を掛け合わせた最終合格率は約6.3%となり、中小企業診断士試験の難易度の高さが伺えます。

合格率6%の狭き門を突破するのに必要な勉強時間は、第1次試験で800~1,000時間、第2次試験で200~400時間と言われています。勉強時間の目安のみ比較すると、「第1次試験さえ合格できればあとは簡単」と思われるかもしれません。

しかしながら、第2次試験に向けた勉強時間では、第1次試験対策で培った知識を実戦力に変えるための訓練が主となりますので、第1次試験でしっかり基礎が身についていなければさらに時間を要すことになります。

参考:中小企業診断士 申込者数・合格率等の推移

中小企業診断士の資格取得するメリット

中小企業診断士の資格を取得できれば、大きなメリットが期待できます。今後のキャリア形成でプラスに働く可能性は高いのです。そこでここでは主なメリットについて、いくつかピックアップしてみました。

経営資源のプロの視点をマスターできる

中小企業診断士の勉強をすることで、経営資源を見る、分析する力が身に着きます。経営資源は6つの要素によって構成されます。ヒト・モノ・カネ・情報・法律・外部環境の6つです。この6つを横断的な視点で分析する力が身に着きます。

そうするとその時々の経営状態によって、各資源をどのように配分すれば効率的な経営が行えるかも見えてきます。経営者に的確なアドバイスを行うことができますし、今後独立開業した場合でも無駄のない経営戦略が組めます。

広範なネットワークを構築できる

中小企業診断士は、いろいろな人と交わることのできる職種です。受験生時代や養成課程などを受講するとき、研究会・勉強会に参加するときにいろいろな人との交流が生まれます。人脈が広がり、いろいろな人と情報交換することで、広い視野と価値観を手にできます。

ネットワーク構築のノウハウは仕事面でも活かせます。例えば独立開業してクライアントが見つかった際に、相手の求めに応じて税理士や弁護士とのコーディネーター的な役割で活躍できます。会社勤務の場合でも、各部署の間をつなぐパイプ役として欠かせない人材になれるでしょう。

多彩なキャリアパスが手に入る

中小企業診断士になると、今後のキャリア形成の選択肢が増えます。今会社で勤務していて、引き続き働きたいと思っている人は資格手当がプラスされる可能性もありますし、自分のスキルを生かした希望部門への異動も可能になるかもしれません。さらに資格が評価されれば、昇進の期待もできます。

転職する際にも中小企業診断士の資格は有力な武器になります。国家資格を持っている、広範な知識やスキルがある有能な人材と評価されるでしょう。今まで以上に良い条件で転職できる可能性もあります。より良い待遇の転職を検討しているのであれば、中小企業診断士の資格を取得するのがおすすめです。

独立開業する道も開けてきます。中小企業診断士事務所を開設して、中小企業の経営者をクライアントにし、コンサルタント業務を行います。自分のペースで仕事ができますし、多くのクライアントを獲得できれば、サラリーマン時代よりも多くの収入を得られるかもしれません。

またすでに行政書士や社労士、公認会計士の資格を持って独立開業している人も、中小企業診断士の資格を持つと活躍の場が広がります。より多くの案件を受注できるようになり、所得アップに貢献してくれるでしょう。

企業の業績向上に貢献できる

冒頭に紹介したように、日本の企業のほとんどが中小企業です。このため、潜在クライアント数は非常に多くなっています。しかも製造業や小売業、サービス業といったように業種も多岐にわたります。さまざまな業界の経営をサポートすることで、いろいろな世界の実態を把握できます。

このように複数の業種にまたがって仕事のできる職種は、なかなかありません。自分の知識やスキル、キャリアを総動員して、クライアントの企業が業績向上すれば、達成感を得られます。また業界から評価され、別のクライアントが見つかるかもしれません。より多くの企業に貢献できる、社会的な役割を果たせるのも中小企業診断士のメリットです。

名刺に肩書を入れられる可能性も

特定の企業に中小企業診断士として勤務する方法もあります。会社によっては、名刺に「中小企業診断士」という肩書を入れることもできるかもしれません。名刺交換したときに肩書が入っていると、それをネタに盛り上がれるかもしれません。また名刺に「中小企業診断士」と肩書が入っていると、辛い試験勉強のことや合格したときの達成感も得られます。

中小企業診断士に求められるスキルとは?

マクロ的視点を持っている

中小企業診断士に向いている人の特徴と言えば、まず「マクロ的視点を持っていること」です。専門家として企業の経営分析や経営戦略立案に携わる中小企業診断士には、経営の現状を見極めて課題を見つけるにあたり、多角的かつ俯瞰的な視点から物事を見つける能力が求められます。 もちろん、状況に応じて物事の細部に着目することも求められますが、人はついミクロ的視点に偏りがちになりますから、あえてマクロ的な物の見方ができる方に適性があると言えます。

コミュニケーション能力

加えて、「コミュニケーション能力の高い人」も、中小企業診断士向きと言えます。というのも、中小企業診断士の仕事では、様々な人とのやり取りが不可欠だからです。クライアントがどのような問題を抱えているのかは、実際に話をしてみないと見えてきません。

中小企業診断士として顧客に適切なアドバイスをするためには、まず経営者や財務担当者等の話をよく聞き、どんな悩みを解決したいのかを正しく把握することから始まります。中小企業診断士の実務に携わる上では、誰とでも会話できる高いコミュニケーションスキルが求められます。

文章作成力

その他、中小企業診断士に向いている人の特徴として、「文章作成力の高い人」も挙げられます。中小企業診断士は実務上、診断報告書や経営計画書等の文書をまとめ、顧客に提示する機会も少なくありません。

クライアントに理解してもらうためには、誰にでも分かりやすく、要点が端的にまとまっている文書であることが肝心であり、そのためには高度な表現力・文章力が求められます。中小企業診断士の適性の一つ目に「コミュニケーション能力」を挙げましたが、会話だけでなく、文章を通じてのやり取りも円滑に行える必要があります。

知的好奇心

中小企業診断士に向いている人には、試験合格後も勉強し続ける姿勢があります。なぜかと言うと、実務上、あらゆる分野に精通している必要があるからです。

例えば、法律やIT等の専門外のジャンルの相談を受けることもありますが、顧客からの信頼を得るためには「分かりません」は極力避けたいところでしょう。また、試験対策で蓄えた知識も、時が経つにつれて変化していきます。そのために、常に幅広い分野にアンテナを張り、最新情報をキャッチアップできる知的好奇心の強さが求められます。

社交性

「社交性の高さ」もまた、中小企業診断士に向いている人の特徴です。一つ目に挙げた、顧客相手の「コミュニケーション能力」の観点からはもちろんですが、幅広い人脈を有していることが実務上役に立つこともあります。 例えば、解決困難な問題が生じた際、同業者との横のつながりや、他士業との連携、もしくは全くの異業種で活躍する人の視点が助けになるかもしれません。また、社交性の高さを活かして、仕事獲得のチャンスに恵まれることもあるでしょう。

中小企業診断士の仕事内容

中小企業診断士の資格がわかったところで、具体的にどんな仕事をするのか、ここで見ていきます。仕事内容は3つの柱によって構成されています。企業の経営の助言と講演、執筆活動の3つです。それぞれ具体的にどのような仕事をするかについて、詳しく見ていきます。

企業の経営の助言

中小企業診断士のメインの業務となるのが、企業の経営に関する助言です。経営に困っている事業者が中小企業診断士に相談をします。どんなことに悩んでいるのか、不安ごとについてヒアリングします。そして対象企業の経営状況について、各種資料の分析を進め、課題を把握します。

そしてクライアントに対して、会社の抱える課題を提示し、それを克服するためにはどうすればいいか、専門的な観点からアドバイスします。こうして経営者と二人三脚で、協力して企業の成長を目指していく仕事です。中小企業診断士という国家資格のある人の助言ですから、クライアントも安心して耳を傾けてくれるでしょう。

講演

中小企業診断士の中には、講演活動を行っている人も見られます。主に独立開業していて、人気の中小企業診断士に講演依頼の話が舞い込む傾向が見られます。経営者の集まるイベントに出席して、講演を行うのが一般的です。

事由にテーマを設定できる場合もあれば、先方からテーマが提示されて、それに基づき講演する場合もあります。近年の傾向として、ITと経営をどう絡めるかといったテーマで講演依頼されることが多くなっています。

執筆活動

執筆活動を行っている人も見られます。実際に書店に行ってみると、ビジネス関係の書籍で中小企業診断士が著者の作品もしばしば見られます。中小企業診断士の業務は幅広く、それぞれに得意分野を持っているでしょう。

その専門分野の知識や経験を生かして、執筆活動を行うわけです。書籍を出すことで自分の名前を知ってもらえます。本を読んだ経営者からコンサルティング依頼を受けることもあり、活躍の場を広げるきっかけにもなりえます。

中小企業診断士の1日

中小企業診断士になった場合、どのように仕事を進めていくのでしょうか?これは会社勤務しているか、独立しているかで微妙に違ってきます。会社の場合、普通のサラリーマンと働き方は似ています。ここでは独立したとある中小企業の1日についてみていきます。

9時ごろに出社して、まずはメールチェックなどの事務作業を進めます。10時ごろからは顧客の企業を訪問して、経営者などの相談に乗ります。12~13時ごろはお昼休みになります。13時以降は引き続き顧客相談に乗ったり、講演をする際にはその打ち合わせなどもこなしていきます。

16時ごろにはオフィスに戻り、デスクワークを進めます。顧客相談に乗った際に財務諸表などの資料を預かり、その資料の分析を進めます。仕事の進捗状況にもよりますが、19時ごろには退社というケースが多くなっています。

中小企業診断士のキャリアパス

中小企業診断士を取得してからは、前述したように企業で働いたり、独立開業したりして様々な分野で働くことが可能となります。それだけでなく、中小企業診断士の資格はより高いレベルの関連資格と組み合わせて活用したり、また定年後の第二の人生で働く際に有効に利用できるような場合もあるのです。ここからは、中小企業診断士のキャリアパスについてより詳しく見ていきましょう。

社会保険労務士、公認会計士と組み合わせて活躍

中小企業診断士は前述したような3つの資格以外に、さらに一段レベルの高い社会保険労務士、公認会計士といった資格と相互に補完し合う関係性が大きい資格となっています。これらの資格を合わせて取得することで、とくに独立開業をする場合には複数の資格を持っていることから業務の幅をさらに広げることが可能になるのです。

また社会保険労務士、公認会計士どちらもそれ単体で開業することも可能な資格となっているため、中小企業診断士をサブの資格として使うという選択肢も出てきます。ご自身の特性や行いたい業務によって、フレキシブルに対応できるのが魅力です。

セカンドキャリアとしても有用

現在の仕事を定年後、セカンドキャリアの選択肢として中小企業診断士で開業するということが可能になります。中小企業診断士は、社会人としてさまざまな経験を積んできた人の方がケースバイケースで対応できたり、多角的なアドバイスをすることが可能になるためより有用であることも多いのです。

そのため、若い人以上に定年退職した方の方が自分の経験に基づいた有用なアドバイスで企業を救える場合もあるでしょう。定年後にも働きたい、セカンドキャリアとしてどのような仕事を選ぶべきか悩んでいるといった方に、中小企業診断士はとくにおすすめの資格といえるのです。

中小企業診断士と組み合わせて取得するのにおすすめの資格

中小企業診断士になるだけでも、いろいろな職場で活躍できます。しかし一方で他の資格を獲得することで、仕事の幅も広げられます。そこでここでは中小企業診断士と組み合わせて取得する際におすすめの資格について、いくつかピックアップしてみました。

ファイナンシャルプランナー

ファイナンシャルプランナーがおすすめなのは、中小企業診断士と試験分野が被っているからです。金融資産運用設計という科目がファイナンシャルプランナーにはあります。こちらは中小企業診断士の試験勉強で培った知識を生かすことができます。

この資格を取得できると、税金や相続、事業承継に関する専門知識が身に着きます。お客さんに中小企業診断士だけの時以上に広範囲にわたってアドバイスできます。

ファイナンシャルプランナーの業務分野の中で、税務にかかわる知識は非常に大きなウエイトを占めています。診断士としての知識や経験を生かすことができるので相乗効果も十分期待できる資格といえます。

不動産鑑定士

文字通り、不動産分野で活躍したいと思っている人のための資格です。不動産系にもいろいろな資格がありますが、その中でもトップクラスの資格といわれています。不動産コンサルティングに今後力点を入れていきたいと思っているのであればおすすめの資格でしょう。実は今後不動産戦略は経営コンサルティングを進めていくにあたって、欠かせないものになりつつあります。

国内の不動産は2,500兆円近くに達しています。その中でも法人が保有しているものが470兆円あるとされます。つまり国内の不動産の中でも時価ベースで2割近くを占めている計算です。この企業不動産をどう使いこなしていくかは、その企業だけでなく、国の経済状況にも大きな影響を及ぼすとみられています。

企業で不動産を保有しているのであれば、それをいかに有効活用するかがポイントになりえます。不動産を活用して活性化できれば、それが企業価値のアップにもつながっていきます。

もし不動産鑑定士も取得できれば、不動産方面のコンサルティングが強化できます。しかも不動産鑑定士の試験を見てみると経済学や会計学といった科目があります。これらの領域は中小企業診断士の出題と被りますので、試験勉強も一部活かせます。

日商簿記検定

中小企業診断士の仕事を進める中で、経営者から経理相談や税金相談を受けることも多いでしょう。経営相談の案件の中でも、経理や税金にかかわる分野は非常に多くなっています。これらの問題を分析し、解決方法を提案するためには簿記に関する知識は必要不可欠といえます。

ですから日商簿記検定を受検しておくと、経理に関する幅広い知識が身に着き、活躍のチャンスも広がります。日商簿記検定を受検するのであれば、2級試験の突破を目標にしましょう。法人税などを理解するためには、2級相当の知識が必要になるからです。2級、さらに1級検定に合格していれば、コンサル力もかなりアップするはずです。

まとめ

日本にはたくさんの中小企業が活動しています。しかし経済状況が安定しない、少子高齢化で後継者が見つからないなど中小企業が抱える課題は数多くあります。そんな経営者を後方支援するのが、中小企業診断士の役割です。中小企業診断士になるには、狭き門の試験をクリアしなければなりません。

簡単な話ではありませんが、合格して資格取得すれば、人脈が広がり、キャリアアップにつながるなどいろいろなメリットが期待できます。ここで紹介した勉強方法を参考にしながら、今後のキャリア形成のために資格取得を目指してみませんか?

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