マーケティング環境を分析する!「PEST分析」を解説!

更新日:2020年11月12日

マーケティング環境を分析する!「PEST分析」を解説!

マーケティングとは売れる仕組みをつくることです。何もないところから売り上げは発生しません。企業は日々、経済状況や競合他社、市場などマーケティング環境を分析し、それに基づいた戦略を立て、販売に繋げる努力をしています。

今回はマーケティング環境を分析するのに有効な「PEST分析」について解説します。

目次

物事の分析にはフレームワークが有効!

「PEST分析」のように、物事を合理的に考えるため、ある枠組みに沿って解決策を導き出すことをフレームワークと言います。

物事を考える際、ゼロの状態から解決策を考えると時間もかかる上に非効率です。それに対し、あらかじめ決められた枠組みの中で考えると、効率よく解決策が導き出せます。フレームワークはあらゆることを分析するためにとても有効な手法です。

大切なのは企業の事業形態や提供する製品、サービスに適したフレームワークを活用するということです。

また、1つだけでなく複数のフレームワークを併用することでより大きな成果を生み出すことも期待できます。

「PEST分析」とは?

「PEST分析」とは企業を取り巻く外部環境のうち、事業活動に影響を与える可能性のある要因を政治(Politics)、経済(Economics)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの視点で特定し、将来の動向を分析していくフレームワークです。

事業活動や経営管理において、どれだけ自社が努力してもその成果が外部環境と適合していなければ、市場で受け入れてもらうことはできません。逆に外部環境の変化に応じて臨機応変に対応すれば自社の事業をさらに拡大することが可能です。

そういった意味でも「PEST分析」は早い段階で行うことが望ましいとされています。

なぜ早い段階で「PEST分析」を行うのか

「PEST分析」は企業の戦略を左右する要素となるからです。
先程挙げた「事業活動に影響を与える可能性のある4つの要因」は自分たちの意思で簡単に変えることができないものです。

世の中の流れに自社の戦略が適応していた方が何事も上手くいくような気がしませんか?そのためにも早期に行うことを推奨しているのです。

「PEST分析」における4つの要因を解説

前項で解説した通り「PEST分析」では事業活動に影響を与える可能性のある要因を4つ挙げています。ここではその要因を1つずつ見ていきます。

①政治的要因(Politics)

政治的要因は、法律や条例、規制緩和や税制の変化など政治的な動向のことです。法律や税制などのルールが変わることは企業にとって大きな変化です。

政治的要因は市場の構造を変化させたり、分裂に繋がったりする可能性があるので、できるだけ正確に把握していくことが大切です。

②経済的要因(Economics)

経済的要因は、景気の状態や成長率、物価や為替の変化など、経済に関する環境変化のことをいいます。

企業の事業内容によっては国内だけでなく、世界各国の成長率や金利の変化なども追いかけていく必要があります。

③社会的要因(Society)

社会的要因は、企業や消費者を取り巻く社会全体のことをいいます。流行や風俗、ライフスタイルなどが対象になります。

社会的要因は政治要因や経済要因とは異なり、法律や数字などで具体的に把握することが難しく、漠然としているケースも多いです。またその範囲も広く、ひとつの分野に絞ることは不可能です。

効率よく進めるために変化のないものは相手にせず、動きのあるものだけにフォーカスし、分析していくことが大切です。出生率や人口変動、少子高齢化や国籍、文化、思想なども社会的要因に含まれます。

④技術的要因(Technology)

技術的要因は、技術の進歩や革新によりそれまで通用していた競争力が失われる、技術自身が新しい市場を創り出すというように技術がもたらす環境変化のことをいいます。

情報通信技術や加工技術など技術的要因はたくさんあります。さらに近年ではAIが進化し、生活が便利になりつつあります。それも事業活動に大きな影響を与える要因の1つです。

なぜ「PEST分析」が必要なのか

企業の活動は常に前項のような要因に左右されています。
法律改定に伴い販売できる商品の内容やルールが変わったり、消費税が上がることを見越して駆け込み需要が起こったりします。

誰もが知っているような情報では差別化を図ることは難しいですが、このような要因を様々な角度から分析することで自社のチャンスやリスクを早期発見できる可能性があります。それに基づいて迅速な経営判断を下すことができるのです。

こうした将来の予測や判断をする際、ただ情報を集めるだけでは明確な分析に繋がらず非効率です。決められた基準に基づいて情報を収集、整理、分析することで自社のやるべきことが見えてきます。そのために「PEST分析は必要なのです。

「PEST分析」の進め方

ここでは「PEST分析」の基本的な進め方について解説します。

①目的確認

まず始めに「何のために分析するのか」という目的の確認が大切です。
目的もなくただ「PEST分析」を行っただけでは自社に役立つ結果は得られません。それを活用して自社のチャンスを見つけ、リスクに対する対策をすることが分析の基盤となります。

フレームワークは自社のチャンスとリスクを見出す手法であり、「PEST分析」は経済や世の中の動きを広範囲で捉え、分析できる手法でもあるのです。

②情報収集

次に行うのは情報収集です。公的機関や専門家のレポート、報道などから情報を集めていきます。

場合によっては漠然とした情報を収集することもありますが、そこから深く思考を巡らせ、具体的な調査結果として形に残すことが重要です。

③情報整理

集めた情報を単に羅列しただけでは何も分かりません。その中から市場に変化をもたらす要因は何なのか、自社の事業活動に影響を及ぼす可能性がある情報はどれなのか見極め、情報を整理していきます。

「PEST分析」の注意点

「PEST分析」は政治や経済、社会など広範囲にわたる外部の変化を対象としています。そのため、内部に深くフォーカスする分析ではありません。

自社のチャンスとリスクを明確にするためには、まず「PEST分析」で外部環境の変化を正確に把握することが大切です。そこから得られた結果を基に企業は市場の未来を予測し、対応策を考えていきます。

明確なビジョンを打ち出す根底に「PEST分析」は欠かせないのです。その特性を理解した上で活用する必要があります。

新型コロナウイルスによって外部環境に激震が走る!

昨年末から世界中に広まっている新型コロナウイルス。国内外を問わず、今も感染拡大が続いています。日本でも緊急事態宣言が発令されたことは記憶に新しいかと思います。この影響を受けて外部環境がどのように変化したのか考えてみたいと思います。

①政治動向

政治面でまず思い浮かぶのは、経営が困難になった企業に対する助成金や補助金、そして国民への10万円給付などがあります。他にも医療に関する法律改正が進められています。

②経済動向

経済面は最も打撃を受けたといっても過言ではないでしょう。
飲食業やサービス業など幅広い業種が休業に追い込まれたり、倒産してしまったり新型コロナウイルスの感染拡大における影響は計り知れません。

③社会動向

こちらも大きな影響を受けました。まず思い浮かぶのは東京オリンピックの延期です。また各地の観光施設、アミューズメント施設が軒並み休業になりました。

私たちは他人と適度な距離を保って過ごすことを求められました。さらに不要不急の外出を控え、テイクアウトでの食事をしたり、仕事もリモートワークになったり対面を避ける新しい生活様式というものが推奨されています。

④技術動向

出社が困難になり、リモートワークを導入する企業が増えました。その結果、オンラインコミュニケーションやテレビ電話を気軽に行うことができるツールが流行しました。

直接対面することなく病院を受診したり、買い物したりすることも可能です。日々、非接触を可能にする技術が開発され、実現に向かっています。

これらを踏まえ、これからの「PEST分析」には新型コロナウイルスによる影響を新たに加えなければなりません。

政治面では新たな医療関係の法案の成立、助成金や給付金などが今後どのようになっていくのかが注目となります。

経済面は大きく落ち込むことが予想されます。社内の予算を見直す必要がありそうです。
社会は東京オリンピック延期や新しい生活様式の推奨、リモートワークの拡大など新型コロナウイルスによる生活変化に注目することでチャンスやリスクを発見できます。

技術は新たなテクノロジーが開発されるたびに働き方や生活に大きな影響を与える分野です。引き続きオンラインで出来ることを増やし、広めていくことに注目が集まりそうです。

まとめ

「PEST分析」は外部環境を広く分析するのに適したフレームワークです。
政治、経済、社会、技術この4つの側面から見つめることにより、様々なチャンスやリスク、自社がこれから取り組むべきことが見えてきます。

さらに新型コロナウイルスによる影響で外部環境は大きく崩れその結果、「PEST分析」による未来の予測が困難になっています。
しかし「PEST分析」によって未来がある程度予想できれば、自ずと利益と損失の関係性も見えてくるのです。

新型コロナウイルスの影響による外部環境の変化は今後も続くでしょう。その時にどう動くのか、課題にどう立ち向かうのかを考える時に「PEST分析」は力を発揮します。

この記事の監修者は
小嶋聖司(こじま せいじ)

中小企業診断士の学習は楽しい
【出身】千葉県
【経歴】千葉大学法政経学部卒 中小企業診断士
【趣味】読書・サッカー
【座右の銘】和して同ぜず
フォーサイト講師ブログ

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