プロモーションミックスとは? 中小企業診断士解説

更新日:2020年10月29日

プロモーションミックスとは?

プロモーションとは、企業が消費者や流通業者に対して行うコミュニケーション活動のことです。プロモーションの手段には、広告、パブリシティ、人的販売、販売促進があります。これらをいかに効果的に組み合わせて実行するかをプロモーションミックスといいます。

プロモーションミックス
目次

プル戦略とプッシュ戦略

広告、パブリシティはプル戦略、販売促進、人的販売はプッシュ戦略に大別されます。

プル戦略は、広告やパブリシティを中心としたプロモーションミックスを行い、さまざまなメディアを使って消費者に訴求し、需要を喚起する戦略です。一般的にブランド色の強い製品に対して、指名買いをしてもらうように働きかけます。

プッシュ戦略は、人的販売や販売促進中心のプロモーションミックスを行い、消費者に納得して買ってもらうような売り込みを基本とする戦略です。一般的に、ブランド志向の高くない製品に対して、販売の場で推奨するように働きかけます。

広告

広告は、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などのマスメディアや、DM、屋外広告、インターネットなどの媒体を使って顧客に伝えるものです。

以下、各媒体のメリット・デメリットを解説します。

テレビ

メリット
・マーケットを広くカバーすることができます。
・人の視聴覚に訴えることができます。

デメリット
・製作コストが高いです。

ラジオ

メリット
・コストは低めです。
・地域別ターゲットの選択がしやすいです。

デメリット
・聴覚のみの訴求となります。

新聞

メリット
・信頼度が高いです。
・マーケットを広くカバーします。

デメリット
・視覚のみの訴求となります。
・露出が短命(一過性)です。

雑誌

メリット
・ターゲットの選別がしやすいです。
・情報提供料が大きいです。
・露出が長く、保存性があります。

デメリット
・製作期間が長いです。
・コストが高いです。

DM

メリット
・ターゲットの絞り込みが可能です。
・柔軟に内容を設計できます。

デメリット
・読み捨てられるイメージです。

屋外広告

メリット
・再接触頻度が高いです。
・比較的低コストです。

デメリット
・対象の選択がほとんど不可能です。

インターネット

メリット
・低コストです。
・対象の選択が可能です。
・双方向性があります。

デメリット
・インパクトが比較的弱いです。

なお、現在、インターネット広告は、量において、新聞、雑誌、ラジオを凌いでいるといわれています。

パブリシティ

パブリシティは、企業が新製品発売の際に、マスコミ各社(新聞社、放送局、出版社など)に対してニュースレターを送り、テレビ/新聞/雑誌などの報道機関に記事として取り上げてもらおうとするプロモーション活動のことです。

メリットとデメリット

メリット
・広告とは異なり、取材を受けるのは原則無料です。
・マスコミ各社が主観的に記事として掲載するので、消費者からの信頼は高くなります。

デメリット
・記事の掲載の可否をはじめ、記事の内容についてもすべてマスコミ各社の判断となり、企業側からの統制は不可能です。
・必ずしも好意的に取り上げられるとは限らず、継続的に採用される保証はありません。

PR活動

パブリシティはPR(Public Relations)活動の一環です。PR活動とは、企業を取り巻く公衆(パブリック)、に対してのコミュニケーション活動全般といえます。

企業の利害関係者はステークホルダーと呼ばれ、顧客、株主、従業員、取引先、金融機関等が含まれますが、PR活動は、これらステークホルダーだけではなく、地域住民、マスコミ、公衆、政府などのパブリックな集団も含めて行います。社会全体と良好な関係を構築、維持し、また信頼性を高めることがPR活動の目的です。

人的販売

人的販売とは、販売員、営業担当者などの「人」による販売活動のことです。店頭での対面販売と、営業担当者が企業や家庭に出向く訪問販売があります。

メリットとデメリット

メリット
・双方向のコミュニケーションのため、顧客のニーズに合わせた個別対応が可能なことや、口頭での複雑な情報も伝達できることです。

デメリット
・一度に対応できる顧客数が限られます。
・また、販売活動の品質が販売員などのスキルや能力によって一定しません。

販売員の種類

①オーダーゲッター・・・潜在需要を開拓し、主に新規顧客の開拓をします。
②オーダーメイカー・・・既存顧客から受注を受け、取引関係を強化します。
③ミッショナリーセールスパーソン(サポーティングセールスマン)・・・原則として受注活動を行わず、販売支援活動を行います。

販売促進

販売促進とは、セールスプロモーションとも呼ばれ、消費者の購買意欲、および販売店の販売意欲をかきたてる活動全般をさします。

消費者向け

消費者のニーズを刺激し、短期間で多くの商品を販売するために行われます。POP広告、サンプル(試供品)、ポイントカード、クーポン、景品やおまけ、抽選、実演販売、展示会、カタログ、パンフレットなど、さまざまな種類があります。

流通業者向け

販売店の販売意欲を促進するために行われるものとして、以下のものがあります。

①リベート・・・取引量に応じてメーカーから流通業者に現金や現物を支払うものです。
②アローワンス・・・メーカーが実施するキャンペーンなどの拡販プログラムに参加した販売業者に対して補助金や割引を行います。
③販売店コンテスト・・・販売員に対して一定の目標を掲げてコンテストを行い、販売向上を競わせます。

販売店を協業として支援するために行われるものとして、以下のものがあります。

④販売店教育・・・販売員に対し、自社製品情報の説明会など、各種研修を行います。
⑤販売員派遣・・・小売店に対し、メーカーが自社製品の売上向上を目的に販売員を派遣します。

社内向け販売促進

社内の販売意識を高めるため、および販売技術を高めるために行います。特別賞与や社内セールスコンテスト、セールス教育、販売マニュアルの作成などがあります。

過去問題

プロモーションミックスについては、過去このような形で出題されています。

平成27年 第1次試験 企業経営理論 第33問

プロモーションに関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア コーズリレーテッド・マーケティングは、一般的に、当該企業の事業収益と関連づけない。
イ パブリシティについては、原則として、ニュース性の高い情報であれば、企業がコントロールすることができる。
ウ パブリックリレーションズでは、製品、人、地域、アイデア、活動、組織、さらには国家さえも対象としてコミュニケーションを実施する。
エ プロモーションミックスとは、広告、セールスプロモーション、パブリックリレーションズ、インベスターズリレーションズの つの活動を、マーケティング目標に応じて適切に組み合わせることをいう。

正解 ウ

まとめ

以上、プロモーション・ミックスについて見てきました。プロモーション・ミックスはそれぞれ別個のプロモーション手法をとるのではなく、組み合わせて相乗効果を狙うことが重要です。

中小企業診断士の一次試験だけでなく、二次試験の事例でも、プロモーションミックスを意識した、各施策が結びついた効果的な提案を求められることがあります。覚えることが多いですが、しっかり押さえておきましょう。

この記事の監修者は
小嶋聖司(こじま せいじ)

中小企業診断士の学習は楽しい
【出身】千葉県
【経歴】千葉大学法政経学部卒 中小企業診断士
【趣味】読書・サッカー
【座右の銘】和して同ぜず
フォーサイト講師ブログ

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