トリプルメディアとは? 中小企業診断士解説
更新日:2020年10月29日
トリプルメディアとは、メディアを「ペイドメディア(Paid Media)」「オウンドメディア(Owned Media)」「アーンドメディア(Earned Media)」に分類し、それらを組み合わせてマーケティングツールとする考え方です。海外では「POEM(ポウム)」とも呼ばれています。それぞれのメディアの特徴や違いについて見ていきましょう。
ペイドメディア(Paid Media)
ペイドメディアは買うメディア、つまり対価を支払って利用するメディアのことです。従来のメディアはペイドメディアの一つとされ、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、Web広告などが該当します。
影響力は大きく、即効性がありますが、一方的なメッセージのため、ユーザーに読み捨てられたり、警戒されたりする可能性があります。Web広告には以下のような種類があります。
リスティング広告
ユーザーがあらかじめ指定したキーワードで検索すると広告が表示され、ユーザーがその広告をクリックしたときに課金されます。クリック数に応じて課金するクリック保証型の課金システムであることが多いです。
バナー広告
Webサイトのトップページなどにバナーを表示させ、それをクリックするとリンク先企業のページが表示される仕組みの広告です。課金システムには、クリック保証型、およびバナーの表示回数によって課金するインプレッション保証型、成約に至った件数で課金する成果保証型があります。
なお、バナー広告は、たとえクリックされなかったとしても、閲覧者の眼に触れることによって、知名度向上には一定の効果があるため、費用対効果を追求する広告主のニーズに適しているといえます。
アフィリエイト広告
Webサイトの運営者(アフィリエイト)が、自分のWebサイトに広告主のバナー広告を表示させ、ユーザーがクリックすると広告主のサイトへと移動するものです。実際に商品購入などにつながった場合に料金が支払われる成果保証型の課金システムをとっており、電子商取引サイトとの間のパートナーシップの側面が強調されています。
オウンドメディア(Owned Media)
オウンドメディアは所有するメディア、つまり自社で所有するメディアのことで、企業のホームページやネットショップ、メールマガジンなどが該当します。自社のサイトのため、比較的管理がしやすく、関心のある顧客に対して直接発信できるのがメリットです。一方、既存顧客にしか発信できないので、新規顧客開拓には向きません。
コーポレートサイト
コーポレートサイトは、会社概要、プレスリリース、商品情報といった情報を掲載しています。
サイトを見てもらうために、検索エンジンの結果で、より上位に自社 Webサイトが掲載されるよう検索エンジンの特性に働きかけるSEO(検索エンジン最適化)対策をすることが重要になります。
ECサイト
商品やサービスをWeb上で提供するサイトのことです。自社でサイトの運営を行う直営店型や、多くのショップが参加する形式であるショッピングモール型などがあります。
クリック&モルタル
実店舗とオンライン店舗の両方を運営して相乗効果を狙うことです。
アーンドメディア(Earned Media)
アーンドメディアとは、獲得メディア、つまりPRや広報、パブリシティ活動、SNSやブログなどによって、企業や消費者からの信頼や評判を獲得して掲載されるメディアのことです。企業側からするとコントロールが難しいものの、ユーザーのニーズに合う情報・コンテンツなら、一気に拡散する可能性があります。
なお、SNS、ブログ、掲示板、口コミサイトなど、主にインターネット上で消費者が書き込むことで内容が生成されていくメディアは、CGM(Consumer Generated Media)=消費者生成メディアとも呼ばれます。
CGMは一般の消費者が参加することで内容が作り上げられていき、さまざまな生きた情報を手に入れることができます。消費者にとっては重要なサポート情報となるため、商品の人気の良し悪しに直結し、企業のマーケティング活動の成果に大きな影響を及ぼすようになっています。
この近年のSNS、ブログ等CGMの成長は著しく、海外のマーケティングではアーンドメディアから抜き出し、「シェアードメディア」として4つのメディア分類とする考え方が主流です。
シェアードメディア(Shared Media)
最近は、アーンドメディアを二つに分ける考え方が広がっています。それは、アーンドメディアはPRや広報、パブリシティ活動、各リレーションシップによるものを中心とし、消費者によるSNSでの投稿拡散を含む口コミなどを「シェアードメディア」としてアーンドメディアから除いて分類するというものです。
どちらもコストをかけず、自社でコントロールできないことは共通していますが、発信者が「パブリシティ」か「消費者」かという違いがあります。
ペイドメディア、オウンドメディア、アーンドメディアに、新基準シェアードメディアを加えた4つのメディア分類を、Paid・Earned・Shared・Ownedの頭文字を取り、PESO(PESOモデル)といいます。日本でも2016年頃から徐々に広まってきています。
過去問題
トリプルメディアについては、過去このような形で出題されています。
平成24年 第1次試験 企業経営理論 第33問
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
2000 年代に入ったころから、インターネットにおいて、ブログをはじめとする[A]が消費者の間で爆発的に普及した。 [A]は消費者間での情報のやり取りを促進し、CtoC コミュニケーションを強力なクチコミの場へと成長させた。その後、2000 年代後半になると、SNS や動画共有サービスなど、新たなツールが目覚ましく発達し、 [A]はソーシャル・メディアと呼ばれることが多くなった。現在では、ソーシャル・メディアは「信頼や評判を稼ぐメディア(EarnedMedia)」の主要な一部として、広告やスポンサーシップのような [B] 、自社サイトや販売員のような[C]と並ぶ、重要なマーケティング・コミュニケーション・ツールと考えられるようになっている。
【設問】
文中の空欄 A 〜 C にあてはまる語句の組み合わせとして最も適切なものはどれか。ア A:CGM B:Owned Media C:Paid Media
イ A:CGM B:Paid Media C:Owned Media
ウ A:CRM B:Owned Media C:Paid Media
エ A:CRM B:Paid Media C:Owned Media
正解:イ
まとめ
トリプルメディアについて見てきました。各メディアはそれ単発で利用するより、それぞれの特性を活かして連携させることでより高い効果を期待できます。トリプルメディアの連携では、まずペイドメディアで認知させ、オウンドメディアで自社への理解を深めてもらい、アーンドメディアで顧客を獲得するという流れが最も有効です。試験対策だけでなく、その後の診断士活動の中でも役に立つ知識です。ぜひ押さえておいてください。