ポーターの3つの基本戦略とは?競争優位とは?中小企業診断士解説。
更新日:2020年10月1日
アメリカの経営学者・マイケル・ポーター(1947年 - )は、競争優位の戦略の基本として、「コストリーダーシップ戦略」「差別化戦略」「集中戦略」の3つを挙げています。企業はこのいずれかの戦略をとることで、競争優位を獲得するとしています。詳しく見ていきましょう。
➡中小企業診断士についてはこちら!コストリーダーシップ戦略
競合よりも低コストで製品を生産することで、コスト面で優位性を保ち、競合と価格競争になっても収益を確保できるようにする戦略です。(あくまでも低コストであり、必ずしも低価格ではないことにご留意ください)
- 規模の経済と経験曲線効果からコスト削減を実施し、市場占有率(シェア)拡大を狙います。
- シェアが高くなると、さらに仕入れコストを低く抑えることができ、結果的に低価格で販売することが可能になります。
- 大量販売によりさらなるシェア拡大が図れます。
差別化戦略
自社の独自性により、競合と差別化を図り、顧客にとっての魅力と価格を想像し、競争優位を獲得する戦略です。品質、デザイン等の製品、ブランドイメージの差別化や、サービスや販売チャネルの差別化などの方法があります。
競合に模倣された場合や、顧客の要求が上がり既存商品では価値が見いだされなくなった場合などは、戦略を見直す必要が出てきます。
集中戦略
市場を細分化し、特定の顧客層をターゲットにしたり、特定の製品などに経営資源を集中することで、競争優位性を獲得する戦略です。
集中戦略には、コスト集中戦略と差別化集中戦略があります。
コスト集中戦略
特定の市場でコスト優位を確立することです。
差別化集中戦略
特定の市場に資源を集中することで、他社に対する競争優位を確立することです。
各競争戦略の持つリスク
- コストリーダーシップ戦略は、
競合会社がこの戦略を模倣すると、利益を度外視した価格競争に巻き込まれるリスクがあります。 - 差別化戦略は、
競合企業の模倣により、自社の「差別化」の優位性が喪失するリスクがあります。 - 集中戦略は、
ターゲットセグメントが小さいため、競合に敗れた場合に、大幅にシェアを失うリスクが、また、市場が小さすぎる場合、利益の確保が困難になるというリスクがあります。
過去問題
ポーターの3つの基本戦略については、過去このような形で出題されています。
平成28年 第1次試験 企業経営理論 第6問
企業が競争優位を獲得するための競争戦略のひとつであるコスト・リーダーシップ戦略に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア コスト・リーダーシップ戦略では、継続的に自社製品を購入する顧客を確保するために、ブランド・ロイヤルティを高めることが課題となり、企業の提供する付加価値が明確になっている。
イ コスト・リーダーシップ戦略は、市場成長率が安定してきて、製品ライフサイクルの成熟期以降に採用する戦略として適しており、企業が脱成熟をしていくうえで有益な戦略となる。
ウ コスト・リーダーシップ戦略は、多角化した企業において、シナジーの創出によるコスト削減を目指していく戦略であるので、事業間の関連性が高い企業の方が、優位性を得やすくなる。
エ コスト・リーダーシップ戦略を行う企業が、浸透価格政策をとると、自社の経験効果によるコスト低下のスピードは、競合他社よりもはやくなる。
オ コスト・リーダーシップ戦略を行っている企業は、特定モデルの専用工場を建設し、生産性の高い設備を導入しており、新しい市場ニーズへも迅速に対応できる。正解 エ
まとめ
ポーターの3つの基本戦略、「コストリーダーシップ戦略」「差別戦略」「集中戦略」を見てきました。
一般的には業界のリーダーは「コストリーダーシップ戦略」を取ることが多く、リーダー以外の企業(中小企業など)は「差別化戦略」や「集中戦略」をとって競争優位性を確保していくことが多くなります。
ところで、これら基本戦略を複数同時に採用するというのはどうでしょうか?
ポーターは、複数の基本戦略を同時に追求することは、どちらも中途半端でパフォーマンスが低くなる状態・「スタック・イン・ザ・ミドル」に陥るとし、そうした二兎を追う戦略は避けるべきとしています。
もっとも、実際の企業運営においては、各戦略のいずれかを採用したとしても、他の戦略を全く無視することはないでしょう。中小企業診断士には、その企業で活用できる経営資源や業界内でのポジショニングを調査・把握し、バランスの取れた戦略の構築を助言できる能力が求められます。
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