経営理念・経営戦略・経営計画の基本的な考え方を解説

経営理念・経営戦略・経営計画の基本的な考え方を解説

「経営」とは何でしょうか。経営とは簡単に言えば事業を営むことですが、一言で「経営」といってもその意味や範囲はとても広く、企業ごとに考え方も異なるのが実情です。

企業ごとに方針は違いますが「経営」を考える上でベースとなる基本的な考え方や概要というものは存在します。それは中小企業診断士にとっても基礎となる大切な知識です。

今回は経営について「経営理念」「経営戦略」「経営計画」の3つに分けて考えていきたいと思います。

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目次

「経営理念」とは?

皆さんはメディアや書籍などで「経営理念」という言葉を耳にしたことがありませんか?「経営理念」とは企業活動を行うにあたって、どのような目的があるのか、何のために経営を行うのか、どのような会社を目指しているのかなど企業活動の方向性を示す基本的な考え方のことをいいます。

経営理念を示すことで社内外に自社の目的を分かりやすく明確に伝えられるというわけです。

「経営理念」がもたらす効果

「経営理念」を作り、社内外に浸透させることで様々な効果が期待できます。
まず、経営方針がブレません。経営者の思いや考えを言葉に書き表すことで、経営の方向が明確になります。それが確実な企業活動へとつながっていくのです。

次に社内に一体感が生まれます。経営の方向が明確になることで経営陣と社員が同じ方向を向き、気持ちを共有することができます。その結果、社内に一体感が生まれ、より強固な企業へと成長できるでしょう。

そして会社の認知度や好感度アップも期待できます。社名やロゴだけでなく、経営者の思いや考えを言葉で表現することにより、日頃の企業活動への理解や認知度を高めることができます。

また「経営理念」に共感してもらうことができれば顧客や取引先からの好感度アップも期待できます。

見た人の印象に残る「経営理念」を

「経営理念」は分かりやすい言葉で表現することも必要ですが、時にインパクトのある表現や言葉を用いることで、より鮮明に、より強く、見た人の心に印象づけることも大切です。

また、実現させたい願望や目的を盛り込むことでさらに伝わりやすくなります。その際、企業がどのように社会貢献していくかも具体的に示すようにしましょう。

「経営理念」は社内外に浸透しなければ効果を発揮できません。

そのため、社内研修やイベントで「経営理念」について話したり、企業の歴史や理念をまとめた本や映像を作ったり、ホームページの目立つ場所に掲げたり浸透させるための工夫が必要です。自社にとって最も適切な方法で発信していきましょう。

「経営戦略」とは?

次に「経営戦略」について見ていきます。

「経営戦略」とは企業が競争環境の中で持続的に生き残り、成長していくための方針や計画のことをいいます。

先程の経営理念を実現するためにはしっかりとした「経営戦略」を立て、具合的な目標を決めることが大切です。中長期的な目標やゴールを決め、それを達成するために経営資源(ヒト、モノ、カネ)を最適かつ計画的に配分していくことが基本です。

似ているようで違う「戦略」と「戦術」

「戦略」と似ている用語で「戦術」というものがあります。

この2つは似ていますが意味が少々異なります。どちらも元々は軍事用語ですが、現在はビジネスの世界でも使用されています。

「戦略」は中長期的な企業全体の目標、方向性を計画することを指し、そのために経営資源の運用方法を考えたり、準備したりすることをいいます。
「戦術」はもっと短期的で、戦略を達成するための具体的な方法やノウハウを意味します。

企業活動の大きな目標として「経営戦略」が存在し、それを達成するための細かいプロセスが「経営戦術」といったところでしょうか。2つの違いを知っておくと経営者と経営についてさらに深い話ができそうですね。

なぜ「経営戦略」が必要なのか

戦後の日本経済は高度経済成長や人口増加に伴い、特徴ある経営戦略を打ち出さなくても右肩上がりの成長を遂げてきました。しかし、バブル崩壊以降リーマンショックなどの金融危機、国際競争の激化など日本を取り巻く経済状況は刻々と変化してきました。

また、技術の発達や新興企業、異業種からの参入も相次ぎ、市場シェアが脅かされることも当たり前の時代になりました。

変化する経済環境に対応するため、企業は自社の強みを正確に把握し、長く企業を存続させるための計画や具体的な戦略を打ち出し、それを競合他社よりも早く実現していくことが求められています。そのために「経営戦略」が必要なのです。

目標を実現するためには「経営計画」が必要!

経営理念を実現するために経営戦略で中長期的な企業の目標を設定したあとは、実際に実現するために行動を起こさなければなりません。スムーズに目標を達成するために必要なのが「経営計画」です。

経営は行き当たりばったりでは上手くいきません。将来にわたって企業を存続させるには目標達成に至るまでのプロセスを示したロードマップが必要になります。この役目を果たすのが「経営計画」です。きちんとした計画があれば目標に向かって着実に歩みを進めることができます。

「経営計画」がもたらす効果

先程「経営計画」を立てることで目標実現までのプロセスが明確になるといいました。「経営計画」がもたらす効果はこれだけではありません。

「経営計画」を作ることで他人と目標を共有することが可能になります。その結果、社員同士の一体感が生まれ、協力を得やすくなります。また、しっかりとした計画を立てることで社内外の信頼度も上がります。

「経営計画」を作る際のポイント

具体的な「経営計画」を作るためにはいくつかポイントがあります。

①自社のことを知る

まずは自社の現状や強み、改善点を理解することが大切です。そのためには自社の情報を出来るだけたくさん書き出し、客観的に眺めてみましょう。

売上高や利益構成はどうなっているのか、主要な顧客は誰なのか、顧客にとってのメリットは何か、など自社の情報を書き出していくことで様々な情報が見えてきます。

②周囲のことを知る

次に行うのは自社を取り巻く環境を知り、整理することです。企業は常に様々な環境の変化にさらされています。「経営計画」を立てるために今後の市場を予測し、対応策を考える必要があります。

外部環境についてはいろいろな要素がありますが、特に注目したいのは市場動向と競合の状況です。

自社の市場の将来性について考えてみましょう。今後も拡大が見込めそうなのか、減少しそうなのか的確な情報をもとに予測します。

次に競合他社について把握します。現在、競合は何社あるのか、どんな戦略をとっているのか、具体的な情報が必要です。

③将来の目標を設定する

「経営計画」は中長期的な範囲でつくるのが一般的です。目標とする売上高や従業員数などは具体的に数値化しましょう。また自社の事業を見直し、どの方向へ成長させていくのか定めることで、やるべきことも見えてきます。

④目標を達成するための方法を決める

先程、設定した目標を達成するための方法を考えましょう。

誰をターゲットにするのか、そのターゲットにどんな商品やサービスを提供するのか、自社の商品やサービスがどのような価値を与えるのか、その価値を生み出すためにどのような設備や技術を用いるのか、具体的にイメージすることが大切です。

「経営計画」を作ったら、しっかり実行していきましょう。

社員全員で役割分担をし、実際の業務の中で実行可能なタスクに落とし込んでいきます。月ごとに明確な目標を設定することで進捗や達成状況も確認しやすくなります。その都度、話し合いや改善を繰り返し、無理のない範囲で実行していくことが大切です。

まとめ

経営の基本について見てきました。

企業の目的や方向性を「経営理念」で掲げ、次にその目的を達成するために「経営戦略」を立て、具体的な目標やゴールをしっかり定めます。さらに「経営戦略」を確実に実行するために「経営計画」を作ります。

この3つは繋がっており、切っても切れない関係です。もし、どこかが欠けてしまうと経営自体が上手く回らなくなる可能性もあります。

経営理念や経営戦略、経営計画は企業ごとに異なります。中小企業診断士は支援する企業の現状や外部環境、市場の動向を細かく把握し、将来性や今後の成長をある程度予測するスキルが求められます。

その中で今まで関わったことのなかった業種や初めての事業に出会うこともあるでしょう。 新しい知識や情報を常に吸収する積極性や知らないことを「知りたい」と思う前向きな気持ちは今後の中小企業診断士の活動にも役立ちます。

いろいろな方面にアンテナを張り、興味のあることはどんどん学び、自分の糧にしていきましょう。

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