試験にも登場する「ナッシュ均衡」とは? | わかりやすく中小企業診断士解説

試験にも登場する「ナッシュ均衡」とは? | わかりやすく中小企業診断士解説

「ナッシュ均衡」について解説

「ナッシュ均衡」は中小企業診断士試験の経済学・経済政策という科目に登場します。重要な概念なので、試験にもよく出題されます。

目次

中小企業診断士試験における「ナッシュ均衡」とは

「ナッシュ均衡」は一次試験の経済学・経済政策の科目で出題され、その出題パターンはその年によって異なります。非常に有名な理論なので取り上げられることが多いです。経済学に関する知識の一環として必ず知っておかなければならない理論です。

この科目は経済に関する理論が数多く登場します。まずはテキストを読み、それぞれの理論をきちんと理解することが基本です。それを踏まえ、学んだ理論を事例に当てはめ、試験問題に解答できるように応用する力が必要になってきます。

ゲーム理論と囚人のジレンマ

「ナッシュ均衡」はゲーム理論という経済用語の中のひとつです。ゲーム理論とは、利害関係をもつ相手がいる状況で、自分と相手の利益を考慮し最適な方法を数学的に導き出すことをいいます。

ゲーム理論を提唱したのはアメリカのジョン・フォン・ノイマンという数学者です。この理論により相互の利害関係が数学的に証明できるようになりました。

「ナッシュ均衡」を理解するには、まず「囚人のジレンマ」を知ると理解が進みます。以下、例を挙げながら説明していきます。

ある犯罪に関する容疑でAとBという人物が逮捕されました。2人は意思疎通ができない別々の部屋で尋問を受けています。このような状況の場合、2人に与えられる選択肢は「自白する」「自白しない」の2つです。

お互いがどのような選択をするかによって以下のように状況が変わります。

  • 一方が自白しもう一方が自白しない場合、自白した方は無罪、自白しない方は懲役10年
  • 両者とも自白しない場合は懲役2年
  • 両者とも自白した場合は懲役5年

上記のような場合、自分だけが自白し相手が自白しないという選択肢が1番魅力的です。しかし2人は意思疎通ができない状況なので、裏で話を合わせることは不可能です。

もし自分が黙秘して相手だけが自白した場合、相手は無罪で自分だけ懲役10年の刑罰を受けるリスクが発生します。意思疎通ができないため、AとBが逮捕される前に話し合い「黙秘する」と決めていたとしても、相手が土壇場で裏切る可能性もあるのです。

この場合、両者ともに懲役10年の服役は避けたいと考えるのが人間の心理でしょう。相手がどう出るのか様々な思考を巡らせた結果、両者とも自白してしまえばお互いが懲役5年で済むという結論に至ります。

2人とも自白しなければ懲役2年で済んだかもしれないのに、自分の利益を優先させた結果、ベストな選択肢が取れないことを囚人のジレンマといいます。

では本題へ。「ナッシュ均衡」とはどういう状態なのか

先ほど「囚人のジレンマ」の例において、ベストな選択肢はお互いが自白せず懲役2年の刑罰を受けるという選択肢でした。しかしこの場合、意思疎通をはかる術がないので相手に裏切られる可能性もあります。

したがって「自白しない」という選択は自分にとってリスクが高いことが分かります。ベストな選択とは言えません。

この場合、両者ともに最も合理的でリスクの少ない選択肢はお互いに自白して懲役5年の刑罰を受けることになります。

このようにお互いが利害関係を重視するあまり最も効率が良い選択ができず、両者とも合理的な選択だと思える立場で均衡が取れている状態を「ナッシュ均衡」といいます。

利害関係にある全ての人たちが良い結果を得るための方法を導き出すことがゲーム理論の基本です。己の利益だけを追い求めると結果的にベストな選択が出来ないのです。ゲーム理論はそのことを数学的に証明しています。

「ナッシュ均衡」の生みの親ジョン・ナッシュとは

ジョン・ナッシュは1928年、アメリカのウエストバージニア州で生まれました。若い頃から天才と呼ばれ1950年にプリンストン大学で博士号を取得しました。「ゲーム理論」の発展に大きく貢献し、20世紀有数の数学者として広く知られています。

959年に統合失調症を患い長い間、闘病生活を送りながら研究を続けていたことでも有名です。1960年代後半に病状が悪化した際は妻がナッシュを支え、看病しました。2001年にはナッシュを題材にした映画「ビューティフル・マインド」が公開され、同作品はアカデミー賞を受賞しています。

長年、研究を続けてきた成果が認められ1994年には「非協力ゲームの理論における均衡の先駆的な分析」でノーベル記念経済学賞を受賞しています。晩年も主任研究員としてプリンストン大学に在籍し、研究を続けていました。

2015年にノルウェー政府は数学での研究実績を評価するために「アーベル賞」というものを設けました。その授賞式に出席するためオスロを訪れていたナッシュ夫妻は授賞式後アメリカに戻り、その帰り道で不慮の事故に遭い亡くなりました。

世界に最も影響を与えた数学者の死は当時、多くの人に衝撃を与えました。天才数学者が提唱した理論は経営や経済を学ぶ人にとって重要な知識のひとつです。特に中小企業診断士を目指す人は必ず理解しておく必要があるでしょう。

まとめ

経済用語のひとつである「ナッシュ均衡」について見てきました。

企業経営は非常に複雑で、一筋縄ではいかないことも多いでしょう。企業が置かれた状況や条件を理解し、合理的な判断をするためには理論武装が必要です。考えられるパターンを想定し、数値化することで経営支援のヒントが見えてくることもあります。

経営に関して様々なパターンを想定し、合理的に判断できる思考プロセスを身に付けておくことが中小企業診断士には求められています。