中小企業診断士試験は独学でも合格できる?独学の勉強方法や特徴などを解説

更新日:2023年12月27日

椅子の上に本

中小企業診断士試験は近年注目を集める資格試験です。

中小企業診断士試験は一次試験と二次試験に分かれており、さらに二次試験は筆記試験と口述試験に分けられます。合格率も低く、難関試験と言われる中小企業診断士試験。そんな試験は独学で目指すことができるのでしょうか?

この記事では中小企業診断士を独学で目指せるのかどうかから、独学で目指す際の注意点など、独学での勉強に関してまとめていきます。

目次

中小企業診断士試験は独学でも合格できるのか?

中小企業診断士試験は独学でも目指すことは可能です。目指すことは可能ですが簡単ではありません。

中小企業診断士試験には一次試験と二次試験がありますが、一次試験対策で800~1,000時間、二次試験対策で200~400時間程度の勉強時間が必要と言われています。独学の場合、合計で1,000~1,400時間ほどの勉強時間が必要になる計算です。

もちろん必要な勉強時間に関しては個人差があります。合格まで1,000時間も必要ないという方もいらっしゃいますし、1,400時間でも足りないという方もいらっしゃるでしょう。いずれにせよ共通しているのは、集中して勉強できる時間を、1,000~1,400時間確保する必要があるということです。

社会人の方や専業主婦(主夫)の方にとって、毎日の仕事や家事の中で、勉強時間を確保するのは簡単ではありません。一般的な方の生活リズムを考えると、1,000~1,400時間の勉強時間を確保するには、1年間で確保できるかどうかといったところ。

独学で中小企業診断士試験に合格できるかどうかと聞かれれば、どれだけ勉強期間がかかってもいいのであれば合格をすることは可能ということになります。

中小企業診断士試験はどのくらい難しいのか?

中小企業診断士試験は、独学でも時間をかければ合格を目指せる試験です。ではそんな中小企業診断士試験の難易度はどの程度のものなのか。いろいろなデータから考えていきたいと思います。

中小企業診断士試験の合格率は?

2022年度の中小企業診断士試験の一次試験の合格率は28.9%、二次試験の合格率は18.9%でした。この数字だけを見ると、そこまで難易度は高くないように見えますが、1度の挑戦で二次試験まで一気に合格できる確率は約5%程度という計算になります。

合格率5%となるとかなり難易度の高い試験であり、独学での挑戦は厳しい試験とといえるでしょう。

中小企業診断士試験の詳細な難易度に関しては以下の記事で詳しく解説しています。

中小企業診断士の合格率の詳細はこちら

中小企業診断士試験の合格基準

中小企業診断士試験の難易度の高さを見極めるポイントとして、合格基準点を紹介しておきましょう。

★中小企業診断士試験の合格基準

一次試験

  • 総得点(700点)の60%以上を基準に、試験委員会が相当と認めた得点比率
  • 全7科目で40%未満(40点未満)の科目がないこと

二次試験

  • 【筆記試験】総得点(400点)の60%(240点)以上を基準に、試験委員会が相当と認めた得点比率
  • 【筆記試験】全4科目で40%未満(40点未満)の科目がないこと
  • 【口述試験】評定が60%以上

中小企業診断士試験の合格基準点は上記の通りです。一次試験、二次試験それぞれに合格基準点があり、さらに科目別の足切り点も設定されています。基本的には絶対評価の試験であるため、ほかの受験者の実力に関係なく、自身がしっかりと力を付ければ合格が可能です。この点では対策のしやすい試験といえるでしょう。

中小企業診断士試験の一次試験では7科目が出題されますので、この7科目全てを平均的に学ぶのが重要なポイント。一次試験、二次試験ともに苦手科目があると合格は難しくなります。

中小企業診断士を独学で目指すメリット

中小企業診断士試験は難易度の高い試験であり、独学で目指すのはかなり難しい試験といえます。そんな中小企業診断士を独学で目指すにはどのようなメリットがあるのかを考えてみましょう。

費用がかからない

独学で中小企業診断士を目指す場合、必要となる費用はテキスト代と模試の受験料程度。1年間の勉強期間でかかる費用は5万円程度になるかと思います。

中小企業診断士を目指す勉強方法には、独学以外に通信講座を受講したり、予備校に通学するといった方法が考えられます。こうした各種講座を利用するには、当然ですが受講料が必要となります。

通信講座で8~10万円程度、予備校で20~30万円程度が受講料の相場。この金額と比較すると、独学は費用を抑えて挑戦できる勉強方法ということができます。

マイペースで学べる

中小企業診断士を目指す方、特に社会人や専業主婦(主夫)の方にとっては、このマイペースで学べるというのは大きなメリットかもしれません。

予備校に通学する場合、授業の曜日と時間が決められており、そのタイミングで授業に出席しなければいけません。しかし社会人の方の場合は仕事の都合や残業で授業に出席できない可能性があります。

専業主婦(主夫)の方や、子育てをしている方も、家事や育児の影響で、必ず授業に出席できるというわけではないでしょう。

授業に出席できなくても、予備校の授業はカリキュラム通りに進行しますので、それに追いつくためにはある程度無理をしてでもついていかなくてはいけません。

独学にはこういったデメリットはありません。勉強の進行具合などもすべて自分の都合に合わせることができますので、周りに合わせて無理をするといったストレスを感じることなく、マイペースで勉強を進めることができます。

時間が取れるときは一気に勉強し、仕事や家事・育児が忙しいタイミングは無理して勉強時間を割かないという選択ができるのは、独学のメリットといえるでしょう。

中小企業診断士を独学で目指すデメリット

中小企業診断士を独学で目指すことにメリットがある以上、当然ですがデメリットも存在します。そんなデメリットをいくつか紹介していきましょう。

勉強時間が長くなる

独学で中小企業診断士を目指す最大のデメリットは勉強時間が長くなってしまうことです。

独学では勉強時間が長くなる理由は主に2つ。ひとつは勉強の効率化が難しいという点です。

予備校や通信講座には、中小企業診断士試験に精通した専門講師やスタッフがおり、こうした中小企業診断士試験の専門家が、効率よく学べるようなカリキュラムを組み勉強を進めていきます。さらに、専門講師の講義で難しいポイントは解説してもらえますので、勉強効率は高くなります。

独学の場合、中小企業診断士試験の専門家がいませんので、自分で勉強スケジュールや、勉強する順番なども考えなければいけません。どうしても無駄は多くなり、その分勉強時間が長くなってしまいます。

もうひとつは疑問点を自力で解決しなければいけないという点です。予備校や通信講座であれば、前述の通り専門講師の講義などで疑問点は解決しやすくなります。また講義以外でも講師に質問をするという解決法もあります。

独学の場合は自身で考えるか、手元にあるテキストから答えを見つけ出すしかありません。当然疑問の解決には時間がかかり、ひいては勉強時間が長くなってしまいます。

モチベーション管理が難しい

勉強時間が長くなることの弊害として、モチベーションの管理が難しくなるという点が挙げられます。勉強時間が長くなれば、それだけ勉強に対するモチベーションは下がっていきます。モチベーションが下がれば勉強効率はさらに落ちてしまいます。

独学で中小企業診断士を目指すには、1年間かそれ以上の勉強期間が必要です。この長期間勉強に対するモチベーションを落とさないようにする工夫も必要になります。

二次試験対策が難しい

中小企業診断士の試験内容から見るデメリットとしては二次試験の対策が難しいという点が挙げられます。

中小企業診断士試験の二次試験では筆記試験と口述試験があります。筆記試験は事例問題が出題され、その問題に対し文章で解答をする試験です。

仮に独学でこの筆記試験対策をした場合、自分の解答がどの程度の点数を取れているのか、自分自身で判断するのは簡単ではありません。理想は専門講師などに添削してもらい、何が足りないのか、どの程度の点数が取れているのかなどを採点してもらう形ですが、これができないのが独学です。

口述試験の対策でも同様のことがいえるため、二次試験対策は独学では難しいということになります。

独学で中小企業診断士を目指すのに向いている方

独学で合格を目指すのはなかなか難しい中小企業診断士試験。それでも独学で目指すのに向いている方というのもいらっしゃいます。

では、どんな方が独学に向いているのか。そのあたりを紹介してみましょう。

集中力のある方

まずは何より集中力のある方は独学に向いているといえます。

独学で中小企業診断士を目指すには長い勉強時間が必要です。この勉強時間を少しでも短縮するためには、より集中して勉強に向き合う必要があります。

社会人の方や専業主婦(主夫)の方は、ただでさえ勉強時間の確保が難しいもの。そんな限られた勉強時間を有効に活用するためにも、高い集中力で質のいい勉強をする必要があります。

常に勉強に対して集中力を持って当たれる方は独学にも向いているといえるでしょう。

自分でスケジュール管理ができる方

独学で中小企業診断士を目指す場合に重要になるのが勉強スケジュールの立案です。独学という勉強法は、真面目に学ぶのも、サボるのも自分次第です。そんな自分を律し、しっかりと勉強スケジュールを考え、さらにスケジュール通りに実行できる方は独学でも中小企業診断士を目指せるでしょう。

勉強スケジュールを立てて実行することは、ほかにもプラスがあります。

勉強スケジュールを毎日単位で細かく設定することができれば、毎日どれだけ勉強をすればいいのかがハッキリします。そのスケジュールをこなすことで、小さいながらも毎日達成感を感じることができるでしょう。

こうした達成感は、勉強に対するモチベーションの維持にも繋がります。独学という勉強方法ではモチベーションの維持が大きな問題となりますので、この問題を解決するためにも、スケジュールの立案は重要ということになります。

勉強スケジュールを立て、そのスケジュールを確実に実行していく。それができる方は独学で中小企業診断士を目指すのに向いているといえるでしょう。

情報収集が得意な方

独学で勉強時間が長くなる要因の一つとして、疑問点の解決が難しいという点があります。独学で学んでいるときに、こうした疑問点にぶつかった場合、手元にあるテキストを頼りに解決する必要がありますが、それでも解決できなかった場合は、ほかの方法で解決する必要があります。

ほかの方法とは、ほかの書籍やネット上などから解決法を見つけ出すという方法です。こうした情報収集力は、独学では非常に重要になります。

疑問点の解決に時間がかからなければ、その分勉強時間は短くなりますので、独学での合格を目指す方は、情報収集の方法についても考えておきましょう。

独学で中小企業診断士を目指す場合のポイント

独学で中小企業診断士を目指すのは簡単な挑戦ではありません。それでも独学で目指したいという方に、勉強などのポイントや、勉強を始める前の準備のポイントをいくつか紹介しておきましょう。

テキスト選び

中小企業診断士は人気の資格のため、試験対策のテキストは市販でも数多く出版されています。独学で中小企業診断士を目指す場合、こうした多数のテキストの中から自分に合った1冊を選び出すのが最初にやるべきこととなります。

テキストの中には、ある程度知識を持っている方向けのものから、初学者の方向けのものまでありますので、自身のレベルに合ったものを選びましょう。

テキストに関しては原則1冊を使用することをおすすめします。複数のテキストを使用してしまうと、テキストによって説明の仕方が違ったり、勉強の順番が違ったりといった問題があり、かえって混乱してしまう可能性があります。

問題集を合わせて購入する方も多いかと思いますが、参考書と同じシリーズで統一すると、勉強の進め方がテキストと問題集で合わせることができ、勉強を進めやすくなりますのでおすすめです。

スケジュールの作り方

独学で中小企業診断士試験に挑むのであれば勉強スケジュールの立案は重要です。

スケジュールを立てるには、まずはゴール地点を明確にする必要があります。直近の中小企業診断士試験を目指すのか、その次の機会を目指すのか。自分で受験する日を決め、その日をゴールとして逆算してスケジュールを立てましょう。

スケジュールを立てるためには、まずは毎月ごとの大雑把な目標を設定します。その後、その月の目標をクリアするための週ごとのスケジュールを考えます。最終的に1日ごとのスケジュールまで落とし込めばスケジュールの立案は完了です。

勉強スケジュールは勉強の進み具合に合わせて適宜調整するのもポイント。ハード過ぎず緩すぎずというも重要です。

ハード過ぎる勉強スケジュールを組むと、毎日の目標を達成できず、勉強に対するモチベーションが低下する可能性があります。緩すぎるスケジュールを組むと、簡単にクリアできてしまい、こちらもモチベーション低下の可能性があります。

特に勉強を始める時点で考えたスケジュールは厳しくなりがちです。勉強をスタートさせるタイミングは、もっとも勉強に対するモチベーションが高い状態ですので、その状態を基準に考えると、徐々にスケジュールを溶解するのが厳しくなっていきますので注意しましょう。

自分に合った勉強法を見つける

一言で勉強と言ってもいろいろな方法があります。とにかくテキストを読んで頭に知識を詰め込む、覚えるべきことを書くことで身に着ける、問題集に挑戦して分からなかった部分をテキストで調べるなど方法はさまざまです。

ポイントは自分に合った勉強方法を上手に取り入れるということ。書く勉強法が合っている方は書くことを意識して、読むことで覚えるという方はテキストを読む時間を多めに確保するなど、自分なりに工夫して勉強を進めるようにしましょう。

より効率的に合格を目指すなら独学以外の勉強法がおすすめ

より確実に中小企業診断士試験合格を目指すのであれば、独学という勉強法にこだわるのはあまりおすすめできません。独学にもメリットはありますが、資格取得ということを考えると、デメリットが大きい勉強法です。

独学以外の勉強法となると、予備校への通学か通信講座の活用ということになります。これらの勉強法によるメリットを紹介していきましょう。

予備校通学で勉強効率は大幅にアップ

予備校の最大の特徴は、教室に通って専門講師の講義をライブで受講できるという点です。予備校の教室は自宅とは違い、勉強をするしかない空間です。こうした空間に身を置くことで、強制的に勉強をするしかないという環境を作り出すことができます。

また、予備校の教室には、同じ目標を持つ仲間・ライバルがいるため、勉強に対するモチベーションも維持しやすくなります。

予備校には効率よく学べるオリジナルテキストやカリキュラムがあるため、独学よりも短い勉強時間で合格を目指せるでしょう。

通信講座を利用すれば独学と似た環境で勉強効率が上がる

通信講座の大きなメリットは、自宅にいながら専門講師の講義を受講でき、日本全国どこにいても水準の高い講義が受けられるという点です。

予備校の場合、何より通学が可能な圏内にその予備校がなければ通えないという大きなデメリットがあります。予備校は人口の多い都市部に集中していますので、地方部に住んでいる方は利用しにくいというデメリットがありますが、通信講座にはこのデメリットがないということになります。

分かりやすいオリジナルテキストや、効率的な勉強カリキュラムがあるのは予備校と同様。つまり通学時間という無駄な移動時間を使わないで、予備校と同様の質のいい勉強ができるということになります。

さらに予備校と比較すると、受講料を抑えて受講できるのもメリットの一つ。独学と同様自宅でマイペースで勉強ができ、しかも予備校と同様に質の高い勉強ができるのが通信講座ということになります。

まとめ

中小企業診断士試験は難易度の高い試験です。独学で合格を目指すことは可能ですが、合格までには長い勉強時間が必要となります。いつまでに合格するといった限定がなければ、数年間勉強を続けることで、独学でも合格を目指せるでしょう。

とはいえ、資格取得に多くの時間をかけるのは得策とは言えません。中小企業診断士のような資格は、取得すること自体が目標ではなく、取得した後その資格を活かしてどのように働いていくかというのが目標です。

最終的な目標を達成するためにも、中小企業診断士の資格取得にかける時間は短い方がベター。そのためにも独学にはこだわらず、いろいろな勉強方法の利用を検討して合格を目指すのがおすすめです。

独学以外の勉強方法としては予備校への通学や通信講座の利用があります。

予備校通学は、勉強するしかない環境に身を置けるというメリットはありますが、受講料が高額であり、さらに通学時間が必要というデメリットがあります。

通信講座の場合、受講料がそこまで高額ではなく、専門講師の講義を受講できるというメリットがありますが、自宅で一人で勉強するため、モチベーション管理の問題があります。

どの勉強方法がベストというわけではありませんので、自分に合った勉強方法で、できるだけ短期間での合格を目指しましょう。

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