知っているようで意外と知らない「組織」の知識

更新日:2020年8月25日

話し合ってる人たち

皆さんは「組織」と聞くと、どのような印象をもちますか?

「組織」の捉え方は人それぞれ自由です。しかし、改めて「組織」というものを定義する際、そこには概念や一定の条件がきちんと存在しています。今回は知っているようで意外と知らない「組織」の概念や条件について解説していきます。

「組織」については中小企業診断士試験の一次試験「企業経営理論」の「組織論」という科目で詳しく学習します。

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目次

「組織」の概念

冒頭でも説明しましたが「組織」にはきちんとした概念があります。アメリカの経営学者チェスター・バーナード氏は自身が書いた「経営者の役割」という著書で組織を「2人以上の人々の意識的に調整された活動および諸力の体系」と定義しています。

さらに「組織」を辞書で調べると「特定の目的を達成するために、諸個人および諸集団に分業化された役割を与え、その活動を統合・調整する仕組み。またはその集団」とあります。

つまり「組織」とは、同じ目的を達成するためにそれぞれの作業を分業し、効率良く行うための仕組みやそれを実行するために結成された集団ということですね。

「組織」についてなんとなくイメージが浮かんできましたね。しかし、これだけではよく分からないという人もいるかもしれません。次項ではさらに詳しく「組織」について解説していきます。

「組織」を構成する3つの要素

「組織」を構成するには3つの条件が必要とされています。この3つの条件をまとめて「組織成立のための3要素」と呼ぶこともあります。では、その3要素について具体的に見ていきましょう。

①共通目的

共通目的とは経営目的のことです。これを達成するための集団が「組織」です。

経営目的は経営者が組織構成員である社員に示すことで理解され、容認されていくものです。まず、これが成り立たないと「組織」とはいえません。共通目的を持たない集団はバラバラになり、効率よく活動することが難しくなるでしょう。

②貢献意欲

貢献意欲とは個人の努力を共通目的の実現のために役立てようとする意思のことです。共通目的を達成するためには自社に貢献しようとする気持ちが必要ということですね。

③コミュニケーション

共通目的を理解し、貢献意欲をもってもらうためには円滑なコミュニケーションが必要です。このコミュニケーションには大きく分けて3つのルートがあります。

一つ目は上から下へのコミュニケーションです。上司と部下という関係性が最も分かりやすいかと思います。部下に対する指揮や命令、情報や業績のフィードバックなどが挙げられます。

二つ目は下から上へのコミュニケーションです。これも先程と同じく上司と部下の関係で考えてみます。上司への報告や連絡、相談や提案など業務をスムーズに進めるための活動がこれにあたります。

三つ目は横や斜めのコミュニケーションです。これは同僚や仲間との関係性を指します。メンバー間でのミーティングやラインとスタッフのコミュニケーションなどです。

「組織」を構成するには上記の3つの要素が必要です。この3つの要素をその時の環境や状況に合わせて調整し「組織」を維持していきます。社員は組織構成員として自社の活動に貢献し、共通目的達成のために努力する義務があります。

一方、経営者や管理者は「組織」を適切に維持、調整し、協働体系が適切に機能するよう管理する役割があります。お互いが協力し合っていくことが「組織」を維持する最大のポイントなのです。

「組織」をより効率的に機能させるにはどうしたらいいか

先程「組織」を構成する3つの要素について説明しました。ここではその「組織」より効率的に機能させるための方法を解説していきます。以下、ファヨールの管理原則というものに基づいて説明してきます。

①専門家の原則

職種や分野ごとに人員を配置し、それぞれ与えられた仕事に集中し、極めていくという原則です。

ひとつの仕事を最初から最後まで1人で担当するのは大変です。そこでひとつの仕事をみんなで分担して効率化を図ることを指しています。

②権限・責任一致の原則

仕事に対する責任と権限は等しい大きさにしようという原則です。

例えば「業務に対する責任は大きいのに、コストや採用に関する権限などは認められていない」など業務に対する責任と権限の大きさが異なる場合は早急に両者のバランスを考えるべきでしょう。

③統制範囲の原則(スパン・オブ・コントロール)

業務によって異なりますが、1人の管理者が直接管理できる部下の人数には限りがあります。その数を超えて管理しようとすると、かえって効率が落ちるということを意味しています。

④命令統一性の原則

「組織」の秩序を維持し、効率よく業務を行うために、常に指示や命令は1人の上司から受けるようにという原則です。確かに、複数の上司から命令を受けてしまうと、どれを実行したらいいのか分からなくなるかもしれません。その結果、現場は混乱し業務の効率が落ちることは安易に想像できますね。

⑤権限委譲の原則

ルーティーン作業やマニュアルに則った業務などは部下に権限委譲し、管理者は例外な業務処理に専念するべきという原則です。これにより作業効率を上げることができます。


上記はあくまで原則であり、鉄則ではありません。またファヨールの管理原則は他にもいくつかありますが、今回は代表的な原則を一部だけ紹介しました。

新しい市場やサービスが次々と出てきたり、顧客層が変わったりビジネスは日々、変化し続けています。原則にこだわりすぎてしまうと、次のビジネスチャンスを逃してしまう可能性もあるので臨機応変な対応が必要です。

まとめ

「組織」の概念や条件について見てきました。

企業の共通目的は経営者や管理者だけが努力しても達成されません。そこに働くすべての人材の能力と努力が必要不可欠です。各々の能力を十分、発揮するには円滑なコミュニケーションを図り、風通しの良い環境を維持することが大切なのです。

仕事をする上で「組織がまとまっていない」「なんだか効率が悪い」と感じることもあるでしょう。そんな時は「組織」を構成する3つの要素や「組織」を効率よく機能させる原則について振り返ってみると、原因や対処法が見えてくることもあります。

中小企業診断士として業務の効率化を図り、働きやすい職場環境を維持するための提言や助言を行うことは、あらゆる面から企業の未来を見つめ、経営を救うことに繋がります。

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この記事の監修者は
小嶋聖司(こじま せいじ)

中小企業診断士の学習は楽しい
【出身】千葉県
【経歴】千葉大学法政経学部卒 中小企業診断士
【趣味】読書・サッカー
【座右の銘】和して同ぜず
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