公的年金の併給調整とは?

年金手帳と札束
目次

公的年金の併給調整とは

公的年金は、「1人1年金」が原則です。したがって、2つ以上の年金を受け取ることができるようになった場合は、いずれか1つの年金を本人が選択して受けることになり、他方の年金は支給停止となります。

これを「併給調整」といいます。

ただし、国民年金制度からの年金給付と被用者年金(厚生年金等)からの年金給付を同時に給付する場合、両方の年金の支給事由(老齢、障害、遺族)が以下のように同じであれば、併せて受給できます。

  • 老齢基礎年金+老齢厚生年金
  • 障害基礎年金+障害厚生年金
  • 遺族基礎年金+遺族厚生年金

※上のうち1つを選択することができます

このように、2つ以上の年金の受給権が生じた場合は、年金の発生した理由によって、併せて受給することができるか、いずれか一方を選択すると定められています。

支給事由が異なる場合

支給事由が異なる2つ以上の年金は、いずれか1つの年金を本人が選択します。

例1)
遺族厚生年金、遺族基礎年金、障害厚生年金を受け取れる場合

遺族厚生年金+遺族基礎年金
もしくは
障害厚生年金
が選択できます。


例2)
遺族厚生年金、遺族基礎年金、特別支給の老齢厚生年金を受け取れる場合

遺族厚生年金+遺族基礎年金
もしくは
特別支給の老齢厚生年金
が選択できます。遺族給付と老齢給付は併せて受けることはできません。

例外:遺族年金

遺族厚生年金の受給権者が65歳以上の場合は、老齢基礎年金と遺族厚生年金を併せて受給することができます。このとき、平成19年4月1日からは遺族厚生年金と老齢厚生年金の受給権があるときは、老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止となります。

平成19年4月1日においてすでに65歳以上で遺族厚生年金を受給していた場合、かつ、同日においてすでに65歳以上の者は、次のパターン1からパターン3のうち、いずれかの組み合わせを選択することになります。(下図参照)

ただし、パターン3は、遺族厚生年金の受給権者が、死亡した者の配偶者である場合に限ります。

なお、選択の方法は、まずパターン1を受給し、その額がパターン2またはパターン3のいずれか多い方と比べて少ない場合には、差額が遺族厚生年金として受給されます。

妻本人の老齢年金の給付が優先され、「A-C」または「B-C」のいずれか多い金額が遺族厚生年金の残額「D」として支給されます。

遺族厚生年金の受給権者が65歳以上の場合は、障害基礎年金と遺族厚生年金を併せて受給することができます。なお、遺族厚生年金の受給権者が65歳未満の場合は自身の障害基礎年金か遺族厚生年金のどちらか一方しか受給することができません。

例外:障害年金

「障害基礎年金+老齢厚生年金」または「障害基礎年金+遺族厚生年金」という組み合わせでの受給も選択することができます。

併給調整のまとめ

65歳以上の受給権者の場合、以下のようになります。

老齢厚生年金 障害厚生年金 遺族厚生年金
老齢基礎年金 ×
障害基礎年金
遺族基礎年金 × ×

併給調整に関するよくある質問

併給のルールはあるのでしょうか?なかなか覚えられず、困っています。
現在の年金制度では、1人1年金が原則とされています。したがって、2つ以上の年金を受け取ることができることになった場合には、いずれか1つの年金を選択して受け取ることになり、他方の年金は支給停止になります。これを併給調整といいます。
ただし、退職共済年金と老齢厚生年金のように、「老齢」という同一の事由に基づいて発生する年金については、併せて受給することができます。このため、併給調整について各公的年金制度間で統一的な規定が設けられ、2つ以上の年金の受給権が発生した場合には、年金の発生した理由によって、
①併せて受けることができる、②いずれか一方の年金を選択する、というルールが決められています。
障害基礎年金の併給に関して、丸暗記でなくても覚えられるような、理解の仕方を教えて下さい。
覚え方のポイントは、原則通りのものとイレギュラーのものにわけることです。
例えば、「遺族基礎年金」については原則通り「遺族厚生年金」しか併給できない
  • 「障害年金」については全てがイレギュラーで、どの厚生年金とも併給できる
  • 「老齢厚生年金」については一部イレギュラーで、「遺族厚生年金」のみ併給できる
といった具合です。
「併給調整」とは何ですか?
「併給調整」とは、原則では受け取ることができない種類の違う年金を、例外的に受け取れるようにしたり、選択して受け取れるようにした制度をいいます。

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