FP1級実技の合格率は?受験資格は?不合格になる人の特徴は?

何かを説明している男性の手元 FP(ファイナンシャルプランナー)試験の最高峰とされるFP1級。FP1級の実技試験は、FP3級、FP2級とは性質が非常に異なります。この記事では、FP1級の実技試験の特徴、合格率、勉強法などをご紹介します。
目次

FP1級の実技試験は2種類

FP1級の実技試験は2種類あります。一般社団法人金融財政事情研究会(きんざい)が実施しているものと、NPO法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会(日本FP協会)が実施しているもので、いずれかを選んで受験することになります。

これら2つの実技試験は特徴が異なります。一番大きな違いは試験の実施方式で、きんざいの実技試験は面接、日本FP協会は筆記で試験を行います。FP1級の学科試験も含めて、他の試験ではいずれも筆記試験ですが、きんざいのFP1級試験は面接で合否を決めます。また、内容も限定されています。

きんざいと日本FP協会、どっちで実技を受ける?

FP1級の試験は、いずれも指定試験機関であるきんざいと日本FP協会により運営されています。学科試験については、きんざいでのみ受験できます。日本FP協会では学科試験を実施していません。日本FP協会では、別の方法で学科試験に代わる手段が用意されています。これについては後述します。

いずれにせよ、FP1級の実技試験は以下の通り。いずれか1つを選んで受験します。

  • きんざいの実技試験……資産相談業務
  • 日本FP協会の実技試験……資産設計提案業務

きんざい実技の特徴

きんざいの実技試験の内容は、資産運用と相続・事業継承が対象となります。

資産運用についてもう少し詳しく説明すると、不動産がメインで、金融資産などの分野も付随して問われます。不動産を購入する場合、それを資産運用の1つとして考えると、株式投資など他の金融資産も組み合わせて考えるというケースは実際に多く、その実態に即した内容となっています。資産運用と相続・事業承継について、実際に起こり得るケースを想定し、それにどのような提案をしていくのかが問われます。

試験は2回行われ、合格するには、2回とも合格基準に達しなければなりません。

きんざいの実技は面接

口頭試問方式(面接)で試験が行われます。

面接で面接官と対話しながら自分の技能が測られていくということで、中には緊張してしまう方もいますが、合格率の非常に高い試験ですから、きちんと対策をとれば、合格する可能性は十分にあります。

きんざいのFP1級試験の流れ

きんざいの実技試験は特殊なので、もう少し詳しく説明します。

実技試験は前半、後半の各2時間45分で、それぞれ10名が試験を受けます。1人あたりの持ち時間は約12分。次のような流れで試験を受けます。

試験会場に集合(時間厳守)
  ↓
面接開始15分前に「設例」が手渡される
  ↓
「設例」を読み、要点を把握し、提案する内容まで頭の中でまとめる
  ↓
呼ばれたら面談室に入り、面談開始
  ↓
面接官からいろいろな質問を受けつつ、設例の要点を説明、ファイナンシャル・プランを提案
  ↓
試験終了

この流れを見て分かる通り、「設例」を渡された瞬間に実技試験は始まっています。設例の紙は書込み自由です。マーカーを引いたり、書き込んだりして、面談が始まったらスムーズに話せるように工夫しましょう。

なお、ファイナンシャルプランナーにふさわしい服装で行くことをおすすめします。華美な服装、ラフな服装は控えるようにしましょう。面接は何を述べたかを客観的に評価する場ですが、服装や話し方など、第一印象も評価に影響します。

日本FP協会実技の特徴

日本FP協会の実技は筆記試験です。特徴は以下のようになっています。

出題形式 問題数 制限時間
筆記(記述式) 2題(20問) 120分

きんざいで実施するFP1級学科試験、日本FP協会で実施するCFPの6分野すべてが出題範囲となります。 選択式、論述式両方の問題があります。2級が90分、40問であったのに対し、1級は120分、20問ですので、1問あたりにかけられる時間には余裕があります。もちろん難易度は高いですが、CFPもしくはFP1級に合格していれば、それほど難しい内容ではありません。 きんざいのような面接の実技試験をどうしても受けたくないという場合は、日本FP協会の筆記試験を選ぶと良いでしょう。

FP1級試験内容

リンゴとドーナツ

FP1級の試験は仕組みが複雑です。きんざいでしか学科試験を受けることはできません。そこで日本FP協会では学科試験に当たる別の資格「CFP」(国際資格)の資格審査試験を実施し、その合格をもってFP1級受験資格を与えています。また実技試験は、きんざいが面接、日本FP協会は筆記と、形式自体が異なります。ここをまず理解しておきましょう。まとめると以下のようになります。

学科試験
試験種類 試験機関 出題形式
FP1級 きんざい 筆記
CFP資格審査試験 日本FP協会 筆記
実技試験
試験種類 試験機関 出題形式
FP1級 きんざい 口頭試問方式(面接)
FP1級 日本FP協会 筆記

CFPは、この構成ではFP1級の一部の試験のような位置づけになっていますが、実際には独立した資格であり、CFPに認定されればそれだけで1つの資格を取得できます。したがって、CFPに認定され、FP1級実技試験に合格すれば、2つの資格を取得できることになります。

FP1級実技の受験資格

FP1級の受験資格は以下の3種類です。取得しやすい順番に並べています。

きんざいの「FP養成コース」を修了し、さらに実務経験1年以上で受験資格とする方法もありますが、ここでは割愛します。

受験資格の種類 受験資格を証明する書類等の情報
1級学科試験の合格者 1級学科試験の一部合格番号
CFP資格審査試験の合格者 CFP資格審査試験の結果通知書の写し
CFP認定者 CFP認定カードの写し

(きんざいHPより抜粋)

受験資格にはCFPもかかわってくる

「CFP資格審査試験の合格者」ですが、これは日本FP協会の実施するCFP資格審査試験の合格者です。資格審査試験の合格者=認定者ではありません。CFPに認定されるためには、資格審査試験に合格し、エントリー研修を修了し、さらに通算3年以上の実務経験を積まなければならないためです。そのうちの1つの要素である審査試験に合格していれば、認定されていなくてもFP1級の受験資格が得られます。CFPとFP1級の両方の資格取得を目指していて、CFP認定への過程で、並行してFP1級実技を受けるというパターンが想定されます。

CFPの認定要素をすべてクリアしたのが「CFP認定者」という資格です。CFPは認定されるまでの過程が大変なので、普通の人ならCFPを取得した時点でもういいやとなってしまいがちですが、チャレンジ精神豊富な方はこの難関を乗り越えてさらにFP1級実技試験に挑戦するのも良いでしょう。

FP1級実技の合格点

きんざいと日本FP協会の実技について、合格点はそれぞれ次のようになっています。

きんざいの合格点:120点/200点満点
日本FP協会の合格点:60点/100点満点

きんざいの試験は2回行われます。それぞれ100点の200満点で、合わせて120点取れれば合格となります。 いずれも合格のボーダーラインは6割です。FP3級、2級、1級と難易度は上がっても、合格基準は6割で統一されています。FP1級の実技試験は、合格率の高さを考えると、6割正答というのは高いハードルではありません。しかし、受験者のレベルが高いですから、そこを加味して考えなければなりません。

FP1級実技の難易度

きんざいと日本FP協会の合格率は以下のようになっています。直近3回分の試験結果をまとめました。

きんざいは80%台、日本FP協会は70~80%台と、高い合格率で推移しています。

きんざいのFP1級実技試験結果の推移(資産相談業務)

試験日程 受験者 合格者 合格率
2022年2月 1,119 961 85.88%
2021年9月10月 1,341 1,142 85.16%
2021年6月 1,066 909 85.27%
2021年2月 1,521 1,346 88.49%
2020年9月10月 798 689 86.34%
2020年2月 710 603 84.92%
2019年10月 521 433 83.10%
2019年6月 699 599 85.69%
2019年2月 783 677 86.46%
2018年6月 1,096 936 85.40%
2018年2月 775 670 86.45%
2017年6月 830 718 86.50%

(一般社団法人 金融財政事情研究会公式HPより)

日本FP協会のFP1級実技試験結果の推移(資産設計提案業務)

試験日程 受験者 合格者 合格率
2021年9月 1,201 1,126 93.8%
2020年9月 523 511 97.7%
2019年9月 1,009 938 93.0%
2018年9月 762 543 71.3%
2017年9月 751 662 88.1%
2016年9月 716 623 87.0%

(NPO法人 日本ファイナンシャル・プランナーズ協会より)

なお、きんざいの実技試験受験手数料は25,000円、日本FP協会の実技試験受験手数料は20,000円と高額ですので、できれば一発合格したいところです。

FP1級実技で不合格になる人の特徴とは(きんざい)

ここでちょっと意地悪な話をします。FP1級の実技試験は80%が合格します。ということは、1日で10人受けるとして、毎回必ず2人は落ちているわけです。考えたくはありませんが事実です。

日本FP協会の実技試験は筆記試験ですので、きちんと勉強する人が合格し、そうでない人が不合格になる、とわかりやすいです。しかし面接で合否を問うきんざいの実技試験の場合は、その図式が当てはまりません。試験は面接であるため、机に向かってひたすら問題を解けばいいということにはならないからです。もちろん知識の習得も大切ですが、別の要素がかかわってきます。そこで、きんざいの実技試験で不合格になる人の特徴について考えてみたいと思います。

特徴(1)極度のあがり症

どのような人が、きんざいの実技試験に不合格となりやすいのでしょうか。まず言えるのが、極度のあがり症の人でしょう。とにかく人前に出て話すのが苦手という人です。 きんざいの実技試験は、就活の面接のように、試験官2人と自分が向かい合って行われます。彼らに対して、自分の考えを述べなければなりません。それだけでもドキドキしますが、試験官は設例について、FPの専門的な見地からバシバシ質問を繰り出してきます。

もちろん、受験者は緊張してしまい、普段のようには話せないでしょう。試験官もそのことは織り込み済みです。しかしその限度を超え、あがりすぎて必要なことが何も答えられないようだと、不合格になる可能性が高いでしょう。

特徴(2)人の話を聞かない

試験官は、意外と優しいです。鋭い質問を繰り出してきますが、こちらが答えに詰まるようだと、さりげなくヒントを出してくれます。そのヒントに気づくことができれば、答えが見つかるようになっています。ヒントを聞き取れなければ、せっかくの助け舟に乗れません。解決の糸口が提示されていても、気づくことができなければ、それをつかむことはできないのです。

試験官が優しいのは、FP1級実技試験の受験資格を得たあなたは、十分な知識があるものと認めてくれているからです。面接官を信頼しましょう。そして、答えに詰まったとき、試験官が何か言ったら、それはヒントだと理解し、活用しましょう。決して「引っ掛けようとしているのだな」などと斜に見てはいけません。

特徴(3)試験対策を全くしない

これは論外ですが、試験対策を全くしなければ、いかに高い合格率の試験とはいえ、落ちる可能性は高いです。仕事で忙しくて実技試験対策にかける時間がなかったのか、合格率が高い試験なのだから勉強しなくても大丈夫だろうと高をくくっているのか、あるいはそのほかの理由のせいなのかは分かりませんが、何も勉強しないのはいけません。

FP1級の学科試験をパスしたときは、何でも完璧になったと考えてしまいがちですが、頭だけで覚えた知識は意外に早く頭から抜けてしまうものです。不動産と相続・事業継承を中心に学科試験のテキストを見直し、実務試験対策のテキストや問題集、過去問での勉強はしておくべきです。 繰り返しになりますが、FP1級実技試験の合格率が高いのは、試験が簡単だからではなく、受験者が高いレベルを維持できているのがその理由だということを忘れないでください。

特徴(4)運が悪かった

きちんと対策を取り、万全を期して臨んだとしても、落ちることはあります。それにはもしかしたら、運が関係しているのかもしれません。何事にも運、不運はあります。 しかし、実技試験の受験資格を得られたということは、FPとしての最も高い知識水準に達しているということに間違いありません。次回チャレンジすれば、きっと結果は違ってくるでしょう。

おすすめテキストは?

ウサギと本

きんざいで実技試験を受ける場合と、日本FP協会で受ける場合とで、おすすめのテキストは異なります。

きんざいで受けるのなら、きんざいファイナンシャル・プランナーズ・センターの「FP技能検定1級実技(資産相談業務)対策問題集」がおすすめです。きんざいの出している問題集なので、実際の出題と傾向が似ているため、とても参考になります。

日本FP協会で受けるのなら、「1級FP技能検定 実技試験(資産設計提案業務)精選過去問題集」が良いでしょう。こちらは日本FP協会の実技試験に特化した内容となっています。

いずれも適宜改定されているので、最新のものを選びましょう。きんざい、日本FP協会共に、出題傾向は例年決まっています。それぞれの問題集を解いていけば、自然と傾向がつかめて、答えが浮かぶようになります。何度も繰り返し解きましょう。

過去問を見てみよう

過去問は過去に実際に試験で出題された問題ですから、ぜひ活用したいところです。特にFP1級の実技試験は出題傾向が例年、似ています。過去問に慣れておくことがそのまま本番対策になります。

ちなみにFP3級も例年、出題傾向が似ています。FPで最も簡単な3級と、最も難しい1級の性質が同じというのは興味深いです。

メンタルマネジメントで対策

きんざい対策にはメンタル強化も

きんざいで実技試験を受ける場合は、面接で行われます。そのため、テキスト、過去問などの勉強に加えて、本番の緊張に負けないよう、メンタル強化の訓練をしておくと良いでしょう。

メンタル強化の訓練とはいっても、難しく考える必要はありません。たとえば、試験前に深呼吸をしてみる、好きな音楽を聴くなどして、意識的に心と体をリラックス状態に持って行くこともできます。深呼吸をすると、副交感神経が刺激され、血管が広がり、リラックスできることが知られています。音楽を聴くと、セロトニンやエンドルフィンなど、リラックスのもとになるホルモンが分泌されます。

自分なりのリラックス法を見つけよう

緊張しているときに深呼吸をすると良い、音楽を聴くと良いと言われても当たり前すぎてやる気が出ないかもしれませんが、これらの効果は科学的に立証されているので、試してみる価値はあります。また科学的に立証されていると思ってやると、効果を感じやすくなります。これをプラセボ効果と言います。ぜひ両面から試してみてください。

いずれにしても、何か自分なりのリラックス法を見つけておくと、本番で思わぬ効果を発揮するとともに気分転換にもなります。勉強の合間に、自分がどんなことでリラックスできるのか、考えてみてください。

まとめ

FP1級の実技試験は仕組みが複雑なので、勉強を始める前に理解しておくと、そのあとの勉強がスムーズになります。きんざいと日本FP協会のどちらで実技試験を受けるのかは、FPの試験全てで迷うところですが、1級は面談か筆記かの二択になるので、より悩みも大きいでしょう。受験者数が多いのは、意外にもきんざいのほうです。どちらを選ぶにしても、万全の状態で臨みたいですね。

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