行政書士が行う補助金・助成金申請業務とは?
更新日:2020年1月28日
「補助金」とは、経済や地域の活性化等を目的とした資金であり、「助成金」とは、雇用や労働環境の改善等を目的とした資金であります。どちらも基本的には返済不要のお金であり、様々な事業者向けに国や地方公共団体等から資金を提供するものという点で共通しています。
行政書士が行う補助金・助成金申請業務
では、行政書士が取り扱う補助金・助成金の種類にはどのようなものがあり、どのような手続きで行われるのでしょうか?申請から受給までの流れと具体的な種類について紹介していきたいと思います。
補助金・助成金申請から受給までの流れ
(1)申請要件の確認
申請要件を満たしているか依頼者と確認していきます。交付を受けたい補助金・助成金の募集要項を調べて、申請可能か否かを判断していきます。
(2)申請書提出
申請要件を満たしていることが確認できましたら、事業計画等を具体的かつ明確に申請書に記載していきます。
事業計画につきましては、実現可能なものにして、依頼者の会社の経営状況や目標をわかりやすく記載していくことがポイントです。そして、必要な添付書類等を添えて申請書を提出することになります。
(3)審査
補助金・助成金の種類、応募状況によっては、2次審査として面接がある場合もあります。審査には約3か月程度の期間を要する場合があります。
(4)補助事業の実施
採択が決定された場合、事業計画に従って補助事業を実施していきます。支出の根拠となる見積書や領収書等はきちんと整理しておきます。事業計画に大きな変更がある場合には、変更申請書を提出する必要がある場合があります。
(5)報告書類を作成・提出
報告書類を作成して、提出します。この期間は短く、約2週間程度の期間しかない場合が多いようです。
(6)補助金・助成金の交付
補助金・助成金の交付を受けることができます。ただし、交付後も、一定期間、定期的に事業の状況報告をする必要があります。
行政書士が取り扱う主な補助金・助成金の具体例
行政書士が取り扱う補助金・助成金を具体的にいくつか紹介していきます。
➀革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金(ものづくり補助金)
この助成金の概要は、「国際的な経済社会情勢の変化に対応し、足腰の強い経済に対応するため、経営力向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセス改善を行う中小企業・小規模事業者の設備投資等の一部を補助する」というものです。
対象者は認定支援機関の全面バックアップを得た事業を行う中小企業と小規模事業者です。
要件は主に2つあります。
|
補助金上限 | 補助率 | |
---|---|---|
第4次産業革命型 | 3,000万円 | 3分の2以内 |
一般型 | 1,000万円 | 3分の2以内 |
小規模型 | 設備投資のみ 500万円 試作開発等 500万円 |
3分の2以内 3分の2以内 |
参考:ものづくり補助金は行政書士に相談できる?注意点も紹介|補助金プラス
②小規模事業者持続化補助金
この補助金の概要は、「事業の継続的な経営・発展・維持」を目的とし、新たな販路の開拓に対して経営計画を作成し、その計画の取り組みの経費の一部を補助するものです。
対象者は、中小企業と小規模事業者です。具体的には、卸売業・小売業・サービス業(宿泊業・娯楽業以外)は、常時使用する従業員の数が5人以下であること、また、サービス業のうち宿泊業・娯楽業・製造業その他は、常時使用する従業員の数が20人以下であることです。
補助金上限 | 補助率 | |
---|---|---|
原則 | 50万円 | 3分の2 |
共同事業の場合 | 500万円 |
③地方創造的起業補助金(創業補助金)
この補助金の概要は、新たな需要や雇用の創出等を促して、日本経済を活性化させることを目的としており、起業時に必要な経費の一部を補助するものです。対象者は起業・創業や第二創業を行う個人、中小企業と小規模事業者です。
要件は、以下の3つの全てを満たす必要があります。
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補助金上限 | 補助率 | |
---|---|---|
地域需要創造型起業・創業 | 200万円 | 3分の2 |
第二創業 | 500万円 | 3分の2 |
海外需要獲得型起業・創業 | 700万円 | 3分の2 |
その他の補助金、助成金
- 経営改善計画策定事業補助金
- 創造技術研究開発費補助金
- 地域申請コンソーシアム研究開発事業補助金
- 産業技術実用化開発事業費助成金
- 環境活動補助金
- 高齢者住宅改修費用助成金
- クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金
様々な補助金・助成金の種類があります。
行政書士による補助金・助成金申請業務の注意点
➀公募期間の確認
補助金や助成金は募集期間というものがあり、経済産業省系のものでは、募集期間が1か月程度と短いものが多いです。そのため、公募期間をしっかりと確認して、期間を過ぎないよう申請する必要があります。
②事業計画をしっかりと
補助金や助成金申請においては、特に事業計画が大切となります。統計データをとり、多方面から検証し、事業がどのように進んでいくのかということを、理由を交えながら細かく書く必要があります。事業計画については、行政書士が綿密に依頼者と相談してアドバイスを行っていきましょう。
③補助金は後払いが原則
補助金は後払いが原則であるため、今すぐ欲しいと思ってもすぐに受給できるわけではありません。公募の開始から補助金が実際に交付されるまでに約1年半という期間がかかる場合もあり、行政書士は、その点について依頼者から依頼を受ける段階で理解を得なければなりません。
④行政書士は厚生労働省系の助成金は取り扱うことができない
行政書士はほとんどの補助金・助成金申請を取り扱うことができるのですが、厚生労働省系の助成金は社会保険労務士が取り扱うもので、行政書士は取り扱うことができません。
依頼者の方は知らずに行政書士にお願いするケースもあるかと思いますので、この点については注意が必要です。以下に、厚生労働省系の助成金の種類についていくつか記載しておきます。
- 雇用調整助成金
- 労働移動支援助成金
- 特定求職者雇用開発助成金
- 障害者トライアル雇用奨励金
- 高年齢者雇用安定助成金
- 精神障害者等雇用安定奨励金
- キャリアアップ助成金 等
行政書士による補助金・助成金申請業務の費用
行政書士による補助金・助成金申請業務の報酬の相場については、申請する補助金・助成金の種類や申請を行う事業主によっても変わりますが、約100,000円程度と言われています。
多くの行政書士事務所では、「着手金」という形でまず報酬を得て、補助金・助成金の交付を受けられた場合は、その額の数%~10%程度を成功報酬という形で受け取るようです。
現在では、補助金だけでも年間3,000種類出ており、経済産業省系のもので約3,000億円の予算が組まれており、補助金や助成金交付を受けやすくなっている状況であると言えます。しかしながら、補助金・助成金申請業務を取り扱っている行政書士はまだまだ少ないため、専門分野とすれば稼げる業務であると思います。
まとめ
行政書士による補助金・助成金申請業務について紹介していきましたが、補助金や助成金は最初に述べたとおり、基本的には返済不要であります。時代に応じて様々な補助金や助成金も出てきており、そのような補助金や助成金にはより多くの事業者が興味を持ってきています。
上述したとおり、補助金・助成金申請業務を取り扱う行政書士はまだまだ少なく、この分野から新規の依頼者を獲得することで仕事が広がっていく可能性もあります。
経営者のよりよい経営を目指す手助けをし、国と人、地域と人、人と人等をつなぐサポートができる補助金・助成金申請業務も魅力的だと思います。
北川えり子(きたがわ えりこ)
学びの楽しさをシェアしたい
【出身】東京都
【経歴】拓殖大学外国語学部卒。行政書士、海事代理士、宅建等の資格を保有。
【趣味】旅行、ドライブ
【座右の銘】雲外蒼天
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