行政事件訴訟法の基礎知識!主観訴訟とは?

更新日:2021年7月6日

訴状

行政事件訴訟法は、行政機関による違法な行政行為を裁判で争い、国民の権利利益を保護するための法律です。行政事件訴訟法は、民事訴訟法を基礎としながらも、行政事件が民事事件と異なる特色を持つことから、民事訴訟法の特別法とされています。

民事訴訟と行政訴訟の違いは、民事訴訟は、基本的に私人間の紛争ですが、行政訴訟は、行政と私人との間の紛争であるということです。

行政事件訴訟法は、行政行為の適法・違法を判断対象とするものであり、原則、当・不当は対象とはなりません。ただし、行政による裁量処分の逸脱又は濫用が大きく、違法性を生じるような場合には、例外的に判断の対象となります。

行政事件訴訟の種類は、「主観訴訟」と「客観訴訟」に分けられます。

目次

主観訴訟とは?

「主観訴訟」とは、国民の権利利益の保護を目的とする訴訟のことをいいます。主観訴訟は、さらに「抗告訴訟」と「当事者訴訟」に分けられます。

抗告訴訟とは?

「抗告訴訟」とは、行政機関による公権力の行使に対して不服がある場合に提起する訴訟のことをいいます。行政と国民が非対等な立場で争うものです。

抗告訴訟には、「取消訴訟」を中心として、「無効等確認の訴え」、「不作為の違法確認の訴え」、「義務付けの訴え」、「差止めの訴え」という5種類があります。

【行政事件訴訟法】

第3条 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。

取消訴訟

「取消訴訟」とは、行政機関による違法な行政処分の取消しを求める訴訟のことをいい、「処分の取消しの訴え」と「裁決の取消しの訴え」に分類されます。

処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為の取消しを求める訴訟です。

裁決の取消しの訴え」とは、審査請求その他の不服申立てに対する行政庁の裁決や決定等の行為の取消しを求める訴訟です。

具体的には、Aさんが行政庁から①営業停止処分(原処分)を受け、これを不服として取消訴訟を提起しましたが、請求は認められないとして②棄却裁決がなされた場合

①営業停止処分(原処分)の取消しを求める場合は処分の取消しの訴え
②棄却裁決の取消しを求める場合は裁決の取消しの訴え
を提起することになります。

なお、行政事件訴訟法第10条2項の規定により、処分の取消しの訴えとその処分についての裁決の取消しの訴えの両方を提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えでは、処分の違法を理由として取消しを求めることはできません。

すなわち、原処分の違法性を主張する場合には、処分の取消しの訴えを提起し、裁決の取消しの訴えにおいては、裁決固有の瑕疵のみの主張が可能と考えられています。

上記の例では、Aさんが、②裁決の取消しの訴えを提起する場合には、そこでは、棄却裁決の違法な点のみを主張することになり、①営業停止処分(原処分)の違法な点を主張することはできないということになります。

取消訴訟の要件には、①処分性、②原告適格、③被告適格、④訴えの利益、⑤出訴期間、⑥管轄があります。

第3条2項 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

3項 この法律において「裁決の取消しの訴え」とは、審査請求その他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決、決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

第10条2項 処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができない。

無効等確認の訴え

「無効等確認の訴え」とは、行政庁の処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟のことをいいます。

取消訴訟と異なり、出訴期間の制限がありません。

行政行為には、「公定力」という効力があります。これは、たとえ違法な行政行為であっても、重大かつ明白な違法である場合を除いては、権限ある行政機関や裁判所によって適法に取り消されるまでは、有効として扱われるという効力のことです。

重大かつ明白な違法がある場合、その行政行為は無効です。つまり、ある処分が無効であれば、公定力も認められません。

したがって、無効な行政処分を受けた国民は、その処分が無効であることを前提として自己の権利利益を主張すれば良いのであって、訴訟提起をする必要性はありません。

このような点から、無効等確認の訴えは、法律が定める特別の場合にのみ提起することが可能とされています(補充性の原則)。

無効等確認訴訟には、①予防的無効確認訴訟、②補充的無効確認訴訟の2種類があります。

①予防的無効確認訴訟

原告が、当該処分又は裁決に続く処分により、損害を受けるおそれがある場合に、当該処分又は裁決に続く処分の無効を確認する場合に提起する訴訟のことをいいます。

例えば、行政庁からAさんに対する建物の除去命令が無効であるにもかかわらず、強制執行がされそうな場合が挙げられます。

②補充的無効確認訴訟

処分又は裁決の効力等の確認を求めるにつき法律上の利益がある場合で、当該処分もしくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによっては目的達成が不可能な場合に提起する訴訟のことをいいます。

「現在の法律関係に関する訴え」とは、後で紹介する「当事者訴訟」と「民事訴訟」のことです。

例えば、ある地域で、Aさんが経営する既存の公衆浴場が存在するにもかかわらず、その距離制限内にBさんが新たに公衆浴場を設置しようとして、その許可がなされた場合に、Aさんには、新たに公衆浴場が設置されることによってこれまで守られてきた営業上の利益が害されるおそれがある等、処分の無効確認を求める法律上の利益はあるものの、当事者訴訟や民事訴訟によってはその利益を主張することが難しいような場合が挙げられます。

また、判例によると、現在の法律関係に関する訴えによっては目的達成が不可能な場合について、「当該処分について生ずる法律関係に関し、処分の無効を前提とする当事者訴訟、民事訴訟ではその処分のため被っている不利益を排除することができない場合はもとより、当該処分の無効を前提とする当事者訴訟又は民事訴訟と比較し、当該処分の無効確認を求める訴えの方がより直截的で適切な訴訟形態であるとみるべき場合も含まれる」と判断しています(最判平成4年9月22日)。

第3条4項 この法律において「無効等確認の訴え」とは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟をいう。

第36条 無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り、提起することができる。

不作為の違法確認の訴え

「不作為の違法確認の訴え」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにもかかわらず、これをしない場合について違法の確認を求める訴訟のことをいいます。

例えば、Aさんが保健所長に対して飲食店の営業許可申請をしましたが、数カ月経過しても許可、不許可の応答がない場合に、応答がないことの違法性を確認するために提起する場合です。

不作為の違法確認の訴えの要件は、現実に「処分又は裁決についての申請をした者」です。出訴期間の制限はありません。訴えの利益については、もし、訴訟継続中に何らかの処分がなされた場合には、消滅することになります。

その他、被告適格や管轄については取消訴訟の規定と同様です。

なお、不作為の違法が認められた場合には、判決の「拘束力」によって、行政庁は、判決の趣旨に従って、申請に対する何らかの処分又は裁決をしなければなりません。

ただし、必ずしも申請者が要望する処分又は裁決が下されるとは限りません。

第3条5項 この法律において「不作為の違法確認の訴え」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。

第37条 不作為の違法確認の訴えは、処分又は裁決についての申請をした者に限り、提起することができる。

義務付けの訴え

「義務付けの訴え」とは、行政庁に一定の処分又は裁決をするよう求める訴訟のことをいいます。「義務付けの訴え」には、①非申請型義務付け訴訟(1号義務付け訴訟)と②申請型義務付け訴訟(2号義務付け訴訟)の2種類に分類されます。

第3条6項 この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。

一 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く。)。

二 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。

①非申請型義務付け訴訟(1号義務付け訴訟)

行政庁が一定の処分をすべきにもかかわらず、これがなされない場合に提起できる訴訟です。

例えば、Aさんの建物の隣にあるBさんの建物が違法建築物であり、放っておくとAさんに被害が及ぶおそれがあるため、AさんはBさんの建物を除去してもらいたいと考えていますが、行政庁から何ら対応がない場合に提起し、Aさんが勝訴すれば、行政庁からBさんに建物除去命令を出すようにしてもらうことが可能です。

非申請型義務付け訴訟の要件は、以下2つです。

(1) 一定の処分がなされないことにより重大な損害が生じるおそれがあり、かつ、その損害を回避する適当な方法が他にないこと

(2) 原告が法律上の利益を有する者であること


これらの要件を充足したうえで、さらに、以下の実体的要件の2つのうち、いずれかを満たすと、認容判決となり、裁判所から行政庁に処分の義務付けを命じることになります。

(1) 行政庁が、求められている処分をすべきことが法令に照らして明白であること

(2) 行政庁が、当該処分をしないことが、裁量権の逸脱又は濫用に該当していること

第37条の2 第三条第六項第一号に掲げる場合において、義務付けの訴えは、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる。

2項 裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。

3項 第一項の義務付けの訴えは、行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。

4項 前項に規定する法律上の利益の有無の判断については、第九条第二項の規定を準用する。

5項 義務付けの訴えが第一項及び第三項に規定する要件に該当する場合において、その義務付けの訴えに係る処分につき、行政庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、裁判所は、行政庁がその処分をすべき旨を命ずる判決をする。

②申請型義務付け訴訟(2号義務付け訴訟)

国民からの法令上の申請に基づいて行政庁が一定の処分又は裁決をすべきであるにもかかわらずこれがなされない場合に提起できる訴訟です。

例えば、Aさんが生活保護を受けたいと考え、申請をしましたが、許可とも不許可とも反応がない場合に提起し、Aさんが勝訴すれば、許可を得ることが可能です。

申請型義務付け訴訟の要件は、以下の3つです。

(1) 行政庁が法令に基づく申請又は審査請求に対して相当の期間を経過しても処分又は裁決がなされないこと

(2) 行政庁が申請を拒否した場合、その拒否処分又は裁決が取消、無効、不存在というような瑕疵があるものであること

(3) 原告が法令に基づく申請又は審査請求をなした者であること


また、手続的要件として、必ず、申請に対する不作為の違法確認訴訟、申請を拒否した処分の取消訴訟又は無効確認訴訟を併合提起しなければなりません。

これらの要件を充足したうえで、さらに、以下の実体的要件の2つのうち、いずれかを満たすと、認容判決となり、裁判所から行政庁に処分の義務付けを命じることになります。

(1) 行政庁が、一定の処分又は裁決をすべきことが法令上明白であること

(2) 行政庁が、当該処分をしないことが裁量権の逸脱又は濫用に該当すること


ちなみに、不作為の違法確認の訴えは、行政庁の不作為の違法を確認するだけであるため、申請者が申請許可がほしいと思った場合でも、許可がもらえるわけではありません。

一方で、申請型義務付け訴訟では、行政庁の不作為について、許可するよう義務付けることが可能であるため、義務付け訴訟の方が、国民側の救済として妥当な手段であり、不作為の違法確認の訴えは不必要とも考えられます。

しかし、三権分立の観点から、裁判所が行政機関に対して行政行為を強制することはあまり良しとされていないため、両方の訴訟類型が存在していると考えられています。

第37条の3 第三条第六項第二号に掲げる場合において、義務付けの訴えは、次の各号に掲げる要件のいずれかに該当するときに限り、提起することができる。

一 当該法令に基づく申請又は審査請求に対し相当の期間内に何らの処分又は裁決がされないこと。

二 当該法令に基づく申請又は審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決がされた場合において、当該処分又は裁決が取り消されるべきものであり、又は無効若しくは不存在であること。

2項 前項の義務付けの訴えは、同項各号に規定する法令に基づく申請又は審査請求をした者に限り、提起することができる。

3項 第一項の義務付けの訴えを提起するときは、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める訴えをその義務付けの訴えに併合して提起しなければならない。この場合において、当該各号に定める訴えに係る訴訟の管轄について他の法律に特別の定めがあるときは、当該義務付けの訴えに係る訴訟の管轄は、第三十八条第一項において準用する第十二条の規定にかかわらず、その定めに従う。

一 第一項第一号に掲げる要件に該当する場合 同号に規定する処分又は裁決に係る不作為の違法確認の訴え

二 第一項第二号に掲げる要件に該当する場合 同号に規定する処分又は裁決に係る取消訴訟又は無効等確認の訴え

4項 前項の規定により併合して提起された義務付けの訴え及び同項各号に定める訴えに係る弁論及び裁判は、分離しないでしなければならない。

5項 義務付けの訴えが第一項から第三項までに規定する要件に該当する場合において、同項各号に定める訴えに係る請求に理由があると認められ、かつ、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決につき、行政庁がその処分若しくは裁決をすべきであることがその処分若しくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分若しくは裁決をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、裁判所は、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決をすべき旨を命ずる判決をする。

差止めの訴え

「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきではないにもかかわらずこれがなされようとしている場合に提起する訴訟のことをいいます。

例えば、Aさんが所有する建物について、行政庁によって違法建築物として行政指導がなされた後、除去命令が出されそうな場合に提起します。
Aさんが勝訴すれば、除去命令を出さないようにすることが可能です。

差止めの訴えの要件は、以下の2つです。

(1) 一定の処分又は裁決がなされることにより、重大な損害が生じるおそれがあり、かつ、その損害を回避する適当な方法が他にないこと

(2) 原告が法律上の利益を有する者であること


これらの要件を充足したうえで、さらに、以下の実体的要件の2つのうち、いずれかを満たすと、認容判決となり、裁判所から行政庁に対して処分又は裁決の差止めを命じることになります。

(1) 行政庁が、一定の処分又は裁決をすべきでないことが法令上明白であること

(2) 行政庁が、当該処分をすることが裁量権の逸脱又は濫用に該当していること

第3条7項 この法律において「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。

第37条の4 差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる。ただし、その損害を避けるため他に適当な方法があるときは、この限りでない。

2項 裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分又は裁決の内容及び性質をも勘案するものとする。

3項 差止めの訴えは、行政庁が一定の処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。

5項 差止めの訴えが第一項及び第三項に規定する要件に該当する場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決につき、行政庁がその処分若しくは裁決をすべきでないことがその処分若しくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分若しくは裁決をすることがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、裁判所は、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずる判決をする。

無名抗告訴訟とは?

無名抗告訴訟」とは、上述した「取消訴訟」、「無効等確認の訴え」、「不作為の違法確認の訴え」、「義務付けの訴え」、「差止めの訴え」といった行政事件訴訟法に「抗告訴訟」として規定されている訴訟以外の抗告訴訟のことをいいます。

法定されている抗告訴訟は「法定抗告訴訟」と呼ばれ、無名抗告訴訟と対比する用語として使われます。

かつては、義務付けの訴えや差止めの訴えは無名抗告訴訟に含まれるとされていましたが、2004年の行政事件訴訟法の改正により、法定抗告訴訟となったことから、現在では、無名抗告訴訟とされる訴訟類型はほとんどないとされています。

当事者訴訟とは?

「当事者訴訟」とは、当事者同士が対等な立場で権利関係を争う場合に提起する訴訟のことをいいます。

当事者訴訟は「権利訴訟」であるため、民事訴訟と似ていますが、公法上の法律関係が審理対象となることから、行政事件訴訟法の規定が適用されます。

当事者訴訟には、「形式的当事者訴訟」と「実質的当事者訴訟」の2種類があります。

第4条 この法律において「当事者訴訟」とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。

形式的当事者訴訟

「形式的当事者訴訟」とは、当事者の法律関係を確認し、又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で、法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とする訴訟のことをいいます。

例えば、土地収用法に基づく損失補償について、起業者が土地を収用する場合、土地所有者に補償額を支払いますが、その金額は収用委員会が決定します。

この収用委員会による補償額の決定は、行政処分とされているため、この補償額について土地所有者が不服とした場合に、本来は収用委員会を被告として抗告訴訟を提起すべきです。

しかしながら、法令によって、被告は起業者とされています。収用委員会は決定をするのみで、実際に補償額を支払うのは起業者であるため、起業者と土地所有者の当事者間で争うようにされています。

実質的当事者訴訟

「実質的当事者訴訟」とは、公法上の法律関係に関する訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟のことをいいます。

例えば、公務員の俸給支払請求訴訟について、国家公務員が国からの俸給額に不服がある場合は、民間企業の社員が会社からの給与額に不服がある場合と同様の関係といえます。

つまり、内容的には民事訴訟ですが、扱っている対象が公法上の法律関係であるため、行政事件訴訟法の規定が適用されています。

その他、実質的当事者訴訟 の例として、憲法の規定に基づく損失補償請求訴訟、公務員の地位確認訴訟、国に対して日本国籍を有することの確認を求める訴え等が挙げられます。

まとめ

行政事件訴訟には、大きく分けて「主観訴訟」と「客観訴訟」があり、主観訴訟には「抗告訴訟」と「当事者訴訟」があります。

抗告訴訟は、行政側と国民側が非対等な立場で争う訴訟であり、さらに、①取消訴訟、②無効等確認訴訟、③不作為の違法確認訴訟、④義務付け訴訟、⑤差止め訴訟に分けられ、これら以外の抗告訴訟の類型に「無名抗告訴訟」というものもあります。

当事者訴訟は、行政側と国民側が対等な立場で争う訴訟であり、さらに①形式的当事者訴訟と②実質的当事者訴訟に分けられます。

この記事の監修者は
福澤繁樹(ふくざわ しげき)

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【出身】千葉県
【経歴】明治大学法学部卒。行政書士、宅地建物取引士、マンション管理士。行政書士みなと合同事務所にて開業・日々業務を行っている。千葉県行政書士会所属。
【趣味】料理を作り、美味しいお酒と一緒に食べること
【受験歴】2000年の1回目受験で合格
【講師歴】2001年7月1日からフォーサイトで講師をスタート
【刊行書籍】「行政書士に3ヶ月で合格できる本」(ダイヤモンド社)
【座右の銘】見る前に跳べ
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