学問の自由における大学の自治とは?判例も紹介します!

更新日:2021年5月10日

地球儀

学問の自由は、憲法第23条に規定があります。学問の自由は、基本的人権の中の精神的自由権の1つとされています。

【憲法】

第二十三条 学問の自由は、これを保障する。

目次

学問の自由とは?

学問の自由とは、学問活動において他者から干渉や制限を受けない自由です。日本においては、学問=心理研究が社会生活において有用であるにもかかわらず、明治憲法下では、国家権力により学問の自由が侵害されていました。

そのような歴史的背景から、日本国憲法では、学問の自由を規定し、国民に保障しました。

ちなみに、イギリスやアメリカ、フランス等では、学問の自由に関する条項が存在しません。これは、表現の自由が保障される結果として当然学問の自由も保障されると考えられているからです。また、学問の自由が初めて憲法上に規定され、保障されたのは、1849年のドイツにおけるフランクフルト憲法でした。

学問の自由の内容は、①学問研究の自由、②研究発表の自由、③教授の自由、④大学の自治です。

①学問研究の自由

何を、どのような方法で研究するかは研究者が自由に決定できるということです。

ただし、近年では、遺伝子操作やクローン技術等の研究は、社会的・倫理的にマイナスの影響を及ぼすおそれがあることから、それぞれ「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」、「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」によって規制を受ける場合があります。

②研究発表の自由

研究成果は発表することにより価値を持つと考えられており、研究発表の自由も当然に学問の自由の内容に含まれると解されています。

③教授の自由

大学教授の教える自由のことをいいます。講義内容、方法に関する自由です。

④大学の自治

学問は、主に大学で発展してきたため、大学における学問研究の自主性を確保するために大学の自治が認められ、学問の自由の内容とされています(通説)。

大学の自治とは?

「大学の自治」とは、大学内の問題について、外部から干渉を受けずに、大学構成員により意思決定を行い、管理、運営することをいいます。

日本国憲法では、大学の自治に関する明文規定はありませんが、上述のとおり、学問の自由と大学の自治は密接不可分の関係があるとされ、学問の自由の一内容と考えられています。

大学の自治の法的性格は、学問の自由そのものを保障するための制度的保障であると考えられています。

大学の自治の内容

大学の自治の内容には、具体的に、①大学内の人事の自治と②施設、学生の管理の自治が含まれると考えられています。

人事の自治

大学における学長や教授、その他研究者の人事は、大学の自主的判断に基づいて決定されなければならないというものです。より細かく説明すると、学長、学部長等内部管理者の選任権や、教員の人事に関する推薦・選任・免職権等です。

1962年に政治問題となった大学管理制度の改革は、文部大臣による国立大学の学長の選任、監督権を強化するためのものでしたが、既に確立されていた大学の自治を否定するとして大学側から批判を受けました。

施設、学生の管理の自治

大学の施設や学生の管理も大学の自主的判断に基づいて決定されなければならないというものです。学則等内部規程の制定権、教育課程やカリキュラムの編成権、学位取得資格の認定権と授与権等が挙げられます。

ここで問題となるのが警察権との関係です。

かつての日本では、大学紛争が激しく、大学の運営に関する臨時措置法等が制定されました。また、現代の日本社会においても、大学は治外法権を持たず、令状に基づく学内捜査を拒否することもできないため、大学の自治を理由に大学への警察の立ち入りを拒否することができません。

後に紹介する「東大ポポロ事件」の判例においても、施設、学生の管理の自治と警察権について判断されました。

大学の自治の主体

大学の自治の主体は、まず、教授その他研究者です。

次に、教員以外の者、特に学生が大学の自治の主体となるかについては、意見が対立しています。伝統的な考え方によると、学生は公共のために用いる施設の利用者として考えられていました(営造物利用者説)。

「東大ポポロ事件」の判例は、この立場に立っています。

しかしながら、その後、学生も大学における不可欠の構成員であること等を理由に大学の自治の主体であるべきという議論が強くなっていきましたが、学生は教授やその他研究者とは地位や役割が異なるため、まだまだ意見が分かれています。

大学の自治に関する重要判例「東大ポポロ事件」(最判昭和38年5月22日)

大学の自治に関する重要判例としては、先程から名前を出している「東大ポポロ事件」が挙げられます。以下、詳しく解説します。

【事案】

東京大学公認の学生団体「ポポロ劇団」は、大学から許可を得て教室内で、松川事件を素材とする演劇発表会を行いました。

ところが、その会場内に私服警察官が潜入していたことがわかり、学生らがその警察官を拘束し、暴行を加えた上、謝罪文を書かせました。この行為が違法として起訴されました。

【争点】

① 憲法上、教授の自由が保障されるか?

② 大学の自治の内容をどのように解釈するか?

③ 大学における学生の学問の自由の性格はどのようなものか?

④ 実社会の政治的社会的活動にあたる行為は憲法第23条によって保障されるか?

【理由および結論】

① 教育や教授の自由は、学問の自由と密接な関係を持つが、必ずしもこれに含まれるわけではない。しかし、大学については、憲法の趣旨と学校教育法により、教授その他の研究者が専門の研究結果を教授する自由が保障される。

② 大学の自治は、特に大学教授やその他研究者の人事について認められ、これらについて、ある程度、大学に自主的な秩序維持の権能が認められている。

③ 憲法第23条は、学生も一般国民と同様に享有するが、大学の学生として一般国民以上に学問の自由を享有し、施設を利用できるのは、大学教授やその他研究者の持つ特別な学問の自由と自治の効果としてである。

④ 大学における学生の集会も、実社会の政治的社会的行為をする場合には、大学の有する特別な学問の自由と自治は享有しない。

結論としては、本件集会は、真に学問的な研究と発表のためのものではなく、実社会の政治的社会的活動であり、大学の学問の自由と自治は享有しないことから、集会に警察官が立ち入ったことは大学における学問の自由と自治を侵害するものではないと判断されました。

まとめ

大学の自治についてご理解いただけましたでしょうか?

行政書士試験においては、次の点を中心に覚えていただければと思います。

  • 日本国憲法は第23条で学問の自由を保障しており、その内容には学問研究の自由、研究発表の自由、教授の自由の他、制度的保障として大学の自治が含まれていること
  • 大学の自治の内容には、主に人事の自治と施設、学生の管理の自治が挙げられること
  • 大学の自治の主体に学生が含まれるかについて、「東大ポポロ事件」の判例では含まれないものと判断されましたが、議論があるということ
この記事の監修者は
福澤繁樹(ふくざわ しげき)

分かりやすくて勉強する気になる講義を目指したい!
【出身】千葉県
【経歴】明治大学法学部卒。行政書士、宅地建物取引士、マンション管理士。行政書士みなと合同事務所にて開業・日々業務を行っている。千葉県行政書士会所属。
【趣味】料理を作り、美味しいお酒と一緒に食べること
【受験歴】2000年の1回目受験で合格
【講師歴】2001年7月1日からフォーサイトで講師をスタート
【刊行書籍】「行政書士に3ヶ月で合格できる本」(ダイヤモンド社)
【座右の銘】見る前に跳べ
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