行政書士が行うクーリングオフ代行業務とは?

行政書士が行うクーリングオフ代行業務とは?

行政書士による代行業務は、行政書士法に基づいた法定業務です。

行政書士法第1条の2に、「行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする」という規定があります。

クーリングオフ代行業務についても、この規定に基づいて行うことになります。

目次

クーリングオフ制度とは?

「クーリングオフ」とは、申込又は契約後に法律で定められた書面を受け取ってから一定期間消費者が申込撤回又は契約解除をすることができる制度のことです。

消費者が突然の訪問販売で、意思がはっきりしないまま高額な商品等を購入してしまった場合、冷静になって考える機会を与える目的で導入された制度です。

例えば、訪問販売の場合には8日間、連鎖取引販売の場合には、20日間のクーリングオフ期間が定められています。クーリングオフによる契約解除には理由は不要で、無条件で解除が可能です。

ただし、書面でする必要があり、基本的に電話ではクーリングオフをすることができません。

クーリングオフ可能な取引

クーリングオフに関しては、特定商取引法に定められています。特定商取引法は、事業者による違法又は悪質な勧誘行為や取引行為等を防止し、消費者の利益を守るための法律です。

特定商取引法の対象となる取引類型は以下の6つがあります。つまり、以下の場合にはクーリングオフができます。

1. 訪問販売・店舗外取引
事業者が消費者の自宅を訪ねて商品や権利の販売又は役務の提供を行う取引のことです。キャッチセールスやアポイントメントセールスも含まれます。クーリングオフ期間は8日間です(特定商取引法第9条)。
2. 電話勧誘販売
事業者が消費者に電話をかけて勧誘を行い、申し込みを受ける取引のことです。クーリングオフ期間は8日間です(特定商取引法第24条)。
3. 連鎖販売取引
1人を販売員として勧誘して、さらにその人から次の販売員を勧誘させる形で、販売組織を連鎖的に拡大して商品の販売や役務の提供を行う取引のことです。いわゆるマルチ商法で、クーリングオフ期間は20日間です(特定商取引法第40条)。
4. 特定継続的役務提供
長期的、継続的な役務の提供をして、これに対する高額な対価を受ける取引のことです。クーリングオフ期間は8日間です(特定商取引法第48条)。
5. 業務提供誘引販売取引
在宅ワーク等と言って、消費者を勧誘し、仕事に必要であるとして商品等を売って金銭負担を負わせる取引のことです。クーリングオフ期間は20日間です(特定商取引法第58条)。
6. 訪問購入
事業者が消費者の自宅等を訪問して、物品の購入を行う取引のことです。クーリングオフ期間は8日間です(特定商取引法第58条の14)。

クーリングオフ対象外の取引

反対に、この6類型に当てはまらないデパートやスーパー等に行って買い物をする店頭販売においては、基本的にクーリングオフの対象になりません。

事業者が新聞や雑誌、インターネット等で公告し、消費者が郵便や電話等の通信手段により申し込みをする取引のことで、「電話勧誘販売」を除いたものである通信販売も基本的にはクーリングオフの対象にはなりませんが、自主的なクーリングオフ期間が設けられている場合もあります。

その他、次の場合等もクーリングオフの対象にはなりません。

  • 外国にいる者に対しての取引
  • 国、地方公共団体の行う取引
  • 事業者が従業員に対して行う取引
  • 健康食品や化粧品等指定消耗品の一部又は全部を消費した場合
  • 訪問販売や電話勧誘販売で3,000円未満の現金取引
  • エステティックサロンや教室等、特定継続的役務提供のうち、短期又は少額の契約

クーリングオフの効果

クーリングオフの具体的な効果としては、契約が無効となる他、支払い済みの代金や頭金、申込金等は全額返金されます。また、商品を受け取っている場合には、商品の引取・返送費用が事業者の負担になります。さらに、違約金や損害賠償金等を支払う必要もありません。

行政書士によるクーリングオフ代行手続きの流れ

次に、行政書士によるクーリングオフ代行手続きの流れについてですが、クーリングオフの期間が過ぎているか否かで手続きの流れが変わります。その2パターンの手続きについて詳しく紹介していきます。

クーリングオフ期間が過ぎていない場合

クーリングオフ期間が過ぎていない場合は、通知書を事業者へ送付します。通知書はハガキでも可能ですが、送付日をきちんと証明する必要があるため、行政書士の多くは配達証明付きの内容証明を使って送付します。

記載事項としては、主に、契約日、契約者、クーリングオフしたい商品名、既に金銭を支払っている場合には金額、根拠法令等です。通知書が事業者へ届く頃に、今後の対応について依頼者(消費者)に代わって確認します。

例えば、受け取った商品についての返送方法や既に支払った金銭の返金方法等についてです。

クーリングオフ期間が過ぎている場合

クーリングオフ期間を過ぎてしまっている場合は、まず、申込書や契約書の法的妥当性を検討します。そして、消費者センター等行政機関に問い合わせをして事業者の実態を把握します。場合によっては、関係行政機関に行政処分又は行政指導の申出書を提出します。

それと並行して、消費者契約法等に基づく取消権行使の通知書を内容証明にて事業者へ送付します。事業者が、取消権行使に応じる場合には、今後の対応について依頼者(消費者)に代わって確認します。

事業者が取消権行使に応じない場合には、訴訟や裁判外紛争解決手続きに移行することになります。その場合は、弁護士を紹介する等して対応していきます。

上記の他、クーリングオフ手続きを依頼者が自分で行ったものの、事業者からの返金手続きがなかなか行われない場合に、行政書士名義で再度書面を送ったり、返金請求をしたりする等、事後手続きのサポート業務をすることも可能です。

行政書士によるクーリングオフ代行業務の費用について

行政書士によるクーリングオフ代行業務の費用の相場は、約50,000円と言われています。

日本は高齢社会を迎え、お年寄りが悪質業者からの被害に合うケースも多くなっている他、インターネット等の発達により、簡単に様々な業者と消費者がやりとりできる環境になっており、若い消費者が契約トラブルに合うケースも少なくありません。

クーリングオフ代行業務においては、行政書士という専門家が内容証明を送付することで悪質業者に危機感や焦りを持たせることができる場合や、お互いの仲介役としてスムーズに話し合いを進めることができ、早期解決につながることから、依頼の多い業務の1つであるといえます。

まとめ

クーリングオフ制度について、また、行政書士が取り扱うクーリングオフ代行手続きの流れについてご理解いただけましたでしょうか。

最近は、国民生活センターや消費者庁に悪徳商法や契約トラブルに関する相談も増えていると言われています。年々手口も巧妙になってきており、資格商法や内職商法、マルチ商法など様々な悪徳商法により被害を受ける方が増えている現状において、消費者問題を専門とする行政書士の必要性は今後ますます高まってくるかと思います。

行政書士の業務の中には、このような悪質業者から消費者を守るための業務もあり、クーリングオフ代行業務に特化している行政書士も出てきています。

そういった意味でも、行政書士を目指している方や専門分野を決めかねている行政書士の方は、クーリングオフ代行業務を専門とした行政書士を目指していただくのも良いかと思います。

この記事の監修者は
福澤繁樹(ふくざわ しげき)

分かりやすくて勉強する気になる講義を目指したい!
【出身】千葉県
【経歴】明治大学法学部卒。行政書士、宅地建物取引士、マンション管理士。行政書士みなと合同事務所にて開業・日々業務を行っている。千葉県行政書士会所属。
【趣味】料理を作り、美味しいお酒と一緒に食べること
【受験歴】2000年の1回目受験で合格
【講師歴】2001年7月1日からフォーサイトで講師をスタート
【刊行書籍】「行政書士に3ヶ月で合格できる本」(ダイヤモンド社)
【座右の銘】見る前に跳べ
フォーサイト公式Youtubeチャンネル「行政書士への道」
フォーサイト講師ブログ

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