行政書士の遺産分割協議書作成業務とは?わかりやすく解説

行政書士の遺産分割協議書作成業務とは

行政書士による相続に関する業務は様々ですが、その中には、ある人が亡くなったときに、遺言書がない場合、相続人間で遺産分割協議を行い、その協議内容をまとめた遺産分割協議書を作成する業務もあります。遺産分割協議書作成に至るまでの相続の流れや、遺産分割協議書の具体的な内容、行政書士が作成する場合の報酬はどのくらいなのか等について紹介していきます。

目次

遺産分割協議書とは?

「遺産分割協議書」とは、相続人全員が参加した遺産分割協議において合意した内容を書面に取りまとめた文書のことです。遺産分割協議書は、法律上必ず作成しなければならないものではありませんが、遺産分割協議を行ったものの、あとから相続人の一人が協議内容に異論を述べ始めた場合等に、書面がなければ争いが長期化してしまうこともあり、そのようなリスクを減らすためにも遺産分割協議書の作成は必要です。また、法定相続分以外で不動産の相続をする場合には、法務局で遺産分割協議書の提出が求められるため、作成する必要があります。さらに、預貯金の名義変更の際や相続税の申告の際にも遺産分割協議書を添付する必要があります。

遺産分割協議書が必要な場合の相続の流れ

冒頭にも述べたとおり、遺言書がない場合には、法定相続人全員による遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成します。債務がある場合は、相続人が自身に相続があることを知ってから3カ月以内に限定承認又は相続放棄をしなければなりません。スムーズに協議が成立して、遺産分割協議書を作成した場合には、そのとおりに遺産分割を実行し、相続税を納税します。遺産分割協議がまとまらなかった場合には、家庭裁判所で調停や審判を経て遺産分割をします。相続税の申告は被相続人の死亡した日から10カ月以内ですが、遺産分割協議そのものには、期限はありません。

遺産分割協議書が必要な場合の相続の流れ

遺産分割協議書関連で行政書士ができることとは?

遺産分割協議書関連で、行政書士がお手伝いできることとしては、相続人全員の遺産分割協議の内容を聞き、書面にすることはもちろん、被相続人の所有している財産を把握するため、相続財産の調査とそれに伴う遺産目録を作成すること、戸籍謄本を取り寄せる等相続人調査と確認、それに伴う相続関係説明図を作成すること等です。相続財産の調査は、土地や建物等不動産と預貯金が主なものですが、家族間で把握しきれていない資産や借金がある場合もあるため、金融機関に問い合わせたりすることもあります。相続人調査においては、被相続人の出生から死亡までのつながった除籍謄本、改正原戸籍、戸籍謄本や相続人全員の現在の戸籍謄本を職務上請求書を利用する等して取り寄せます。

遺産分割協議書の内容とは?

遺産分割協議書の具体的内容としては、基本的に被相続人の名前、死亡日、本籍地、最終住所地を記載するほか、被相続人の財産についてそれぞれ細かく記載して、誰が相続するのかを記載します。最後には、必ず相続人全員の署名と押印が必要になります。

遺産分割協議書の内容とは?

遺産分割協議書作成のポイントとは?

遺産分割協議書を作成する前に、遺言書の有無を確認しましょう。自筆証書遺言の場合は、自宅の中にあるか、銀行の貸金庫、士業の方が保管している場合があります。公正証書遺言の場合は、平成元年以降に作成されたものであれば、最寄りの公証役場で確認できます。ただし、平成元年以前に作成されたものであれば、実際に作成された公証役場に行く必要があります。遺言書がある場合でも、法定相続人全員の合意があれば、遺言書の内容と異なる遺産分割をすることも可能です。

また、遺産分割協議には相続人全員が参加しなければならないため、相続人をきちんと把握しておかなければなりません。相続人に未成年者がいる場合には、家庭裁判所に特別代理人の選任を請求する必要があります。未成年者が複数人いる場合には、1人ずつ別々の特別代理人を選任する必要があります。相続人に行方不明者がいる場合には、住民票や戸籍謄本で所在地を探しますが、それでもわからない場合には、裁判所へ不在者管理人選任審判の申立てあるいは失踪宣告の審判の申立てをします。相続人が海外にいる場合には、その相続人が存在する国の日本大使館や領事館から在留証明書、署名証明書、拇印証明書を取り寄せます。それにより、その相続人の住民票と印鑑証明書の代わりとすることができます。

さらに、遺産分割の対象とならない財産もあります。主に相続の対象外となる財産について以下に記載しておきます。

  1. お墓や祭具など祖先祭祀のための財産
  2. 死亡保険金、死亡退職金、遺族年金について受取人が被保険者以外の者である場合
  3. 身元保証、信用保証等の契約
  4. 民法の規定により被相続人の死亡により消滅する財産(定期贈与契約や使用貸借契約等)

そして、遺産分割協議書には、明確に決まったフォーマットがないため、自由に作成することが可能ですが、その分チェックも厳しいため、必要事項が抜けると金融機関や法務局等で受け付けてもらえず、訂正がある場合には作り直す必要があるため、細かい部分にも注意して作成することが必要です。また、手書き、パソコンのどちらでも作成は可能ですが、できれば内容はパソコンで作成し、相続人の氏名や住所はそれぞれ手書きで作成してもらった方が良いかと思います。さらに、押印の際は、実印を使用してもらうようにしましょう。遺産分割協議書が2ページ以上であればページのつなぎ目に契印が必要であり、遺産分割協議書が2通以上の場合は、割印も必要です。

行政書士による遺産分割協議書作成業務の報酬とは?

行政書士による遺産分割協議書作成業務の報酬の相場は、日本行政書士会連合会の統計資料によると、平均約60,000円でした。ただ、相続人調査や相続財産調査を行う場合には、別途約50,000円程プラスされるため、約100,000円~の報酬になる場合もあります。
相続人が遠方にいる場合等には、個人で遺産分割協議書を作成しようとすると時間や労力がかかるため、専門家に依頼してスムーズに手続きを進めたいという方は多く、また、誰がどの財産をどれだけ相続するのかをきちんと書面にしておきたいという方、ずっともめていた遺産分割の話がまとまりそうであるため書面にしておきたいという方、不動産や銀行の相続手続きに遺産分割協議書が必要であり、細かい部分のアドバイスが欲しいという方もおり、遺産分割協議書に関する相談は増えてきています。そのため、需要は多く見込める業務の1つではないかと思います。

まとめ

行政書士による遺産分割協議書作成業務について、ご理解いただけましたでしょうか。 遺言書は、現実にはそれほど多く作成されておらず、遺産分割協議を行って相続財産を相続するケースの方が多いため、遺産分割協議書作成業務は、上述のように需要が増えています。行政書士による遺産分割協議書作成業務は、相続財産の確定や相続人の確定等細かく、根気のいる作業も多いですが、家族の仲を円満に保ち、被相続人の相続財産を守り、次の相続人へ受け継いでいくためにも重要な業務であり、また、様々な家庭の今後の生活について考え、サポートしていくことができるため、やりがいのある業務の1つであると思います。

この記事の監修者は
福澤繁樹(ふくざわ しげき)

分かりやすくて勉強する気になる講義を目指したい!
【出身】千葉県
【経歴】明治大学法学部卒。行政書士、宅地建物取引士、マンション管理士。行政書士みなと合同事務所にて開業・日々業務を行っている。千葉県行政書士会所属。
【趣味】料理を作り、美味しいお酒と一緒に食べること
【受験歴】2000年の1回目受験で合格
【講師歴】2001年7月1日からフォーサイトで講師をスタート
【刊行書籍】「行政書士に3ヶ月で合格できる本」(ダイヤモンド社)
【座右の銘】見る前に跳べ
フォーサイト公式Youtubeチャンネル「行政書士への道」
フォーサイト講師ブログ

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