行政書士の相続業務とは?

行政書士の相続業務とは?

行政書士の相続業務とは?

行政書士の取り扱う業務内容は多岐にわたり、様々な分野が存在しています。

その中には、相続に関する業務もあり、相続問題を専門に扱っている行政書士の方も多くいます。

相続問題において行政書士ができることはどのようなことで、行政書士の報酬はどれくらいなのかについて具体的に紹介します。

目次

相続問題とは?

まず、「相続」とは、ある人が死亡した際、その人の財産をある特定の人が引き継ぐことを言います。

財産とは、プラスの財産のみならず、借金などマイナスの財産も含めた全ての財産のことをいいます。

ある日突然相続人となった場合には、何をどのように相続するのかということや、どのような手続きをするのかということがわからないという場合があります。

また、被相続人(亡くなった方)が生前に誰にどのように遺産を分配するかについて相談して決めておきたいけれど、どのようにすれば良いかわからない、遺言書の内容をどのように書けば良いかわからないというような場合があります。

「相続問題」とは、そのような「相続」に関する悩みやトラブルのことを言います。

相続問題で行政書士ができることとは?

相続問題で行政書士ができることは、主に以下のとおりです。

  • 遺言書作成
  • 遺言の執行や執行者になること
  • 相続人調査
  • 遺産分割協議書の作成
  • 財産調査や遺産目録の作成
  • 相続関係図の作成
  • 戸籍取得
  • 銀行預金の相続手続き
  • 株式の名義変更手続き
  • 自動車の名義変更手続き

行政書士は上記のような遺言書、遺産分割協議書、相続関係図などの書類作成に関して、適宜、依頼者からの相談にのり、アドバイスをすることもできます。

後程、「具体例」のところで一部業務内容について具体的に紹介します。

行政書士による相続放棄業務は違法?非弁行為にならないために気をつけること

上術のとおり、行政書士が行うことができる相続に関する業務は様々ありますが、どの範囲まで行えるのでしょうか?

まず、行政書士が行うことができる業務については、行政書士法第1条に主に定められています。

行政書士法第1条について簡単に説明すると、行政書士は主に、次の業務が行えます。

  • 官公署に提出する書類の作成とその代理、相談
  • 権利義務に関する書類の作成とその代理、相談
  • 事実証明に関する書類の作成とその代理、相談

一方、弁護士法第72条では、非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止について定められています。

弁護士法 第72条

弁護士又は弁護士法人でないものは、報酬を得る目的で争訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

つまり、行政書士は基本的に、争訟事件=裁判に関する書類の作成はできないため、相続業務に関して言えば、相続放棄申述書等を作成することはできません。

また、東京地方裁判所平成27年7月30日判決では、行政書士による遺産分割業務が違法とされました。

この事案では、相続人(原告)と他の相続人の間で遺産分割について合意が整わず、相続人(原告)と行政書士(被告)の間で弁護士を選任すべきという話題があったにも関わらず行政書士(被告)が遺産分割協議書を作成し、手続きを進めた経緯があり、将来法的紛議が発生することが予測されている状況で行政書士が書類を作成して、相談に応じて交渉を行ったとして、弁護士法第72条違反とされ、被告となった行政書士が損害賠償をすることになりました。

そのため、書類作成などにあたって少しでも紛争性があると思った場合(出てきた場合)には依頼者ときちんと話し合って、弁護士を紹介するようにしましょう。

また、相続業務をする際には、相続税に関する知識を概略だけでも知っておいた方が良いと言われています。

しかしながら、相続税に関して深く個別相談に応じてしまうと、税理士法に抵触してしまうため、注意が必要です。

あとは、不動産名義変更といった相続登記に関しては司法書士の業務ですので、登記に関しては司法書士を紹介するようにしましょう。

具体例:行政書士による銀行預金の相続手続き

では、上記で紹介した行政書士ができる相続業務について、具体例として、銀行預金の相続手続きについてみていきたいと思います。

銀行預金も不動産等と同じく相続財産であり、相続財産は被相続人の死亡と同時に相続人の共有財産となります。

しかしながら、これは暫定の状態であるため、実際に相続人の中の誰に権利があるのかということを相続人同士で協議して決定しなければなりません。

その決定した内容を「遺産分割協議書」に書き、これを銀行に提示することではじめて被相続人名義の銀行口座の名義変更や解約、払い戻しができるようになります。

複数の金融機関に預金がある場合には、その金融機関ごとに手続きをしなければなりません。

手続きの流れとしては、次のようになります。

(1)被相続人が死亡したことを金融機関へ届け出ることと残高証明書の発行を依頼すること

被相続人が死亡したことの届出をすることで、口座が停止されます。

また、届出と同時に残高証明書の発行を依頼して、相続財産を確定していくことで、その後の遺産分割協議などをスムーズに行うことができるため、このタイミングで請求するようにします。

(2)金融機関へ相続届出書および添付書類を提出すること

金融機関と打ち合わせをして、相続届出書を受け取り、記入したあと、再び金融機関に行き、提出します。相続届出書の書式については金融機関によって異なります。

内容としては、被相続人の本籍、住所、預金内容、遺言の有無、遺産の受け取り方法などです。

原則として、相続人全員の署名・押印が必要となります。

主な添付書類としては、

  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 被相続人の死亡から出生までの戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺言書
  • 遺産分割協議書
  • 相続関係説明図
  • 被相続人の通帳、預貯金証書、キャッシュカード
  • 通帳やカード紛失の場合の紛失届

等です。

印鑑証明書につきましては、必ず原本提出が必要なため、多めに取得しておいた方が良いかと思います。 

(3)預金名義変更、口座の解約・払戻

書類提出後、約1~2週間で名義変更や解約・払戻の手続きが完了します。

具体例:行政書士による相続人調査

相続人調査とは、相続人が誰で、何人いるのかということを戸籍謄本等で調べてきちんと把握する作業です。

相続人が誰かということくらいは、調べなくてもわかるという場合もあるかとは思いますが、上述のような金融機関での手続き等においては、戸籍謄本や相続関係説明図などを通して確実に相続人であるという証明をする必要があります。

また、被相続人に認知した子どもがいた場合や養子縁組していたというような場合もあるため、この相続人調査は欠かせません。

戸籍の取り寄せにおいては、被相続人の出生時期まで遡って戸籍謄本を取り寄せ、さらに相続人になる可能性のある人の戸籍謄本を取り寄せます。

行政書士は、行政書士会を通して購入した「職務上請求書」というものを使い、各市町村へ請求することができます。

他人の個人情報を得ることになるため、請求の利用目的等は明確に記載するようにしましょう。

行政書士の相続業務の料金は?どれくらい稼げる?

行政書士の相続業務の料金の相場ですが、受託する業務の範囲、内容により幅はありますが、例えば、日本行政書士会連合会の資料によると、遺産分割協議書の作成では、平均が59,807円です。

また、相続人調査、相続財産の調査では、平均が59,230円です。

遺言書の起案及び作成指導では、平均が57,726円となっています。

ただ、相続手続き全般を引き受けた場合、人によっては全部で30万~50万円くらい稼ぐところもあります。

高齢社会が進む日本において、これから相続業務の需要はますます増えてくるかと思います。

また、相続業務に関しては、弁護士や司法書士等にも可能な業務ではありますが、「たくさん財産があるわけではないけれども専門家に相談してもいいのだろうか」というような相談を躊躇している方にとって、「街の法律家」として精神的にも経済的にも比較的気軽に相談できる専門家として強い味方になれるかと思います。

相続業務を専門として扱っている行政書士事務所も存在するため、努力次第で相続業務を専門として稼いでいくことも可能だと思います。

まとめ

行政書士の相続業務について少しでもご理解いただけましたでしょうか。

相続業務については、例えば、近しい人が亡くなり、ある日突然相続人となった方が、書類等全てを集めて記入して役所や金融機関に行き来して手続きする、となると時間と労力がかかり、ただでさえ辛い状況の中、精神的にも物理的にもますます辛い気持ちになってしまうかと思います。

権利義務に関する書類や事実証明に関する書類作成の専門家であり、「街の法律家」である行政書士は、そのような依頼者の方の気持ちに寄り添ってお手伝いをすることで、相続手続きをスムーズに進めて、少しでも依頼者の方の辛い気持ちを和らげてあげることができるのではないかと思います。

また、行政書士が相談にのることで、将来の無用なトラブルを防ぐこともできます。

高齢社会を迎える日本において、行政書士の相続業務は、非常に重要な業務の1つになってくるかと思います。

行政書士を目指していらっしゃる方や、行政書士に興味を持っている方もですが、行政書士で専門分野を持ちたいと考えている方や何を専門分野とした行政書士事務所にしようかと迷っていらっしゃる方は、相続業務を専門分野の1つとすることを考えてみられても良いかもしれません。