裁判員制度とは?目的や仕組みについて解説します!

裁判席の絵

「裁判員制度」とは、刑事裁判において、国民が裁判員として参加する制度のことをいい、2009年5月21日からスタートしました。

裁判員裁判は、選挙人名簿から作成される20歳以上の裁判員候補者名簿の中から無作為に選出された裁判員6人と裁判官3人が、審理に出席し、証拠調べ手続きや弁論手続きに立ち会い、評議・評決を行います。

目次

裁判員制度の歴史

裁判員制度は、内閣に設置された司法制度改革審議会が、2001年6月に取りまとめた意見書の中で、「司法制度改革の3つの柱」の1つとして国民的基盤の確立を掲げ、その中核として導入が提言されました。

その後、内閣に設置された司法制度改革推進本部において、裁判員制度を導入するための法律案の作成が進められ、2004年3月に「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案」(=裁判員法)が国会に提出され、同年5月21日に成立し、5月28日に公布されました。

2008年4月18日に同法律の執行期日を定める政令が公布され、2009年5月21日に施行されました。

参考:裁判員制度ウェブサイト(https://www.saibanin.courts.go.jp/)

裁判員制度の趣旨・目的

これまでの裁判は、裁判官を始め、検察官、弁護士といった法曹三者が行ってきました。

法律専門家としての見地から、丁寧かつ慎重な判断がなされ、高い評価を受けていた半面、審理や判決が国民にとってわかりにくかったり、審理に長期間かかる事件があったりして、特に刑事裁判ではハードルが高く、近寄りがたいものと考えられていました。

そこで、司法制度改革の中で、国民の司法参加の制度の導入が検討され、様々な立場の国民から選ばれた裁判員が裁判に参加し、裁判官とともに考える裁判員制度が実施されることで、国民の理解しやすい裁判を実現することを目的としています。

すなわち、裁判員制度では、裁判の進め方や裁判の内容に国民の意見が反映されるため、裁判に対する国民の理解が広がり、裁判がより身近になり、国民の司法への信頼が高まることが期待されています。

【裁判員法】

(趣旨)

第一条 この法律は、国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することが司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資することにかんがみ、裁判員の参加する刑事裁判に関し、裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)及び刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の特則その他の必要な事項を定めるものとする。

裁判員制度の対象事件

裁判員制度の対象事件は、重大な刑事事件です。裁判員法第2条1項1号には、「死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件」と規定されています。

ただし、裁判員候補者や裁判員、かつて裁判員だった者やその親族若しくはこれに準じる者の生命、身体、財産に危害が加えられるおそれがあるような場合には、検察官、被告人若しくは弁護人の請求又は職権により、裁判官の合議体のみで裁判を取り扱います。

また、審判の見込み期間が著しく長期間である場合や裁判員が出頭しなければならないと見込まれる公判期日、公判準備が著しく多数に上ることを回避できない事件等は、裁判官による合議体のみで取り扱うことが可能です。

裁判員裁判の仕組み

裁判員裁判の流れとしては、以下の手順で進んでいきます。

1.起訴

警察官が被疑者に対して刑事裁判を求める手続きをします。

2.準備手続き

裁判官、警察官、弁護人が、あらかじめ裁判に関する打ち合わせをします。

3.裁判員選任手続き

裁判員は原則として6人選任されることになっています。裁判官は原則3人です。
ただし、被告人が事実を争っておらず、当事者に異議がない場合で、裁判所が適当と認めた場合には、裁判員は4人、裁判官1人で行われます。

4.裁判

裁判期日に、法廷で検察官や弁護人の意見を聞いたり、証人の証言を見聞きしたりします。

5.評議

裁判員と裁判官が、被告人が有罪であるか無罪であるかということや、どの程度の量刑にするかについて決定します。

6.判決

裁判官によって判決が下されます。裁判員は、判決の宣言に立ち会います。

裁判員について

では、ここからは、裁判員制度における裁判員の具体的な選任手続きや、職務内容、裁判員に課せられている義務等について解説していきます。

選任手続き

裁判員の選任手続きには、3段階あります。

①第1段階 裁判員候補者名簿の作成、候補者への通知

まず、地方裁判所が、毎年9月1日までに、翌年に必要な裁判員候補者の数を、管轄区域内の市町村に割り当てて、市町村の選挙管理委員会に通知します。

通知を受けた選挙管理委員会は、選挙人名簿に登録されている人の中から、くじ引きにより裁判員候補者予定者を選び、「裁判員候補者予定者名簿」を作成します。

選挙管理委員会は、通知を受けた年の10月15日までに裁判員候補者予定者名簿を地方裁判所に送付します。

その名簿を基に地方裁判所は、毎年、「裁判員候補者名簿」を作成し、裁判員候補者名簿に記載された人に通知します。

②第二段階 裁判員候補者の選定、呼出状及び質問票の送付

裁判員制度の対象事件ごとに、地方裁判所が裁判員候補者名簿の中から、裁判員候補者をくじで選定します。このくじの際には、検察官及び弁護人は立ち会うことができます。選定された裁判員候補者には、呼出状と質問状が送られてきます。

質問票には、欠格事由や就職禁止事由、事件に関連する不適格事由、辞退事由の存否に関する質問があります。

質問票に虚偽の記載をした場合には、50万円以下の罰金又は30万円以下の過料が科されます。

③第三段階 裁判当日の選任手続き

通常、裁判当日の午前中に、裁判所で、裁判員候補者の中から裁判員を選任するための手続きを実施します。この手続きは非公開とされています。

裁判長が、裁判員候補者に対して欠格事由の有無や辞退事由の有無を確認したり、不公平な裁判をするおそれがないか否かを判断するために必要な質問を行ったりします。

また、裁判員裁判に同席する裁判官、検察官、被告人又は弁護人は、裁判長に対して、前述した判断を行うために、必要だと思う質問を裁判員候補者に対してするように求めることが可能です。

こうした手続きを経て、裁判所は不適任者を決定します。

また、検察官及び被告人は、原則として各々4人を限度として、理由なしで裁判員候補者の不適任請求をすることができます。

不適任者決定手続きの後、裁判所はくじ等により、残りの裁判員候補者の中から必要な人数の裁判員と裁判員に欠員が生じた場合にその裁判員に代わって裁判に参加する補充裁判員を選任します。

仕事内容

裁判員の仕事として、まず、刑事裁判の審理に参加します。被告人や証人に対して質問をしたり、証拠物や証拠書類を取り調べたりします。

次に、裁判員は、証拠に基づいて、被告人が有罪か無罪か、有罪であるとすればどの程度の量刑が妥当かということを裁判官とともに評議して決定します。評議を尽くしても、意見が一致しなかった場合には、多数決により評決します。

ただし、裁判員だけの意見で被告人に不利な判断をすることはできないため、裁判官1人以上が多数意見に賛成していることが必要になります。

最後に、評議の結果、判決の内容が決定され、判決の宣告時に立ち会います。

義務

裁判員には、主に4つの大切な義務があります。

①公平誠実義務

裁判員は、法令に従い、公平誠実に職務を果たさなければならないという義務です。

また、裁判員は、裁判の公正さに対する信頼を損なうおそれのある行為や裁判員としての品位を損なうような行為をしてはならないとされています。

②守秘義務

評議の経過や裁判官と裁判員の意見、評決の数等は、「評議の秘密」として、誰にも話してはいけないという守秘義務が課せられています。また、職務上知り得た秘密も守秘義務の対象です。例えば、記録から知った被害者や事件関係者のプライバシーに関することや他の裁判員の氏名等です。

公開の法廷で見聞きしたことや、裁判員として参加した感想等は、守秘義務の対象外です。

守秘義務に違反した場合には、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。

③出頭義務

裁判員候補者には、裁判所から呼び出された場合の出頭義務があります。正当な理由なく裁判所からの呼び出しに応じなかった場合には、10万円以下の過料が科せられます。

④意見を述べる義務

裁判員は、評議に出席して意見を述べなければならないとされています。

裁判員になることができない場合

裁判員候補者の選任手続きにおいて質問が行われる、裁判員になることができない場合について、具体的に紹介していきます。

まず、裁判員の欠格事由は、裁判員法第14条に規定されています。

(欠格事由)

第十四条 国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第三十八条の規定に該当する場合のほか、次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員となることができない。

一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に定める義務教育を終了しない者。ただし、義務教育を終了した者と同等以上の学識を有する者は、この限りでない。

二 禁錮以上の刑に処せられた者

三 心身の故障のため裁判員の職務の遂行に著しい支障がある者

国家公務員法第38条に該当する場合というのは、以下のとおりです。

  • 成年被後見人、被保佐人
  • 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
  • 懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない者
  • 日本国憲法施行の日以後に、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成したり、加入したりした者

次に、裁判員の就職禁止事由は、裁判員法第15条に規定されています。

(就職禁止事由)

第十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員の職務に就くことができない。

一 国会議員

二 国務大臣

三 次のいずれかに該当する国の行政機関の職員

イ 一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)別表第十一指定職俸給表の適用を受ける職員(ニに掲げる者を除く。)

ロ 一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律(平成十二年法律第百二十五号)第七条第一項に規定する俸給表の適用を受ける職員であって、同表七号俸の俸給月額以上の俸給を受けるもの

ハ 特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)別表第一及び別表第二の適用を受ける職員

ニ 防衛省の職員の給与等に関する法律(昭和二十七年法律第二百六十六号。以下「防衛省職員給与法」という。)第四条第一項の規定により一般職の職員の給与に関する法律別表第十一指定職俸給表の適用を受ける職員、防衛省職員給与法第四条第二項の規定により一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律第七条第一項の俸給表に定める額の俸給(同表七号俸の俸給月額以上のものに限る。)を受ける職員及び防衛省職員給与法第四条第五項の規定の適用を受ける職員

四 裁判官及び裁判官であった者

五 検察官及び検察官であった者

六 弁護士(外国法事務弁護士を含む。以下この項において同じ。)及び弁護士であった者

七 弁理士

八 司法書士

九 公証人

十 司法警察職員としての職務を行う者

十一 裁判所の職員(非常勤の者を除く。)

十二 法務省の職員(非常勤の者を除く。)

十三 国家公安委員会委員及び都道府県公安委員会委員並びに警察職員(非常勤の者を除く。)

十四 判事、判事補、検事又は弁護士となる資格を有する者

十五 学校教育法に定める大学の学部、専攻科又は大学院の法律学の教授又は准教授

十六 司法修習生

十七 都道府県知事及び市町村(特別区を含む。以下同じ。)の長

十八 自衛官

2 次のいずれかに該当する者も、前項と同様とする。

一 禁錮以上の刑に当たる罪につき起訴され、その被告事件の終結に至らない者

二 逮捕又は勾留されている者

次に、裁判員の辞退事由は、裁判員法第16条に規定されています。

(辞退事由)

第十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員となることについて辞退の申立てをすることができる。

一 年齢七十年以上の者

二 地方公共団体の議会の議員(会期中の者に限る。)

三 学校教育法第一条、第百二十四条又は第百三十四条の学校の学生又は生徒(常時通学を要する課程に在学する者に限る。)

四 過去五年以内に裁判員又は補充裁判員の職にあった者

五 過去三年以内に選任予定裁判員であった者

六 過去一年以内に裁判員候補者として第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭したことがある者(第三十四条第七項(第三十八条第二項(第四十六条第二項において準用する場合を含む。)、第四十七条第二項及び第九十二条第二項において準用する場合を含む。第二十六条第三項において同じ。)の規定による不選任の決定があった者を除く。)

七 過去五年以内に検察審査会法(昭和二十三年法律第百四十七号)の規定による検察審査員又は補充員の職にあった者

八 次に掲げる事由その他政令で定めるやむを得ない事由があり、裁判員の職務を行うこと又は裁判員候補者として第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭することが困難な者

イ 重い疾病又は傷害により裁判所に出頭することが困難であること。

ロ 介護又は養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある同居の親族の介護又は養育を行う必要があること。

ハ その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるものがあること。

ニ 父母の葬式への出席その他の社会生活上の重要な用務であって他の期日に行うことができないものがあること。

ホ 重大な災害により生活基盤に著しい被害を受け、その生活の再建のための用務を行う必要があること。

最後に、裁判員の不適格事由は、裁判員法第17条、第18条に規定されています。

(事件に関連する不適格事由)

第十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、当該事件について裁判員となることができない。

一 被告人又は被害者

二 被告人又は被害者の親族又は親族であった者

三 被告人又は被害者の法定代理人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人

四 被告人又は被害者の同居人又は被用者

五 事件について告発又は請求をした者

六 事件について証人又は鑑定人になった者

七 事件について被告人の代理人、弁護人又は補佐人になった者

八 事件について検察官又は司法警察職員として職務を行った者

九 事件について検察審査員又は審査補助員として職務を行い、又は補充員として検察審査会議を傍聴した者

十 事件について刑事訴訟法第二百六十六条第二号の決定、略式命令、同法第三百九十八条から第四百条まで、第四百十二条若しくは第四百十三条の規定により差し戻し、若しくは移送された場合における原判決又はこれらの裁判の基礎となった取調べに関与した者。ただし、受託裁判官として関与した場合は、この限りでない。

(その他の不適格事由)

第十八条 前条のほか、裁判所がこの法律の定めるところにより不公平な裁判をするおそれがあると認めた者は、当該事件について裁判員となることができない。

裁判員の保護

また、裁判員制度では、裁判員となった者の保護に関しても考えられています。

例えば、事件に関して裁判員と個別に接触したり、頼み事をしたりすることは禁止されており、裁判員やその家族を脅迫した者には刑罰が科されます。

裁判員の氏名や住所は公表されず、メディアで裁判員の顔等が撮影され、報道されることもありません。

また、例えば、仕事を持つAさんが裁判員となり、裁判期日のため仕事を休む必要があって、上司等に裁判員となった旨を伝えた場合等には、上司は、Aさんが裁判員になったことを公にすることが禁止されています。そして、裁判員の仕事のために会社を休んだことを理由に、不利益な扱いをすることも禁止されています。

裁判員制度は、裁判員のプライバシーも配慮し、参加しやすい環境を作っています。

陪審制や参審制との違い

「陪審制」とは、アメリカやイギリス等で採用されている制度で、刑事訴訟や民事訴訟の審理において、裁判官を含まず、民間から無作為で選ばれた6人から12人の陪審員によって構成される合議体が評議によって事実認定を行う制度のことをいいます。

陪審員は事件ごとに選任されます。

「参審制」とは、ドイツ、フランス、イタリア等で採用されている制度で、刑事訴訟において、一般市民から選出された参審員と職業裁判官が一緒に評議を行い、事実認定及び量刑判断を行う制度のことをいいます。

法律問題も参審員が関与します。

参審員の選任方法や任期は国によって異なります。

裁判員制度は、裁判員と裁判官が合議体を構成するという点で、参審制を参考にして作られたといわれていますが、裁判員は、事実認定と量刑判断を行い、法律問題は裁判官のみで行うという点で参審制と異なります。

また、事件ごとに国民から無作為に選任されるという点では陪審制と同じですが、上述したとおり、陪審制は、裁判官を含まない陪審員のみの合議体です。そのため、裁判員制度は、陪審制とも参審制とも異なる日本独自の制度といえます。

裁判員制度のメリットとデメリット

裁判員制度のメリット

  • 裁判の日数や時間の短縮、それに伴う裁判費用の削減が可能である
  • 国民が司法に対する発言機会を得ることができる
  • 国民の意見が裁判に反映されることで、司法への関心が深まる

等が挙げられます。

裁判員制度のデメリット

  • 裁判員に選ばれた場合、期日に出頭する義務等が課せられているため、半強制的参加のシステムになってしまっている
  • 裁判員は、法廷で提出される証拠を全て確認しなければならないため、どんなに見たくないようなものでも見なければならず、トラウマとなってしまう可能性がある
  • 死刑判決等が出た場合に、自分の判断によって人の人生を変えてしまったという責任を感じ、心身等に悪影響が出る可能性がある

ということが挙げられます。

実際に、裁判員裁判中に体調を崩してしまったり、裁判員裁判参加後にストレス障害になり、裁判員裁判は憲法違反であるとして損害賠償請求がなされたりもしています。

また、逆に、自分では意見が出せないという裁判員が世論に影響された結果、公平に裁判を行うことができないおそれがあるということも挙げられます。

ある被告人に対して、「有罪が当然だ!」とする世論があるとした場合、そのまま反映させては冤罪につながるおそれもあり、危険です。

裁判員制度の合憲性に関する判例(最大判平成23年11月16日)

【事案】

 裁判員制度によって有罪判決を受けたXが裁判員制度の違憲を主張して上告しました。

【争点】

① 刑事裁判における国民の司法参加は、憲法上認められているか?

② 裁判員制度は、憲法第31条の適正手続きの保障、第32条の裁判を受ける権利、第37条1項の公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利、第76条1項の司法権の所在、第80条1項の裁判官の任命規定に違反するか?

③ 裁判員制度は、憲法第76条3項の司法権の独立規定に違反するか?

④ 裁判員制度は、憲法第76条2項の特別裁判所の禁止規定に違反するか?

⑤ 裁判員の職務等は、憲法第18条後段が禁止している「苦役」に該当するか?

【理由及び結論】

① 刑事裁判に国民が参加して民主的基盤の強化を図ることと、憲法の定める人権の保障を全うしつつ、証拠に基づいて事実を明らかにし、個人の権利と社会の秩序を確保するという刑事裁判の使命を果たすこととは、決して相容れないものではなく、このことは、陪審制又は参審制を有する欧米諸国の経験に照らしても、了解できるものである。

そうすると、国民の司法参加と適正な刑事裁判を実現するための諸原則とは、十分調和させることが可能であり、憲法上国民の司法参加がおよそ禁じられていると解すべき理由はなく、国民の司法参加に係る制度の合憲性は、具体的に設けられた制度が、適正な刑事裁判を実現するための諸原則に抵触するか否かによって決せられるべきものである。

言い換えると、憲法は、一般的には国民の司法参加を認めており、これを採用する場合には、上記の諸原則が確保されている限り、その内容を立法政策に委ねている。

② 憲法第80条1項が、裁判所は裁判官のみによって構成されることを要求しているか否かは、結局、憲法が国民の司法参加を許容しているか否かに帰着する問題であり、既に述べたとおり、憲法は、国民の司法参加を禁じているとは解されない。

したがって、裁判官と国民とで構成する裁判体が、直ちに憲法上の「裁判所」に当たらないということはできない。

また、裁判員制度の仕組みを考えると、公平な「裁判所」における法と証拠に基づく適正な裁判が行われること(憲法第31条、第32条、第37条1項)は制度的に十分保障されている上、裁判官は刑事裁判の基本的な担い手とされているものと認められ、憲法が定める刑事裁判の諸原則を確保する上での支障はないということができるため、憲法第31条、第32条、第37条1項、第76条1項、第80条1項に違反しない。

③ 憲法第76条3項によると、裁判官は憲法及び法律に拘束される。

そうすると、既に述べたとおり、憲法が一般的に国民の司法参加を許容しており、裁判員法が憲法に適合するようにこれを法制化したものである以上、裁判員法が規定する評決制度の下で、裁判官が時に自らの意見と異なる結論に従わざるを得ない場合があるとしても、それは憲法に適合する法律に拘束される結果であるから、同項違反との評価を受ける余地はない。

④ 裁判員制度による裁判体は、地方裁判所に属するものであり、その第1審判決に対しては、高等裁判所への控訴及び最高裁判所への上告が認められており、裁判官と裁判員によって構成された裁判体が特別裁判所に当たらないことは明らかである。

⑤ 裁判員法第1条は、制度導入の趣旨について、国民の中から選任された裁判員が裁判官とともに刑事訴訟手続きに関与することが司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資することを挙げており、これは、この制度が国民主権の理念に沿って司法の国民的基盤の強化を図るものであることを示していると解される。

このように、裁判員の職務等は、司法権の行使に対する国民の参加という点で参政権と同様の権限を国民に付与するものであり、「苦役」には当たらない。

まとめ

裁判員制度は、国民の司法参加を推進するために作られた制度ではあり、開始されてから12年経ちましたが、例えば、上記に挙げたデメリットを始めとして、まだまだ国民側としては不安や疑問のあるまま実施されている状況があります。

裁判員制度開始後にある会社が行った世論調査では、裁判員として参加したいか否かを調べたところ、参加したい又は参加しても良いと答えた人が約30%、できれば参加したくない又は参加したくないと答えた人が約70%であり、裁判員裁判には消極的な意見が多いといえます。

このような現状から、今後、裁判員制度には何らかの改善がなされていく可能性があるかもしれません。

行政書士試験においては、裁判員制度の概要、裁判員の選任手続きや職務内容等の部分を中心におさえていただければと思います。