簿記2級の過去問・出題傾向を徹底分析!効果的な勉強方法は?
更新日:2019年3月8日
日商簿記2級は、平成28年から3年間にわたって行われた「試験範囲の大改定」により、実務を意識した内容になりました。そんな「新生・日商簿記2級」には、どのような問題が出題されるのでしょうか?そして、合格するにはどのような対策が必要なのでしょうか?
今回は日商簿記2級の過去問・出題傾向を中心に分析・解説していきます。
簿記2級の過去問を分析!
日商簿記2級の過去問をチェックしてみよう!
さっそく、日商簿記2級の過去問をチェックしてみましょう。大改訂が行われた日商簿記検定2級では、次のような問題が出題されます(著作権の問題があるため、少し内容を変更しています)。
商業簿記
次の取引の仕訳を示しなさい。
(1)A社に対する買掛金¥900,000について、取引銀行を通じて、電子債権記録機関に対して、債務の発生記録を行った。
(2)X5年3月31日の決算日に際して、以下のオペレーティング・リース契約に関して、リース料の支払(小切手振出)と決算整理を示しなさい。
リース期間 | 当期首(X4年4月1日)より4年間 |
---|---|
リース料 | 年額¥200,000(毎年3月31日払い) |
リース資産 | 見積購入価額¥750,000 残存価額はゼロ 耐用年数は4年 |
(3)商品¥1,300,000を愛知商店に売り渡し、代金のうち¥500,000については名古屋商店振出し、愛知商店受取りの約束手形を裏書譲渡され、¥800,000については当店を受取人とする愛知商店振出しの約束手形を受け取った。
工業簿記
次の問に答えなさい。
当工場では、実際個別原価計算を採用している。原料費の計算には、1kg当たり350円の予定消費価格、直接工の消費賃金の計算には1時間当たり900円の予定消費賃率を用いている。次の当月の一連の取引について仕訳しなさい。ただし、勘定科目は次の中から最も適当と思われるものを選ぶこと。
当座預金 / 材料 / 仕掛品 / 賃金 / 原価差異 / 製造間接費 / 買掛金 / 売掛金
(1)当工場では、購入した原料を外注業者に無償支給し、加工の一部を依頼している。加工品が外注業者から納入されると、検査後、ただちに製造現場に引き渡される。
- 原料700kgを1kg当たり380円で掛けにて購入した。
- 製造指図書#101のために原料650kgを出庫し、外注業者に加工を依頼した。なお、出庫記録は通常の出庫表による。
- 原料の消費価格差異を計上した。なお、材料の月初在庫は100kg、購入原価は1kg当たり400円で記録されていた。棚卸減耗はなかった。実際払出価格の計算は先入先出法によっている。
- 外注業者に対して、加工費19,500円を小切手を振り出して払った。
(2)引き続き製造現場では、直接工による加工を行っている。
- 直接工の直接作業時間は合計で180時間、間接作業時間は合計で150時間であった。
- 直接工の賃率差異を計上した。なお、前月末払高は112,000円、当月支払高305,000円、当月未払高は105,000であった。
(フォーサイト『簿記2級 問題集』より)
日商簿記2級の出題傾向を分析!
大改訂が行われた影響からここ最近の日商簿記2級の試験には「見たことのない難しい問題」や「問題文のボリュームが多い問題」がよく出題されるようになりました。ですが、全体的には基本的な問題が多いので、「合格点を取る」ことを意識し、難しい問題はどんどん飛ばして、基本的な問題から正確に解いていくようにしましょう。
日商簿記2級は、100点満点のうち70点を取れば合格できます。テキストと過去問演習で、満点ではなく、合格ラインを確実に超える学習を行っていきましょう!
簿記2級の過去問から出題傾向を分析・解説
日商簿記2級の過去問(第148回)
合格率29.6%でした。商業簿記の難易度が高く、工業簿記は基本的な内容となっていました。そのため、工業簿記で確実に点数を取っていき、商業簿記では部分点を狙うことで、合格ライン超えが望める試験でした。
特に難しかったのは、第3問の「連結精算表の作成問題」。改定により追加された新論点です。改定2年目から突然出題されたため、戸惑った方も多く2~3割が白紙で提出したようです。このような問題は、部分点で点数を稼ぎましょう。
なお、連結会計の問題はよく出ているうえ、見慣れない形式での出題も目立ちます。暗記ではなく、しっかりと基礎を押さえた学習が大切です。
日商簿記2級の過去問(第149回)
合格率15.6%でした。全体的に難しく、問題のボリュームが多い試験でした。今回のような試験では、第2問・第3問で全て仕訳をせず、部分点を狙うことが合格のポイントになります。
また、今回はざっと全ての問題に目を通し、第1問と第5問から解いていく進め方が効率的でした。日商簿記2級検定で大切なことは、簡単な問題から正確に解いていくことです。そして、比較的簡単な問題では満点を目指すことが重要になります。そのためには、過去問をできるだけ多く解き、試験の形式に慣れておくことが重要です。
日商簿記2級の過去問(第150回)
合格率14.7%でした。149回に続き、特に商業簿記の問題文が多い試験でした。今回のような試験の解き方としては、問題文の多い第1問・第2問・第3問を後回しにして、第4問・第5問で確実に得点することが合格ラインを超えるポイントです。
また、ここ最近は第2問が難しい傾向が続いています。今回は「固定資産」に関する複合的な問題でした。解き方としては、一つ一つ仕訳をして部分点を取ることが大切です。
ただ、第2問のような難しい問題は他の受験生も解けない可能性が高いため、残りの問題でケアレスミスを出さずに得点することを心掛けましょう。
簿記2級、過去問の効果的な勉強方法は?
簿記2級、過去問の効果的な解き方を教えて!?
日商簿記2級は、テキストを読むだけでは合格できません。テキストを読んだあとに過去問をできるだけ多く解くことで、よく出る問題や出題パターンが自然と分かるようになります。解き方としては、テキストを3回ほど読んだあと、以下の手順で進めていきましょう。
1.過去問題集をさらっと見て、出題形式を確認する。
どのような問題が出るのか、どんな風に出題されているか、出題パターンを確認しましょう。このとき、内容が理解できていなくても気にする必要はありません。
2.過去問1回分を解く。
分からない問題・間違えた問題に「印(〇)」をつけ、解答と解説を見て理解を深めます。解説で分からない場合は、テキストに戻って確認します。
3.「〇」がついている問題を解く。
また間違えてしまった問題に「印(△)」をつけ、解答と解説を読んで解決します。解説で分からない場合は、テキストに戻って確認します。
4.「〇」「△」のついている問題を解く。
分からない問題・間違えた問題に「印(×)」をつけ、解答と解説を読んで解決します。解説で分からない場合は、テキストに戻って確認します。
5.「〇」「△」「×」のついている問題を解く。
分からない問題・間違えた問題に「印(□)」をつけ、解答と解説を読んで解決します。解説でわからない場合は、テキストに戻って確認します。
こうして間違えた問題を繰り返し解いていくうちに、間違いがどんどん減っていき、問題を解くスピードも早くなります。間違いが少なくなってきたら、次の過去問に進みましょう。慣れてきたら本番と同じように、時間を計って解くことでさらに力がついていきます。
試験範囲改定後、「過去問第一主義」が崩壊の危機に!?
これまでの日商簿記2級はテキストをさらさらと読んで、残りは「過去問をひたすら解いていれば合格できる」と言われてきました。
しかし、試験範囲の改定後は過去問演習だけでは、新論点をカバーできなくなっています。試験の出題形式や出題パターンに慣れるため、過去問演習はもちろん大切ですが、これまで以上にテキストを使った基礎知識の習得を心掛けましょう。
➡勉強に必要な時間はこちら!簿記2級、合格できる解答用紙・計算用紙の書き方を教えて!?
簿記2級、合格できる解答用紙(答案用紙)の書き方は?
日商簿記2級の試験では、問題用紙、解答用紙(答案用紙)、計算用紙が1枚ずつ配られます。まずは、解答用紙に名前と受験番号を忘れずに書きましょう。
答案用紙では、ささいなミスで点数を逃さないよう、以下の6点に注意しましょう。
- 解答が、枠からはみ出ないようにする
- 金額は3ケタごとにカンマをふる。
- 誤字・脱字に注意する。
- 勘定科目・金額は枠の中に1行で書く。
- 誰でも読めるよう丁寧に書く。
- 答案にメモ書きをしない。メモをしたときは必ず消す。
簿記2級、合格できる計算用紙(下書き用紙)の書き方は?
計算用紙は縦半分に折って使うと、空白を有効に使えます。それでも足りない場合は、問題の表紙を使いましょう。また仕訳をするときは、数字や勘定科目を「左寄せ」もしくは「右寄せ」でそろえて書くようにしましょう。計算ミスを防ぐことができます。
➡適切な電卓選びについてはこちら!簿記2級の「類似過去問・予想問題」、ネット上からの安易なダウンロードは危険!?
日商簿記2級の過去問は、残念ながら著作権の関係でネット上では公開されていません。ただ、その一方で、インターネット上で日商簿記2級試験の「類似過去問や予想問題」をダウンロードできるサイトが増えています。
こうしたサービスはとても便利ですが、インターネットは相手の顔が見えない世界です。マルチウェアが埋め込まれた悪質なものが、存在する可能性もあるため、類似過去問・予想問題をダウンロードする際は、くれぐれも注意して、信頼できるサイトを利用するようにしましょう。
まとめ
今回は、日商簿記2級の「直近試験の出題傾向」「最近の出題論点」「効率的な問題の解き方」「合格できる解答用紙の書き込み方」「類似過去問・予想問題の無料ダウンロードの注意点」などについて詳しくご紹介しました。
平成28年から3年間にわたって行われた大改訂の影響で、最近の日商簿記2級の試験では「見たことのない難しい問題」の出題が増えています。このため、これまでのような「過去問第一主義」では対応が難しくなっています。これから日商簿記2級を受験する方は、テキストでしっかりと基礎知識を身につけることを意識していきましょう。
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