これを知れば事業戦略にも役立つ!「経験曲線効果」とは?

更新日:2020年7月20日

「経験曲線効果」とは

誰しも一度くらいは「はじめは苦手だったことが、経験を積むうちにコツをつかみ上手にできるようになった」という経験をしたことがありませんか?機械の操作や乗り物の運転、英会話など、最初は上手くできなくても繰り返すうちに上達することは身の回りにたくさんあります。

実はこれと同じような現象がビジネスの世界でも起こっているのです。経験を積むことで業務が効率化される現象を「経験曲線効果」といいます。これを上手く活用すれば経営戦略の幅を広げることも可能です。今回は経験曲線効果について見ていきましょう。

目次

「経験曲線効果」って一体何だろう?

まず始めに「経験曲線」について解説していきましょう。経験曲線とは累積生産量が増加することによって固定費、変動費が共に低減する現象をいいます。

ここで大切なのは「累積する」ということです。同じものを繰り返し生産すれば、工場が増えたとしてもそのノウハウを引き継ぐことができるので、経験曲線の効果は持続します。しかし別の製品では工程が異なるため累積になりません。これでは経験曲線の効果は期待出来ません。

この現象は製造業に限った話ではありません。サービス業でもチェーン展開をすれば同じように経験曲線の効果が期待できます。これが全く違う製造過程や業務形態になると新たにノウハウを蓄積しなければならないので、経験曲線の効果は出にくくなります。蓄積されたノウハウを生かして、効率化やコスト削減を図ることがポイントなのです。

このように経験を積むことで業務が効率化され、結果的にコストが削減される現象を「経験曲線効果」といいます。

「経験曲線効果」を活用する前に

特定の作業を繰り返すことで作業能率が向上し、業務がスムーズに進むようになるので結果的に業務全体のコスト削減へとつながることがメリットです。また同じ作業を繰り返すことでノウハウも蓄積されます。その蓄積されたノウハウがマニュアルとなり、新しい人に作業を教える時にも役立ちます。

サービス業の場合も、顧客からの要望やニーズに対する受け答えが「経験」として蓄積されます。その結果、顧客の要望に迅速に対応する力を身に付けたり、顧客満足度の高いサービスを提供したりすることが可能になります。

その一方で頻繁に生産方法が変更されたり、技術革新が起こったりする業界や製品においては過去の経験があまり蓄積されないため、経験曲線効果は現れにくくなります。また経験を蓄積するために大量生産を行うと過剰在庫につながる恐れもあります。

このように「経験曲線効果」は全ての企業に当てはまるとはいえないのです。その点を十分考慮した上で経験曲線を活用していくことが大切です。

まとめ・中小企業診断士との関連性

「経験曲線効果」が有効活用できる環境であれば、自社の経験値も蓄積され、さらに競合他社と差別化できる大きなチャンスです。しかし、全ての企業が当てはまるわけではないということを理解しておく必要があります。

中小企業診断士として企業の現状や実態を把握し、経験曲線が活用できる状況かどうか判断したり、効率良くコスト削減を実現できるように助言したりすることが求められます。日頃から様々な事例を調べ、そのノウハウを学ぶことはとても重要です。

戦略ひとつで企業の未来が大きく変化します。企業の動向を確かな知識と経験で導き、見守っていくのも中小企業診断士の大切な役割のひとつです。

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