行政書士の求人は多くない?未経験の場合の求人数は?

行政書士試験に合格して、行政書士としてのキャリアをスタートさせるにあたっては、合格後すぐに独立開業するか、あるいは、行政書士事務所に勤めて経験を積むか、という選択肢が考えられます。
行政書士試験は実務と直結する内容ではなく、また、行政書士の業務範囲は非常に広いことなどを考えれば、まずは行政書士事務所に勤務して実務経験を得ることは有効な手段です。
しかしながら、行政書士の求人はさほど多くはなく、待遇も決して良いものばかりではありません。
その理由として、行政書士事務所の規模が挙げられます。
行政書士事務所の規模別割合
日本行政書士会連合会のホームページによれば、会員数は、平成31年4月1日現在、
個人会員数 | 47,901 |
---|---|
法人会員数 | 648 |
合計 | 48,549 |
となっています。5万人近い会員数が登録されていますが、2名以上の行政書士が共同して定款を定めることによって設立する「行政書士法人」は、そのうちわずか600程度しかありません。
行政書士事務所においては、個人事務所の割合が非常に高いことがわかります。
会員数が最も多い東京都は、
個人会員数 | 6,654 |
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法人会員数 | 166 |
合計 | 6,820 |
と、法人数が唯一3桁となっており、このことは裏を返せば、地方ではより一層、個人事務所の割合が多いことを表しています。
行政書士は独立開業型の資格であるため、一人事務所の割合が高く、その分、求人も少ないのです。
独立して開業登録する行政書士を「開業行政書士」と言い、行政書士法人や行政書士事務所に雇用されて登録する行政書士を「使用人行政書士」と言いますが、「使用人行政書士」は全体の1%程度しかいないのが現状です。
行政書士補助者の求人は結構ある
行政書士登録せずに、補助者として行政書士事務所で勤務するという方法もあります。
行政書士補助者として働くにあたっては、補助者登録をする必要があります。
補助者の業務内容は、行政書士のサポートを幅広く行うことになるため、行政書士の実務経験を積みたいと考える場合は、補助者としての求人を探すのも良いかもしれません。
行政書士補助者登録にあたっては行政書士資格は必要ないため、試験勉強をしながら補助者として働き、合格後の独立開業を目指す、というケースも考えられます。
実際に開業している雇用主の姿を間近に見て、独立後の事務所運営を学ぶ良い手段であると言えるでしょう。
求人が多い地域は?
一般的に、行政書士法人の数が多い都道府県ほど、求人が多いと推測できます。
法人会員数が多い都道府県を上から順に並べていくと、
東京都(約170)
大阪府(約65)
神奈川県(約50)
愛知県(約40)
埼玉県(約30)
兵庫県(約25)
千葉県(約20)
…
と、なっています。(平成31年4月1日現在、日本行政書士会連合会のホームページより)
なお、個人会員数で見てもやはり、東京都、大阪府、神奈川県、愛知県などが登録行政書士数が多く、その分求人も多いと考えられます。
行政書士としてのキャリアを考えるにあたって、参考にしてみてください。
未経験の場合の求人数は?
行政書士の求人を探すにあたり、「未経験」であることはネックになるでしょうか。
結論から言うと、経験の有無は、採用の判断にあたってさほど大きく影響しません。
そもそも、行政書士の実務経験を持っている人が行政書士事務所の求人に応募してくることは多くないためです。
求人を行なっている行政書士事務所としては、経験の有無よりも、応募者がともに働きやすい人であるか、という人柄の面が採用の基準となると言って良いでしょう。
むしろ、働き始めてから、少しでも早く多く行政書士の仕事、実務を吸収できるように努めるのが効率的です。
面接の際は、未経験であっても自ら進んで学習する姿勢を示すのが大切です。
行政書士資格を生かすならば独立開業という選択肢も
これまで見てきたように、行政書士資格は独立開業型の資格であり、一人で事務所を開業する方が非常に多いです。
行政書士の扱える業務の範囲は非常に幅広く、自らの経験や個性を活かした仕事を選んで専門性を深めていくことができるのが魅力的です。
相続や遺言など、民事法務と呼ばれる分野では依頼者との信頼関係を深めていくことが大切ですし、許認可申請業務を請け負うにあたっては、依頼者のビジネスモデルを十分に理解し、また、許可を出す主体である国や地方公共団体の担当者とのやり取りも求められます。
非常にやりがいのある仕事ばかりだと言えます。
企業の法務部という選択肢もある
また、行政書士資格を活かして、企業の法務部で働くという選択肢もあります。
行政書士試験には民法、行政法など基本的な法律が含まれているため、行政書士試験に合格したということは、法律の基礎が分かっているとの評価を受けやすいです。
一方で、行政書士として登録していなければ行えない仕事(独占業務)は、法務部で働くにあたっては少ないと考えられるため、あくまでも求人の際のアピールポイントとして捉えた方が良さそうです。
行政書士業界の動向
行政書士の登録者数は5万人近くあり、市場は飽和状態に近いと言えます。
一方で、2019年の行政書士試験の受験者数は、増加に転じたようです。
新しい在留資格の創設や、急速な高齢化に伴う市民法務分野の重要性の高まりなど、可能性は大きいと考えられます。
また、個人の力を活かして独立開業しやすい資格であるという点も、魅力的だと捉えられていることも考えられているのでしょう。
まとめ
行政書士の求人数は多いわけではなく、待遇面も良いものばかりではありませんが、実務を学ぶ修行のようなものと考えれば、とても貴重な機会です。
大切なことは、行政書士という資格を活かして、自分がどのような仕事をしたいかを具体的にイメージしてみることです。
そのために何を学ぶ必要があるか、という観点から求人情報を見てみると、この行政書士事務所ではどのような業務を中心に行なっているのか、事務所に所属する行政書士はどのような経歴を持った人物なのか、など、幅を持った就職活動を行うことができるでしょう。